乾信一郎のレビュー一覧
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『黄色いアイリス』ではじめましてだったパーカー・パインについてもっと知りたくて、短編集を手に取りました。
前半は"パーカー・パイン劇団"が奮闘するお話、そして中盤からはパイン氏が旅先で出会う"不幸な人たち"の悩みを解決する構成に。
単発ドラマとして発展できそうな形だけに、パイン氏の登場がこれ限りなのがなんとも残念。月曜20時のドラマでやってそうなのに……。
個人的に好きだったのは「退屈している軍人の事件」。『ハロウィーン・パーティー』に登場したリンゴ好きのオリヴァ夫人の筋書きに、思わずニヤリ。こういう誰も傷つかない結末にはほっこりしてしまいますね。
多くの活躍はありませんでしたが、パーカー・パイン氏(とその仲間たち)と「あなたは幸せ?」の新聞広告には、一度読んだら忘れられない印象を植え付けられたのでした。 -
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ネタバレクリスティの長編ミステリー。探偵役は(一応)マープル。
推理小説の探偵物でよくある光景が警察官が無能であり、探偵の足を引っ張る構図だ。探偵を邪険に扱い(場合が場合なので仕方ない部分もあるが)、的外れな推理をしてんで真実に辿り着けない様な人物や事柄を重宝し、しまいには探偵が解き明かした真実を受け入れ犯人を我が物顔で逮捕し、探偵に笑顔を振り撒いて一件落着する。ある種のお約束だ。さて、では、もし探偵がいる中で警察官がとても優秀だったらどうなるのか。答えは「面白味に欠ける」だった。
今作に出てくるオヤジさんこと主任警部のフレッドは優秀であり、完全にマープルが脇役になっている。読者は当然、探偵の活躍を見たい訳で、勿論、今まで上記の様な不平不満を言ってきた訳だがあくまで探偵役、真実を解き明かすのはマープルであり、警察官は彼女の推理に感嘆するというのが大好きだった事に気付いた。今回はバトル警視の様な形が良かったのではと感じてしまう。マープルの存在感が余りにも小さかった。
事件発生までバックボーンにある強盗事件などが取り上げられ、どうやら登場人物達に関係がありそうだという事がわかる。更には昔の様式を現代に受け継いでいるバートラムホテルが舞台となり、マープルは子供の頃訪れたこのホテルを姪からのプレゼントで訪れる事になる。
美しい秩序あるホテルが舞台であり楽しい印象を得る。荘厳ではありながらも何処か現実的ではない何かを感じるホテル。従業員達は一流であり、滞在客は昔の時代からやってきた様な年寄りと外国人達。そこで始まっていく事件。序盤中々何事もおきず、中盤からようやく物語が進行していく。
今作の母娘は印象的で、娘についてはリドルストーリー的な雰囲気で幕を閉じる。後見人など、彼女の幸せん願っている事に間違いはないが、最後は何とも悲劇的な幕切れだった。改めてマープルの関わり方が不明。
作中でマープルがロンドンを満喫している様子は滅多に見られない描写で嬉しく思った。しかし彼女は何処に行っても殺人と巡り遭う運命なのだろう。
余りにも広範囲の事件になる為、やはりノンタイトルで整理されたら一級品だった様に思う。ドンデン返しの犯人は想像を超え、最終章だけならクリスティ作品の上位に挙げても良いくらいだ。 -
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ネタバレスラング的な表現が多く、脳内混乱。物語の展開上、前段の非道なシーンは必要なのだと思うものの、読むのはちょっとしんどい。しかし、この混乱が狙いなのかもしれない。研究所の人たちが話す普通の言葉は、読みやすく理解しやすい一方で「平坦で面白味のない言葉」に思えたのも相対性のなせることなのか。
主人公に対して最初は「すごくイヤダ~」という距離を置きたい感が強かったのが、研究対象にされてしまうあたりはちょっと同情する気持ちが出てくる。悪い人に対して、もっと悪い人や権力の強い人が出てくると、相対的に最初の悪い人に対しての感情が薄くなるような気がします。小説でも、ドラマや映画でも。 悪いことの事実は変わらないのに、不思議です。
