暴力的な父と、気弱な母の間に生まれた聴覚障害を持つ少女のイヴ。そんな母娘の前に現れた女性”フランは、二人の生活に積極的にかかわり、二人の生活は徐々に良くなるように思えたのだが…
いくつかの犯罪が出てくるため、サスペンスといえばサスペンスですが、この小説の本質はそこではありません。この小説が描く
...続きを読むのは不幸に負けず生きようとする女性の姿です。
聴覚障害というハンデ、道を踏み外していく父、生まれながらにして、そうした宿命を背負わされるイヴですが、運命はさらに過酷です。光が見えたと思いきや、それが理不尽に、そしてあっけなく奪われてしまうことが多々あります。
やり場のない怒りや無力感に負けそうになるイヴ。それでも彼女はフランに支えられ、そして成長していくに従い、自分と同じような境遇の女の子を支える側にも回り、強く生きようとします。その姿の力強さこそが、ミステリやサスペンスの枠を超えて評価されたのだと思います。
イヴを支えるフランも、戦争の際、心身に深い傷を負った女性です。だからこそこの二人が、親子の絆をこえて、より深く結び付いていく姿も、心に迫ってきます。
文章は少しクセがあり、読みにくく感じることもあったのですが、そのクセが女性たちの生きざまを凛々しく魅せてくれていることも確かだと思います。
2011年版このミステリーがすごい! 海外部門2位