マシュー・サイドのレビュー一覧
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コーチのダニー・ケリーが、権限を「指揮系統のより低いところへ」移譲したその度合いこそが、このチームの最も驚くべき洞察力の表れだろう。日々のトレーニングをいつおこなうか、選手たちは自分で決める。選手たちは、自分たちが守るべき明文化された規則や行動原則を自分たちで決める。キャプテンも投票で決める。無秩序な状態だと思う人もいるだろうが、実際には、指揮系統は強化されたのだ。
「責任を与えられ、意思決定の場に参加する人は、当事者意識を持ちます。その人は物事により責任を持って参加するようになるのです。そうすれば、チーム全体の力学も変わってきます」とケイトは言う。「若手の選手も成長します。自分たちが策定に関わった規則を進んで破ろうとする人はいませんからね。もちろん、しっかりと限度は決めなければなりません。多くの重要な決定はコーチがするのだという意識はみんな持っています。しかし、権限委譲は弱さではありません。逆に、強さの証拠なのです」
リチャードソン=ウォルシュがこのチームで得た知見は、企業を対象にした精密な研究結果とも一致する。心理学者のジェイ・コンガーとラビンドラ・カヌンゴは、従業員に力と責任を与えれば満足度が改善することを発見した。マネジメント研究者のケネス・トーマスとベティー・ヴェルトハウスは、「権力の分散は内発的モチベーションを生み出す」と唱える。マクリスタルも書いているように「人間は自ら決断をしたときのほうが、結果を出そうとしう意識が働くので力を注ぐようになる」のだ。
ブレイルスフォードは三つの重要な変化を挙げた。うち二つはチームの文化の改善で、もう一つは技術的側面の改善だ。「私は、成功するチームは感情的なたくましさを持つ文化から生まれると確信した。自転車競技は、エネルギーや力の出力のみで説明されることが多い。だが、人間的な側面もとても重要で、パフォーマンス・サイエンティストにはそれが過小評価されがちだ」
「最初に、私たちは「勝つための行動」アプリをつくってチームに変化をもたらした。インチキ臭く聞こえるだろうが、基本的なことなんだ。たとえば、勝つ者の行動は「不平を言わない」で、負ける者の行動は「不平を言う」。誰かに腹を立てて、そのことをチームメイトに愚痴りはじめたりすると、それがまた誰かに伝わり、チームのなかでがんのように悪影響を及ぼす。些細なことかもしれないが、破滅のもとになる」
プレイルスフォードはiPhoneを取り出して、そのアプリを見せてくれた。左半分に行動リストがあり、右半分に笑顔の絵文字、普通の絵文字、悲しい顔の絵文字がついた、自己採点のための目盛りがある。一つひとつの行動について、チーム・スカイのメンバーは週ごとに自己評価を提出させられ、それをブレイルスフォードがチェックして、一対一のミーティングをおこなう。
ブレイルスフォードは、ツール・ド・フランスのその日のステージにおける自己評価を入力しはじめた。一つ目の項目は「私は感情をコントロールできる」。「今日は感情をコントロールできなかったな。改善の余地あり」と彼は言う。二つ目は「個人的な問題を仕事に影響させない」。プレイルスフォードは笑顔の絵文字をタップした。「私は個人の問題を仕事に持ち込んだことはない」と言いながら。
リストにはほかに、このような行動があった。「チームを批判しない」「わずかなアドバンテージを追求する」「よく調べ、建設的なフィードバックを出す」「常に学びを模索する」「能動的に人の話を聞く」「チームメイトのために先回りして問題解決をおこなう」。ブレイルスフォードは言う。「最後の項目は、強調してもしきれないほど大事だ。「助けてくれればよかったのに」と人はよく言うが、それに対する答えは決まって「言ってくれれば助けてあげたのに」となる。それじゃあだめなんだ。問題があるかどうかを尋ねなきゃならないという状況がまずいけない。「先回りして」というところが、単なる良いチームと偉大なチームの差になるんだ」
「私は、常に選手たちがどういう状況かを把握している。そうやって文化を変えていくんだ。自己評価を紙に書かせるなんてのは良くない。実際の行動を変えられるようにしなきゃならない。このアプリは生き方を変えてくれたよ。今日のチームのミーティングみたいに、議論が熱を帯びたときにも、正しく振る舞わなければならないと、みんな自覚している。有害な行動が起こる前に防いでくれるフィルターみたいなものだね」
