山際淳司のレビュー一覧
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美しい小説を読んだ、というのが正直な感想だ。山際淳司の小説は、常に美しいので今更かもしれないが。シンプルなものには、美しさがある。山際淳司の小説は、いつもシンプルな構造をしている。謎解きも複雑な人間関係もなく、ただスポーツと携わる人間たちだけが、明解に描写されているのだ。
文字世界のフットボールは、切ない。30代になっても、アメフトを愛さずにはいられないプレイヤーたちの姿がある。日々の仕事に疲れ、人間関係に倦んでも。ヘルメットをかぶり、プロテクターをつけてフィールドに向かうとき、彼らの目は輝いている。退屈な過去も先の見えない未来も忘れて、ただ勝利を手にするために。
『タッチ、タッチ、ダウン』は -
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久々に彼の作品を読んだ。彼の肩書きを見るとスポーツ・ノンフィクションライターとしてある。スポーツモノのジャーナリストの草分け的存在だと思う。
他界してから何年になるのだろうか。今年のアテネ五輪や日本韓国で開催されたワールドカップとか、どのような視点に注目して書いたか見てみたとつくづく思う。残念で仕方ない。
この本の話はジャイアンツV9、最後の年を中心に、それぞれ色々な立場から見て書かれている。世代的には今の僕より2年3年上だったら、もっとリアルタイムに感じて楽しめたかもしれない。
それでも、彼の書く作品にはスポーツの思いや愛を感じられる。人物を中心に書く
チームを中心に書く場合でも、そこに出て -
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山際さんという人は、自分からすればだけど結構旧い時期から書いていたんだな。この本の中に1973年に書いたというものがあって知った。
昔、江夏の引退から始まったナンバーという雑誌が好きでよく読んでいたんだけど、この山際さんとか、他のスポーツノンフィクションライターたちが実に魅力的な話を紡いでいて、週刊ベースボールにも月刊ジャイアンツにもない、何というかな、それまで読んだことのないような、一種の郷愁のようなものを感じさせる文章と、写真がまた面白かった。
しかし、この本もそうだけど、落合だったり、東尾だったり、タイトルの衣笠、田淵、星野、村田…こうしてみるともう3人も亡くなってしまってるんだな。いや -
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山際淳司を知ったのはNumberの「江夏の21球」。ノンフィクションの再録だったかなぁ。いずれ、他の作品も読んでみたいと思っていました。店頭で見かけて購入。
「背番号94」「ザ・シティ・ボクサー」が心に残りました。
どちらも、王道をゆく物語ではないので、読んでいる最中はもやもやしていました。爽快感や悲劇性があるわけでなく、雑に言ってしまえば御涙頂戴ではないんです。
ただ、全ての物語が、わかりやすい栄光と挫折であるわけではない。自分の好みの物語があるわけではない。「江夏の21球」がドラマティックなだけに、そう決めつけて読んでいたのかもしれません。期待が決めつけになってしまっていて、先入観が多 -
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ネタバレ山際さんのスポーツに対する切り取り方が画期的だったと思う。
スポーツ、とくに頂点を目指す人間をいかにもスポーツマンというキラキラした世界に閉じ込めず、もっと人間らしいというか痛い部分を描き出している。
もちろん皆と違う頂に登る人間は、それはストイックでいろいろなものを犠牲にしている。だけどこの本の登場人物はそれがその人間のあたりまえだった(よくも悪くも)のだなぁと思い当たらせる。その人たちはその人たちのあたりまえを生きてそこに立った。それしかないというか。
最後の「スポーツはすべてのことを、つまり、人生ってやつを教えてくれるんだ」っていうヘミングウェイの言葉がすとんと腑に落ちる。
普通のスポー -
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日本でスポーツノンフィクションという文学ジャンルを作り上げた故山際淳司によるプロ野球人を主人公にした9つの短編集。
どの作品も昭和時代で、今のプロ野球界との違いを感じられる点でも面白い。特に投手の扱い方。完投、中3日登板は当たり前の時代だった。
表題作は、連続出場試合の世界記録を達成した衣笠祥雄のラストシーズンを記した短編だが、最近亡くなった故人を主人公にした作品をタイトルにすれば、売れるだろうという業界のあざとさを感じる。9作品の中でもあまりデキが良いとは思えなかった。
オススメはアウトコース打ちが得意な落合博満のアウトローな人生を紹介する作品と、村田兆治が肘の手術後の復活を懸けるシー