小倉孝保のレビュー一覧
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これは貧困と搾取が生み出した、一人の男の悲劇的な恋の末路だ。
ロンドン、ヒースロー空港近郊の道に頭から血を流した男が横たわっていた。
近所の住人は朝、外で大きな音がするのを聞いた。
現場検証に来た警察官は、ヒースロー空港へ着陸していく飛行機を見上げていた。
男の名はジョゼ・マタダ。
アンゴラ発ヒースロー行の飛行機の車輪格納庫に忍び込んで密航しようとしたが、高度一万メートル、マイナス60℃の酸素の薄い空気で体力を消耗し、着陸時に扉が開いたときに落下して時速200kmで地面に叩きつけられて墜落死した。
奴隷社会の絶望と、一人の女性に希望を賭けた。
アフリカ社会の現代を追うノ -
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ネタバレ2012/9/9-0750AM
ロンドン警視庁に緊急通報が入る。
ロンドン西部、リッチモンド・アポン・テムズ区、モートレイクのポートマン通りに人が倒れて死んでいるように見える、とのこと。
普段は静かな住宅街に、多くの警察官が集まり、現場での捜査が始まった。
しばらくすると、警察官は上空を気にし始めた。
現場はヒースロー空港から13キロ程度。
被害者は、どうやら現場上空で着陸のために車輪を出したとき、格納部から墜落したようだと考えられた。
身元確認などで捜査は難航するが、次第に状況が明らかになってゆく。
亡くなったのはモザンビーク出身の男性、ジョゼ・マタダ。
死亡した日はマタダの26歳の誕生 -
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ヒースロー空港の直前で着陸態勢に入ったアンゴラからのBA便の主脚格納部から墜落して死亡した26歳の男の人生を追うノンフィクション。主題はアフリカ人がアフリカ人を奴隷のように扱う現状と、行政の不正、絶対的な貧困なんだけど、僕が興味を持ったのは、その男性が欧州を目指すことになった要因の一つとなった女性の人生。実はこちらも凄まじい。
女性は82年生まれ。父親は英国人で母親はスイス人。母方は祖母がブラジル人で祖父がドイツ人。国籍はスイスとドイツで、望めばイギリス国籍もすぐに取れる。日常的に母親のフランス語、父親の英語、祖父母のポルトガル語とドイツ語に囲まれて育った。2歳の頃から家族でサハラ砂漠に渡 -
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小学校にほどんど通うことなく、読み書きができないまま大人になった西畑保さんの実話。
料理人として社会には出れたけれど、読み書きができないことをずっと引け目に感じていた西畑さん。優しい皎子さんと結婚して、その後夜間中学で読み書きを習得する。
前半の人生はしんど過ぎて、本当につらかっただろうな。と思う反面、遅れてもいいからなぜ自分で読み書きを勉強しなかったんだろう?という疑問も持ってしまって。読み進めていくうちに、それがどんなに大変なのかがわかった。鉛筆を持つことも字を書くという行為も私たちが考える以上にハードルが高いのだね。読み書きができないことへの世間の冷たさは容易に想像できます。
西畑さんに -
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女子柔道の母がユダヤ系アメリカ人とは!
当然、日本人の女性が先頭になってその確立に尽力したのかと勝手に思っていました。
大柄なあり余る体力を若い頃は非行に走ったことも逮捕·留置されたこともあるが、柔道に出会ってからその魅力に取り憑かれ、女子柔道の世界選手権やオリンピックの競技化に道を拓いた外国人が居たなんて全く知りませんでした。
名誉や地位、金銭に淡泊でただ一途に柔道取り組んだラスティ、骨髄癌で82才でなくなるもその功績に晩年日本から叙勲を受けたり、再婚の相手である日本人の柔道家鹿子木氏との幸せな私生活もあったことが幸いです。
勝利のみを競わず、人間的成長、精神修養を重視する日本柔道に心を動 -
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100年の歳月をかけて完成した中世ラテン語辞書。本書は、特派員記者である著者が2014年秋ロンドンで「中世ラテン語辞書作成プロジェクト完了」の記事を読んで興味を持ったことをきっかけに、関係者への取材をしてまとめたものである。
英国人のつくった本格的な中世ラテン語辞書の必要性が英国知識人の認識となっていた1913年、OEDと同じやり方での辞書づくりのアイディアーボランティア「ワードハンター」の協力を得て、英国古文献からラテン語を採取してもらうーが出され、英国学士院の事業として実施されることとなった。
二度の大戦という試練を乗り越え、事業は継続されていったが、その間には財政問題や編集に時間 -
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読みやすく、中世ラテン語辞書の制作過程がよくわかり興味深かった。また、辞書編纂史も手際よくまとめられている。
しかし、どうにも著者独自の言葉遣いが気になって仕方なかった。特に辞書についての話題だけに「言語」という言葉の使い方がいただけない。
「... 西ローマ帝国滅亡後、各地域の言語に影響を受けながら使い続けられたのが中世ラテン語だった。」 P.38
ここでは通常の意味「ある特定の集団が用いる、音声または文字による事態の伝達手段。個別言語。日本語・英語の類。」(広辞苑)である。英語では "language"である。
しかし、次の例に代表されるように「言語」という語の