広瀬正のレビュー一覧
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ネタバレ戦前、戦後の日本を舞台としたタイムトラベル小説で、主人公浜田俊夫は1945年の空襲の中、隣人の先生からあることを頼まれる。それを受けて、1963年に彼は先生に指定されたある場所に向かった。そこで彼は先生が開発したタイムマシンを発見し、それで戦前の日本にタイムスリップした。本作は、シンプルに時空を超えて、あることを求めていくという話だが、戦前における日本の街の風景描写を細かく書いている。同じ昭和とはいえ、日本は敗戦以降、社会的価値観や雰囲気が一変した。その一方で長年習慣として根付いている要素もあることが確認される。このように、本作は戦前と戦後の日本を知る著者ならではの、日本独自のSF小説が確立し
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タイムマシンについて公演するムテン博士。いろいろな事例を上げたところで、ある男を演題に呼ぶ。男は昨日ムテン氏を殺そうとしたらしいのだが、その理由がその日のうちにムテン氏が事故などで死ぬという記録に従うべきだという未来人だった…。
傑作『マイナス・ゼロ』の広瀬正の書く、タイムマシン物を集めた短編集。タイムマシンの構造から、タイムパラドックス、親殺しのパラドックスなどありとあらゆるタイムマシン作品を集めたもの。
表紙が和田誠だったり、タイムマシンと関係のないショートショートが載っていたりと、星新一を彷彿とさせる作品が多い。数作に置いては、2つのシーンを同時に描くという、本を上下2段に分けるとい -
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女優の過去を振り返る、昭和のパラレルifストーリー
歌手デビューから37年のベテランシャンソン歌手 橘百合子
雑誌のインタビューをきっかけに、契機となった出来事を思い出す
田舎から上京してきてからの回想と、「もしあの時違う選択をしていたら?」という「もう一つの過去」、そして「現代」が入り乱れて描かれるパラレルストーリー
「マイナス・ゼロ」と同じく、昭和初期の風俗が細部にわたって描写されている
今回はテレビの開発に関する情報が細かいところまで言及されている
まぁ、興味がなければそこの描写は読み飛ばしても良いのではなかろうか
そして、同じ時代の物語という事で、「マイナス・ゼロ」の登場人物達 -
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戦中、戦後、戦前に渡るタイムトラベルSF
初出が1965年、単行本が1970年に発売されたという物語
60年前に書かれたとは思えないくらいにタイムトラベルもののストーリー構成が完成されている
作中でも言及されている通り、1895年に出版されたH・G・ウェルズの小説「タイム・マシン」がタイムマシンものの原点として
未来や過去に行って歴史を改変するという構造ではなく、過去の改変自体が歴史に含まれているパターンは当時としては珍しかったでしょうね
1957年に出版されたロバート・A・ハインラインの「夏への扉」の日本版の物語という印象でしょうか
序盤のあらすじ
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昭和 -
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ネタバレ連載当時は1965年と、半世紀以上前の作品ながら、今も色褪せないプロットに感服する。
そしてその高い構成力のみならず、戦前・戦後の昭和の風俗を生き生きと描き出している文章も味わい深い。
藤子・F・不二雄氏の作品群に通じる着想も感じられる。
主人公本人にとっては、人生において相当のウェイトを占めたであろう、兵隊時代の十数年が作中で軽やかにすっ飛ばされているところもまた、主題をぼかさないための大胆な手法として奏功。
例えば伊沢先生の出自なんかが置き去りにされて気になったり、完全に閉じられた環の中にいる美子=啓子が発生した端緒は一体…? など考え出すと混乱が深まったりはするが、この時代特有の空気感 -
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知人に勧められて読んだ、日本版『夏への扉』ともいえる壮大なタイムトラベルもの。
1970年の作品ながら文章に古臭さはなく、文庫で500ページの長さだが読みやすさと物語の魅力ですらすらと読むことができる。
タイムトラベルものでは時系列の整理が作家の腕の見せ所の1つであると思うが、本作は複雑な時間移動をしているのにもかかわらずきれいに説明されていてわかりやすい。
ただ、そのせいもあってSFに慣れ親しんだ人にとっては先が読みやすくなってしまっているかもしれない。
「この人がこの後あれするんだな」とか、「この人とあの人が同一人物で・・・」とか。
それと、最後の最後で閉じられた円環の話が出てきて少し腑