九鬼周造のレビュー一覧
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本書は、哲学者である九鬼修造が、日本特有の感覚である「いき」の構造について論じたものです。
解説によると、九鬼はあのハイデガーやベルクソンにも評価され、サルトルが家庭教師をつとめたこともあるとのこと。日本の哲学者としては西田幾多郎が有名でしょうが、日本の哲学者は彼だけではないんですね。
本書は古典的な哲学書ではありますが、例えばハンナアーレントにおけるアリストテレス哲学のように前提となる基本的知識を必要としないため、非常に読みやすいものとなっています。
そのため、哲学に興味がある方、古典に触れてみたい方、読みやすい岩波文庫を探している方など本書はおすすめです。
本書において「いき」とは、「 -
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ネタバレ「和の心」というテーマで展示を作成するにあたり、その核となる書籍として選んでみました。
「粋だねえ」などと言われ、ある種の誉め言葉として使われる「いき」という概念は、はたしてどのようなモノであるのか、読み終えて、ひとつの定義を知ることができたように思います。
原著を現代語で読みやすく書き改めてあるので、本論もストレスなく読むことができましたし、著者の主張もわかりやすかったです。
実体験として、また実生活の中で自分が「いき」に生きることはなかなかハードルが高いのですが、だからこそ(そして「いき」がどのようなものであるかわかったからこそ)「いき」である人やその仕草にあこがれ、尊いものだと認識でき -
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「いき」は日本の独自文化で、男女のつかず離れずの媚態における「逢瀬の美学」である
人生の50冊 エンジョイライフ ベスト3位
九鬼周造は2013年における大発見でした。
なにしろ日本の遊里における男女の媚態を分析して、
これをフランスで哲学書として成立させるのが、九鬼魔術(マジック)。
白眉は、欧米の類似の恋愛観と比較しながらも、吉原における男女の機微に日本独特の文化的背景を展開するロジックにある。
「いき」は武士道の理想主義である「意気地」と
仏教の脱俗世である「諦観」と密接な内的関係がある。
さらに、関連諸概念として、上品と下品、派手と地味、意気と野暮、渋味と甘味を挙げ、それらで -
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日本の哲学者、九鬼修造の論考。
本来、感情的、直感的に把握される「いき」という日本文化の心象について構造的な説明を企てた書。
同著の「偶然性の哲学」に挫折したのでこちらを拝読。
「いき」の中心概念に「媚態」が提示されるが、これは恋愛における互いに決して束縛されることのない緊張関係として説明される。
これは恋愛する男女のみならず、あらゆる他者、概念、神、物体に通ずるものだと思った。
すべての他者は自分のものにもならないし、すべての概念を完全に理解することはできない。
神にどんなに接近を試みても永遠に届くことはない。
愛着ある文房具、食器、家具、グッズ、ガジェット、これらに囲まれると -
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九鬼周造についてはこれまで『「いき」の構造』『偶然性の問題』を読んだが、なんだか思想の全体像が掴めずにいたので、このちくま学芸文庫のアンソロジーを読んでみた。
前記の2書は抜粋が入っている。
『「いき」の構造』(1930〈昭和5〉年)は名著として読み継がれているものだが、私にはやはり、「何故こういうテーマを書いたのか」という疑問が残る。記述はなかなか厳格な哲学なのだが、西洋文化に対する日本文化の特色としての「いき」を浮き彫りにしようというテーマは哲学と言うより文化論である。その概念を深く追究するプロセスはじゅうぶんに哲学ではあるが、テーマは哲学的でない。
一方、『偶然性の問題』(1935