安達眞弓のレビュー一覧
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クィアの視点から異文化としての異性愛を語った本。
空気のように感じていた異性愛文化が、クィアという外の観点からは、こんな風に映っていてこんな問題があると感じているのかと、とても興味深く読むことができた。
現在の異性愛文化がどのような歴史を辿って形成されたかについても記載されているため、読み進めるうちに自然と異性愛文化についてメタ的に分析することが可能になってくる。
自分自身がこれまで無意識に感じ取ってきた生きづらさが、異性愛規範に基づいていると気づくきっかけを与えてくれ、読む前と後とでは世界が一変したように感じられた。
特に興味深かったのが4章と5章。
4章では著者の友人のクィアが異性愛者に感じていることと、それへの著者の分析が書かれている。
異性愛者は、異性愛規範に従おうとするあまり、交際・結婚生活でも性行為でも、退屈で窮屈な思いをしているという内容が衝撃的だった。
日本でセックスレスや熟年離婚が問題になっている背景には、異性愛規範の問題が大きいのかもしれない。
5章では「包容力のある異性愛」が語られる。
現状、異性愛の性行為は性欲の観点から男性優位で行われている。
しかし、性行為は肉体的な快楽だけでなく、思想・経験・傷といった、相手の人生そのものを感じとって深く理解すること(相手との同一化)によって得る快楽もあるはずだ。男性は、女性との同一化を行ってこそ、本当に女性を愛することができる、と著者は語る。
少年漫画・ヤンキー漫画では拳で語り合うシーンが出てくるが、あれは拳を通して相手との同一化を行うことだと言えるだろう。拳で語り合うことができるなら、男女が性行為で語り合うことができないはずはない。
特に日本人は、推し活を通して異性のアイドル・キャラクター等に同一化する経験を持った人が多い。異性愛規範から自由になれれば、「包括的な異性愛」へと踏み出すのは容易だろう。
たまに文章の中に直訳的でわかりにくく感じる所があるのが玉に瑕だが、様々な新しい視点・発見をくれる素晴らしい本だった。 -
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1958年朝鮮王朝・英祖の時代
18歳の医女ペクチョンは、恵民署で4人の女性殺害の容疑者となった恩師を助けるため、事件を独自に調べ始める
そして同じように事件を追う捕盗庁で働く青年オジンに出会う
二人は協力し合い犯人を追うのだが…
『イ・サン』『赤い袖先』『トンイ』
英祖王が実の息子の世子を米櫃に閉じ込め餓死させたというエピソードは有名ですが、
やはりこの時代はドラマになりますね~
王である父と世子である子との確執…
やがて世子は壊れていく
そんな世子のある史実がこの作品の事件に深く関わっていき、物語のキモとなる!
誰が悲惨な事件の犯人なのか?
という推理を楽しむのは勿論
医女ペクチョンの出自や両親への葛藤、オジンとのロマンスも読み応えがあります
また朝鮮王朝の宮廷の人間関係や陰謀、しきたりや文化もドラマをみているように楽しめます
これは次作も朝鮮王朝が舞台のミステリーを期待しまーす!
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ネタバレタイトルからは全くなんの小説か想像もつかず。読んでみてびっくり、これはオモロい!
