岡野原大輔のレビュー一覧
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自由は何かを久々に考えさせられた。
「選択肢の多さとか可逆性とかではなく、むしろ選択を自分のものとして固定できることこそ"自由"なのである」というのは面白かった。昔から言われている「自由には責任が伴う」と相通ずる感じがした。責任が発生するものにこそ自由も宿ると。
その他、文化は集団学習のための装置であるとか、感情は経験に重みづけを与える機能があるとか、ヒトは限定的な経験から強い(ただし危うさも孕む)抽象化が可能な一方で多様性によって探索空間を拡大しているとか、様々な概念が考えたことがなかった切り口で考察されていて興味深い。
願わくば、それまで定義・考察してきた概念を要所要所で模式図的に表してもらえると、理解を進める上ではありがたかったと思う。 -
Posted by ブクログ
生成AI登場以前は自明だった、「誰が判断し、誰が責任をもって行動するか」という仕事の大前提を、大きく変更する必要が生じているということを、本書では多くの切り口で探り、様々な表現で言語化されている。
生成AIの喧騒から一旦離れて思索に耽るのに、とても良い本だと思う。
生成AIが台頭してから「教育のあり方」「科学研究のあり方」については考えを巡らせていたから、その点に触れられていたのは良い発見になった。
教育について、AIの所為で今の多くの若者たちは本当に厳しい局面を迎えていると思う。社会がまだ生成AIに適合しきっていない中で、下積みの機会としての雇用は奪われ、代わりにシニア社員のような動きを求められる。継続的な自己投資が極めて重要な(多くの人にとって)過酷な世界が待っている。
科学研究について、本書では、大量のアウトプットを所与として、その検証のために膨大な計算リソースが必須な世界観となることが指摘されている。
その通りだと思うし、自然科学の民主性を維持するには計算リソースに関する公的な仕組みづくりも必要だろう。
ただ常に思うのは「神託」のように研究成果をAIが上げてくる世界線で理論科学が人間にとって魅力的な存在であり続けられるのだろうか、ということ。
「神託」ときくと私はすぐに数学者ラマヌジャンを思いつく。彼は証明もなしに誰も到底思い付かない公式を泉のように生み出す唯一無二の奇才で、彼の生き様は映画や書籍にもなって、人類史に深く刻まれた。
生成AIは、すべての科学者をラマヌジャンたらしめる潜在能力がある。そのとき、検証と意味付けは確かにその人の成果であり功績だが、特に理論科学分野においてはどう個人に功績を帰属させるのだろうか。人間には到底辿り着けない成果で埋め尽くされた理論科学を人間社会は感情的にどう受け止めるんだろうか。 -
Posted by ブクログ
言語処理(離散的)を除く、連続的な動画、音声、画像の生成AIの現状の技術レベルを数式を使わず、説明している。あくまで現状なので、まだ汎化にはいたっていない。
難しかった、分からなかったという感想が多いが、私にはよく分かった。
理由を考えると、
1.熱力学・統計力学の知識があった。エネルギーや分配関数への理解が容易になる。
2.多様体、対称性など現代数学の知識があった。
3.計算量や並列処理など計算機工学の知識があった。
4.物理的な意味での位相配位空間の知識があった。
5.流体力学の知識があった。
などが挙げられる。
しかし、本書では喩えを用いながら、簡便に説明されているので、前提知識はいらないという感想ももったが、概して大学学部レベルの物理学の知識があると、理解が容易になる。 -
Posted by ブクログ
人工知能の本、四冊目。この本は薄くて読みやすかったが、「読みやすい」と感じたのはこれまで読んできた蓄積のおかげかもしれない。エッセンスが短くまとまっていて、かつ比較的新しい本(二〇二三年六月発行)なので今の視点での課題や展望も語られ、良いまとめとなった。ただ、六章は難しそうだったので飛ばした。
以下、心に残ったところと、自分の考えたことのみメモ。
■帰納と演繹
これまでの機械学習は帰納的なアプローチであり、演繹的アプローチは苦手であった。だが大規模言語モデル(LLM)は、「人間のように論理をたどって演繹しているわけではない」のに、次の言葉を予測する(=文脈にもっとも自然な単語を選ぶ)という動作を積み重ねるうちに、結果として「演繹っぽい答え」にたどり着くことがある。ここの理屈はよくわかっていないそうなのだが、とにかくふるまいとして「演繹に似ている」ことができている。
人間の仕方とは違うから「わかっちゃいない」と見るか、「実用上問題なし」と見るかは、読み手や使い方によって変わってくるところ。
■幻覚
「幻覚(hallucination)」とは、AIがまだ正解を知らない問いに対して、“それっぽい答え”を出してしまう現象。これは訓練データからの法則やパターンの獲得を目指すことと密接に関係しており、予測精度を上げるための副作用でもある。特に、「記憶」の安定した保持が難しいモデルでは、一度覚えたはずのことを忘れたり壊したりすることもある。そのため、「同じデータを繰り返し見せる(再学習させる)」必要がある。この問題はまだ解決できていない。
論文やレポート作成時に必要な調査をするなど、正確な情報の取得を目的としてAIを使用する場合、 幻覚は「誤情報」「エラー」であり、できるだけ防ぐべきものとなる。AIには再学習やファクトチェック、根拠の明示が求められるし、利用者側も事実の検証が必要(そういう意味では、とりあえず聞いてみるにはいいが、頼りきってはいけないわけで、本当にいつでも正確さを求めるなら「まだ使い物にならない」とも言える)。
