乃至政彦のレビュー一覧

  • 謙信越山

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    謙信の越山が何に動かされたものだったのか、史料を読み直しつつ誤った通説を否定しながら解明していく。
    まず関東の情勢を把握する必要があるが、古河公方の晴氏が北条氏の台頭を許すが、対立が生じ敗れた公方方の上杉憲政は長尾景虎を頼る。謙信は望まず関東管領名代に就任、さらに上洛中に知り合った関白近衛前久を摂家将軍として迎える構想を持って越山した。また、第4回川中島の合戦は、局地戦だった1〜3回と違い、小笠原長時復帰も目論まれ政局に連接していた。結局関白は藤氏に愛想を尽かし帰京してしまい、関東には戦災と火種だけが残ったという。
    上杉七免許、女性説について本人の性自認は男であったこと、生涯不犯は兄への義理立

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    2023年04月01日
  • 平将門と天慶の乱

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    天命により一介の「兵(つわもの)」から「皇(おう)」となった将門。彼が「侍(武士)」の原型となったわけでなく、逆に朝廷の命を受け将門を討伐した「兵」が、その武功により「軍事貴族」である「侍(武士)」の時代を築くこととなる。辺境であった関東の乱が、その後の日本に「武士の誕生」と「皇室の永続」を運命づけた。
    将門塚の不死の首伝説が、戦国時代の三浦義意伝説の翻案との説も興味深い。

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    2019年07月02日
  • 平将門と天慶の乱

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    将門について、これほどまで分かりやすく書かれた本を読んだことがない。その後の日本を決定付けた乱であったこと、そして、我が国における武士の成り立ちを理解できた。もしあの時、将門が京に赴き、弁明に成功していたら、ボタンのかけ違いがなければ、日本はどうなっていたか、想像せざるを得ない。

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    2019年04月26日
  • 戦国の陣形

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    陣形というものに抱かれていたイメージを一新させる。そもそも東国のほうが優れた軍制(兵種別編成)だった、その始まりは信玄を討ち取りにいった村上義清だった、それを長尾景虎が受け継ぎ、襲われる信玄や北条氏康もそれを採用した。
    甲陽軍鑑といった文献についつの研究も紹介されてて勉強になるし、白村江の頃から採用した集団戦も対外戦がなくなり蝦夷の散兵戦術と戦ううちに日本も集団戦ではなくなってバラバラ戦う鎌倉武士が、と、戦国の陣形だけでなく日本の戦いとはどうだったのかという点でも学ぶことが多い。

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    2017年11月05日
  • 戦国の陣形

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    “時代モノ”のファンを自認する人の中には…「無制限の制作費」を投入して、勇壮でリアルな、そしてドラマチックな戦国時代の合戦場面を映像で再現してみたいというような、傍目には莫迦らしいかもしれないようなことを夢想する人が在るのかもしれない…実は私自身にもそういう傾向が無いでもないのだが…本書に触れて、恐らく著者はそういう傾向をかなり強く帯びているのかもしれない等と思った…

    本書の文中でも触れられているが…戦国武将等が「○○の陣」等というモノを用いていたらしいというような事柄に関して、実は然程深い研究は行われていない…本書は、そういう「○○の陣」というようなモノに関して、「“戦”というモノが辿った

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    2016年03月22日
  • 戦国の陣形

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    明快に陣形の歴史を概観できた。といっても陣形らしい陣形はなく、鶴翼のばっさり、魚鱗のびっしり、くらいしかなかった。たしかに小領主が自分の一族郎党を率いた舞台の集合体に細かく指示できるわけでもなく、兵種も混合しているので、ただ個人の武勇や物量で勝敗が決まった。戦国時代、新たな戦陣を編み出そうとしたのが武田信玄と山本勘助。だが、これも捨て身の村上義清に破られ、義清の陣形を取り入れた上杉謙信に敗れで、機能しなかった。結果、村上義清が信玄の首を取るためにやけっぱちで編み出した五段階の陣形が上杉謙信、武田信玄、北条氏康らに取り入れられる。大名が強い権力とお金を持ち、強力な馬廻を組織できて可能になる。織田

