オルハン パムクのレビュー一覧
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ネタバレ文学作品で、作風になれるまでに時間がかかり、言葉の選び方や描写の仕方、比喩なども理解は2割もできていないくらいだが、翻訳自体は読みやすかったのでパムクの世界観に触れることができた。
タイトル通り、「わたしの名は〇〇」「わたしは〇〇」という題で章が分けられていて、ミステリーではあるものの推理するのは難しかった。
それよりも、イスラム美術のなかの細密画や、オスマン帝国期の職人たちの神に対する考え方、西洋美術の遠近法の流入などの芸術と宗教の関係性であったり、主人公?の男女の恋愛模様の描写が印象に残った。
殺したのは誰なのか、下巻ではもう少し話がすすんでくるのか楽しみ。
ルネサンスについての前 -
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トルコ・イスタンブルに暮らす少年ジェムの父は、ある日、失踪する。
ハンサムな父は小さな薬局を経営していた。父はかつて、政治活動をしていて拘束されたこともあり、今回もそれ絡みかと思われた。しかし、母の怒りはすさまじく、失踪にはどうやら政治以外の理由があるようだった。
家計は火の車となり、ジェムは大学進学の資金を稼ぐため、危険な井戸掘りの仕事に志願する。
親方は厳しくも温かく、ジェムはその姿に、どことなく父の姿を重ねるようになる。父と似ているわけではなかったが、「父性」の象徴であるように思われたのだ。
井戸を掘る現場は、イスタンブルから遠く離れたオンギョレンという田舎の地だった。
仕事が終わっ -
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ファム・ファタールものって、肝心のファム・ファタールに納得がいかないことが多いので、あんまり好きなジャンルではないのだけど(女は男性作家の女性描写には厳しいのである!!)、この表紙の女性の写真が素敵で「赤い髪の女」ってタイトルにピッタリな感じなので、手が伸びた。
あと、ついでに、最近エルドアンのおかげで何かとお騒がせな印象の現代トルコについても、訪れたことがないせいか全然イメージがわかないので、何かとっかかりになるといいなぁ、という思いもあって読んでみた。ニュースになるのはどうしてもネガティブなことが多いしね。(小説は逆にその場所への愛を感じることの方が圧倒的に多い。たとえネガティブな事件が -
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ネタバレオルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。
題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。
オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義といったそれぞれの政治信条が絡み合い、主要な登場人物達の思惑が交錯します。
久しぶりに帰郷した主人公のKaは、ある事件についての記事を書く目的で地方都市カルス(トルコとアルメニアの国境付近)に来ますが、そこでかつて恋心を抱いていたイペキ、イスラム主義運動家「群青」など、さまざまな政治背景を背負った人 -
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ネタバレオルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。
題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。
オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義といったそれぞれの政治信条が絡み合い、主要な登場人物達の思惑が交錯します。
久しぶりに帰郷した主人公のKaは、ある事件についての記事を書く目的で地方都市カルス(トルコとアルメニアの国境付近)に来ますが、そこでかつて恋心を抱いていたイペキ、イスラム主義運動家「群青」など、さまざまな政治背景を背負った人 -
Posted by ブクログ
人だけでなく、屍、犬、絵に描かれた木、金貨、「死」そのもの、さらには「赤」と、次々に入れ替わる話者の独白により物語が進んでいく。
その形式はまるで、別々の絵師によって描かれた細密画を組み合わせ、一つの写本を完成させようとする作中の「企み」を、そのまま小説で表現しているみたいに思える。
彼らの独白をつなぎ合わせ、「人殺し」が誰なのかを捜しあてる、探偵小説の面白さ。
ばらばらになった写本から時代を、文化を、人々の営みを読み解いていくかのような、歴史小説の面白さ。
その二つの魅力が混ざり合って、難解ではあるけれどするすると読めてしまう。
恍惚の赤。煽情の赤。