山際淳司のレビュー一覧
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「山際淳司」の、スポーツノンフィクション作品集『スローカーブを、もう一球』を読みました。
「山際淳司」作品は、昨年12月に読んだ『みんな山が大好きだった』以来ですね… スポーツ関係の作品が続いています。
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たったの一球が、一瞬が、人生を変えてしまうことはあるのだろうか。
一度だけ打ったホームラン、九回裏の封じ込め。
「ゲーム」―なんと面白い言葉だろう。
人生がゲームのようなものなのか、ゲームが人生の縮図なのか。
駆け引きと疲労の中、ドラマは突然始まり、時間は濃密に急回転する。勝つ者がいれば、負ける者がいる。
競技だけに邁進し、限界を超えようとす -
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スポーツノンフィクションという分野の先駆けともいえる存在の故山際淳司氏。その山際氏によるオリンピックに関わる種目を題材にした短編集です。登場する種目は、漕艇(シングルスカル)、ソフトボール、棒高跳び、バレーボールなどです。
オリンピックで金メダルを狙えるような超一流のアスリートを題材にしたノンフィクションも確かに良いです。しかし、本書で取り上げられているのはいずれも無名の、それでいてオリンピック出場に掛けていた人たちです。
本書の解説でも触れられていますが、誰もが知っている超有名なアスリートではない、無名の選手を描いてもなお、読者を引き込むノンフィクションに仕立て上げる山際氏の技量がいかんなく -
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山際淳司氏と言えば、スポーツノンフィクションというスタイルを確立した人です。代表作は1979年の日本シリーズ 広島vs近鉄 の第7戦9回裏の攻防を描いた「江夏の21球」。以来、選手の人間性を深く描いた作品を多く発表されましたが、1995年に46歳で亡くなられました。
山際氏の多くの作品は、現在ではほとんどが絶版となっており、手にすることができません。2018年に衣笠祥雄氏が亡くなられた際に、衣笠氏を取り上げた「バットマンに栄光を」を含む過去の山際氏の短編を集めたのが本書です。登場するのは、星野仙一氏(中日ドラゴンズ監督)、根本陸夫氏(ダイエー監督)、村田兆治(ロッテオリオンズ)、東尾修(西部ラ -
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この本を手にしたのは、『「考える人」は本を読む』(河野通和)のなかで紹介されていたのが直接のきっかけだったけど、この本のなかに収めらている『江夏の21球』で話題になってテレビでも盛んにとりあげられていた大学生時代、読んでみたいと思いながら、そのまま忘れていた作品でもある。
この本のカバーの裏にある山際淳司さんの写真をじっと見つめていると、かつてNHKのサンデースポーツのキャスターをしていた姿が思い出されてくる。この眼鏡の下の鋭い眼差しが、ゲストにきたスポーツ選手から微熱を帯びた秘話を引き出していたのを思い出す。そして、その眼差しが、スポーツをする特定の人物を徹底的に掘り下げて、描写してく -
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山際淳司を一躍売れっ子スポーツノンフィクションライターにならしめた「江夏の21球」。昭和54年近鉄VS広島の日本シリーズ第7戦。9回裏無死満塁の攻防。広島の守護神江夏がこの絶体絶命の窮地に投じた21球。近鉄かほとんど掌中にしていた念願の日本一を引き剥がした運命の19球目。要した時間は26分49秒。40年経った今なお多く野球ファンの記憶に残る、あの伝説の試合がありありと蘇る。
復刻版となり数十年ぶりに再読。あらためて著者の複眼的な筆致の巧さに唸ってしまった。視点が江夏ひとりに注がれるのではなく、古葉監督に向けられたかと思えば、サードの衣笠に、そして西本監督へとパーン。各々の立場から見た戦況に切 -
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山際淳司さんも「パック・イン・ミュージック」を聞いていたのかもしれない。本書に収録された「たった一人のオリンピック」を読んでそう思った。野沢那智&白石冬美の深夜放送「パック・イン・ミュージック」で「ボートの津田」が話題を呼んでいた頃、よく聞いていた。津田選手はある日突然、「オリンピック選手になろう」と決意して実際にボートのシングル・スカル日本代表になってしまった。恐らく津田選手の友人の投書が発端だったのだろうが、津田選手の話題は断続的に続いた。よほど運と才能に恵まれた人なのだろうな、と当時は思っていた。
本書を読んで、それが誤解であったことが分かった。いくら競技人口の少ないボートでも、いく -
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ノンフィクション作家山際淳司を有名にした、
デビュー作の江夏の21球を読んでみたかった。
本書は、江夏の21球を含む、8作品が収められている。
江夏の21球、しびれた。
スポーツのノンフィクションにはドラマがある。
現実はドラマに満ちている。
勝負をめぐる攻防。
それは、見方のベンチも、エースも、相手も、
真剣なわけで、
その中で心理はめまぐるしく変わり、交錯していく。
どの作品も、どこかに人間の哀しみを含んでいるように感じた。
勝者もまた、哀しみとは無縁ではないのだ。
読めてよかったなぁ、という作品ばかりで、
江夏の21球はよかったが、
それ以上に、本書のタイトルにもなっている、ス -
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高校生のときに、毎月1冊国語教師指定の本を読んで
感想を書くという課題?のようなものがあって
その中に含まれていた一冊。
読んだときに強烈な印象を受けたので
ずっとこの本のことは頭に残っていたけど
最近野球に目覚めたことをもあり、
今回再読してみることにした。
スポーツルポルタージュというかスポーツノンフィクションというか
そういったもので好きな作家は山際淳司と沢木耕太郎だけど、
スポーツノンフィクションを読むと
選手に対しての感情のやり場に困ることが多い。
一瞬の輝きを放ち名勝負を作り上げても
そこには必ず勝者と敗者がいて、
敗者の人生、勝者の人生をある意味決定づけてしまう。
そのた -
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私は角川文庫が苦手である。
決して社風が苦手とか、「あそこのレーベルはろくな本がない!」というわけではない。そうではなくて、なんだか、読みにくいのだ。それが文字の大きさなのか、フォントなのか、レイアウトの仕方なのかは、わからない。深く研究したことはないが、これはもう、相性、としかいえない。
少なく見積もって200冊はある私の本棚に、角川文庫は本書が3冊目である。そのうち「最初から最後まで読んだ本」は、一冊もない。つまり、本書の中のいくつかのエピソードは、最後まで読んでいない。
すべて読まずにレビューを書く、ということに抵抗感を抱かずにはいられないし、これを読んでいる方にはそう思われる方 -
Posted by ブクログ
久々に彼の作品を読んだ。彼の肩書きを見るとスポーツ・ノンフィクションライターとしてある。スポーツモノのジャーナリストの草分け的存在だと思う。
他界してから何年になるのだろうか。今年のアテネ五輪や日本韓国で開催されたワールドカップとか、どのような視点に注目して書いたか見てみたとつくづく思う。残念で仕方ない。
この本の話はジャイアンツV9、最後の年を中心に、それぞれ色々な立場から見て書かれている。世代的には今の僕より2年3年上だったら、もっとリアルタイムに感じて楽しめたかもしれない。
それでも、彼の書く作品にはスポーツの思いや愛を感じられる。人物を中心に書く
チームを中心に書く場合でも、そこに出て