NHK「欲望の資本主義」制作班のレビュー一覧
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ネタバレこんなエキサイティングな本はそうそうない!
コーエンの話はものすごく面白く、今後テクノロジーによってルーチンワークの仕事は減っていく。創造的でなければ生き残れないというのは本当にその通りだと思った。
後半のガブリエルとセドラチェクの話はもう最高にエキサイティングだった。お互いに例えや主張の根拠を分かっていてどんどん話が展開していく様子がたまらなかった。
特に納得したのがシェリングのくだり。
生命体というシステムは
その維持のためには代謝によって外部のエネルギーを取り入れて変換することがその本質である。
つまりシステムには外部が必要なのだ。
そのため外部との境界がないシステムはそれを維持する -
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テーマは格差社会。
無形資産の肥大化と、グローバリゼーションやインターネットが組み合わさり、格差を広げている
という。デジタルプラットフォーマーの一人勝ちで富が集中する図式と、一部コンテンツは無課金で楽しめるものだから、それで満足する低所得階層の構図が現代の特徴だろうか。
大企業はロビー活動に巨額な資金を投入し、規制当局や行政サイドにまで圧力をかけることができるため、政治への影響力を行使してより強力になる。これはアメリカの話だが、金持ちに有利に操作できれば、永遠に格差は縮まらない。不満を原動力に革命を起こすモチベーションは、無課金の娯楽で満たされて上がらない。
無課金娯楽だけではなく、トリ -
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シリーズものを読み進めているが、テーマは一貫して資本主義を問う内容ながら、一冊ごと読み切れる作り。で、本作はお待ちかね(私にとって)ユヴァルノアハラリ、他には、ギャロウェイやマルクスガブリエルのインタビューを含む内容。
一つの論点を掘り下げていくような深い話ではないが、示唆に富む、考え抜かれた言葉の一つ一つが刺さる。例えば、大学からの人材を企業が採用するのだから、卒業生を採用した企業から、学生の採用料を徴収する制度が有効である。これは、ギャロウェイの意見だし、過去に似たような論説も耳にしたが、いや、そうだよなと思う。まあ、そうなると大学のもつアカデミアの普遍的価値が損なわれ、完全に資本主義の -
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NHKで放送された内容の書籍化。シリーズもので読み続けていけるのが嬉しい。今回は二巻だが、どこから読んでも問題ない。フランスの知性ダニエル・コーエン、異才哲学者マルクス・ガブリエルと奇才トーマス・セドラチェクの対談が見所。
アダムスミスが国富論で利己心を肯定しつつ、道徳感情論で共感を人間存在の基礎原理としておく二面性。シュンペーターの資本主義はその成功ゆえに自壊する。資本主義は、両義性を含むイデオロギーであると話すコーエン。社会へのテクノロジーの影響を考察する。新しいテクノロジーは多くの中産階級から仕事を奪うので、人々はより低スキルで低賃金の仕事への転職を余儀なくされる。一方、こうしたテクノ -
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『貨幣論』、『二十一世紀の資本主義論』と続けて読んで、今回、著者の最新の本書を読んだ。上記2冊はいずれも今から30年近く前に刊行されたが、これらで展開された「貨幣」の本質は、たとえその姿形を変えたとしても、その実態は変わらないとわかる。その一方で、これらの本には存在しなかったビットコイン等の仮想通貨や昨今話題であるMMT(現代貨幣理論)に対する見解を述べており、これまでの著書ではカバーされていなかった部分を本書で補足されている。
本書全体を読んで、アリストテレスとカントの2人の哲学者の偉大さがよくわかる。著者曰く、アリストテレスは資本主義以前の世界で、貨幣の本質を見抜いたり、共同体のあり方 -
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「貨幣とは貨幣であるから貨幣である」という貨幣の自己循環論法。なんだそりゃ。小泉進次郎が言いそうなトートロジーでもあり、早口言葉のようでもある。しかし、これが真理なのだろう。ただ、若干の補足が必要だ。
