杉晴夫のレビュー一覧

  • ストレスとはなんだろう 医学を革新した「ストレス学説」はいかにして誕生したか

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    ストレスの概念を確立し広めたのはハンス・セリエ。その出発点となったのは、1936年のたった半ページのNature論文。被験体はラット、著者はセリエひとり。ただ、論文に「ストレス」の文字は出てこない。どうしてそんな実験をしたのかもわからない。私はそれがずっと疑問だった。
    本書には、その答えが書いてある。当時の内分泌学の研究の流れのなかに位置づけると、いろんなものが見えてくる(人間関係までも)。なるほど、そういうことだったのか。
    著者の専門は筋収縮の生理。「あとがき」によると、定年後、生理学全般の講義をもつことになり、ストレスについても勉強せざるをえなくなったということらしい。
    でも、もうひとつ、

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    2025年05月05日
  • 論文捏造はなぜ起きたのか?

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    論文捏造はなぜ起きたのか?
    著:杉 晴夫
    光文社新書 714

    各国で熾烈な競争が続く、生命科学の最先端で起きた、理研STAP細胞事件
    その原因と、その背景にある文部科学行政の病理を描く

    気になったのは以下

    ■理化学研究所

    タカジアスターゼやアドレナリンの合成者である高瀬譲吉が渋沢栄一らの援助を得て設立した民間研究所が理化学研究所である

    GHQは、理化学研究所を解体を命じ、生産部門は、科研製薬として分離、研究部門は和光に移転して、理化学研究所となった

    STAP細胞事件が発生したときの、理事長は、ノーベル化学賞の野依良治
     背景としては3つ
     ①ノーベル生理学賞を受賞した京都大学のip

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    2024年03月28日
  • 栄養学を拓いた巨人たち 「病原菌なき難病」征服のドラマ

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    「食物に有毒な物質が含まれていれば病気になることは誰でも容易に理解できるが、食物中にごく微量の物質が欠けていても病気になることを人々に納得させる困難さは、現代のわれわれの想像をはるかに超えるものであった。」

    栄養学の成立に至るまでの、関連分野も含めた学者達の苦闘の歴史が綴られている。
    ノーベル賞が慎重になったのは、後に誤りと判明した理論に早々と受賞させてしまったケースが続いた事への反省だった、とか、
    実践の学問として栄養学を化学から分離独立させようという動きが、世界に先駆けて日本で起こっていた、など、
    色々と興味深い話が載っていた。

    中でも自説を盲目的に信奉し、証拠が出ても他説を認めなか

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    2019年10月06日
  • 論文捏造はなぜ起きたのか?

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    学術誌OA化の現状、インパクトファクター至上主義が日本の悪しき慣習だという点、大学の制度的腐敗、などは自分の仕事の行き詰まりと見事にリンクして、妙に納得できた。
    天才の発想と証拠の捏造、ブレイクスルーからノーマルサイエンスという流れ、「学問の進歩は捏造論文によっては阻害されない」という欧米の風土については非常に興味深い。

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    2014年11月02日
  • 栄養学を拓いた巨人たち 「病原菌なき難病」征服のドラマ

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    いつも思うことだが人類の科学結果は素っ気ないこともあるが、その発見の歴史はいろいろな紆余曲折があり興味深い。

    本書は、栄養学(一部は生化学となるが)の歴史を追いながら、今では当たり前になっていることがどのようにして発見・研究されたかわかる中で、意味づけがわかってくると思う。

    内容は、1章が熱関係も含めた自然科学、2章が3大栄養素、3.4章がビタミンの発見史、5章が生化学としてクエン酸回路に至るまでの発見史(著者の専門に近いらしい)、6章が第二次世界大戦後の給食開始などのエピソードである。

    試験のためだけだともったいないので、栄養素や仕組みを覚える前に本書のように歴史を知ったうえで学ぶと、

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    2013年09月17日
  • 栄養学を拓いた巨人たち 「病原菌なき難病」征服のドラマ

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    筆者の主観が多く見られるものの、栄養学や生化学といった(実践的要素を含む)学問がいかに形成されてきたかといった歴史は、非常に興味深いものであった。
    高校の化学の時間にこういった内容に触れたり、第二次世界大戦を栄養の観点から考察するという機会があればよかったと思う。

    あとサムス大佐かっこいいです。

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    2013年06月26日
  • 栄養学を拓いた巨人たち 「病原菌なき難病」征服のドラマ

