池宮彰一郎のレビュー一覧
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なんとも情けないことに、日本人の年末恒例たる『忠臣蔵』を一度もまともに見たことがないのです。なので、さすがにそれではいかんだろうってことで、あちこちでオススメされている本作を手始めに。自分にとっての雛形がこれになってくるだけあって、あまりろくでもない内容だと怒り心頭なんだけど、とりあえずそれは避けられた。時代背景も大して知らずにいうことじゃないけど、それなりに大筋は外れていない内容なんじゃないか、とか思いつつ。ただひとつ、登場人物の殆どに対して、階位やら禄やらが事細かに記されているから、それがちょっとうるさく感じられることも確か。ある程度予備知識があって、更なる深みを求めている人にはもってこい
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「本能寺」というタイトルだが、上巻は「信長一代記」で信長の天才的な戦い方や合理的な考え方に圧倒される。下巻に入り急転回で、本能寺の変への流れと変わるが、やや竜頭蛇尾の感があるものの全体としては、楽しく読むことが出来た。
この著者の文体は相変わらず古風で難解さはあるものの、それが返って重厚感をもたらしている。
我々は歴史の結果から判断して、信長の評価は藤吉郎>明智光秀という先入観で見ているが、この本を読んで信長の配下での「城持ち大名」の第1号が明智光秀で、木下藤吉郎はこれに2年遅れるという事実には驚かされた。宿老第1の柴田勝家に至っては3番目。しかも領地は与えるのではなく、貸し置くという -
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吉良家討ち入り四十七士のうちの1人で足軽身分だった寺坂吉右衛門さんが、大石内蔵助さんの指示で捨てたはずの命を死ぬより過酷な生き証人として生きていくお話。
みんなから誤解されて、本当につらかったと思う。
同じように討ち入り前に内蔵助さんの指示で「抜けた」形になっているおじさんのお話も良かったよ。
らじが好きな浅田次郎さんと同じで、本当に悪い人はいないってスタンスのお話が良かったです。
現実には本当に悪い屑みたいな人間もいるからさ。
せめて物語のなかでは、環境とかタイミングが悪かっただけで、本当の悪人がいない世界を楽しみたいじゃない?
良いお話でした♪ -
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舞台は元禄15年12月14日、大石内蔵助率いる47人の赤穂浪士が元藩主浅野内匠頭の仇を討たんと吉良上野介の屋敷へ討ち入りした後の話である。
主人公である足軽、寺坂吉右衛門に大石内蔵助から極秘の命令が下る。それは討ち入りに入ったものの親族にその顛末を伝える生き証人となる事、そして生活を苦にしている者がいれば助ける事。「侍の本文は美しく生き美しく死ぬ事」と言っていた内蔵助からの生きろという命令だった。
まだ赤穂浪士に幕府の目が光っていた当時である。吉右衛門は決して恥じて隠れるような事はしなかったが訪れた屋敷では全てがあたたかい対応をしてくれたところだけではなかった。
それでもその役目を果たし -
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・他人の意見を鵜呑みにして、従う、それが「愚直」であり、実直でもある。だが、「素直」とは、まず他人の意見に耳を傾け、判断はおのれがする。おのれの確乎たる意志を持ち、他人の意見を聞く度量を持つ・・・それを「素直」というのだ。
・人は稲穂と同様、実り重きを為す程、頭を下げ、腰を低くするもの。
・日本史に金襴と輝く源義経の戦法は、常に一貫していた。「速度」である。敵の想像を超える速度で攻める。対応する隙を与えず、卓越した速度で攻め破る。
・義経の知略は、『彼の身に我が身を置く』という唐土の兵書「六韜」に依る。つまり敵将知盛の身になって思考を巡らすことに尽きる。
・別冊『本能寺』は信長を苛烈極まりない -
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・「戦法」というのは、文書では教えられない。文書で伝え、百万言を費やしても、応用が利かない。最も適切な教育方法は、実地に臨んでの失敗の経験と、咄嗟の機転である。
・かつて日露戦役で勝利をおさめたのは、戊辰・西南・日清の各戦役の戦場体験を持つ指揮官・参謀が、まだ生き残っていた所為だという。
・その生き残りが絶えたとき、作戦と指揮は拙劣と化した。勝者は戦史を飾る悪弊を持つ。飾りたてた戦史は有害でしかない。
・米軍評言「日本の将は教科書通りに戦い負けた」。
・この地はこの時代の前、摂津・播磨の国境、須磨関を守る兵器庫が存在したことから、「兵庫」と呼ばれていた。
・人はその本質よりも行装で判断する。そ -
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・人は、高きに昇るほど、恭謙であらねばならぬ。
それが清盛の処世訓である。
・今日一日をなんの苦もなく送る。明日も同じように過ごせるだろう。明後日も、一年先も、十年先も・・・。そういう保証のあることを感じる日が、仕合せというのかもしれない。同時に、その一念が改革という変化を嫌うのだ。
・人が万物の霊長たる所以は、常に絶え間ない進歩発展を約束されたことにある。人は人たる代償として、安逸は許されない。
・人は居なくなると値打ちが増す。
・武士たる本分は「常在戦場」。常に戦場に在るの心掛けを持つことに尽きる。
・おのれが語る秘事は、人もまた語る。
・改革、という大事は反対者が多い。総論に賛成しても各 -
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○良書
○清盛がおこなった国政改革や事業運営及び、藤原官僚との戦いはそのまま現代の我々に対して多くのことを示唆している。さすがは池宮氏というところ。
・戦というのは、敵味方が互いに戦意を燃やし、互角に戦っている間の死傷者は意外と少ない。それが、形勢傾き、非勢の方が浮き足立つと急に損害が増す。敵と渡り合うより避退に心奪われ、腰が引ける所為である。優勢の方は、身の危険が減少するから嵩にかかり、相手方を圧倒する。
・清盛「勝ちというものは、十のうち十まで我が手におさめぬものだ」。
・華麗な貴族文化の陰に、大多数の庶民の飢餓がある。
・彼は瀬波に浮かぶ孤舟の如く、運命の流れに棹さして、巧みにおのれと