少々変わったタイトル、原題は"Three-Fifth"(五分の三)である。作中に特に解説はないが、訳者あとがきで背景に触れられている。
1789年、アメリカ合衆国憲法、第1章第2条第3項に以下の記載がある。
各州の人口(=下院議員の選出と直接税の課税基準)は、(中略)自由人以外のすべての者の数の五分の三を加えたものとする(Representatives and direct Taxes shall be (中略)determined by adding to the whole Number of free Persons, (中略)three fifths of all other Persons.)
この「自由人」というのは白人、「自由人以外の者」は黒人を指す。直接「黒人」とは言わないが、暗に、黒人の価値は白人の五分の三であると言っているようなものである。いわゆる「五分の三条項」。本作のタイトルはそれを暗示する。
もちろん、すでに廃止されている条項ではあるが、根強い人種差別はなお解決からは遠い。