あらすじ
筋肉の活動は、心臓血管系や消化吸収系をはたらかせるために、また不適切な環境から逃れるために、必要不可欠で、筋肉なしには一瞬たりとも生存を続けることができません。そのしくみと驚きのパワーの秘密を解説します。人間の筋肉の構造や性能はもちろん、鳥類が飛翔するときの筋肉、昆虫の飛翔と発音に使われる筋肉、水棲動物の遊泳運動ではたらく筋肉など、動物の動きに関する筋肉について、詳しく解説します。
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Posted by ブクログ
筋肉は本当にすごいを読みながら、筋肉研究そのものだけでなく、科学の進み方や人間社会との共通点についても色々考えさせられた。序盤では筋収縮研究の歴史が中心で、「筋肉=動かすもの」というより、研究者にとっては「縮む仕組み」を解明する対象なのだと感じた。単純そうに見える筋肉も、バネとは異なる特殊な動きをしており、人間の身体は本当に複雑な構造でできている。また、顕微鏡など周辺技術の進歩が研究を押し上げることから、科学は単独ではなく他分野の発展に支えられて進むことも印象的だった。
研究史では、論文掲載や研究費獲得が必ずしも純粋な実力だけで決まらず、人間関係や派閥、コネの影響を受けるという話も出てきた。理想的な真理探究だけではなく、結局は人間の営みなのだと思わされた。一方で、科学には「新しい扉を開く天才」と、その後を追って積み上げる「ノーマルサイエンス」の両方が必要であるという視点には納得感があった。
トレーニングや運動の章では、身体機能を最大限高めるには長い時間が必要なのに、やめると短期間で衰えるという厳しさが印象的だった。ただ、人間は本来「継続」に適応してきた生き物であり、継続できないのは能力不足というより、現代社会との相性や環境の問題も大きいのではと感じた。精神的ストレスや運動不足が生活習慣病や骨粗鬆症につながる話からも、結局は適度な運動習慣が重要なのだと再認識した。古代兵士の骨密度の差の話も衝撃的で、生活習慣が身体を根本から変えることがよく分かった。
後半では鳥や魚、昆虫などの運動が紹介され、飛翔や遊泳の動きが正弦波のような共通パターンを持つことに驚いた。環境や身体サイズに応じて、それぞれが最適化されているのだろうと思う。また、渡り鳥が脳を半分ずつ眠らせながら飛ぶ話や、カメレオンの舌の高速運動など、人間には到底真似できない生物の能力も非常に面白かった。カエルの「必要な情報だけを脳に送る」という話は、現代の情報社会にも通じるものがあり、不要な情報を遮断する重要性を感じる一方、遮断しすぎると視野が狭くなる難しさも考えさせられた。
終盤の電子顕微鏡技術者の話も印象的だった。最新機器があっても扱える人がいなければ研究は進まない。にもかかわらず、そうした技能を持つ人材は軽視されがちであり、これは科学の世界だけでなく現代社会全体にも共通する問題に思えた。結局、社会は派手な成果や肩書きを重視し、支える側の技能や経験は後回しにされる。しかし、本当に重要なのはそうした「縁の下の力持ち」なのだろうと感じた。
Posted by ブクログ
筋肉に関する研究の詳細と実際の活動事例を満載した好著だ.著者の論文が恣意的に拒絶される可能性があったことを記載した部分(p91-92)は非常に気になる現象だ.学術雑誌は偏見なしに論文を審査するべきだが、理想論に外れることもあるようだ.1-2章は学術的な話だが、これらを敢えて書き、それを掲載したことは素晴らしいことだと思う.3章以降の具体的な事例は驚くことばかりだが、巧妙な機構をそれぞれの生物が持っているということの背景を考えたい.
Posted by ブクログ
筋肉の動作原理について、とても詳しく解説されていて、少し難解ですが、深いレベルまで理解できました。
でもまだ、未解明の部分も多いとのことですが、筋肉だけでなく、細胞分裂や細胞質流動など「動き」に関する現象に、同じ原理が使われているということですので、いろんな方面から解明されていく可能性もありますね。
ただ他の研究者たちへの批判的な言い方は少し残念に感じました。