山際淳司のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
日本でスポーツノンフィクションという文学ジャンルを作り上げた故山際淳司によるプロ野球人を主人公にした9つの短編集。
どの作品も昭和時代で、今のプロ野球界との違いを感じられる点でも面白い。特に投手の扱い方。完投、中3日登板は当たり前の時代だった。
表題作は、連続出場試合の世界記録を達成した衣笠祥雄のラストシーズンを記した短編だが、最近亡くなった故人を主人公にした作品をタイトルにすれば、売れるだろうという業界のあざとさを感じる。9作品の中でもあまりデキが良いとは思えなかった。
オススメはアウトコース打ちが得意な落合博満のアウトローな人生を紹介する作品と、村田兆治が肘の手術後の復活を懸けるシーズンを描いた作品。
どの作品でも著者は選手に密着し、インタビューではない、個人的な会話をもとにストーリーをふくらませる。浮かび上がるのは、各選手のプロ野球人としての個性、実績ではなく、一つのことに没頭する人間のオタク的指数。 -
Posted by ブクログ
■内容
昭和の野球界のスターであり、花形であり、球団の顔であり、指導者であった−衣笠祥雄・星野仙一・根本陸夫・東尾修・荒木大輔・落合博満・田淵幸一・江夏豊−の9人と同時代を生きた作家・山際淳司が著した
ノンフィクション集。
彼らが活躍したあの時代、各球団には衆目一致のスターがいた。オールスターはまさしく吉例顔見世興行であり、ベンチでは牢名主のごとく皆ふんぞり返っていた。そのひとりであった星野仙一は2018年に亡くなり急、衣笠祥雄も星野仙一を追うようにして亡くなった。
本書で半分近くページを占める、衣笠祥雄の連続試合出場を追った『バットマンに栄冠を』は実に読み応えがあった。
引退の前年、泥沼のスランプにもがき苦しんでいる最中、気晴らしで出かけたバーで「ドライマティーニ」を
オーダー。その理由は、MLBで512本のホームランを
打ったスラッガーが語った「ホームランを打ちたければ、ドライマティーニを飲むことだ」に倣ったそうな。洒落で語ったメジャーリーガーの言葉にさえすくいを求めた鉄人。
また、衣笠といえば豪快なフルスイング。長年バットを昼夜問わず振り続けたきたツケが「金属疲労」を生み、満身創痍状態で試合に出続けた。それでも素振りをやめようとしない彼を見て、トレーナーは「オーバー・スイング・シンドローム」と呼んだ。
衣笠祥雄に名前の前に付けられる「鉄人」。17年の永きにわたって築いた2215試合連続出場記録によってつけられたと思われているが、実はそうではない。最初につけた背番号「28」が漫画「鉄人28号」と揶揄され鉄人と呼ばれた。
たまたま付けた背番号に起因するニックネームを積年の研磨によって、称号に変えた男であった。背番号との不思議な因縁を感じずにはいられないエピソードだ。
■感想
昭和の球界レジェンドたちとドライな関係でありながらも、息遣いを感じる距離にいた著者だから知る、素顔であり背中を、抑揚の効いた文体で“一木造り”のように描く。
僕自身が野球を見始めたのがジャイアンツのV9あたり
からだから、取り上げられた全プレイヤーの現役時代を知るだけに、ひとりのプレイヤーの話を読み終えてはしばし郷愁に浸った珠玉の短編集。 -
Posted by ブクログ
山際淳司は、1948年神奈川県生まれのノンフィクション作家。
1980年に、本作品集に収められた『江夏の21球』を、文藝春秋の『Sports Graphic Number』の創刊号に発表して注目され、以後、さまざまなスポーツをテーマにした作品などを発表。本作品集は、1981年に角川書店日本ノンフィクション賞を受賞した。
その後、NHKの「サンデースポーツ」のメインキャスターなども務めたが、1995年に46歳で急逝。
私は、ノンフィクションやエッセイが好きで、沢木耕太郎はじめ、多数のノンフィクション作家、エッセイストの作品を読んできたが、遅ればせながら手にしたこの作品集は、山際氏の比類ない、主題を見つける鋭い選球眼、それを安打にする高い技術力、そして、相手への徹底した取材という豊富な練習量の存在を改めて知らしめてくれる。
デビュー作にして代表作の『江夏の21球』は、1979年の日本シリーズ・広島カープ対近鉄バッファローズ第7戦の9回裏という、プロ野球史でも有名なシーンを取り上げた作品であるが(尤も、この作品があったために、よりドラマ性を増して有名になったと言えるのかもしれないが)、その他の7作品は、必ずしも一般の人々の記憶に強く残っている選手、シーンを取り上げたものではない。それでも、それぞれのストーリーには間違いなく必然と偶然が絡み合った綾があり、結果としての成功と失敗があり、それはまさに人生を凝縮したものであることを、山際氏は淡々としたタッチでさりげなく描いているのだ。
最後の作品『ポール・ヴォルター』はこうして結ばれている。
「ふと思い出した台詞がある。ヘミングウェイが、ある短編小説のなかでこんな風にいっているのだ。「スポーツは公明正大に勝つことを教えてくれるし、またスポーツは威厳をもって負けることも教えてくれるのだ。要するに・・・」といって、彼は続けていう。「スポーツはすべてのことを、つまり、人生ってやつを教えてくれるんだ」悪くはない台詞だ。」
(2018年8月了) -
Posted by ブクログ
衣笠選手が亡くなったと聞いて真っ先に思い出したのが、故 山際淳司氏の代表作、「江夏の21球」で、この本を見っけ出して購入した。最初に読んだのはいつだろう?書かれたのは昭和55年で、僕はこの作品が収録された「スローカーブをもう一球」という文庫本で読んだから、高校生か、大学生の頃じゃないだろうか。
「江夏の・・・」は単純な話だ。
恐らく当時の日本において、野球を見たことはなくても、スポーツニュースを見たことのある人なら、必ず日にしたことのある昭和54年の日本シリーズ第7戦の大詰め、スクイズバントが失敗するに至る江夏、そして彼のマウンドをとり囲む人々の話だ。そして、その中でマウンドに立つ江夏のただ一人の理解者として衣笠祥雄氏が登場する。
それが衣笠選手の訃報を聞いてこの本を思い出した理由だ。 -
Posted by ブクログ
【本の内容】
たったの一球が、一瞬が、人生を変えてしまうことはあるのだろうか。
一度だけ打ったホームラン、九回裏の封じ込め。「ゲーム」―なんと面白い言葉だろう。
人生がゲームのようなものなのか、ゲームが人生の縮図なのか。
駆け引きと疲労の中、ドラマは突然始まり、時間は濃密に急回転する。勝つ者がいれば、負ける者がいる。
競技だけに邁進し、限界を超えようとするアスリートたちを活写した、不朽のスポーツ・ノンフィクション。
[ 目次 ]
八月のカクテル光線
江夏の21球
たった一人のオリンピック
背番号94
ザ・シティ・ボクサー
ジムナジウムのスーパーマン
スローカーブを、もう一球
ポール・ヴォルター
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]