時計じかけのオレンジは、若者の事をさしているのかなと思いながらも本当に時計じかけになっちゃってんのは研究機関などの大人たちなのかもしれない。さらに言うと、上記の相対性のからくりに巻き込まれている読者とも言える。 -
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“身上相談探偵(?)”、パーカー・パインを主人公とした連作12話の短編集です。
「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を。」
↑こちらの広告にホイホイされて、パーカー・パイン氏の事務所を訪れた人達のお悩みを、パイン氏の指示を受けた事務所のスタッフ達があの手この手で解決していく展開です。
この、“チーム・パイン”のメンバーとして、ミス・レモンやオリヴァ夫人といった、ポアロものにもちょいちょい出てくるキャラが登場したりというサービス(?)も嬉しいですね。
様々な立場の人々の、あらゆるお悩みを、“今度はどんな筋書きで解決するのかな~”と、何だか大掛かりなドッキリを思わせるような仕込みっぷりを楽しみながら読ませて頂きました。
ただ、解説にもありましたが第七話「あなたは欲しいものをすべて手に入れましたか?」以降は、パイン氏が中東、エジプト、ギリシャ等に旅立ち、行く先々で事件に巻き込まれてそれを推理するという、トラベル・ミステリに方向転換しています。
「“お悩み解決”では“ミステリ”が足りない!」と、クリスティーが思ったのかどうかは謎ですが、個人的にはもうちょい“チーム・パイン”(又は“パーカー・パイン劇団”・脚本オリヴァ夫人)路線を見てみたかった感じです。
因みに、例の新聞広告“あなたは幸せ?・・”の隣に欄に記載されていた、
「フローラ ─── いつまでも待つ ──── J」
という広告も、“Jはフローラに会えたのか?”と、勝手に気になった私ですww。 -
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ミス・マープルもの。
舞台はロンドンにある、クラシックな佇まいを保つバートラム・ホテル。
この古き良き英国を彷彿させる高級ホテルに滞在中のマープルさん。ロンドンでのお買い物などを楽しみつつ、ホテル内外での人間観察も怠りません。
一方、ロンドン警視庁では、最近頻発している大掛かりな列車強盗等の犯行グループを追っているのですが、これらの犯行とバートラム・ホテルとの関わりは・・?
滞在客の牧師の失踪、霧の夜に起こった狙撃事件・・数々の点が終盤に見事に集約され、驚きの大仕掛けが明らかになるさまは圧巻です。
今回、真相解明するのはデイビー主任警部で、マープルさんはその協力者のようなポジションでした。勿論マープルさんも真相にたどりついていましたし、彼女の観察力あってこその証言により捜査が大きく進展したのですけどね。
狙撃事件の真犯人の処遇について、結局どうするのか曖昧なままだったのですが、それが却って余韻が残る終わり方だなと思いました。 -
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ミス・マープルもの。
『カリブ海の秘密』の続篇といえる本作。
西インド諸島に滞在した時に知り合った、大金持ちのラフィール老人が死去し、彼の遺言にてミス・マープルに“ある犯罪調査をしてほしい”といった意味の依頼がされますが、具体的な内容は何も書かれていませんでした。何を調査するか不明なまま、ラフィール翁の手紙の指示に従ってバスツアーに参加するミス・マープル。
途中までは暗中模索状態のマープルさんですが、ツアー中に起きた“事故”をきっかけに、徐々に物事が動き出します。
そこで浮かび上がってきたのが、以前に起きた少女殺人事件と、ラフィール翁の息子との関わりについてで・・。
今回は秀逸なミステリであることは勿論なのですが、それ以上に“愛憎劇”といえる内容です。まさに“愛が過ぎた”故の悲劇でした。
犯人については、割と予想しやすかったと思いますが、“守護天使”は完全にやられました。ドッキリ(?)に引っかかったような気持ちです。
と、いう訳で今回もクリスティーにあんぐりさせられました。流石ですねー。