中町信のレビュー一覧
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ネタバレ作者あとがきで、「『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品」と書かれていたので、共通項を探しながら読んだが、心理的なトリックが用いられていることを指しているのだろうか。「皇帝のかぎ煙草入れ」で使われている、あのトリックが形を変えて使われているのかと思ったが、そうでもなく、騙し方としては叙述系と感じた。トリックよりも、第9章で百世が気付いたことの方が類似性があるように思った。
推理の鍵となる重要な事実が後の方で明らかとなるため、読者が推理する余地は少ないが、犯人のアリバイトリックの手法、冒頭部分の記述における錯誤、絵里子の遺書と日記帳に関する真相、伏線の忍ばせ方など、数々のアイデアが盛り込まれていて、ミステリーとして、充実した内容を持っていると感じた。ただし、真相の衝撃度は少なく、あっさりとしているので、あまり騙された感じはしない。
選手や監督の不祥事ならいざ知らず、後援会の会長の不祥事ぐらいで謹慎処分になったりするだろうかと疑問に思った。
(ネタバレ)
「皇帝のかぎ煙草入れ」との類似点として、犯人が本来知らないはずのこと(日記帳の赤いカバーのこと)を証言し、発覚したことが挙げられると思う。 -
Posted by ブクログ
良いじゃないか、中町 信!
作者がイチ押しの自信作だけあって、うん、たしかに満足できた。甲子園を目指す学校同士の醜い思惑をバックボーンに、女子生徒の死、女教師の自殺、野球部監督の毒殺と立て続けに事件が起きる。
様々なエピソードを枝葉にして物語は進むが、なかなか容疑者が特定されず、容疑者らしき人物が浮かんでもアリバイの壁が立ちはだかり・・・。
まさに、正統派推理小説というべき作品だな。
推理小説の中には、クローズドサークル物、叙述トリック等々、いろいろ有るけれど、この作品は強いて挙げればアリバイ崩し?
でも、それだけじゃないんだよな。単なるアリバイ崩しだけだと、単調で面白くもない物語になりがちだけど、読者を欺くための?エピソードなんかが良い味を出してる。
容疑者と目されていた人物が、第四の死を遂げるに至って、いよいよ物語は「?」のオンパレード。
これまでの四つの死の犯人は誰なんだ?
動機は?
容疑者は2~3人居るけど、アリバイあるし・・・。
このあたりまで来ると、ページをめくる手が速くなった。名探偵が登場するわけでもなく、ラストで「全員を集めて犯人を名指し」なんて場面もないけど、うん、やっぱりこれは正統派推理小説だよなぁ・・・。
読み終わった後で、プロローグを読み返すと、ジワ~ッと湧き上がる衝撃。プロローグとエピローグを比較するだけでも一読の価値はあるなぁ。
一瞬で世界がひっくり返るようなパンチ力のある衝撃じゃなくて、こちらは、そうだなぁ、ジワジワと効いてくるボディブローのような衝撃だな。
いやぁ、最近、瞬殺の衝撃物ばかり読んでたので、この種類の衝撃は久々だった。
「し、死んでる・・・・・・」
プロローグとエピローグに書かれたこの一行の使い方、上手い!
