ボストンテランのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
1999年に書かれた『神は銃弾』でノワールファンに衝撃を持って迎えられた本作。
まさか2023年になって映画化するとは思ってもいなかった(映画自体はキャスト陣が演じるキャラクター造形は素晴らしいのだが、残念なことに映画は悪い意味で原作通りにやってしまったせいで、キャラクターたちの魅力を活かしきれてなかった)
10数年ぶりに原作を読み直したくなって久々に表紙をめくったのだが、やはりめちゃくちゃスゴい。
今読んでもこの容赦のないプロットと、ドライで冴え渡ったキレッキレの文章には惚れ惚れするくらい食らってしまう。
そして600ページ近くある作品で、この文体で描かれるのは癖がありそうなのに、なぜかリ -
Posted by ブクログ
原題「Giv: The Story of a Dog and America」が示すとおり、ある犬-Givが人から人へと旅するのを追うことでアメリカという国、そこで起こった悲劇の歴史、そこに住む人々の魂を描いたロードムービーのような物語です。
プロローグに「この物語は伝統的なやり方では語られない」とあるように、初めて読む構成でした。とは言っても難解ではなく心にすっと入ってくる。最後には全て回収されるので途中でやめずに読んでほしいと思います。
ディーンとギブが出会うシーンや登場人物の大半は作者の実体験や実在の人物がヒントになっているそうです。帰還兵が身近にいる国、アメリカを知ることができる作品 -
Posted by ブクログ
異常な暴力性と猟奇性を持つカルト教団に拉致された娘を救い出すべく、デスクワーク組の警察官の父親と、元教団の麻薬中毒者の女がタッグを組み、彼等の足取りを追い、復讐を挑む。
プロットはシンプルながら、文体が簡潔かつ切れ味良く、独特の魅力がある。強烈な暴力・性描写の洪水で、その点パルプ小説的ではあるが、前述した文体や、主人公二人の間の精神的な交流を描くことによる叙情性が、下品になりすぎないバランス感がある。
作中の登場人物の女性の多くに、非情ともいえる過酷な仕打ちが何度となく降りかかるのだが、主人公のケイスを含む多くの人物の精神的な強さが救いとなって、悲壮感はあれどなんとか読み進めることができた。 -
購入済み
重厚
重厚なスリルと感動。
かわいそうで顔をしかめてしまう箇所もあった。
犬の善良さがひしひしと伝わる。
残酷だけど下品さがない。
素晴らしい本を読んだ。 -
Posted by ブクログ
南北戦争前、詐欺師の父がだまし取った金を、騙した名目の通り届けようとする少年の話。
タイトル通り「ひとり旅立つ少年」なんだけど、ゆく先々で助けられる。というか、少年というのはあまりにもか弱い。子供である以上、どうしても庇護が必要なのだ。
そのあたりが、切ない。
容赦なく、周りに振り回され、自分ではどうしようもできない、その過酷さが悲しい。
<まるで白人に見える黒人>というものの存在を始めて知った。
もう、こうなると真実なんて意味がないよね。
その意味のない世界で、父と自身の罪を贖うために歩き続ける彼は、尊い。
人間の尊厳とか矜持とか、そういうものを考えさせられる作品 -
Posted by ブクログ
ボストン・テラン『ひとり旅立つ少年よ』文春文庫。
1850年代のアメリカを舞台に、12歳の少年チャーリーを主人公にしたロード・ノベル。
有らぬ限りの苦難が主人公のチャーリーに襲い掛かる。その苦難を知恵と勇気で次々と乗り越え、一歩一歩目的に向かって歩むチャーリーの姿が健気で清々しい。
詐欺師であるチャーリーの父親はチャーリーをダシに奴隷解放運動の資金と偽り、教会から大金を巻き上げる。大金を狙う二人組の男たちはチャーリーの父親を殺害し、チャーリーを付け狙う。父親が奪った大金を本来の奴隷開放運動のために活かすことを決意したチャーリーは苦難の独り旅へと足を踏み出すが……
本体価格920円
★★