集英社みらい文庫の伝記シリーズのなかの一冊。
私は古典は軍略物のほうが好きなんですが、王朝文学やこの時代の風習を知りたいと思って手にとってみました。
前半は清少納言が、後半は紫式部が、現代の私達に、自分の人生や平安時代の風習、そしてどんな気持ちを込めて文筆をしていたかを語ります。
清少納言「私、
...続きを読むすてきなことはすてきでしょ!ってつい大きな声で言っちゃうの」
紫式部「人の気持ちが強く動くような、そんなお話を書きたいと思ったんです」
こんな親しみやすい口調で「この時代の結婚はね、夫婦は一緒に住むのではなくて、『通婚』といって男が女の家に夜だけ通ってくることから始まるの」というように、簡素かつわかりやすく説明されていています。
小学生向けではありますが、大人の私が読んでも、一条天皇を中心として藤原一門の権力争いや、定子と彰子の立場、そして清少納言と紫式部が何を期待されて中宮(皇后)のお宮仕えに抜擢されたのか、なぜ枕草子や源氏物語を書き、それがどのように広まっていったのかなど、とてもわかりやすかったです。
二人の語る、家族や夫との関係、この時代に女性が外で働いたり勉強をするということについて、何を美しいと思うか。
そこに、清少納言の、自分の感嘆を素直に出して、相手にも自分のものの見方に興味を持ってもらって、一緒に感じたいという溌剌さ。紫式部の、この時代の窮屈さもありながら、普段は見えない人の心を感じとる感性が見られます。
しかし人間って変わりませんよねえ。千年前の女性でも「素敵なものは素敵って言って、そんな私の物の見方を一緒に感じて欲しいの」って感覚分かるじゃないですかーー。
そして、私が軍略物のほうが好きというのも、軍略物なら心情を察する読み方ができるけれど、日常を書いたお話だとそのまますぎてしまうからだよな…とは感じました。
また私は現代小説がひじょーーーーに苦手なのですが、人間の感情って千年前でも感覚がわかるんだから、これが自分と同じ状況の現代小説だったら生々しくてなんだか見せつけられるような気持ちになってしまうんですよーー。