安達眞弓のレビュー一覧
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のっけから車椅子の主人公はピンチに陥っており、すでに犯人と思われる敵に狙われている。回想と現在が交互に語られるうちに、事件の詳細が分かってくるというストーリー。タイトルの「死んだレモン」とは「人生の落伍者」という意味らしい。その一歩手前でふんばる主人公は、結構大変な目にあってもしぶとく生き残る。まるでホラーな犯人たちとは対象的に、主人公の周りは温かく優しい人たちに見守られている。この人たちが巻き込まれませんようにと思いながら読んだ。最後すっきり決着できて良かった。
舞台はニュージーランド。羊が人口より多い国など牧歌的なイメージしかなかったが、入植者、捕鯨、ゴールドラッシュ等、どんな国にも黒い歴 -
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著者ジョナサン・ヴァン・ネスの半生。性的マイノリティ、薬物依存など数々の逆境を乗り越えてきた過去が語り口調で綴られる。
自分を大切にすること、信じること。
ジョナサンが自分を大切にできるようになってくると、周りの人も大切にできるようになってきてるように感じる。
自制心がなく自己破壊的行為に及んでいたところから、しんどくても頑張る辛抱ができるようになっている。大人になってからでも自制心は身に付けられることを発見した。
彼のいいところはドン底にいても他者に嫉妬して悪意を持たないところ。周りのせいにばかりしないところ。
読んだら、私も頑張るぞー!って思えるのでオススメ。
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島国ニュージーランドのミステリーが読めるとは。グローバル社会の恩恵を実感します。日本のミステリーがニュージーランドで読まれることがあるかなあ。
風景描写が具体的なので、荒涼として寒々しいリヴァトンの風景がイメージできました。ニュージーランドの歴史の説明も実に詳しく、知らなかったことばかり。一冊で二種類の本を読んでいるかのような錯覚に陥ります。やり直そうとするフィンを囲む地元の人々の温かさが沁みますね。タイの接し方が素敵で、こんな風にしたい!と思わされました。
事件の方は誉田哲也作品かと思うくらいの酷さだし、冒頭はヒッチコックの映画のよう。けれど、前述のようなサブストーリーの中に埋もれてしまって -
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ニュージーランド南島の最南端「リヴァトン」が舞台のミステリー
NZも大好きな国の一つだが、「リヴァトン」なんて初めて聞く
早速Googleアースで検索
うーん田舎(笑)
リヴァトンはかつて捕鯨とゴールドラッシュの二度の好景気に湧いた街
どちらも採りまくったらどうなるか…
それが今のリヴァトン
その中でも街から離れた海沿いのフィヨルド地域の「最果ての密猟小屋」と呼ばれる古いコテージを手に入れ新生活を始める主人公
訳あり感満載
彼の名前はフィン・ベル
著者と同姓同名だ
その意味深な理由は、実はトホホな内容だが、お陰で著者の名前をバッチリ覚えることが出来た
この作品は著者フィン・ベルの初出版との -
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読んだ。うん。内容は至極まっとうで、正しい。ただ、これは結局、誰に向けて書かれたものなのだろうか、と考えてしまった。おそらく異性愛者の女性、そして男性に向けての本なのだろうけど、語り口があまりにも「異性愛はいかに愚かなものか」「異性愛者の女性はいかに被害者で、いかにかわいそうか」という点を強調しすぎているように感じた。はたして、これを最後まで読み通す異性愛者の女性はどれだけいるのだろう。
「あなたはかわいそう! あなたは被害者! それはあなたが愚かだから!」という語り口は、いくら内容が正しくとも、それを自分のこととして受け止めることに壁を作ってしまうのではないか。異性愛者であることがかわいそ -
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ネタバレ【大スターの素顔】
クィア・アイのファッションコーディネーター担当のタン・フランスさん。
イギリス生まれイギリス育ちのパキスタン人移民3世のイギリス人は、どうやってアメリカの人気番組のスターになるにいたったのか?
・・・
肌の色のコンプレックスは幼いころに植え付けられたまま、ずっとあって、性的志向に関連する経験以上に一貫して綴られていたように思う。エミー賞を受賞するまでの有名人になったタンさんしか見えてなかった自分にとって、とても深みあるお話でした。
クィア・アイの舞台裏も少しあったけど、
出演前は、ユタ州でアパレル会社の起業されていたなんて、
しかも出演者選抜のオファーのタイミング。
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元ロンドン市警刑事で、過去の潜入捜査のせいでパニック障害に悩む58歳のモイラは穏やかな生活を送ろうとフロリダの高齢者向け高級住宅に家を購入するが、ある早朝、敷地内で若い女性の遺体を発見する。警察に通報したものの、発作のせいでふらふらしていると警官に続いてやってきたのはフィリップという隣人だった。元刑事で71歳のフィリップは殺人事件と聞いていても立ってもいられず現場に押しかけてきたのだが、元麻薬捜査官リックと元科学捜査官の妻リジーも巻き込んで、4人は高齢者の話には耳も貸してくれない警察を尻目に独自の調査を開始する…。
コージー・ミステリはあまり読んだことがない。主人公4人は捜査官をリタイアした -
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ネタバレ珍しきかな、ニュージーランド発ミステリ。
ナイオ・マーシュ賞新人賞受賞作とのこと。
幼い頃を南アフリカで過ごし、若くして成功した主人公のフィン・ベル。
35歳を過ぎた頃から、午前3時になると目覚めてしまう不眠に悩まされ、酒に溺れる。
妻との別れを迎えた矢先、交通事故に遭い下半身麻痺の障がいを負ってしまう。
事故後のリハビリ、セラピーを経て、まだ明確な意志は形作られないものの、酒を断ち、事業を売却し、”南の南、ニュージーランドの果ての果て”リヴァトンのコテージを購入し人生のリスタートを切ろうと移り住んできた。
そんなベルが冒頭、車椅子と共に崖で宙吊りになり、目前に迫った死を嘆くシーンに始ま -
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死んだレモンとは、人生の落伍者のこと。
カウンセラーに「あなたは死んだレモンか」と
聞かれたフィンは返事ができなかった。
妻と離婚し、事故で半身不随になり
アル中克服の修行中。
半ば死ぬ気でニュージーランドの片田舎の
コテージを買って移り住んできた。
ところが、このコテージの隣人兄弟がいわくつき。
前のオーナーの娘が誘拐・殺害された事件は
街の誰もが彼らの犯行だと思っているが
まったく証拠がないので逮捕できずにいた。
隣人に怯えて暮らすことに耐えられないフィンが
なんとか事件の謎を解こうと動き始めて
ついには自分の命まで狙われてしまう!
くそ〜、犯人わかってるのになぁ〜と
やきもきしながら -
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ヴィクトリア朝(ヴィクトリア女王統治下の1837年~1901年)は産業革命の発展が著しかった時代である。華々しい「大英帝国」最盛期の陰で、しかし、世にいう「切り裂きジャック」を含め、残酷な犯罪も増加した時代でもあった。産業の発展に合わせて、人の流動が多く、都市では人々の「匿名性」が高まったこともその一因であったのだろう。
その中で、イギリス・カナダ・シカゴ各地で次々と殺人を犯す男がいた。
同時代人であるコナン・ドイルは作中で、シャーロック・ホームズに以下のように言わせている。
医師が悪の道に走ると、最悪の犯罪者になる傾向がある。(「まだらの紐」)
本書主題の連続殺人犯は医師、毒の知識もあり、