あらすじ
坂本竜馬という男、あっぱれな商売人だ! 開国を目指す若き志士たちを支えたトマス・グラバー、真実の一代記。――訪日してわずか2年で独立したグラバーは、武器商人として倒幕派が必要とする艦船、銃、弾薬を供給し、長崎随一の財を成すまでになった。茶屋の娘・お園との愛、維新の志士らとの交友を通し、幕末動乱の日本がまざまざと浮き彫りになる。「倒幕の黒幕」となった男、野望の生涯を描ききった歴史小説の白眉。<上下巻>
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Posted by ブクログ
異人館
昨年12月に長崎に旅行した際、グラバー邸に感銘を受け、トーマス・グラバーがどのような生涯を送って来たか興味を持ったため、読んだ。齢21にして(今の自分と同い年)遠くイギリスから中国、そして日本へと渡り、商人として茶葉の販売や、最終的には薩長への武器輸出を行ったグラバーは、読めば読むほどそのすごさが身に染みてくる。商人は時代の潮目を読んで、事業を拡大するか否かを考えると言われるが、この激動の時代に、幕府か薩長か、そのいずれかを選択し、武器等を輸出したグラバーが、明治維新の陰の立役者と言われるのは理解できる。印象に残っているのは、グラバーの生きた機械の話、近代化を推進したいと願う当時の若者たち(五代友厚、岩崎弥太郎、伊藤博文等々豪華なマンバー)が、機械を輸入してくれれば自分たちはコピーできると言い張りグラバーに発注していたのに対して、グラバーは逆に若者を積極的に海外に留学させ、西洋文明の強大さに触れてこいと積極的に押し出していく。そうして海外に出ていった元攘夷派の若者たちは、開明派へと転じ、いわずもがな明治維新の原動力となる。まさしく、生きた機械となって日本帰り、世の中を回していったのであった。最後のシーンではグラバーは政治に没入しすぎであると周囲に言われ、なかば押し切られる形で故郷に帰らされる。奇しくもグラバーが洋上もしくは故郷の家にいるときに、明治維新は遂行され、日本は生まれ変わるのである。自分が長崎のグラバー邸の二回テラスから、長崎港を眺めた時の、あのなんともいえない浪漫を、言語化出来た上に、新たな知見を得られたのは大きな収穫であった。