早川書房編集部のレビュー一覧
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ネタバレ伊藤計劃を追悼する8篇。どれも短編としては濃密な設定で、長編小説としても読んでみたいと思わせるものばかりだった。以下は特に面白かったものを示す。
藤井大洋「公正的戦闘規範」
伊藤計劃、「虐殺器官」を彷彿とさせるような重厚な戦闘シーンが魅力。偵判打というゲームが、実際の戦闘ドローンの操縦になっていた、という設定に恐怖した。
吉上亮「未明の晩餐」
孤高のシェフと孤児二人、死刑囚の最後の晩餐専門シェフというなんともいいキャラ設定。感動。
伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」
切り裂きジャックの独白。ナイチンゲールがフランケンシュタイン博士に改造された屍者で、なんやらこうやら歴史が交錯するスペクタクル。一番面白かった。
長谷敏司「怠惰の大罪」
キューバの麻薬カルテルでのしあがるカルロス・エステベスの半生。クライム・ノベルとしての魅力が沢山でワクワクさせられた。
非常に楽しめた。 -
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文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。
以下、個別作品の感想。
◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化されている現代において、生身の人間がどのように戦闘行為に携わるか、戦争の正義を提案しているとまでは言わないが、現代のノールールな戦争より少しはましな状態を描いていると思う。
◎仮想の在処(伏見 完)
「ハーモニー」を彷彿とさせる物語。人間の意識とは、人格とは、存在意義とはなどを考えさせられる。伊藤計劃の作風に近い小説であり、彼の作品を読んでいるかのような感覚になった。
◎南十字星(柴田 勝家)
伊藤計劃っぽさはあまりないけれど、作品自体は面白い。少女との出合い、少女の死、仲間の死、自我の死、いろいろな死が平気でまわりに存在する中で生きている自分。意識がある自分、他人と同化した自分、自分ではない自分、意識と生命の存在を意識したところはやはり伊藤計劃っぽいのかな。
◎未明の晩餐(吉上 亮)
死刑囚に最後の食事を作る料理人の話。読んでいてどんどん引き込まれる。素直に面白い。哀しくもありハートウォーミングでもあり、見事な作品だと思う。
◎にんげんのくに Le Milieu Humain(仁木 稔)
ジャングルで生活する少数民族の話。部族に所属する“人間”と部族出身ではない異人がどのように生活するのかを描いている。普通に読んだだけでは、現実にある少数民族の普通の話のようにも読める。SFとして読むのは無理があると感じたのだが、他の人はどのような感想を持ったのだろうか。
◎ノット・ワンダフル・ワールズ(王城 夕紀)
生命の進化とはを問う物語。その定義を作品に語らせている。おそらく学術的な進化とは異なる解釈がなされていて、「へぇ~なるほど」と思わせる。「ハーモニー」を思い起こさせる作品である。
◎フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪(伴名 練)
実に面白い。「屍者の帝国」を思い出す。三原則についてはどこかで聞いたようなものもあるが、最初に出てきた原則を読んで瞠目した。確かに意識があるとかないとかはどのように判別するのだろうかと。それを疑問に思ってしまうと、自分自身が生きているのかどうかさえ疑ってしまう。この恐怖に震えてしまった。
◎怠惰の大罪(長谷 敏司)
人口知能(AI)が出てくるものの、それ以外でSFを感じさせる要素はない。ストーリーはキューバを舞台にした麻薬がらみの裏世界を描いたもの。ゴッドファーザーを思い出させる。長編作品の第一章が掲載されている。SF要素を楽しめるのは、第二章以降なのかもしれない。 -
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ネタバレ先入観が生まれるのが嫌なので、本書は読まないようにしてきました。
2010年2月20日付けの中日新聞の日曜版が、
アガサクリスティの特集だったので、クリスティの歴史を知ってしまいました。