二番目の変化は、モチベーションを高めるための組織的な努力だ。ブレイルスフォードはそれを「やる気指数」と呼ぶ。「私たちは、モチベーションに影響を与えうるあらゆる要素を掘り下げて分析した」と彼は言う。「契約の最終年の選手は、新たに契約を取れるように一生懸命努力する。1年目の選手も同様だ。特に外から移籍してきた場合は、新しいチームで一目置かれたいからね。でも、何人かの選手については、2年目からモチベーション面でスランプに陥っているのを観測した。それに対しては、契約内容を微調整して直接対処することにした。私たちはまた、選手の私生活の調子や、トレーニングのデータも分析した。一人ひとりの選手にやる気指数をつけ、その動きを追跡したんだ。何かおかしな動きがあれば、すぐに対応する。やる気が下がるのは明らかに良くないことだ。先回りで対応すれば、下がってしまう前になんとかできる」
三番目の変化は技術的なものだ。チーム・スカイが利用しているアルゴリズムは、スポーツ界のなかでも最大級に高度で複雑なものだ。ケリソンのもと、チームは自分たちの固定観念を検討し直すとともに、特に、食事とパワーの間の動的な関係性について徹底的に調べた。「トレーニングの内容だけでなく、そのトレーニングのためのエネルギーをどう補給するかも重要です」とケリソンは言う。「狙った適応が得られるように、トレーニングごとにそれぞれ違った補給方法を採用しています。一部のトレーニングでは、脂肪を効率的に使える体をつくるために、炭水化物を減らします。別のトレーニングでは、パフォーマンスを最適化するために炭水化物を増やします。しかし私たちは、違った組み合わせも試しはじめました。やがて私たちは、ペダル回転数の違いに応じて、さまざまな栄養素が動的な相互作用のもとでパワーの出力に影響を及ぼすという、重要な知見を得ました」
しかし、まさにスポーツは取るに足らないがゆえに、私たちを魅了するのだ。人間の活動のなかで、スポーツほど正確に人間の本能をドラマ化するものはない。そこで表現される本能とは、勝利の追求、他人との比較、世界に挑む勇気、挑戦のなかで自分自身をより深く知りたいという思いである。
ここでいったんサッカーから離れて、ハーバード・ビジネス・スクール教授のテレサ・アマビルの研究について考えてみよう。彼女は何人かの芸術家を募集し、その作品のなかから10の注文作品(お金をもらってつくられたもの)と10の自主的な作品(制作そのものを愛し、自己表現への欲求から生まれたもの)を選び出した。そして、影響力のある芸術家やキュレーターのグループに、それらを評価してもらった。
「非常に驚くべき結果が出た」とアマビルは書いている。「注文作品は自主的な作品と比べて、創造性の面ではるかに劣ると評価された。それでも、技術面の評価では両者に違いがなかった。さらに、依頼された作品を制作しているときは、芸術家たちは自主的に制作しているときと比べ、著しく束縛を受けているように感じる、とも語った」
別の研究では、研究者が美術学校の学生に、お金を稼げる芸術家になりたいか、もっと根本的な意味で自己表現ができる芸術家になりたいかを尋ねた。20年後、研究者はその元学生たちがフルタイムの芸術家としてどのように活動しているかを調べた。すると、「絵画にしろ彫刻にしろ、外的な報酬ではなく活動そのものに喜びを追い求めた芸術家のほうが、社会的に認められる芸術を生み出してきた」そうだ。
この現象はいまではよく知られていて、名前がついている。作家のダニエル・ピンクが「創造性のパラドックス」と呼び著書『モチベーション130』(講談社)にまとめている。私たちは勝利とは異なるものに動機づけられているときに最も深いインスピレーションを得られるが、それがかえって私たちをより成功に導くのだ。芸術家を追跡する研究をおこなった研究者たちはこう述べている。「結果として、外的な報酬の追求を動機としなかった者ほど、外的な報酬を(生涯では)得たことになる」
だが、比較的つまらないと思われた「クラッチバット」(ここぞというときのバット)についての質問(「ミスをしたらどうなるかと、自分の心が心配しないようにするのは難しいですか?」)に答えるとき、ニクラスはガスバーナーのように輝きだした。まるで1000ボルトの電流が流れたようだった。やがてスチュワートも熱い会話に参入した。幅広い関心のなかで、この二人はほかの何よりもある一つのことを熱狂的に追い求めていた。それは勝つための技術だ。
「ネガティブなことは考えちゃいけないんですよ」とニクラスは、不道徳の危険性を警告する伝道者のように主張した。「私は考えませんでした。勝負のパットは常にチャンスだと思っていて、脅威だと思ったことはありません。多くの選手は、この心理的なトリックを使えないのですけど」
「トーナメントに勝利するために6フィートのパットを決めなければならないとき、幸せな気持ちでした。そのために自分は努力してきたのですから。心が高ぶり、なんと楽しかったことか。パットを打たせてほしい!ってね」彼は立ち上がらんばかりの勢いで力説した。スチュワートはうなずいていた。「心をどう操作するかにすべてがかかっているんです」とスチュワートは言った。