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    今では当たり前のように受け入れている科学的な事実が発見される過程が、こんなにドラマチックだったのかと驚かされる。熱力学がいかにして栄養学という果実を宿すのか。ビタミン発見の競争。ビタミンB12が発見されるまで、悪性貧血の患者は生のレバーを毎日500g食べなければならなかった。クレブス回路で有名なクレブスは研究室を追い出された。

    栄養学はまだまだ新しい学問で、最初のビタミンが発見されてから来年で100年である。科学的な発見につながるかはともかく、過去を見直すことで、未来がすこしは見えてくるのではなかろうか。

    硬いテーマだが、予想以上に面白い本だった。文句なしにお勧め。

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    2013年06月13日
  • 栄養学を拓いた巨人たち 「病原菌なき難病」征服のドラマ

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    栄養学・生化学についてのお勉強中の息抜きとして。単に「栄養素の○○は○○という機能がある」という覚え方には限界があるので、それぞれが発見された背景をふまえて覚えてみることにした。そうか、解明されるまにでこんな苦労があったのかー。先に発見したのは別の人なのに…科学論文の世界はシビアだなー。な~んて思いながらよんでたら、いつのまにか覚えられた!やはり無理やり頭に入れるだけじゃダメだなぁ、と。たまには変った暗記方法を試してみるのも吉。大学の授業じゃ、さすがに功労者達のバックグラウンドまでは教えてくれないしね。一番印象に残ったのは軍医(栄養学者的な)としての森鴎外の意外な一面です…。

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    2013年05月27日
  • 現代医学に残された七つの謎 : 研究者の挑戦を拒み続ける人体の神秘

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    この本は7つの章から成ってます.
    初めが鍼灸の治療効果の謎,2つ目が地場の人体に及ぼす影響の謎,3つ目が睡眠の謎,4つ目が「病は気から」の謎,5つ目が筋肉の謎,6つ目が記憶のメカニズムの謎,最後が人体の設計図の謎,です.

    鍼灸の話を読みたくて買いましたが,他の章も結構面白かったですね.科学者としての立場から論じているので…何というか…信じやすかった(あまり胡散臭く思わなかった/笑)です.

    杉先生は筋肉の研究をなさっているので,やはり第5章の筋肉の話が一番長かったです(笑).色々な裏話も載ってました.

    基本的な事から説明がされており,専門用語もできるだけ避けていた印象があったので,医学

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    2012年09月10日
  • 神経とシナプスの科学 現代脳研究の源流

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    筆者が冒頭に述べているように、生体電気信号の説明はほんの数行であるか、あっても難解であるかのどちらかであると思う。
    その点、本書では歴史的な背景を含め生体電気信号の基本的な原理を丁寧に説明されている。標準生理学のはじめの章だけ読み飛ばしている自分のような人間には丁度よい。
    ただし、206頁のMGの病態に関する記述は不正確で、MGではなくむしろLEMSではないだろうか。本書の価値には影響はしないが。
    また、余程苦渋を味わったのか、最終章では今日における脳科学研究の手法の問題点や本邦の科学研究費配分の偏りに関し軽く触れられている。若手の支援の重要性で締めているところは教育者としての姿勢を感じさせる

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    2020年11月01日
  • ストレスとはなんだろう 医学を革新した「ストレス学説」はいかにして誕生したか

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    ハンス・セリエが「ストレスを発見」してストレス学説を生み出すまでの物語と、ストレスが神経系と内分泌系に影響を与える構造についての解説。

    なのでストレス対処法みたいな内容ではなく、あくまで「ストレスの発見」までのワクワク感を楽しみつつ、その発見にいたるまでの様々なストーリーを楽しめる「読み物」でした。

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    2020年04月06日
  • 筋肉は本当にすごい すべての動物に共通する驚きのメカニズム

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    筋肉に関する研究の詳細と実際の活動事例を満載した好著だ.著者の論文が恣意的に拒絶される可能性があったことを記載した部分(p91-92)は非常に気になる現象だ.学術雑誌は偏見なしに論文を審査するべきだが、理想論に外れることもあるようだ.1-2章は学術的な話だが、これらを敢えて書き、それを掲載したことは素晴らしいことだと思う.3章以降の具体的な事例は驚くことばかりだが、巧妙な機構をそれぞれの生物が持っているということの背景を考えたい.

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    2019年03月31日
  • 筋肉は本当にすごい すべての動物に共通する驚きのメカニズム

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    筋肉の動作原理について、とても詳しく解説されていて、少し難解ですが、深いレベルまで理解できました。
    でもまだ、未解明の部分も多いとのことですが、筋肉だけでなく、細胞分裂や細胞質流動など「動き」に関する現象に、同じ原理が使われているということですので、いろんな方面から解明されていく可能性もありますね。
    ただ他の研究者たちへの批判的な言い方は少し残念に感じました。

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    2018年11月18日
  • 論文捏造はなぜ起きたのか?