いわゆる勝ち組な人生の成功を得つつも、心に空虚さを覚え、ウツ的に空虚になった挙句、妻に逃げられ、交通事故で下肢を麻痺する大けがを負った主人公。
彼の人生を取り返す再生の物語と、ニュージーランド最南端の小さな町リヴァトンに隠された秘密を暴く物語、さらにはそこにどんでん返しのミステリーまで伴い、やや詰め込みすぎかとも思いきや、最後見事な着地を決める巧みさ。
小説の構成も見事で、現在パートと過去パートを交互に織りなすパターンは良くあるが、マンネリ臭は一切なく、王道のパターンの利点を存分に生かして楽しませてくれる。
これがデビュー作とは恐れ入る、次作以降も翻訳されるだろうか?是非追いかけたい作家がまた一人増えてしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ下は海、崖の途中で宙吊りって、『その女アレックス』の宙吊りの檻とどっちが恐ろしいやろかと震える。そんな絶体絶命の状況から始まります。
町の中心から外れた最果ての地で、明らかに怪しい三人兄弟の隣家に住むことになった主人公は車椅子、バツ1、元アル中。ひたすら暗いサスペンス劇になりそうなところ、彼の周囲に集まるのがユーモアに溢れた善人ばかりで救われます。
謎解きではなくて三人兄弟が罪を犯した理由を追求する物語だと思ったら、あらら、やっぱりそれだけじゃなかったのか。自費出版の翻訳とは驚き。ついでに、双子の出生率はベナンが世界でトップクラスという豆知識も(笑)。
映像化するとしたら、ちょっと年齢がちがうかもしれませんが、フィンにエドワード・ノートン、タイにドウェイン・ジョンソンというのはどうでしょう。温水のトゥイにはエディ・マーサンとか。三兄弟が悩むところ。少なくともショーンは男前じゃないと。 -
Posted by ブクログ
七月の目玉となった作品。個性がいくつもある。一つにはニュージーランド発ミステリー。作者は、法心理学者としての本業の傍ら、小説は電子書籍でしか契約しないという欲のない姿勢を貫いているが、この通り、内容が素晴らしいため、作者の意に反して紙のメディアでも世界中に翻訳され、売れっ子となりつつある。
ページを開いた途端、絶体絶命の窮地にある主人公の現在が描写される。いきなりの海岸の崖に車いすごと足が岩に引っかかって宙ぶらりん。ぼくはこの作品の前に、クレア・マッキントッシュの『その手を離すのは、私』という本を読んでいて、その最終シーンが海辺の崖の上での意味深なシーンだった。まるでその続きみたいに始まるのだが、場所は『その手を離すのは、私』のウェールズの崖ではなく、遠く離れた南半球、ニュージーランドは南東のしかも南の外れにあるリヴァトン。面白過ぎて、グーグルマップで場所を探す作業からぼくの読書は始まる。凄い!
南の果てで南極に一番近い海岸線。凄い! それも崖の上で宙ぶらり状態。しかも車いす利用者なのか。凄い。描写は六か月前の過去に、私ことフィン・ベル(そう著者と主人公が同名である)が銃と、人の頭を吹き飛ばせるホローポイント弾を買い込むシーンから始まる。その後、気になり過ぎる現在と、過去とを行き来しつつ物語は進んでゆく。
主人公は南アフリカ出身でニュージーランドに流れ着いた「人生の落後者」(=原題のDead Lemons)であり、妻に去られ、酔いどれてトラックに突っ込んで両足とその感覚を失ってしまった車いす生活者。『楽園の世捨て人』というカナリア諸島に行き着いた中年男が正義を通して自分を撮り戻す作品があったが、そちらが悲壮で真面目な小説だったのに比べると、こちらの作品は同じような絶望的設定なのに、何故か明るいのだ。脇役たちの明るさ、軽さ、人の好さ、等々が主人公を助けると同時に、読者をも笑いや優しさに満ちた時間へと掬い上げてくれる。主人公の独り語りも、悲壮感というより破れかぶれな決意感のようなものがすっと通っていてなかなか宜しい。
作家の持ち分であるサイコセラピーの部分は、優しく厳しく熱いおばはんセラピストによって、すごく専門的な知識を駆使して語られてゆく。この辺の知識豊富な部分と、ニュージーランドに流れ着いた者たちの歴史を紐解く部分も凄まじい。
捕鯨やら砂金やらに群がった無法者たちの300年前の姿がロマンチックであると同時にワイルドで、その舞台となったこのリヴァトンの辺りが、何ともきな臭い隣人三兄弟の薄ら寒いような悪の怖さを醸し出し、主人公の緊張感を行間から滲ませ続ける。過去に起こった少女とその父の連続行方不明事件を調査するにつれ、緊張は高まる。
主人公が車を飛ばして相談に駆け付ける元刑事ボブ・レスの犯罪心理分析の語りのシーンもおそらく作者ならではの専門知識が活躍する。怖い隣人のこと。行方不明事件のこと。主人公自身が脅しや恐怖に曝される緊張状態の中で、世界の果ての海岸線に接した小さな町が、事件の再びの捜査に湧き立つ。
そして最後に現在に戻る。二転三転。驚きの結末。全体を包む現在時間の緊張感と、じっくり語りゆっくり進み、時々恐怖、という過去時間がついに集約する大団円。見事な構成。見事な読ませ感。ミステリの要素をいろいろと重ね合わせてホチキスで止めたような結末。読み始めたら最終シーンまで収まりのつかないこの一冊に、是非とも翻弄されて頂きたい。
