乾信一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレスラング的な表現が多く、脳内混乱。物語の展開上、前段の非道なシーンは必要なのだと思うものの、読むのはちょっとしんどい。しかし、この混乱が狙いなのかもしれない。研究所の人たちが話す普通の言葉は、読みやすく理解しやすい一方で「平坦で面白味のない言葉」に思えたのも相対性のなせることなのか。
主人公に対して最初は「すごくイヤダ~」という距離を置きたい感が強かったのが、研究対象にされてしまうあたりはちょっと同情する気持ちが出てくる。悪い人に対して、もっと悪い人や権力の強い人が出てくると、相対的に最初の悪い人に対しての感情が薄くなるような気がします。小説でも、ドラマや映画でも。 悪いことの事実は変わらないのに、不思議です。
時計じかけのオレンジは、若者の事をさしているのかなと思いながらも本当に時計じかけになっちゃってんのは研究機関などの大人たちなのかもしれない。さらに言うと、上記の相対性のからくりに巻き込まれている読者とも言える。 -
Posted by ブクログ
“身上相談探偵(?)”、パーカー・パインを主人公とした連作12話の短編集です。
「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を。」
↑こちらの広告にホイホイされて、パーカー・パイン氏の事務所を訪れた人達のお悩みを、パイン氏の指示を受けた事務所のスタッフ達があの手この手で解決していく展開です。
この、“チーム・パイン”のメンバーとして、ミス・レモンやオリヴァ夫人といった、ポアロものにもちょいちょい出てくるキャラが登場したりというサービス(?)も嬉しいですね。
様々な立場の人々の、あらゆるお悩みを、“今度はどんな筋書きで解決するのかな~”と、何だか大掛かりなドッキリを思わせるような仕込みっぷりを楽しみながら読ませて頂きました。
ただ、解説にもありましたが第七話「あなたは欲しいものをすべて手に入れましたか?」以降は、パイン氏が中東、エジプト、ギリシャ等に旅立ち、行く先々で事件に巻き込まれてそれを推理するという、トラベル・ミステリに方向転換しています。
「“お悩み解決”では“ミステリ”が足りない!」と、クリスティーが思ったのかどうかは謎ですが、個人的にはもうちょい“チーム・パイン”(又は“パーカー・パイン劇団”・脚本オリヴァ夫人)路線を見てみたかった感じです。
因みに、例の新聞広告“あなたは幸せ?・・”の隣に欄に記載されていた、
「フローラ ─── いつまでも待つ ──── J」
という広告も、“Jはフローラに会えたのか?”と、勝手に気になった私ですww。 -
Posted by ブクログ
ミス・マープルもの。
『カリブ海の秘密』の続篇といえる本作。
西インド諸島に滞在した時に知り合った、大金持ちのラフィール老人が死去し、彼の遺言にてミス・マープルに“ある犯罪調査をしてほしい”といった意味の依頼がされますが、具体的な内容は何も書かれていませんでした。何を調査するか不明なまま、ラフィール翁の手紙の指示に従ってバスツアーに参加するミス・マープル。
途中までは暗中模索状態のマープルさんですが、ツアー中に起きた“事故”をきっかけに、徐々に物事が動き出します。
そこで浮かび上がってきたのが、以前に起きた少女殺人事件と、ラフィール翁の息子との関わりについてで・・。
今回は秀逸なミステリであることは勿論なのですが、それ以上に“愛憎劇”といえる内容です。まさに“愛が過ぎた”故の悲劇でした。
犯人については、割と予想しやすかったと思いますが、“守護天使”は完全にやられました。ドッキリ(?)に引っかかったような気持ちです。
と、いう訳で今回もクリスティーにあんぐりさせられました。流石ですねー。 -
Posted by ブクログ
本作品では、マープルと犯人が直接対決する危機一髪の場面があり、興味深い(しかし、あの場面で登場する二人も真相に気づいていたのではないだろうか)。
マープルの推理は、ロジックではなく、人間観察と直観に基づくものであり、本格的な妙味は薄い。
人間の持つ複雑な感情に根差した犯行動機や、殺人偽装とそれを行った理由は面白い。
しかし、なぜ、依頼者のラフィール氏は、マープルに依頼目的を具体的に示さなかったのだろうか。バス旅行に参加し、旧領主邸に宿泊するように指示したのはなぜか。ラフィール氏は真相がどこまでわかっていたのだろうか。最後まで読んでもわからなかった。 -
Posted by ブクログ
「あなたは幸せ? でないならパーカー・パイン氏に相談を」そんな広告を頼りにやってくる依頼者の問題を解決していくパーカー・パインの活躍を描く連作短編。
前半に収録されている短編と後半に収録されている短編で大きく趣向が変わっています。前半は様々な不幸せな依頼人がやってきてパーカー・パインはそれを、コンゲーム的な趣向で解決していきます。この趣向の中では「大金持ちの夫人の事件」と「不満な夫の事件」がお気に入り。「不満な夫の事件」は夫にいろんな意味で同情してしまう短編ですね(笑)
後半からはパーカー・パインが旅行先での事件に巻き込まれるというもの。この中では「デルフォイの神託」が意外などんでん返しがあり、お気に入りの一編です。
解説にあったように前半の短編の趣向を定着させることができなかったのが残念だったなあ、という印象はどうしても受けてしまうかなあ。やっぱり後半と前半の作品群では前半の方が印象が強いです。