オルハン パムクのレビュー一覧

  • ペストの夜 上

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    架空の歴史物。うっかり本当の話かと思って読み始めたものの、文中で「作者は女性」といいつつ、著者近影は明らかにおじさんだったので、なるほど架空歴史ね!と気づきました。笑
    とはいえ、地中海の穏やかな海と温暖な気候、豊かな自然とバラの香りに包まれたミンゲル島の景色が目に浮かぶようです。
    その綺麗な景色が、感染症に侵食されてじわりじわりと変貌していく。特にその人間の心理…感染症への対策をする政府、見て見ぬ振りをする一般の人、周りの人々がなぜそんな行動をするのか理解できずに嘆く知識人……コロナ禍で散々見た光景でありながら、それを一つ俯瞰したところから見れるのが面白いです。この災厄がどう収束するのか楽しみ

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    2024年11月19日
  • 赤い髪の女

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    ネタバレ

     トルコで初のノーベル文学賞受賞者となった小説家による2016年の小説。ギリシャの古典『オイディプス王』と、ペルシャの古典『王書』で共通して描かれるテーマが描かれる作品。読む前に悲劇、というのは知っていたけど、思ってたのとは違う形で悲劇が用意されていた。
     これも雑誌「英語教育」のアジア文学特集で紹介されていて読んでみたいと思ったが(「井戸掘り職人」なんて職業の小説、なんか東大の小説問題で出てきそう、とか思ったり)、この前のタイの小説、『パンダ』の時よりもインパクトが強く、この小説家の作品をもっと読んでみたいと思った。あとこの翻訳した人が本当に違和感ない日本語にしているところも読みやすい。
     

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    2024年02月21日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    トルコ作家は初めて読んだ。ノーベル賞作家だけど、ミステリーとして読めて面白かった。読み返したら、伏線とかあるのかも。
    細密画を語るにもイスラム教の価値観は避けられず、知らなかった世界も垣間見れて新鮮。絵画やイスラム文化に全く興味がないと、しんどいかも。

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    2023年12月24日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ー 「絵や挿絵、美麗な書物に耽溺するあらゆるハーンや王、皇帝たちの関心には三つの季節があるのだよ。はじめの季節には、物おじせず夢中になって、心惹かれる。そして、他人に見せるためや、名声のために絵を求める。

    最初の季節で絵についての見識を深めたなら、第二の季節には自分好みの絵を描かせるようになる。 絵を眺めるという真摯な喜びを学び、名声もおのずと高まり、死してのちも語り継がれるような事績をこの世に残そうと、それに見合った書物を集めはじめるのだ。

    しかし人生の秋が訪れる。もはや、いかなる皇帝もこの世における不死には興味を示さなくなる。この場合の不死とは、続く世代や子孫たちの記憶に留まるという意

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    2023年07月08日
  • 無垢の博物館 下

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    心と時間にゆとりがないと読み続けられないのは 確か。
    ノーベル賞プライズ☆彡と噛みしめ読むに値するか否かは、読み手の想いに添うと。
    他者が「この素晴らしさ」を解いたところで圧になるのは笑止。

    ラストの盛り上がり?が一番納得した展開だった。
    「神の思し召しが一番最後となりますように」とまで言われて取り組んだ 来し方の総決算とは。。。
     ケマルが「自らの物語を綴れる」と確信した相手 オルハン氏が登場する所が愉しい~もっとも 会って話したかったのはフェスン(100%の人がそう思うだろう)ネスィベの語りに、新たな発見は皆無~当然



    上下巻通じて重奏低音のイスタンブールの空気感は素晴らしい。上下2

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    2022年12月16日
  • 無垢の博物館 上

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    ノーベル賞の対象がかくのごとき 主観の結晶もあるという事を発見した大作。
    病、餓えと貧しさ 不安定な立ち位置・・何れもない若さという宝も手にした30歳の青年が 不倫と横恋慕という大海原に堂々と漕ぎ出でる 妄想が大半の主観の総決算★

    中世~近世ではこういった小説が堂々と第一位を占めていたことを思い出す。

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    2022年12月16日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    西洋美術の卓越と限界、そして、イスラムの細密絵師の世界を対比する形で、物語は進み、終わる。

    謎解きの要素は少ない。

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    2022年11月07日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    テーマは近代?個性の尊重を是とする欧米的な価値観のオルタナティブを示すことか?長かったが、まだ設定変更という感じがする。
    最後にシェキュレという女性がポストモダンになっていくのが不思議。

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    2022年11月02日
  • 赤い髪の女

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    ネタバレ

    p11
    ところで話は変わるが、そもそも私たちがよく口にする「考える」という行為はいったい何なのだろう?