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    2016年02月02日
  • 戦国武将と男色 増補版

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    尊氏≠男色家を知るため購入したけれど、最後まで面白く読めた。
    中近世の男色は同性愛ではなく、少年愛。公家や僧侶間の男色がいかに武家の中に入ったか、またその衰退までの説明。数々の文献内の男色描写へのツッコミや考察。現代の小児性愛への警告にも捉えられる「おわりに」と勉強になった。
    南北朝沼からの古典太平記を創作多めの二次創作だと知っているけど、戦国物の男色エピソードも創作がほとんどで、その描写の理由が男色を行う者=無能な武将、というイメージを与えるため。というのも納得できる。
    面白かったのが『江戸時代成立の戦国物には、無暗に美童が現れて寵愛されるが、いつも都合よく美少年が現れるのは不思議である。』

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    2025年04月28日
  • 謙信×信長 手取川合戦の真実

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    織田軍が大敗したという手取川の合戦とそこに至るプロセスの解説。秀吉離脱事件については面白い見解だと思う。
    本書は皆のイメージにある謙信と信長の実像を問うた本である。考えてみると謙信の親父が既に謀将かつ剛の者なので彼自身が清廉潔白な義の人でないというのも何となく頷ける。逆に信長の方は親父が朝廷に莫大な献金をしてる事から彼自身が本心はともかく権威を重んじていることは頷けた。2人とも同じ49歳で亡くなっているのは一奇と言えなくも無い。
    冒頭は武田信玄について述べられているが2人に与えた影響は大きく書いてある事で分かりやすかった。

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    2024年07月08日
  • 戦国大変 決断を迫られた武将たち

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    戦国武将の決断に焦点をあてて書いた一冊。

    5つの章に分かれており、それぞれ別の事例を取り上げているので内容は散漫だが、読み物としては面白かった。

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    2024年06月27日
  • 謙信×信長 手取川合戦の真実

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    ネタバレ

    手取川合戦、大河ドラマ天地人を見る迄は
    存在も知らない合戦をタイトルにする本書
    は出版当初は手に取らなかったが、ふと読
    むと誰も知らない謙信(や信長)の思考を
    読んで行動を解説してくれる読みやすい本
    でした、現在認識していた信長の大敗北は
    なかったようだが、二人の関係の破綻を象
    徴する合戦として再認識しておこう
    本書で第一次信長包囲網の意味がひっくり
    返った、近衛前久の思慮ない野心に腹立た
    しい気分だ

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    2023年11月03日
  • 謙信越山

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    上杉謙信は、私の好きな戦国武将の一人であるが、小説などで描かれるカリスマ性いっぱいの謙信像とは別な、史実の裏に秘められた人間くさい苦悩などを緻密な調査に基づいて的確に描かれていると思う。

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    2023年07月03日
  • 戦国の陣形

    ネタバレ 購入済み

    創作物や伝記物では戦争のたびに〇〇の陣で攻めた軍を△△の陣で迎え撃ったという内容が出てくる。
    子供心に実際に山の中でそんな陣張れるのかとか農民含めた寄せ集めの軍でそんな統制取れるのかと思ったものである。
    この本ではその疑問に対して普段と違う見方が書いてあった。
    いろいろ言われている甲陽軍艦については肯定的に書かれている部分が多く、実際に事実に近いんだろうなあと思う部分もあって興味深く読み通せた。

    名主の大名に兵を連れて各地から集めた兵がそれぞれの単位でまとまってる日本式の集団なら全体を統括した戦略なんて取れんわな…と納得できたのが収穫である。

    #タメになる

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    2022年03月20日
  • 謙信越山

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    上杉謙信はなぜ三国峠を越え越山したか。その真相を探る。

