オルハン パムクのレビュー一覧

  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ネタバレ

    文学作品で、作風になれるまでに時間がかかり、言葉の選び方や描写の仕方、比喩なども理解は2割もできていないくらいだが、翻訳自体は読みやすかったのでパムクの世界観に触れることができた。

    タイトル通り、「わたしの名は〇〇」「わたしは〇〇」という題で章が分けられていて、ミステリーではあるものの推理するのは難しかった。

    それよりも、イスラム美術のなかの細密画や、オスマン帝国期の職人たちの神に対する考え方、西洋美術の遠近法の流入などの芸術と宗教の関係性であったり、主人公?の男女の恋愛模様の描写が印象に残った。

    殺したのは誰なのか、下巻ではもう少し話がすすんでくるのか楽しみ。

    ルネサンスについての前

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    2021年08月04日
  • 赤い髪の女

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    トルコ・イスタンブルに暮らす少年ジェムの父は、ある日、失踪する。
    ハンサムな父は小さな薬局を経営していた。父はかつて、政治活動をしていて拘束されたこともあり、今回もそれ絡みかと思われた。しかし、母の怒りはすさまじく、失踪にはどうやら政治以外の理由があるようだった。

    家計は火の車となり、ジェムは大学進学の資金を稼ぐため、危険な井戸掘りの仕事に志願する。
    親方は厳しくも温かく、ジェムはその姿に、どことなく父の姿を重ねるようになる。父と似ているわけではなかったが、「父性」の象徴であるように思われたのだ。

    井戸を掘る現場は、イスタンブルから遠く離れたオンギョレンという田舎の地だった。
    仕事が終わっ

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    2021年05月17日
  • 赤い髪の女

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    東洋とも西洋の間で揺れ、都市化の波が押し寄せる地で、「オイディプス王」「王書」のそれぞれを手がかりに父殺しについて考える作品。
    強く感情移入しきれない部分もあったが、それはトルコにおいては子が父親を殺すことの意味が、日本とは異なるセンテンスを持っていることが要因だと思う。
    章が細かく別れており読みやすかった。

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    2020年02月11日
  • 赤い髪の女

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    ノーベル賞作家の最新作。3部構成で、それぞれに受ける印象が異なる。第1部は学費を稼ぐため井戸掘りの見習いとして働く少年の体験談。第2部は大人になった彼が過去と向かい合う話。第3部は語り手が変わり、すべての真実が明かされる。神話や叙事詩に描かれた父殺し、子殺しのエピソードが繰り返し語られ、物語もその方向に沿って進むが結末がどうなるのかはわからない。トルコという国をほとんど知らないので、読み解くのはむずかしいと思った。

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    2019年12月22日
  • 赤い髪の女

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    ファム・ファタールものって、肝心のファム・ファタールに納得がいかないことが多いので、あんまり好きなジャンルではないのだけど(女は男性作家の女性描写には厳しいのである!!)、この表紙の女性の写真が素敵で「赤い髪の女」ってタイトルにピッタリな感じなので、手が伸びた。

    あと、ついでに、最近エルドアンのおかげで何かとお騒がせな印象の現代トルコについても、訪れたことがないせいか全然イメージがわかないので、何かとっかかりになるといいなぁ、という思いもあって読んでみた。ニュースになるのはどうしてもネガティブなことが多いしね。(小説は逆にその場所への愛を感じることの方が圧倒的に多い。たとえネガティブな事件が

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    2019年12月11日
  • 雪〔新訳版〕 下

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    ネタバレ

    オルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。

    題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。

    オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義といったそれぞれの政治信条が絡み合い、主要な登場人物達の思惑が交錯します。

    久しぶりに帰郷した主人公のKaは、ある事件についての記事を書く目的で地方都市カルス(トルコとアルメニアの国境付近)に来ますが、そこでかつて恋心を抱いていたイペキ、イスラム主義運動家「群青」など、さまざまな政治背景を背負った人

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    2018年11月10日
  • 雪〔新訳版〕 上

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    ネタバレ

    オルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。

    題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。

    オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義といったそれぞれの政治信条が絡み合い、主要な登場人物達の思惑が交錯します。

