岡野原大輔のレビュー一覧
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AIに対してヒトはどう向き合っていくのか考えさせられる。
AIは仕事でもプライベートでも日常的に使っている。万能薬のように、常に正しい答えを教えてくれる存在に感じてしまうが、この本がそれを踏みとどまらせてくれる。
AIはあくまでツールであり、判断と責任を担うのはヒト。「よく判ってないけど、AIがそう言ったからやりました。」は通用しない。ヒトが自らが判断し、責任を引き受け、主体として行動することからは逃げられない。
AIがますます当たり前になるこれからの時代に、とても示唆に富む一冊だった。10年後、20年後に読み返したら、また感じ方が変わるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
岡野原大輔『ヒトとAI』。
特に印象に残ったのは、「人が何かを信用できるのは、専門家・制度・過去の実績といったものが、責任や検証の構造を持っているからだ」という点だった。
AIはどれだけ賢くなっても、責任を引き受けない。だからAIを社会や組織に組み込むなら、単に精度を上げるだけでは足りず、誰に権限を持たせるのか、誰が監査するのか、失敗したときにどう止めるのか、という設計が必要になる。
もう一つ面白かったのが、言語の「曖昧さ」について。
曖昧さは欠陥ではなく、複雑な現実を扱うための緩衝材でもあった。人間同士なら、前提や文脈、文化を共有することで、言葉に書かれていない部分を相互に補完できる。しかしAIは、こちらが与えていない前提や文化まで本当の意味で共有しているわけではない。
だから、AI時代に人間の役割として重要になるのは、「指揮と統合」なのだと思う。
何を目指すのか。どの前提を置くのか。何を良しとするのか。その方向性を人間が設計し、AIには探索や分析、生成のプロセスを任せる。そして最後に、その結果が本当に妥当なのかを人間が判断し、選択に責任を持つ。
自分自身、AIを使うほど「考えるところまで任せてしまっているのではないか」と最近感じていた。
この本を読んで、AIを使わないことが答えなのではなく、むしろ何をAIに委ね、何を自分が引き受けるのかを意識的に設計する必要があるのだと思った。
AIに思考を代替してもらうのではなく、AIを使いながらも、目的設定・統合・判断・責任だけは手放さない。
これが、今のところ自分が一番しっくりきたAIとの付き合い方だった。 -
Posted by ブクログ
言語処理(離散的)を除く、連続的な動画、音声、画像の生成AIの現状の技術レベルを数式を使わず、説明している。あくまで現状なので、まだ汎化にはいたっていない。
難しかった、分からなかったという感想が多いが、私にはよく分かった。
理由を考えると、
1.熱力学・統計力学の知識があった。エネルギーや分配関数への理解が容易になる。
2.多様体、対称性など現代数学の知識があった。
3.計算量や並列処理など計算機工学の知識があった。
4.物理的な意味での位相配位空間の知識があった。
5.流体力学の知識があった。
などが挙げられる。
しかし、本書では喩えを用いながら、簡便に説明されているので、前提知識はいらないという感想ももったが、概して大学学部レベルの物理学の知識があると、理解が容易になる。 -
Posted by ブクログ
人工知能の本、四冊目。この本は薄くて読みやすかったが、「読みやすい」と感じたのはこれまで読んできた蓄積のおかげかもしれない。エッセンスが短くまとまっていて、かつ比較的新しい本(二〇二三年六月発行)なので今の視点での課題や展望も語られ、良いまとめとなった。ただ、六章は難しそうだったので飛ばした。
以下、心に残ったところと、自分の考えたことのみメモ。
■帰納と演繹
これまでの機械学習は帰納的なアプローチであり、演繹的アプローチは苦手であった。だが大規模言語モデル(LLM)は、「人間のように論理をたどって演繹しているわけではない」のに、次の言葉を予測する(=文脈にもっとも自然な単語を選ぶ)という動作を積み重ねるうちに、結果として「演繹っぽい答え」にたどり着くことがある。ここの理屈はよくわかっていないそうなのだが、とにかくふるまいとして「演繹に似ている」ことができている。
人間の仕方とは違うから「わかっちゃいない」と見るか、「実用上問題なし」と見るかは、読み手や使い方によって変わってくるところ。
■幻覚
「幻覚(hallucination)」とは、AIがまだ正解を知らない問いに対して、“それっぽい答え”を出してしまう現象。これは訓練データからの法則やパターンの獲得を目指すことと密接に関係しており、予測精度を上げるための副作用でもある。特に、「記憶」の安定した保持が難しいモデルでは、一度覚えたはずのことを忘れたり壊したりすることもある。そのため、「同じデータを繰り返し見せる(再学習させる)」必要がある。この問題はまだ解決できていない。
論文やレポート作成時に必要な調査をするなど、正確な情報の取得を目的としてAIを使用する場合、 幻覚は「誤情報」「エラー」であり、できるだけ防ぐべきものとなる。AIには再学習やファクトチェック、根拠の明示が求められるし、利用者側も事実の検証が必要(そういう意味では、とりあえず聞いてみるにはいいが、頼りきってはいけないわけで、本当にいつでも正確さを求めるなら「まだ使い物にならない」とも言える)。
一方、愚痴を聞いてもらったり思考整理に付き合ってもらったりといった「話し相手」としての役割を求め、「関係性」を大事にするやりとりの中では、幻覚も「その場でいちばんふさわしい言葉を出そうとした結果」として、“ちょっと違ってたけど、いまのあなたらしいな”と受け止められることもある。