アガサクリスティの文庫を約半分読んだので、クリスティ本を読んでみようと思いました。
知ってしまった以上、読まずにおくのもなんなので、ざっと目を通しました。
アガサクリスティものは、クリスティ文庫のものは、どれも星5つだと思います。
英語の原作も、翻訳も、気に入らないものはありません。
内容、展開の仕方で好き嫌いがありますが、好きか嫌いかと、読む価値があるか、買って損したかとの評価は、自分では連動していません。
自分の星のつけ方は次の通りです。
星1つ:絶対買わない本、読まない本。
星2つ:中身を見ずに、間違えて買ってしまった本。知人が持っていた本だが、捨てることを推奨したい本。
星3つ:自分で書ける程度の本。自分なら、もっとうまく書けると思える本。
星4つ:たまたま、法律、風俗と会わないところがある本だが、自分よりはうまくかけていると思う本。
星5つ:自分では書けそうにない本。この本だけから得られない教訓を汲み取ることができたもの。
星3つ、星4つは、ひょっとしたら、読み込みが浅いだけかもしれません。
星5つつけて、内容が不満を書いているように見える書評は、自分がその作品を読み込めていない、自分の能力に対する不満を書いているものです。
人によって本の価値はさまざまなので、書評を読まれる方は、自分の参考になる書評を読むためには、なるべく多くの異なる意見の付いている書評サイトを見るのがよいでしょう。
本の背表紙や、出版社の雑誌に掲載されている一面的な書評では読者による書評の価値がないのではないでしょうか。
自分に合う書評、自分とは異なる意見の書評があってこそ、読者の書評の価値があると思っています。 -
Posted by ブクログ
伊藤計劃氏が亡くなってから16年
この“トリビュート”が出版されてから10年
その間、
大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。
多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。
最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響いた。
まるでドン・ウインズロウ『犬の力』を読んでるようで、SF集であることを忘れた。AIの及ぼす「天国と地獄の境界線」が、ノワールにまで入り込むとは……。
面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ目次
・公正的戦闘規範 藤井太洋
・仮想(おもかげ)の在処 伏見完
・南十字星 柴田勝家
・未明の晩餐 吉上亮
・にんげんのくに Le Milieu Humain 仁木稔
・ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀
・フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪 伴名練
・怠惰の大罪 長谷敏司
どの作品も伊藤計劃の気配を漂わせているけれど、特に濃厚なのは王城夕紀の作品(ハーモニーの世界観)と、伴名練の作品(屍者の帝国の世界観)。
この2作品は好きだなあ。
特に伴名練作品のナイチンゲールは夢に出てきそうなくらい恐ろしい。
単純な幸福はない。
幸福に正解はない。
けれどどの作品も屈託がありすぎて、胸が苦しくなる。
本の分厚さもあって、心身ともに体力を必要とする読書でした。 -
Posted by ブクログ
SFって踏み込んでしまうとエラいことになりそうで、星新一→筒井康隆→清水義範、小林恭二以外には手を出さないようにしてました、伊藤計劃まで。まぁ伊藤計劃も「ハーモニー」「虐殺器官」「屍者の帝国」しか読んでないけど。
というSFあまり読まない人間の感想。一番伊藤計劃っぽいなと思って気に入ったのが藤井太洋、次が柴田勝家かな。機械による戦争というか殺戮への反発、中国辺境のムスリムテロリストとか伊藤計劃好きそう、と思いました。どうもファンタジー系は苦手みたいで伏見完と仁木稔はちょっと苦手。王城夕紀と長谷敏司は単独でおもしろいけど、前2人も含め伊藤計劃あまり関係ない印象。
伴名練は屍者の帝国のスピンアウトなので一番伊藤計劃直結の内容やけど、個人的な好みでもう少し手前で描写止めてほしかったかな。伊藤計劃ならそこまで書かなかったんちゃうか、という。いや、トリビュートであって、みんなが伊藤計劃になろうってことやないんやけども。