関麻衣子のレビュー一覧
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理系の大学院に通うウォレスは同性愛者で黒人。周りは白人が多く、その中にいることの窮屈さ、生きづらさが描かれていく。何気ない会話の中で感じる差別や、悪意。そんな時に出会った白人男性のミラー。異性愛者のミラーと関係を始めていくと、少しずつ良くも悪くも変化が起きる。わかってほしい、わかるわけないということや、自分を語ることを諦めるようなこと。昔から受けてきた差別の影響の大きさがいつまでも残っている。無意識に向けられる言葉や視線の怖さ、心理的な負担。その重みが読み手にものしかかってくるような感じがあった。今のたくさんの問題のリアルがここにあるように思う。
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルの翻訳が秀逸、原書のタイトルではアメリカ人しか分かりにくいだろうが、この翻訳で意味を理解したら、この本の趣旨がグンと伝わってくる。
アメリカ合衆国における黒人差別の根深さ、そして貧困層にはびこる薬害とアルコール依存症。チャンスをつかみ取ればのし上がれる国…とは言え、底の深淵は果てしなく、のし上がるパワーとラックは一体どれほど必要なのか。
日本だって、よその国のことは言えない。貧富の差は果てしなく広がりだし、離婚率はあがるくせに、養育費の不払いは増加し、女性の雇用は条件が悪い。生活苦の現実から目を背けるには酒が最適のツールとなり、酔った頭には自己否定とヘイトスピーチが心地よいつまみと -
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ネタバレアルコール依存症の母とアルバイトで食いつなぐ貧しい生活を送る青年ボビー。
息子ボビーに対する愛情は嘘偽りないものだが、どうしてもアルコールを断つことができない母イザベル。
父は黒人だが、ボビーには肌の色に明白な特徴はなく、祖父の思想の影響もあり、白人としての人生を歩んできた。
物語は学生時代に唯一といっていい友人アーロンが麻薬取引の罪で服役していた刑務所から出所し、ボビーと再会するところから始まる。
以前は細面であんなに黒人への憧れを抱いていたアーロンが筋骨隆々となり、白人至上主義と成り果て昔の面影は見る影もない。
2人で立ち寄ったホットドックショップで早速暴行事件を起こし、相手を瀕死状態 -
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トランプ政権の終焉とともに世界の表面にシミのように浮き出てきた<人種差別>。白人警察官による黒人青年の殴殺とそれに抗議するデモへの暴力による弾圧、それを扇動する大統領。世界は狂っている。でもそれは今急に始まったことではなく、アメリカが、世界が抱えてきて隠してきたものが、表面に浮き出して可視化してきただけのことだ。
人種間ヘイトはどの国でも存在する。これは人間が持つ特性なのだ、と言うしかないのかもしれない。でもだからこそ人間は一方でヘイトへの憎悪を覚える。やさしさと愛情に包まれて人種間の壁を越えることができる。だがゼロにはできない。
本書はそうした世界でのヘイトの真実を炙り出す作品であ -
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「コロナによる自粛」のために「対策」として買った2冊の単行本は、読むタイミングを逃し。
そのままズルズルと文庫本を読み漁る日々に戻る。
で、読んでみるとこれが「人種差別」を扱うタイムリーな話だった。
(2020年07月)
麻薬取引の容疑で少年が逮捕される。少年に不利な証拠が多く、まともな証人もいない。少年は知的障害を持ち、厳重な売人とのコネや、計画的な犯行が不可能なのだが…
弁護士のダニエルは、調査員ウィルの手を借りながら奮闘する。
司法制度や、人種差別についてはカバーの見た目からの印象よりだいぶ重たいテーマを真面目に扱っています。
根の深い問題、巨大な敵に主人公がどのように立ち向かうのか -
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なんて素敵な小説なんだ? これは読み終わったときの感想でもあり、読んでいる途中の感覚でもある。そう、ミステリーのプロットのみならず、読んでいる時間が充実している小説なのだ。
軽妙な一人称文体による、ぱっとしない女性刑事弁護士の日常を活写しながら、重厚で手強いテーマへのチャレンジング精神豊かな、骨のある小説なのである。弁護士ヒロインの名前を邦題タイトルにしているので地味な印象を受けるが、映画されても素敵だろうなと思うくらい、ヒロイン以外にも忘れ難く味のある個性派キャラクターが脇を固める。
騒がしいダニエルの生活基盤に入り込んで来るのは、捨て子で黒人で知的障害を抱える、まさに三重苦の少年 -
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ネタバレ主人公がかつて家族を惨殺されそれがトラウマとなってその日暮らしの探偵と過ごしている・・・という導入部の設定はありがち。しかし、他の小説と大きく違うのはそのキャラ。
なんとアスペルガー症候群(サヴァン)の一種であり、全ての事象を記憶できるという設定で、それが後天的であるがゆえに日常生活も送れる半面、他人に対する共感力や同情心がないという設定が面白い。
そんななかその能力を見込まれてかつての上司から高校で起きた銃の発砲事件捜査に参加することになる。ここらは唐突な感はあるが、想像通りそれが未解決の家族殺人事件に絡んできて面白くなってくる。
主人公が一つ謎を解決するごとに新しい謎、新しい事件が起 -
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『大谷伝説のプロローグ』
大谷翔平選手のメジャー初年度の活躍と現地の熱狂を振り返る一冊。ロサンゼルス・エンゼルスへの入団経緯と、メジャーデビューした2018年シーズンの成績が時系列に詳細にまとめられている。
著者は現地ジャーナリストであり、また地元アナハイムで生まれ育った大のエンゼルスファンであるジェイ・パリス氏。まるでエンゼルス球団内の関係者のような立場で大谷選手に密着し、監督・コーチ・チームメイト・対戦相手たちに取材した様子が伺える。
普段日本のメディアを通じて大谷選手の活躍を目にしているため、大谷選手のニュースは日本人補正がかかった加熱報道である懸念があったが、本書を読んで日本人が -
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ネタバレ面白かった。
黒人でゲイであることに興味が引かれた。文学的。
海外のBLを読んだことがあるが、それよりも文学的だし、エンタメとしては面白くは無いが、じっくり人間が描かれていて面白かった。
メインの時間軸は週末の出来事。映画の「WEEK END」でも見た。
過去の出来事がえぐすぎる。トラウマとしてはヤバい。だけど、その傷を傷として見ずにやりすごすことでウォレスは生き延びてきたので、いまさら簡単にはやめられない。
たびたび、相手から自己中だと言われるの面白いな。他人への観察はしてるのに、結局は自分を優先してるのがうかがえる。
そうやって身を守ってきたから仕方ない。これ以上傷つきたくないもんな。
ミ -
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Posted by ブクログ
リーガルサスペンスというより、キャラクタードラマとしてシンプルに楽しむ。
作者は弁護士でも結構活躍した人と、作者紹介にあった。
同じような作家ではフェルデナンド・フォン・シーラッハの『犯罪』を読んだことがある。
そこでは同じ主人公目線でも「対象者(登場人物)を客観的に観察」していたのに対して、こちらは法廷弁護士自身の「お仕事」ドラマといったところ。
弁護士は「依頼者の味方、それも報酬分」は現実で、一部の企業弁護士等を除きけっこうな数の案件を同時進行していかないと、なかなか思った収入を得ることはできず、そんなに楽な仕事ではない。その描写は十分に伝わる。
それでも、テーマで取り上げている「少