しかし、これがこの作者、小説デビューだって? うーむ、俄かに信じ難いのだ。次が楽しみである。 -
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作家は韓国生まれアメリカ育ちで、元は英語で書かれたものである。ディアスポラ文学というらしい。
18世紀の李氏朝鮮 第21代国王・英祖の時代。韓国の歴史ドラマでいえば、トンイとイサンのちょうど間にあたり、トンイの息子が英祖で、英祖はイサンの祖父になる。
母の大好きな韓国ドラマを、斜めに見ていたおかげで、すんなりと情景がイメージできた。
念願の内医女になったペクヒョン。かつて医術を学んだ恵民署で4人が殺害され、恩師が捕らえられた。恩師の無実を証明しようと、捕盗庁のオジンと共に真犯人を探す。
韓国らしい深い情と愛と恨が詰まった物語である。庶子であるペクヒョンの、これまでに受けた試練が原動力となり、彼女を突き動かす。アメリカ育ちである作家だからこそ描くことができたヒロインかもしれないが、彼女の激しい思いは、時に切なく胸に迫るものがあった。
良質なミステリだけど、それ以上に過酷な時代を生きた女性たちの物語でもあったかな。ロマンス要素もあって、楽しく読めました。 -
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ネタバレ2025年の35冊目は、ジューン・ハーの「宮廷医女の推理譚」です。2023年のアメリカ探偵作家クラブ賞YA部門受賞作です。読書の舞台は、1944年のサンフランシスコから1785年の朝鮮国、英祖王の時代に飛びます。この身軽さが読書の魅力の1つだと思います。
韓国を舞台とした歴史小説を初めて読みましたが、テレビドラマで馴染みが有るせいか、割りとすんなりと物語に入り込めました。朝鮮国特有の固有名詞に関しても用語集が巻頭に付いていますので、見返しながら読み進める事が出来ます。
テイスト的には、ホリー・ジャクソンの作品に近いと思います。主人公も18才の内医女ベクヒョンと同い年の捕盗庁の従事官ソ・オジンと似通っています。
実在する英祖王の世子(荘献世子)が登場し、彼の悲劇的とも評される人物像が、物語・事件の大きな鍵を握っています。ミステリーとしても水準以上だと思いますし、アメリカ探偵作家クラブ賞YA部門受賞というのも頷けます。
☆4.6 -
Posted by ブクログ
物語はその昔、ゴールドラッシュに湧いたニュージーランド南島の小さな町の人質事件から始まる
皆がなぜ?と思う善良な市民の家族をギャングたちが人質にとる
そして主犯格のギャングと家の主人が姿を消す…
一体なぜ?どこに消えたのか?
二人を追うのはニックとトーブの歳の離れた警察官
とにかくこのバディがいい!
ニックの一人称で語られる章、逃走している二人を描く章、嵐を描く章…
この3つのパートの繰り返しで物語が進む
ニュージーランドの気候やゴールドラッシュなどの歴史、土着のマオリとヨーロッパ系・中国系移民との確執…
それらに絡んだミステリーという設定が大変興味深く、おもしろい
嵐のなか、ニックとトーブが逃走した二人を追うシーンはもう決死のサバイバル
ただ、洞窟のシーンは坑道好きの私とはいえイメージするのに苦労した…(笑)
そして最後にニックがとった行動はなかなかにショッキング…そして深く考えさせられる
それまでのニックのキャラクターやニックとトーブの関係がさらに掘り下げられていればニックの行動にもさらに説得力があったのかも…
最後の一文には救われた… -
Posted by ブクログ
妻と離婚し、酒に溺れ飲酒運転で下半身の自由を失ったフィン(作者と同じ名前)が心機一転向かったのがニュージーランド最南端の町
フィンはその町のさらに南の人里離れたコテージを購入
しかしフィンが購入する以前にコテージに住んでいたコッター家の娘アリスが26年前に失踪していた
それを知ったフィンは事件に関わっていると思われるゾイル家を調べ始めるが…
冒頭、いきなりフィンは絶体絶命…
車椅子に乗ったフィンは崖で車椅子ごと巨石にはさまれ宙ぶらりん…
どうした?
なぜ?
助かるのか?
そんなことを気にかけながら、フィンがそれに至った出来事の道筋をたどっていくようにページを捲っていく
そして明かされた事実に…
おもしろかった!
前回読んだ『壊れた世界で彼は』
より登場人物のキャラが立っていてのめり込めた
何よりミステリーとしてのおもしろさはもちろん、主人公フィンの成長、ニュージーランドの歴史のそれぞれが楽しめた作品
猟奇的な内容もあるので苦手な人は要注意だが、フィンの脇を固める登場人物たちに救われる
特に陽気なフィンのマーダーボールの友人のタイやその娘ミヒの存在が良い
それにしても…
常に繁栄の裏には悲しい歴史があるものだ…
人間の欲の餌食
今日もまたおかしな夢をみてしまうのか…(笑)