    p15
    辺りにはまだ甘い火薬の匂いが漂っている。

    p150
    イラン人は、西欧化するあまりに過去の詩人たちや物語を忘れてしまったトルコ人とは違うんですよ、と彼女は言いたかったのかもしれない。確かに彼らイラン人は詩人のことを決して忘れないから。

    p163
     つまるところ私は、頼りがいのある父親から、人は何をすべきで、何をすべきではないのかを教えて欲しかったのだ。

    p167
    私たちはいまさら勇者とかロスタムとかが出てくる古い物語を読んで喜ぶような世界で暮らしていないもの。

    p264
    どち

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    2022年07月28日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    門井慶喜氏の「マジカル・ヒストリー・ツアー」を読んで興味を持った作品。細密画やイスラム教について、多少予備知識があった方が分かりやすいと思う。一人称多視点という珍しい形態のミステリで、犯人が分かったところでもう一度読み返してみたくなった。

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    2022年05月14日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    後半、怒涛の展開。最後まで先が読めなかった。
    ストーリや作品全体の仕掛けも、なるほど面白い。
    他の作品も読んでみたい。

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    2021年05月14日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ネタバレ

    『藪の中』in イスタンブール。
    そこに芸術論と文明論が差し込まれている。モザイク画を見ているような印象を受けるのは、語り手が章ごとに異なるから。
    もしかしたら登場人物全員、実は挿絵の中に描かれた絵で、写本の読み手に話しかけている、という趣向の小説なのかも。

    この作品が成功しているのは、作中で語られる「一人称視点」の問題が構成とストーリーの両方に深く関係しているからだと思う。
    小説において「三人称」は「神の視点」、「一人称」は「個人の視点」というのは論を待たないだろう。この小説では一つの出来事が「一人称」で語られるために、いつまで経っても真実が明らかにならない。それぞれの人物に、それぞれの真

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    2021年05月09日
  • 赤い髪の女

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    父と息子。男と女。それを取り巻くトルコの政治的あるいは文化社会的な状況。イスタンブールの変貌ぶり。いろいろな要素を複雑に組み上げていて、ストーリーとしては読みやすいものの、内容的には結構ゴツゴツした印象。すぐには消化できない。もう何冊かこの作者の作品を読んでみたいと思う。

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    2021年05月05日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    西洋の絵画と細密画では、根本の芸術に対する考え方が違い、それがオスマンの絵師には脅威に写り、自分の存在基盤を揺らいでいく。
    時代は遠近法の西洋が、個性を盾に細密画を飲み込んでいく。

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    2020年11月11日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    カラとシェキュレの恋愛と殺人、イスラムにとっての絵とは?が同時並行で綴られている。
    下巻で物語は急に動く。

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    2020年11月11日
  • 赤い髪の女

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     面白かったです。
    「オイディプス王」「王書」と主人公がうまく絡み合って物語が進行していきます。なのに、読んでいて頭がこんがらがるということはありません。
     主人公の最後はまるで映画の予告編のようでした。

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    2020年08月28日
  • 雪〔新訳版〕 下

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    全く予備知識のないトルコの作家の長編小説。2002年の発表で世界中でベストセラーとなったノーベル賞作家の作品。イスラム世界の辺縁が少しでも垣間見れるかと思う。しかし圧巻は主人公の密告、報復による死という結末であった。私にはどうしても手放したくない宝物を手中に収めるための覚悟の行動に思えた。一気に読ませる快作ではある。

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    2019年09月25日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ネタバレ

    1591年冬。偉大なスレイマン帝没後半世紀を経たイスタンブールで、細密画師が殺される。
    豪華な細密画の世界を下敷に、お伽噺とサスペンスが混淆する物語。文明の衝突というテーマはやはりあるのだけど、エンタメとして十分に面白い。
    パムクの『雪』には忍耐を強いられたけど、こちらは読みやすい作りになっている。端々に言及される歴史的背景も華があって楽しめました。

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    2017年12月22日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    いや、これきたね。上巻読み終わった時は、音読したら文字が途切れず酸欠になるほどの圧倒的文字量と、のべつまくなし面倒くさすぎる登場人物に心折れそうになるも、ジワジワくるものあり、下巻を時間を空けて読み始めたら、まぁ、これがのっけから、上巻の凪がいっきにぐらんぐらんと大きな渦になって、あれれって間に巻き込まれちゃって、どんどこ先が読みたくなって、あれよあれよと完読してしまった。
    誰が殺人を犯したかとか、東西の相克とか、そんなんはどうでもよくなって、坩堝な地相のイスタンブールそのものの物語として、その甘美で残酷な美を堪能しようではないか、なんてな。

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    2016年12月09日
  • 僕の違和感 下

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    (承前)対立するのは、イデオロギーだけではない。親友と従兄弟、妻ライハと義妹サミハ、首都イスタンブルと故郷アナトリア、無神論と神秘主義、進学と就業、と数え上げていけばきりがないほど、メヴルトは相反するものの間に立たされる。あちらを立てればこちらが立たないという二律背反状況をどうさばいて見せるか、というのがこの小説の見所だ。どちらかといえば、さばくどころか、あっちへよろよろ、こっちへよろよろと腰の定まらないメヴルトの迷走ぶりを面白がるという方があたっているが。

    よくよく考えてみれば、メヴルトが肩に担いでいる担ぎ棒はその両側に盥を吊るしている。荷の重さで片側に傾けばまともに担ぐことはかなわない。

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    2016年05月04日