「あらゆるネガティブな感情を排除しなければなりません。なぜなら、それは成功か失敗かを決める瞬間に、自分にとって邪魔になるからです。勝利するための鍵は、熱くなっているときでも自分をコントロールできていることです。モータースポーツでは、危険についても考えなければなりません。1968年には、4ヵ月連続でドライバーが命を落としたこともありました」 -
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才能ではなく努力
10000時間法則
著者は元卓球のアスリートとは知らなかった。好きこそ物の上手なれなのは間違いないけど、努力し続けられるエリアを持てる事こそ才能な気がする。そしてその様な環境を得られる運も大事。でも天性のものなんて無いと思えるとフェアな気がして生きる希望が持てるかもね。
部下やアスリートを褒める時は知性を褒めるのではなく、努力を褒めるのは大事というのはちょっと気をつけるかな。ついつい直感で君は優秀とか言ってしまうので…
読みやすいが、多少説明というか具体例が冗長な部分があって飽きる。プラシーボ効果の話とか最後の黒人アスリートの話とかはもっと簡潔でも良いのでは… -
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勉強の出来る人、スポーツで秀でた結果を出す人などに体して、生まれ持った才能と片づけてしまう事が多いが、著者は卓球でイギリスチャンピオンとなり、オリンピックでイギリス代表になった。
その著者が「才能なんてものはなく、すべては努力」と言っている。
タイガーウッズやベッカムなど、スポーツで世界を魅了する選手は、小さいときから、自分の意思で練習を練習とも思わず、何度も自分の限界を超える練習を続けていた。
傑出するために近道がある証拠は一切無い。と言うセリフは有機をもらえる反面、成功の会議を握るのは才能ではなく練習なのだ。と言う言葉は、自分のこれまでのしてきたことを振り返り反省すべき点が数え切れないほどあるなと暗くなってしまう。
より賢く、より深く、より目的を持って訓練(練習)する目的性訓練をすることが、実力を飛躍的に向上させる練習方法 -
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「才能」とは「努力」である、と言うこの書。様々な意見、評価、立証等が載っているが「才能は結局努力次第」とある、が果たしてそうだろうか。天才などもって生まれた才能は努力ではなく「環境と他人が、家族が見出した結果」でもあると思う。一般的な「才能」とは「努力」も大きな要因だが、体内・脳内に潜む持って生まれた「天性」が必ずやある(才能=特技)と私は思う。スポーツのできない人に「努力」でスポーツ選手になれと言ってなれる人はいないと同じで、人間には「天性」があり、それは人それぞれの「才能」が隠れているだけだと信じたい。「天性」があるから「努力」でその才能が伸ばせるのだと、信じたい。ゴルフプロの双子(岩井姉妹)の優勝は、そんな背景があると信じたい。
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1 どんな本?
遺伝的に決まる才能なんてもの存在せず。傑
出性は目的を持った練習とフィードバックのル
ープで決まる事を説く本。人種の特徴にまで言
及した本は初めて見た。
2 なんで読んだの?
(1) 子育てに役立てたいから。
(2) 教育に役立つ知識が欲しい。
(3) 具体的な教育の仕方を更新した状態。
3 構 成
3部10章構成310頁
自伝バイアス、著者の卓球経験から始まり、
人種の色眼鏡を捨てる事ができたならば世
界を変える事ができると締めくくる。1/2は
本書の主眼である才能と言う幻想に費やさ
れている。
4 著者の問題提起
傑出するのに才能が必要だと思って無いですか?
5 命題の至った理由
卓球の英国代表だった著者の考察から生まれ
た疑問。その疑問を解決する科学的根拠から。
6 著者の解
傑出には努力の量と質が大事(運も)遺伝的
な物は関係が薄い。
7 重要な語句・文
(1) 傑出才能説
(2) 才能至上主義
(3) 神秘の花火
(4) 関連性がモチベーションを産む
(5) あがりのメカニズムとその回避法
(6) フィードバックループ
(7) 成長思考
(8) 行動を褒める。
(9) 能力は褒めない。
(10) 感情は皆一様に遺伝子に組み込まれている。
8 感 想
既知のリマインドにもなったし、新たな学び
にもなった。
刺さったのは人種にすら遺伝的特徴は薄い事。
外見ぐらい。私の偏見が薄らいだ。世界は一つ
になれると感じた。
深く知りたい事は内的動機の出し方。やる気
を出す事ができればなんでも出来ると思う。
人に勧めるなら目的性訓練とフィードバック
ループ。誰もが何にでもなれる。
私がタイトルをつけるなら「才能を否定する
科学」
9 TODO
(1) 子供の能力を評価しない。
(2) 子供の行動を褒める。
(3) 失敗なんかない事を伝える。
10 問 い
人間とは?
11 答 え
皆一緒