    気鋭の歴史学者。関ヶ原の戦いの通説を覆したり、日本史のダイナミズムを伝える方として注目している。そんな筆者の近作。

    越後から関東へ。上杉謙信が何度も越山したのはなぜか。その真相をあまり知られていない東国史を絡めて詳述している。

    織田信長も含め従前の視点に留まらない新たな武将像。

    今後の研究にもさらに期待したい。

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    2021年08月17日
  • 謙信越山

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    上杉謙信といえば武田信玄との川中島の戦いが有名だけど、最近になって謙信が小田原城を包囲したことがあると知り、わざわざ新潟からご苦労なことだ…と思ったら生涯十数回に渡り三国峠を越えて関東平野に攻め込んでいるということが分かって俄然興味を持ったので手に取ってみた。この関東進出を「越山」と呼びあの田中角栄の後援会もここから名前を取っているのだとか。不覚にも読むまで全く関連性に気がつかなかった…。つまり謙信は武田信玄よりもその頃関東平野に進出していた小田原の北条氏康と死闘を繰り広げていた訳で、当時は今のような米どころではなかったにしても港湾都市が栄え、鉱物資源にも恵まれた経済的には侵略などしなくても良

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    2021年07月16日
  • 戦国の陣形

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    定型的な戦いの陣形が無かったとの説は説得力があった。確かに、何万もの軍勢が、単純な陣形をとれるような地形はそうそうあったとは思えないし、兵種を上手く運用した方が勝てる気がする。

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    2021年02月23日
  • 戦国の陣形

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    「君も陣形博士になれる」みたいな本では決してないので、間違って買わないように。陣形を謂れから解説。巷間に流布する色々な無駄知識と誤解について知ることができた。「勘介は『それがし、軍学は体系的に学んでござらん』と天地神明にかけて告白しているのである」という部分など笑えます

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    2016年09月21日
  • 戦国の陣形

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    甲陽軍艦等の文献の精査で,日本の古代から近代の軍隊の陣形の実態を解き明かした好著だ.村上義清と上杉謙信が五段隊形を編み出して実際に活用した事例紹介は素晴らしい.徳川時代が平和であったため,戦国時代の歴史がおざなりになったことで,当時の陣形に関する研究が不十分だったことは残念なことだ.関ヶ原の合戦の戦況展開図(p170-173)は具体的な形での考証であり,素晴らしいと感じた.

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    2016年08月30日
  • 戦国の陣形

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    ネタバレ

    戦国八陣は理論のみで使われることは少なかった。武田信玄が山本勘助と作ったが、村上義清が信玄を討つためだけに考案した兵種別の兵が連携して戦う作戦を謙信が発展。五段隊形。旗持ち、騎馬、鉄砲、歩兵、長槍。
    中世は軍勢。寄せ集めなので、体系だった戦いはできない。その後軍隊に。
    川中島も関が原も通説の陣形は怪しい。
    メッケル少佐の「西軍の勝ちだ」も陣形図なかった可能性から怪しい。
    諸葛亮の八陣も内容不明。

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    2016年05月09日
  • 戦国の陣形

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    タイトルは「戦国の陣形」だが、要点としては日本の戦国時代には実態としての「陣形」なんてなかった、という本。
    会戦に際し、兵の集団を決められた形に配置して運用する(それができるよう訓練する)陣形は日本の場合、大陸との戦闘を想定した律令制下には一時、存在したものの、結局大陸との大規模戦闘は白村江以降の古代では発生しなかった。
    蝦夷勢力等と戦う上では会戦を想定している陣形は有効ではない(相手が集団ではなく散兵であるため)。
    騎馬に乗った武士は運用としては散兵に近く、鎌倉~室町も陣形らしい陣形はない。魚鱗の陣・鶴翼の陣みたいな表現は出てくるが、密集せよ・散開せよくらいの意味できちんと決まった形はない(

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    2016年03月26日
  • 戦国の陣形

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    資料の無いなかで、室町時代以前の合戦についても、分析を試みているのに驚く。川中島や三方ヶ原や関ヶ原についても、兵種ごとの配置、運用に思いを巡らせ、信頼のある資料と矛盾しない範囲で膝を打つような説明を見せてくれている。
    旧陸軍の作戦研究でも、日本史上の合戦についてはいろいろ分析していたのかもしれないが、近代戦闘の分析視点でみると誤ってしまうのだろう。そもそも日本には数万騎といわれる大軍を展開して騎走を恣にする場は、ほとんどなかったのではないか。

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    2018年10月19日