    久しぶりに帰郷した主人公のKaは、ある事件についての記事を書く目的で地方都市カルス(トルコとアルメニアの国境付近)に来ますが、そこでかつて恋心を抱いていたイペキ、イスラム主義運動家「群青」など、さまざまな政治背景を背負った人

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    2018年11月10日
  • 僕の違和感 上

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    ネタバレ

    イスタンブールの路上で呼び売りをする少年。田舎から父について出てきて以来、いろいろなライフイベントを経験しながら年齢を重ねる姿を描く。
    田舎出身の貧しい主人公の意識や親戚づきあいなどの有り様と、40年前から現在へ至るイスタンブールの変遷が興味深く読めた。
    貧しいけれど主人公は素直で優しい男だ。いつまでも少年のような純朴さが、ちょっと古めの少年向けの物語のようでもある。
    個人的には、現代的なトルコの友人から聞くより時代が周回遅れのように感じられ、トルコの現実について考えさせられる。

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    2017年12月05日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    訳文が、流れるようで美しい。
    中東やイスラムが何かと騒がれることの多い昨今、あちらの文化・風習・考え方に触れ、カルチャーショックを自分に与えるには良い機会になった。
    西洋人が考え出した遠近法を、「皇帝陛下と他の事物を同じ大きさに描くとは何事か」となったり。
    細密画は古の名人のものを完璧に写すことこそが大事で、そこに絵師の個性を出すなどもってのほか、とか。
    全く異なる文化に生きる登場人物なのに、卑怯でしたたかで虚栄心と自尊心のかたまり、そういうところは現代の我々とそっくりなのだ。

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    2016年07月18日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    とにかく文字が多くて執拗だ。登場人物もいいやつが1人もいない。女は面倒くさい。男も面倒くさい。読むのが億劫になるけど、半分超えると、段々途中で諦めるのがもったいなくなる。でも、下巻読むのはもう少しあいだを空けよう。。

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    2016年02月25日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    人だけでなく、屍、犬、絵に描かれた木、金貨、「死」そのもの、さらには「赤」と、次々に入れ替わる話者の独白により物語が進んでいく。
    その形式はまるで、別々の絵師によって描かれた細密画を組み合わせ、一つの写本を完成させようとする作中の「企み」を、そのまま小説で表現しているみたいに思える。

    彼らの独白をつなぎ合わせ、「人殺し」が誰なのかを捜しあてる、探偵小説の面白さ。
    ばらばらになった写本から時代を、文化を、人々の営みを読み解いていくかのような、歴史小説の面白さ。
    その二つの魅力が混ざり合って、難解ではあるけれどするすると読めてしまう。

    恍惚の赤。煽情の赤。

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    2013年01月25日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    東西の交点であるイスタンブール自体に、
    独特の雰囲気がある。
    馴染みの薄いイスラム文化と細密画。
    多視点で語られる物語。

    2003 年 国際IMPACダブリン文学賞作品。

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    2012年09月23日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    ひとつの細密画の製作にかかわる人たちのそれぞれの視点で、殺人事件とその犯人探しを語らせている。この中で、実在の細密画の絵師も登場させ、細密画の歴史と、細密画の絵師について丁寧に語られている。
    この話の16世紀末から17世紀初めにオスマン=トルコに珈琲が広まったとされており、珈琲店での噺家による小噺や細密画の絵師による文学の一遍などが差し挟まれ、その時代のオスマン=トルコの情勢を描き出している。

    自分としては読むのに時間(上下2冊で10日間)がかかりました。

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    2014年03月15日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    冒頭で殺人事件がおこり、犯人探しが主題になっているので、ミステリーだが、16世紀末のオスマン=トルコの情勢、細密画の絵師の世界が細かく描かれていて、歴史小説に分類。しかし、恋愛の駆け引きがその背景に絡まり、男たちが美しい女性にひきずり回される恋愛小説ともいえる。

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    2012年08月04日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    オルハン・パムク。
    イスラム圏発のノーベル賞作家です。

    殺人事件を下地にしていますが、なにより美しい文章でつづられる細密画の傑作と細密画師の言い伝えが素晴らしい。

    海外文学はこういったまったく異なる文化や世界を見せてくれるのがとても好きです。

    イスラム圏の文化にあまり馴染みがないので、絵と偶像崇拝禁止の関係も興味深かったです。

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    2012年03月05日