中町信のレビュー一覧
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ネタバレ作者あとがきで、「『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品」と書かれていたので、共通項を探しながら読んだが、心理的なトリックが用いられていることを指しているのだろうか。「皇帝のかぎ煙草入れ」で使われている、あのトリックが形を変えて使われているのかと思ったが、そうでもなく、騙し方としては叙述系と感じた。トリックよりも、第9章で百世が気付いたことの方が類似性があるように思った。
推理の鍵となる重要な事実が後の方で明らかとなるため、読者が推理する余地は少ないが、犯人のアリバイトリックの手法、冒頭部分の記述における錯誤、絵里子の遺書と日記帳に関する真相、伏線の忍ばせ方など、数々のアイデアが盛り込まれていて、 -
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良いじゃないか、中町 信!
作者がイチ押しの自信作だけあって、うん、たしかに満足できた。甲子園を目指す学校同士の醜い思惑をバックボーンに、女子生徒の死、女教師の自殺、野球部監督の毒殺と立て続けに事件が起きる。
様々なエピソードを枝葉にして物語は進むが、なかなか容疑者が特定されず、容疑者らしき人物が浮かんでもアリバイの壁が立ちはだかり・・・。
まさに、正統派推理小説というべき作品だな。
推理小説の中には、クローズドサークル物、叙述トリック等々、いろいろ有るけれど、この作品は強いて挙げればアリバイ崩し?
でも、それだけじゃないんだよな。単なるアリバイ崩しだけだと、単調で面白くもない物語になりがち -
Posted by ブクログ
ネタバレこの作品は,1973年に発表された「新人賞殺人事件」が改訂され,2006年に創元社から出版された。「第四部 真相」という扉が挟まれ,あからさますぎる伏線が削除されたりしているが,基本的なプロットは1973年に作られたもの。1973年に,これほど完成度の高い叙述トリックの作品が作られていたのは驚き。
創元推理文庫版の解説は,叙述トリックの名手、折原一が書いている。折原一の解説を読むと,折原一がいかに,中町信の作品を敬愛しているか,よく分かる。折原一の作品にも,影響を与えていそう。
この作品は,折原一の初期の作品にもあったように,二人の人物の視点が交互に描かれている。その二人は,中田秋子とい -
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ネタバレお気に入りのミステリ作家の一人,中町信の代表作の一つ。もともとは,1980年に「高校野球殺人事件」として発表された作品。2006年に創元推理文庫から「空白の殺意」と改題されて出版されている。
先に,折原一などによる最近の叙述ミステリを読んでいるので,それらを読んだ上での評価になるが,中町信の作品は,叙述トリックがシンプルにかつ丁寧に使われていて非常に好感が持てる。驚愕というほど驚けないが,よくできていると感心できる作品ぞろいだ。
「空白の殺意」では,プロローグで,さらっと読むと死体を発見したシーンとしか思えない場面が描かれている。しかし,実際は,犯人が殺人を犯すより前に,被害者の家を訪れた -
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ネタバレ青酸カリをあおり投身自殺を図った推理作家。死の前に発表した作品は自殺を仄めかした内容であっただけでなく、ある大御所作家の作品を模倣したものだった。
坂井の知人だった編集者の中田秋子とルポライターの津久見伸助は、それぞれに坂井を殺害する動機を持つ者を調べ上げていく。二人が目星をつけた人物にはアリバイがあるため、それを突き崩すために奔走する。だが読み進めるうちに、中田と津久見がそれぞれに知る坂田は、同姓同名の別人だという事実が発覚する……。
序盤の「遠賀野律子」に関する記述で違和感を覚え、それを抱いたまま終盤でその意味を理解する。著者中町信氏の経歴故に、叙述トリック作品は大方読破したという読者であ