山際淳司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
美しい小説を読んだ、というのが正直な感想だ。山際淳司の小説は、常に美しいので今更かもしれないが。シンプルなものには、美しさがある。山際淳司の小説は、いつもシンプルな構造をしている。謎解きも複雑な人間関係もなく、ただスポーツと携わる人間たちだけが、明解に描写されているのだ。
文字世界のフットボールは、切ない。30代になっても、アメフトを愛さずにはいられないプレイヤーたちの姿がある。日々の仕事に疲れ、人間関係に倦んでも。ヘルメットをかぶり、プロテクターをつけてフィールドに向かうとき、彼らの目は輝いている。退屈な過去も先の見えない未来も忘れて、ただ勝利を手にするために。
『タッチ、タッチ、ダウン』は『アイシールド21』の高校生たちの、あり得るかもしれない未来かもしれない。若さの盛りを過ぎても、フットボールから離れられない大人たちの姿。それは一抹の切なさと、目を放せない格好良さを併せ持っていた。
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Posted by ブクログ
久々に彼の作品を読んだ。彼の肩書きを見るとスポーツ・ノンフィクションライターとしてある。スポーツモノのジャーナリストの草分け的存在だと思う。
他界してから何年になるのだろうか。今年のアテネ五輪や日本韓国で開催されたワールドカップとか、どのような視点に注目して書いたか見てみたとつくづく思う。残念で仕方ない。
この本の話はジャイアンツV9、最後の年を中心に、それぞれ色々な立場から見て書かれている。世代的には今の僕より2年3年上だったら、もっとリアルタイムに感じて楽しめたかもしれない。
それでも、彼の書く作品にはスポーツの思いや愛を感じられる。人物を中心に書く
チームを中心に書く場合でも、そこに出てくる敵対する人物やチームといったものにも悪役は登場しない。そんなところも魅力の一つだと思う
(04/12/9) -
Posted by ブクログ
昭和時代のノンフィクション。
タイトルは知ってたが、実際、読んではない。
この時代のスポーツと言えば根性論の時代だ。
のらりくらりとやると監督コーチから怒られるのが、当たり前。でも、ここに出てくる人間はスポーツエリートではない。ごく普通の人間たちだ。
今から考えると、作家の山際淳司はよく書けたと思う。それも今でも読めるのは、作家の先見の明だ。
「江夏の21球」以外スポーツはプロではない。
昭和時代のスポーツと言えば野球と相撲だけか?
相撲もスポーツとは違うような気がするが…
読んで気がついたのは、ボイコットがあったオリンピックの時か。そんな時代もありました。
26/03/28 ノンフィクションなので冊数には入れません。 -
Posted by ブクログ
山際さんという人は、自分からすればだけど結構旧い時期から書いていたんだな。この本の中に1973年に書いたというものがあって知った。
昔、江夏の引退から始まったナンバーという雑誌が好きでよく読んでいたんだけど、この山際さんとか、他のスポーツノンフィクションライターたちが実に魅力的な話を紡いでいて、週刊ベースボールにも月刊ジャイアンツにもない、何というかな、それまで読んだことのないような、一種の郷愁のようなものを感じさせる文章と、写真がまた面白かった。
しかし、この本もそうだけど、落合だったり、東尾だったり、タイトルの衣笠、田淵、星野、村田…こうしてみるともう3人も亡くなってしまってるんだな。いや、そういうことではなくて、何故巨人の選手は取り上げてもらえてないのだろう。
いや、違うのか。他の新聞も雑誌もテレビもラジオも昭和の50年代から60年代は、本当に巨人、巨人、巨人だったのだと。だからこそナンバーのような雑誌は「巨人以外」の路線を貫いたのだろうな。
なのであれば、今は逆に敢えて巨人をぐりぐり掘り下げていく、そういうノンフィクションライターさんがいてもいいのになあと思う。大谷もいい、山本もいい、今永、松井、ダルビッシュ…そこにいくのもいいけれど、やっぱり、ジャイアンツ。そういう本が読みたいなあ… -
Posted by ブクログ
山際淳司を知ったのはNumberの「江夏の21球」。ノンフィクションの再録だったかなぁ。いずれ、他の作品も読んでみたいと思っていました。店頭で見かけて購入。
「背番号94」「ザ・シティ・ボクサー」が心に残りました。
どちらも、王道をゆく物語ではないので、読んでいる最中はもやもやしていました。爽快感や悲劇性があるわけでなく、雑に言ってしまえば御涙頂戴ではないんです。
ただ、全ての物語が、わかりやすい栄光と挫折であるわけではない。自分の好みの物語があるわけではない。「江夏の21球」がドラマティックなだけに、そう決めつけて読んでいたのかもしれません。期待が決めつけになってしまっていて、先入観が多分にあったんでしょう。
収録されている8作は、どれも1980年のもの。昭和の臭いも感じることができます。体罰・しごきという言葉が普通に出てくる場面もありますから。
それが当たり前だった時代は、確かにあったという事実。語り手も聞き手も読み手も、そこに疑問を感じていないというところが、遠い遠い過去の感覚になってしまうのだけど。40年前の出来事に、心動かされることがあるのは、スポーツに期待しているものは、変わらないのでしょう。この先もきっと。自分はね。
体罰・しごきの是非を問う作品でもないですしね。ふと思ったのは、いつか将来には、現代の表現にそぐわないと言う理由で、注意書きされちゃうのかなぁ。
差別的な表現とされて使われなくなった言葉には、巻末や巻頭に注意書きあったりしますからね。風俗のことをトルコと言っていた時代なので、表現そのまま収録で、それについてのコメントがありました。
かつて、使われていた言葉は、そのまま収録して欲しいと思います。作者が変更するのであれば別かと思いますが、グインの1巻のように。
勝手に改竄されて無かったことにしてしまうのが、一番良くないことと思います。
過ちをただした過去があるのなら、それを提示することが大事だと思うので。
難しいことで、一朝一夕にどうにかなるものではないですけども。自分も無意識にあ過ちを犯しているとも思うし。
成長、進歩するには、大事なことと思うのです。過ちを振り返ることは。とらわれてはいけないですが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ山際さんのスポーツに対する切り取り方が画期的だったと思う。
スポーツ、とくに頂点を目指す人間をいかにもスポーツマンというキラキラした世界に閉じ込めず、もっと人間らしいというか痛い部分を描き出している。
もちろん皆と違う頂に登る人間は、それはストイックでいろいろなものを犠牲にしている。だけどこの本の登場人物はそれがその人間のあたりまえだった(よくも悪くも)のだなぁと思い当たらせる。その人たちはその人たちのあたりまえを生きてそこに立った。それしかないというか。
最後の「スポーツはすべてのことを、つまり、人生ってやつを教えてくれるんだ」っていうヘミングウェイの言葉がすとんと腑に落ちる。
普通のスポーツ・ルポでは切り込まないようなどうしようもなく人間臭いところをみせる山際さんの本はほんと好き。
第八回日本ノンフィクション賞受賞作。