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    2015/2/3 ジュンク堂書店神戸住吉店にて購入。
    2015/3/25〜4/2

    昨年の理研の問題を機に書かれた本。内容的には首肯すること多し、だが、個人的な恨みが背景に透けすぎているような気もして、ちょっと閉口するところも。20年ほど前に始まった極端な予算の傾斜配分が日本の科学を停滞させている、ということには全く同意する。

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    2015年04月02日
  • 論文捏造はなぜ起きたのか?

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    日本の生理学者がSTAP細胞に関する報道等から、日本の研究環境の異常事態を論じている。教授選におけるインパクトファクター重視による弊害、旧科学技術庁主導による研究費配分の偏在の問題、国立大学独立法人化による研究室の改廃、競争的資金など、現在の制度の何が問題なのかということもわかりやすく書かれている。
    もちろん、これによって、莫大なお金を得て、進歩した研究もあるのだろうが、おそらく大半はそうではないであろうと思っていたのを納得させるに十分な話であった。
    だから、大学はダメなんだというのは簡単で、こんな中で何が出来るだろうかと投げかけられたような気もして、身も引き締まる思いになりました。
    でも、巨

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    2014年12月30日
  • 論文捏造はなぜ起きたのか?

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    STAP細胞の論文の捏造の原因を、小保方さん個人ではなく、組織の問題として捉え、解釈し、説明した本です。

    まだまだ日本は、科学の面でも民主主義の面でも遅れている、ということだと思います。

    それにしても、日本の科学リテラシーの低さはひどい…。
    それらを改善するためにも、できるところから手を付けていくしかないですね。

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    2014年12月16日
  • 論文捏造はなぜ起きたのか?

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    STAP細胞という妄想が引き起こしたのは、不毛な争いばかりじゃない。日本の科学界がいかにお粗末で、パクリだらけの論文を提出する学者たちと、それをチェックできない学界の無力・無知が明らかになったことは、不幸中の幸いだろう。

    そんな腐敗した学界は今にはじまったことではなく、内情はもっともっと腐りきっていると、現役研究者が説いた怒りの本書。なかなかの過激さで、小保方氏はもちろん、理化学研究所所長の野依良治の脱税問題や野口英世の不確かな功績までもバッサリ切ってしまう。研究者らしからぬ思い切りの良さだ。そのあまりの暴れっぷりで、説明不足の点がやや気にかかるが、日本の学界の主義のなさに比べれば、許容範囲

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    2014年12月30日
  • 栄養学を拓いた巨人たち 「病原菌なき難病」征服のドラマ

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    体内に食物が摂取された後,それがどのような「栄養」となるのか.生体内での化学反応は複雑であり,その流れを解明することは情報の無い時代には至難の業であった.そのような中,活路を見出してきた多くの研究者の重要な研究内容が紹介されている.

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    2013年07月08日
  • 栄養学を拓いた巨人たち 「病原菌なき難病」征服のドラマ

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    ・熱力学のお話からスタートのはちょっと意外だった。生物は熱を運動に変換する機関と言えるのだから、熱力学は大事なんだね。
    ・ビタミン、ミネラルを摂取すべき量は、人によって異なる。1対100以上の差がある。
    ・ミトコンドリアの中で起きているATP生成のプロセスを明らかにした研究は分子の動きまでとらえているという点で、すばらしいと思った。。
    ・筆者は、現在の栄養学は動物実験を中心に行われているため人間不在と批判したり、ノックアウトマウスを投機的な研究と指摘しているところは、

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    2013年05月21日
  • 現代医学に残された七つの謎 : 研究者の挑戦を拒み続ける人体の神秘

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    プラシーボ効果という言葉を初めて知った。捏ねた小麦粉でも信じて飲めば病気は治ると聞いたし、病は気からとも言う。禁煙薬チャンピックスの説明書にも、二重盲検試験でのプラシーボ効果30%以上と書いてあった。医薬メーカーの開発で薬効テストの治療率が40%以下では新薬開発は却下されるらしい。
    DNAですべてが決まるわけではない。DNAはアミノ酸配列を決めるだけ。そもそもわれわれの体はたんぱく質だけでできているのではない。なるほど。ヒトのDNA塩基数は約30億。アメーバは約7000億、エンドウ・トウモロコシは50億。不思議だ。

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    2011年10月29日