地区予選3回戦、藤堂と因縁深い星明高校との対戦がおおむね収録された7巻である。
勝ち上がった先の相手が帝徳学園、それも中二日という強行軍を見据えて、ここでまさかのモブ先輩・鈴木さんが投手を務める一手が見られている。
確か1巻で同好会の会員を募集していた先輩だったはずだが、そんな彼が炎天下で戦
...続きを読むい抜く様は結構熱い。
スラムダンクのメガネ君とは似てるようで違う、本当に実力の足りない彼がどんなピッチングを見せたかはこの巻の見所だろう。
圧倒的な強さを見せる清峰&要バッテリーと違い、この巻はしっかり野球をしている。
それも、一球一球に賭ける高校野球の暑さを帯びていて、イニングを重ねるごとにチームが成長していく様が活写された、実に王道の少年スポーツの世界である。
苦境で必死に守備し声を張る土屋先輩に、攻撃に責任を持つ主役陣、ベンチから声を張る一同に、逆転のチャンスで研ぎ澄まされる山田少年のバッティング。
本当に素晴らしい。
才能豊かな後輩が挫折から復活する、そんな陳腐なストーリーを認められないかつての先輩ピッチャー・津田や、復活の様に感涙にむせぶ同じく先輩の高須など、敵方の感情も味わい深い。
そして最後に、たった3球で試合の文脈を塗り替えた清峰。
才能が全ての世界であることは、巻末に収録されたWJ出張版(要圭が記憶を失う前後を描いた前日譚)でも明確に示されているが、これほど残酷な描写ができるのもこの作品らしい。
もしかするとこのシリーズで唯一の野球展開かも……と危惧するほどに素晴らしい一巻だった。
文句なしに星五つで評価したい。