一方、愚痴を聞いてもらったり思考整理に付き合ってもらったりといった「話し相手」としての役割を求め、「関係性」を大事にするやりとりの中では、幻覚も「その場でいちばんふさわしい言葉を出そうとした結果」として、“ちょっと違ってたけど、いまのあなたらしいな”と受け止められることもある。
今まで読んできた本のうちいくつかは、「役に立つ道具としてのAI」しか前提にしていないと感じられるものだったが、この岡野原さんの著書は、AIのことを「新しい知能を持った、時には間違えることもある、ちょっと変わった人」として付き合ってはどうかという視点を持ち出しているところがユニークで、「道具」前提の本とは違う、優しさや愛情が感じられた。人とAIと、お互いの良いところを生かして協力し合えばいい、という考え方だ。私は『鉄腕アトム』の世界を思い出したりもした。
『アトム』にも「良いロボット」と「悪いロボット」が出てきて、アトムが悩むようなシーンもあった。岡野原さんの本でも、誰かが悪意を持ってAIを作れば(使えば)いかようにも悪用できるということもリスクとしてしっかり書かれていた。その場合、AIは人間の悪意を反映したに過ぎないのだが、きっともし、ひとたびそういった事件が起きたりその萌芽のようなニュースが流れたりでもすれば、AIは怖い、と悪者にされるような気がする。手塚治虫作品でも、ロボットと人間の共生がそう上手くはいかないことは繰り返し描かれている。
SF好きとしては、小説の世界に近づいてきた…!とわくわくする気持ちもある。その一方で、こうやってわくわくしたり、chatGPTすごいよね〜と一般人が言い合っている「今」が、「人とAIとのいちばん良い時代だった…」なんてあとから言われるようなことにならなければいいな…とも思った。 -
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Chat GPTが登場した時は、本当に驚いた。一方で、「なんでこんな間違いをするんだ!?」と不思議に思うこともあった。ということで、『大規模言語モデル』を理解すべく読んでみた。
「一般向け」としているものの、文系には厳しい部分はあり、特に、本書の要とも言える6章の「大規模言語モデルはどのような動いているのか」はかなり難しい。
とは言え、
①大規模言語モデルがやっていることは、次の単語を予測すること
②訓練されたデータ以外の見たことのない未知のデータではうまく予測できない(これができるように研究は進んでいる)
因みに、私が、2023年4月に開成中学の入試問題(2021年の小問)を解かせたところ、まったくダメ。
③存在しない情報を作り出してしまうという致命的問題がある、そしてそれが何故かが完全には解明されていない
といったポイントは理解でき、『大規模言語モデル』との付き合い方を考える上で有用であった。 -
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2022年末にリリースされたChatGPTがその圧倒的性能を知らしめた「生成AI」というものが、どういった仕組みで動いていて、これまで存在したAIとはどう違うのか、更には現在のような性能に至るまでにどういったモデル(仕組み)があったのかを基礎から説明してくれる良書
ある程度の前提知識が求められているため、本書一冊でゼロから理解することは難しいかもしれないが、入念に読み込んだり他の科学系一般書や科学雑誌などを見ることで、より腑に落ちる形で理解できると思う
そもそもデータとはどういう形で存在しているのか、といった基礎的かつ重要な事柄から、去年(2024年)のノーベル賞の話まで幅広く扱われており多くのトピックで興味がそそられた
付録として、AI学習に欠かせない「機械学習」や「ニューラルネットワーク」についての解説も付いているためそこも読むとより分かりやすくなるだろう -
Posted by ブクログ
やや難解だが、長期記憶やメタ学習が実現されていることを説明した部分は読みごたえがあった。
chatGPTが学習した情報の量は1兆文字、書籍で1000万冊相当分。
1948年、シャノンは情報量(情報エントロピー)と呼ばれる概念を導入した。ある情報がどれだけ予想していない驚くべき情報かを表し、起こりにくい事象が起きた場合は情報量が大きくなる。この情報理論によって、情報を数学的な枠組みの中で扱えるようになった。
2020年、学習する際に使う訓練データの量、利用するモデルのパラメーター数(モデルサイズ)、投入計算量の3つの要因と、言語モデルの検証データの予測誤差との間には、べき乗測が成り立つことが発見された。さらに、検証データの単語の予測性能と、言語理解などの後続タスクのとの間にも、正の相関が見られる。これは言語モデルが自己教師あり学習によって、言語理解に必要な能力を獲得していることを支持する。
ニューラルネットワークでは、誤差逆伝搬法を使って学習に必要な修正量を効率的かつ正確に求められる。
注意機構は、過去の単語列で重要な部分を思い出す短期記憶と考えることができる。トランスフォーマーは、自己注意機構と、三層の全結合層を使ったニューラルネットワーク(MLPブロック)を交互に重ねてデータを処理するモデル。 MLPブロックは、今処理している情報と関連する情報を読み出して処理する長期記憶とみなすことができる。
注意機構はデータを集約する役割があるが、重みパラメーターを一時的に変えているとみなすことができる。大規模言語モデルに使われている自己注意機構は、パラメーターを変えて学習した場合と同様に、指示や今生成しているデータに合わせてモデルを適用させていくことがわかった。言語モデルと自己注意機構の組み合わせによって、複数のタスクを学習することで学習方法自体を学習するメタ学習が意図せずに実現された。