お金を使うことは、お金自体に使い道は無いことを知りながら、流通させていることであり、最も純粋な投機とも言える。お金を信じていると言うことだ。貨幣商品説とか、貨幣法制説やMMT論はあるにせよ、本著では結句、貨幣とは、集団幻想として認知され、貨幣という交換価値に帰結する事で貨幣足り得るという主張を採用する。
貨幣の存在を探りながらも本著が面白いのは、アリストテレスのポリス(都市国家)からの掘り下 -
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経済学や貨幣について独学していくなかで、「これからの正義の話をしよう」「ビットコインスタンダード」を読んだ後にこの本を読んだ。
貨幣や経済を学ぶに連れ、学問は隔たりなく体系的に学ぶことの重要性と楽しさを覚えている。
また著者の思考をまずは読み取り、その上で対岸の思想を学ぶことも自分の思考を枠の中に留めないためにも柔軟体操として必要である。
前置きが長くなったが、アリストテレスのいうポリスを維持するための貨幣の必要性と、貨幣によるポリスの崩壊リスクというパラドックスについて共感したと同時に、そこに「欲望の貨幣論」の本質があることを理解した。
経済や貨幣を勉強する中で、自分自身これからの -
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本当の問題はマイナス金利ではなく、中小企業が資金を調達できないことにある。
日本経済低迷の要因は、人口減少
高齢化が進む日本は、医療機器の分野で世界をリードできるかもしれない
豊作の年は、収穫したものを全て消費するのではなく、貯めておくことです
民主資本主義の本質的な意義は、「自由」にある
日本の資本主義は終着点に到達している。もう全て手に入れた。誰も欲しがらないものを作っても意味がないから、そんなに働かなくてもいい。一度きりの人生なのに、誰も欲しがらない物を作るラットレースを走り続けるのは馬鹿げたことです
経済ではなく、他の分野で成長すれば良いのです。芸術、友情、精神面など
本 -
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「資本主義」を考える月間2冊目。NHKスペシャル「欲望の資本主義」のインタビューを書籍化したもので、世界の知性と呼ばれる人たちの主張がじっくり読める。第1巻では、ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ、チェコのエコノミストであるセドラチェク、Uberを見出した投資家であるスタンフォードの3氏。スティグリッツは「総貯蓄が市場最高になってるのに、長期的投資が行われない。必要なのは温暖化対策など、結果に時間がかかる長期的な投資であり、それがあたらしい需要を産む」と説く。セドラチェクは「需要をお増やすのではなく、供給をコントロールすべき。成長に取り憑かれるのは誤りだ。金利3%で借金をして1%しか成長しな
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「貨幣は、本来人間を匿名にするんです。これが貨幣のもっとも重要なところなんですね。匿名ということは、人間が、ほかの人に評価されない領域を自分でちゃんともっているということ。これが重要なんですよ。」
例えば、住まいを間借りしているとする。するとその家のルールに従わないとダメだし、突然出て行けと言われても抗うことができない。
でも、家賃を払っていれば借家の中は自分の私的空間になる。借家よりも持ち家の方がより私的空間になる。つながりの希求は貨幣化の次のステップであり、村などの地域共同体への後退ではない。
ジェイン・ジェイコブスは市場での商習慣の中で「契約」という概念が生まれ、それが法に組み入れら -
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1)「貨幣とは何か」という問いに対する考察。金銀など「貨幣は価値が高いものだから貨幣である」とする「貨幣商品説」は、かならず[カネの価値]>[カネのモノとしての価値]となるところから棄却される。究極のところ「貨幣は他の人が貨幣として受け取ってくれるから貨幣である」ということになる。
2)ビットコインは投機商品となって[貨幣としての価値]よりも[投機対象の商品としての価値]のほうが上回ってしまったので、貨幣に対する基本定理に沿わなくなってしまった。カネの価値がモノの価値より低くなってしまっては誰も手放さない、交換しない、つまり流通しないから、カネとしては機能しない。
3)しかしさらに突き詰めて言 -
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