今まで読んできた本のうちいくつかは、「役に立つ道具としてのAI」しか前提にしていないと感じられるものだったが、この岡野原さんの著書は、AIのことを「新しい知能を持った、時には間違えることもある、ちょっと変わった人」として付き合ってはどうかという視点を持ち出しているところがユニークで、「道具」前提の本とは違う、優しさや愛情が感じられた。人とAIと、お互いの良いところを生かして協力し合えばいい、という考え方だ。私は『鉄腕アトム』の世界を思い出したりもした。
『アトム』にも「良いロボット」と「悪いロボット」が出てきて、アトムが悩むようなシーンもあった。岡野原さんの本でも、誰かが悪意を持ってAIを作れば(使えば)いかようにも悪用できるということもリスクとしてしっかり書かれていた。その場合、AIは人間の悪意を反映したに過ぎないのだが、きっともし、ひとたびそういった事件が起きたりその萌芽のようなニュースが流れたりでもすれば、AIは怖い、と悪者にされるような気がする。手塚治虫作品でも、ロボットと人間の共生がそう上手くはいかないことは繰り返し描かれている。
SF好きとしては、小説の世界に近づいてきた…!とわくわくする気持ちもある。その一方で、こうやってわくわくしたり、chatGPTすごいよね〜と一般人が言い合っている「今」が、「人とAIとのいちばん良い時代だった…」なんてあとから言われるようなことにならなければいいな…とも思った。 -
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Chat GPTが登場した時は、本当に驚いた。一方で、「なんでこんな間違いをするんだ!?」と不思議に思うこともあった。ということで、『大規模言語モデル』を理解すべく読んでみた。
「一般向け」としているものの、文系には厳しい部分はあり、特に、本書の要とも言える6章の「大規模言語モデルはどのような動いているのか」はかなり難しい。
とは言え、
①大規模言語モデルがやっていることは、次の単語を予測すること
②訓練されたデータ以外の見たことのない未知のデータではうまく予測できない(これができるように研究は進んでいる)
因みに、私が、2023年4月に開成中学の入試問題(2021年の小問)を解かせたところ、まったくダメ。
③存在しない情報を作り出してしまうという致命的問題がある、そしてそれが何故かが完全には解明されていない
といったポイントは理解でき、『大規模言語モデル』との付き合い方を考える上で有用であった。 -
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2022年末にリリースされたChatGPTがその圧倒的性能を知らしめた「生成AI」というものが、どういった仕組みで動いていて、これまで存在したAIとはどう違うのか、更には現在のような性能に至るまでにどういったモデル(仕組み)があったのかを基礎から説明してくれる良書
ある程度の前提知識が求められているため、本書一冊でゼロから理解することは難しいかもしれないが、入念に読み込んだり他の科学系一般書や科学雑誌などを見ることで、より腑に落ちる形で理解できると思う
そもそもデータとはどういう形で存在しているのか、といった基礎的かつ重要な事柄から、去年(2024年)のノーベル賞の話まで幅広く扱われており多くのトピックで興味がそそられた
付録として、AI学習に欠かせない「機械学習」や「ニューラルネットワーク」についての解説も付いているためそこも読むとより分かりやすくなるだろう -
Posted by ブクログ
やや難解だが、長期記憶やメタ学習が実現されていることを説明した部分は読みごたえがあった。
chatGPTが学習した情報の量は1兆文字、書籍で1000万冊相当分。
1948年、シャノンは情報量(情報エントロピー)と呼ばれる概念を導入した。ある情報がどれだけ予想していない驚くべき情報かを表し、起こりにくい事象が起きた場合は情報量が大きくなる。この情報理論によって、情報を数学的な枠組みの中で扱えるようになった。
2020年、学習する際に使う訓練データの量、利用するモデルのパラメーター数(モデルサイズ)、投入計算量の3つの要因と、言語モデルの検証データの予測誤差との間には、べき乗測が成り立つことが発見された。さらに、検証データの単語の予測性能と、言語理解などの後続タスクのとの間にも、正の相関が見られる。これは言語モデルが自己教師あり学習によって、言語理解に必要な能力を獲得していることを支持する。
ニューラルネットワークでは、誤差逆伝搬法を使って学習に必要な修正量を効率的かつ正確に求められる。
注意機構は、過去の単語列で重要な部分を思い出す短期記憶と考えることができる。トランスフォーマーは、自己注意機構と、三層の全結合層を使ったニューラルネットワーク(MLPブロック)を交互に重ねてデータを処理するモデル。 MLPブロックは、今処理している情報と関連する情報を読み出して処理する長期記憶とみなすことができる。
注意機構はデータを集約する役割があるが、重みパラメーターを一時的に変えているとみなすことができる。大規模言語モデルに使われている自己注意機構は、パラメーターを変えて学習した場合と同様に、指示や今生成しているデータに合わせてモデルを適用させていくことがわかった。言語モデルと自己注意機構の組み合わせによって、複数のタスクを学習することで学習方法自体を学習するメタ学習が意図せずに実現された。