白石一郎のレビュー一覧
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昔の新潮文庫の1ページにみっちりと印刷された文字は久しぶりだった。けっこうしんどくていつ終わるのかと茫洋とした気分になったりもしたが半分を過ぎた頃ページを繰るごとに海の上を満帆の船が駆けるように加速して読み進められるようになっていた。読書もトレーニングだと思う。地図を見ながら読むと理解が進むのでおすすめ。「村上海賊の娘」の巻頭に付いている瀬戸内や大坂あたりの地図をみたり対馬や壱岐のあたりはグーグルマップを見たりしながら読んだ。笛太郎の海賊になりきれぬ人道的でロマンチストなところは現代人におおいに受け入れられる素養であり共感しやすい。美丈夫で戦いに強く美貌の麗花に惚れられてもどこ吹く風、一途に情
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異人館
昨年12月に長崎に旅行した際、グラバー邸に感銘を受け、トーマス・グラバーがどのような生涯を送って来たか興味を持ったため、読んだ。齢21にして(今の自分と同い年)遠くイギリスから中国、そして日本へと渡り、商人として茶葉の販売や、最終的には薩長への武器輸出を行ったグラバーは、読めば読むほどそのすごさが身に染みてくる。商人は時代の潮目を読んで、事業を拡大するか否かを考えると言われるが、この激動の時代に、幕府か薩長か、そのいずれかを選択し、武器等を輸出したグラバーが、明治維新の陰の立役者と言われるのは理解できる。印象に残っているのは、グラバーの生きた機械の話、近代化を推進したいと願う当時の若 -
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四方を海に囲まれながら海に無関心の日本人。歴史も陸の視点から描かれる事が多い。しかし日本には海に生き、死んでいった誇るべき男たちがいた。古くは藤原純友から、日中混血児の鄭成功まで幅広く語る。最後は幕府の鎖国政策の悪しき影響について述べることで締めくくる。
歴史にとって最も大切なのは"if"について真剣に考える事。この本を読むと、「もし日本が鎖国をしていなければ」という事を考えざるをえない、家康という稀代の国際人が政治を司っていたころ、日本人はたくさん世界に飛び出していた。
江戸時代初期の進取の気質を持ったまま世界と交際してれば、不必要なまでの外国コンプレックスを持つこ -
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再読ですが、記録が無いという事は、前回読んだのは10年以上前という事になります。
直木賞をとった『海狼伝』の続編。
英国にはホーンブロワー・シリーズを始めとする帆船物の系譜がありますが、同じ島国の日本には海洋文学と言える作品は少ない。全世界を股にかけた英国と同列にとまでは言えなくとも、室町末期には倭寇で知られるように、中国から南アジアにかけて広く冒険をしていたのですが。
そんな中で、白石一郎さんは珍しく日本の海洋物を多く描いた作家さん。この作品は1600年ごろの日本からシャム(タイ)を舞台に、海商・海賊入り乱れての活劇です。
やや安易な筋運びも有るのですが、スケールの大きさ、登場人物のキャラク