作中、挿入されてるエピソードについての結末も書かれてると良かったんだけど、そのあたりが書かれてないのが若干の不満点かな。
☆4個
背表紙~
大仰ではなく、小粒ながら、心理的なだましのトリックをメインに据え、読者を最後の一ページまで引っぱって行く「皇帝のかぎ煙草入れ」のような作品を、私はおこがましくも、無性に書いてみたくなったのである。たまに読者から「自作の中で出来が良く、気に入っている作品は?」と問われることがあるが、私はためらわずに本作を筆頭に挙げている。中町 信
密室物やら叙述トリックにはない、まさに王道の推理小説。堪能しました。 -
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ネタバレこの作品は,1973年に発表された「新人賞殺人事件」が改訂され,2006年に創元社から出版された。「第四部 真相」という扉が挟まれ,あからさますぎる伏線が削除されたりしているが,基本的なプロットは1973年に作られたもの。1973年に,これほど完成度の高い叙述トリックの作品が作られていたのは驚き。
創元推理文庫版の解説は,叙述トリックの名手、折原一が書いている。折原一の解説を読むと,折原一がいかに,中町信の作品を敬愛しているか,よく分かる。折原一の作品にも,影響を与えていそう。
この作品は,折原一の初期の作品にもあったように,二人の人物の視点が交互に描かれている。その二人は,中田秋子という女性の視点と,津久見伸助の二人の人物。この二人は,それぞれ「坂井正夫」という人物の自殺の真相を解明すべく動いていく。
この作品のメイントリックは,坂井正夫という名前の人物が二人いて,二人とも推理小説を書いていたという点にある。そして,中田秋子の章と津久見伸助の章は同一年でなく,中田秋子の章は津久見伸助の1年前の出来事だった。折原一の作品を多数読んでからこの作品を読んだので,この部分にはそこまで驚けなかったが,中田秋子の章における隆広という子どもの誘拐事件,津久見伸助の章に出てくる柳沢邦夫という男の存在が,それぞれ読み応えがあり,メイントリックと噛み合っているように思えた。驚きという点からだけ見ると,そこまでではないが,完成度は非常に高い作品だと思う。★4で。 -
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ネタバレお気に入りのミステリ作家の一人,中町信の代表作の一つ。もともとは,1980年に「高校野球殺人事件」として発表された作品。2006年に創元推理文庫から「空白の殺意」と改題されて出版されている。
先に,折原一などによる最近の叙述ミステリを読んでいるので,それらを読んだ上での評価になるが,中町信の作品は,叙述トリックがシンプルにかつ丁寧に使われていて非常に好感が持てる。驚愕というほど驚けないが,よくできていると感心できる作品ぞろいだ。
「空白の殺意」では,プロローグで,さらっと読むと死体を発見したシーンとしか思えない場面が描かれている。しかし,実際は,犯人が殺人を犯すより前に,被害者の家を訪れたシーンであり,エピローグまで読んでから,改めてプロローグを読むと,「この死んでいるというつぶやきは,被害者ではなく,被害者の飼い猫が死んでいるというつぶやきだったのか…」と感心できる秀逸なプロローグである。
あとがきで,中町信は,カーの「皇帝の嗅ぎ煙草入れ」のような,心理的なだましのトリックをメインに据えたサスペンスを書きたかったと書いているが,正統派の叙述トリックというか,見事な心理トリックである。
殺人の動機は,犯人が息子の甲子園出場という夢を果たすために,高校の不祥事を隠蔽するために殺人を犯すというもの。この動機は,昭和っぽいなとも思うが,今でも似たようなものかもしれない。
中町信の作品のような,正統派の叙述トリックはとても好み。この作品の評価の★4で。 -
Posted by ブクログ
事件が解決することがこんなに悲しいと感じるなんて。
日記の差し込み方といい、終わり方が読者をそんな気持ちにさせる上手いやり方だなぁと思いました。
まずこの日記は誰の日記なのか。ずっと騙されていました!多分この人だろうと予想して読んでたら、あ、あなたの…って。
誰かと誰かが関係して繋がって、クローズド・サークルじゃないはずなのに、関係性がそれに近く思える事件現場で、事件解決のために捜査していくとこうやってひとつずつ出てくるんだなぁと進み具合が良かったです。
暴く事に悲しさがでてきて、誰も報われないじゃん…しかも結局ラストどうなったの…って読者の想像を引っ張り続ける尾を引く感じが哀愁というか哀しさを際立たせています。
最近この時代のミステリー小説を読むようになって、社会派に近いというか現代とは違う感覚のミステリーに出会えて楽しいですし、読みやすいなと感じました。