ジェイムズ・エルロイのレビュー一覧
-
-
-
-
Posted by ブクログ
ううむ、凄い小説。こんな凄い小説を今まで放置して読まずにいた自分がとっても愚かに思えるくらいの、凄い小説。単細胞さんからぜひ読んでみて下さいと言われて、なんだか楽しみに取っておいた気分もあるんだけど、その期待全然裏切られませんでした。本当に圧倒されました。ヴァクスに圧倒されて以来、久々に圧倒されました。
ただの警察捜査小説っていうのではないな、と感じたのは、まず事件に至るプロローグの長さ、ストーリー展開の奔放なまでの自由さ……。ロス暗黒史4部作の1作目とあって、史実に基づいた事件に現存した有名人たちの顔や名前が出てくるというのも驚いたけれど、多くの人間たちの情念や破滅をこれほどまでに追 -
-
Posted by ブクログ
(上下巻を併せての評である)
1941年12月6日。いうまでもなく日米開戦前夜のアメリカ、ロサンジェルス。日系二世の市警鑑識官アシダは、自作の写真撮影装置を取り付けたばかりのドラッグストアで強盗事件に遭遇する。現場で捜査能力の高さを見込まれたアシダはその後に起きた日本人家族四人のハラキリ事件現場にも立ち会い、捜査に深く関わっていくようになる。その直後日本海軍による真珠湾奇襲攻撃が起き、アシダの立場は極端に悪くなる。米人からは卑怯なジャップ、日系人からは親米の裏切り者という烙印を押されてしまったのだ。市警からジャップを放り出せと吼える市長。アシダは次期本部長の座を狙うパーカー警部に取り入ることで -
Posted by ブクログ
《ブラック・ダリア》とは、ロサンゼルスで惨殺されたひとりの女に献じられた呼び名である。
猟奇的な殺人事件とその核心に迫ろうとする警官が主人公という点で、これはれっきとした犯罪小説であるが、と同時にこのフィクションの肝はもっと別のところに、《ブラック・ダリア》という女の存在によってはからずも自身が抱える心の闇に向かい合わざるをえなくなった人々の孤独な葛藤とその悲劇的結末を容赦なく描き出すところにあるようだ。ひとつの事件をきっかけに、平和な日常がアリ地獄のようにグズグズと崩落してゆくことの恐ろしさ。息をのむようなスピード感とは無縁。物語は、からまった糸を忍耐強くほどいてゆくようにジリジリした歩み -
-
-
-