乾信一郎のレビュー一覧
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ネタバレそこには、古き良き英国の空気が漂う。
バートラム・ホテルには懐かしき時代がまだ残っている。移りゆく時代の中で、ここにはあの頃の英国が残っている。娘時代に泊まったこのホテルに、何十年振りに滞在したミス・マープル。ロンドン滞在を楽しみ、ホテルの人間模様を観察していたが、老牧師が行方不明になり、狙われた令嬢の身代わりでドアマンが撃たれてしまい——。
ラストの謎解き、それでいいの? 証拠が何もないのがいっそ潔いほど。しかし前半のバートラム・ホテルの描写や、滞在を楽しむミス・マープルの様子が味わいある。おやじさんことデイビー主任警部のキャラクターもいい。 -
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【短編集】
1934年クリスティ44歳。
「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を。」
新聞にこんな広告が出ていたら、怪しいと思いつつ気になってしまう。
政府の統計局に35年間勤めていたという変わった経歴を持ち、今は人の「不幸」を統計学に基づいて解決する仕事をしているパーカー・パイン氏。
大きな体に形のよいはげ頭、度のきつい眼鏡。そして、人を安心させるような雰囲気。
なんとなく風貌はポアロと重なる。
でも、ポアロが犯罪の謎を解くのに対して、パインは人生の不満を解決するのが本業。
ポアロでお馴染みの人物が登場するのも嬉しい。
依頼人の悩みに合わせて、人員を動かしたり、芝居を仕掛けたり。
なんだかホワイトな喪黒福造みたい。
前半は、パーカー・パイン氏ならではのユーモラスな解決法と、この唯一無二のキャラクターを楽しんだ。
ただ、後半になると、よくある旅先で事件に巻き込まれる探偵小説のようになってしまって少し残念。
それならパーカー・パイン氏である必要がなくなってしまい、ポアロかマープルにお願いしたくなる。 -
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『兄弟、彼らが何がいったい不良の"原因”かなんて考えこんでるのは、おれにいわせりゃ、まったくのお笑いだ。 "善良”の原因さえよくわかっていないくせに、その反対のことがわかるわけがないだろう?人々が善良だということが、その人々が善良を好むということだとすると、おれは絶対その楽しみを妨害しようなどとは思わないし、また同じことが反対側の場合にもいえる。そして、おれはその反対側を支持しているのだ。』 p62
映画で有名すぎる『時計じかけのオレンジ』。
わたしの中で、大好きな作品というわけではないけれど、強く印象に残り続けている映画には間違いない。
初めてあのエログロバイオレンスな映像を見た見た時の衝撃は忘れられない。
あの衝撃体験をもう一度。
なんて大袈裟に言ってみたけど、映像は無いんだしそこまでエログロバイオレンスさは感じないだろう。
と、思っていた自分をビンタしたい。
映画より、過激な描写のオンパレードであった。そしてお馴染みの独特な語り口調。その世界に入り込んだ時には、本当に頭がおかしくなりそうな麻薬みたいな読書体験だった。
映画ではあくまで第三者的に主人公アレックスを観るんだけど、小説ではアレックス視点で書かれていて、アレックスの善悪に対する考えとかどんな気持ちでこの行動をしてるのか、ということ等知ることができ、面白かった。
知ることが出来ただけで「理解は全く出来ね〜」って感じだった。
あとは「善」に対して本当に考えさせられる内容だったな。
『善は心の中からくるもの、善は選ばれるべきもの。選ぶことが出来なくなった時人は人ではなくなる』という主旨の言葉によって、「偽善」についてウーンウーンと考えた。
そして衝撃だったのが、ラストが映画と全然違うということ。
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ネタバレ人は自由意志で変われるのか、変われないのか。
この問いに決着をつけるのは難しそうだが、本作と映画版での結末は異なっている。
原作を読んで驚いたのは、アレックスの暴力の質だった。そこにやむを得なさはほとんどなく、ただ快楽のために行われているように見える。映画を観たときには、スタンリー・キューブリックの映像や演出の印象が強く、無理矢理矯正される彼をどこか可哀想に感じていたが、その見方が揺らいだ。
小説では、最終的にアレックスは自らの意思で変化の兆しを見せる。だが、被害者にはそもそも選択肢がなかったのではないかと思うと、そのめでたし、的な結末にどこか納得しきれない。
無理やり矯正された善よりも、自ら善を選べる方が望ましいのは間違いない。だが現実には、取り返しのつかない被害が繰り返される。そう考えると、「人間らしい」生活を守るために、どうしようもなく危険な存在を矯正しようとする発想にも、一定の説得力があるように思えてしまう。
しかし、その基準は誰が定めるのか。それを決める側は本当に“善”なのか。
映画は、アレックスが元に戻ったところで終わる。人の本質はそう簡単には変わらないという、皮肉な結末だ。誰も救われず、後味は決して良くないが、その分リアルに感じた。
「善良であること」と「善を選ぶこと」。
そして、その“善”を誰が定義するのか。
そのねじれがより強く浮かび上がるようで、私は映画版の方が好みだった。
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あなたにお勧め、次の本にどうぞと薦められた一冊なんだけれども、けれども……続編やないかーいっっ
この話は『カリブ海の秘密』の続編で、この話でミス・マープルが出会った人物が亡くなったことから始まる。お話の時々にその前作に登場していた人物の人となりやらなんやらが出てくるので、『うっわーっ読みにくい』という気持ちになってしまった。とはいえ話の進行の妨げになるようなものではない。そのあたりはきちっとフォローされていて、その人となりがちゃんと描写されているので、前作が未読だったからといってなんの障碍もない。充分に面白い。
トリック的なものはすごくシンプルで、そこまで複雑ではない。途中から、なんとなく読める感じがある。しかし、主題というかテーマはそこにないのだろうと思う。ミス・マープルの信念と、作者であるアガサ・クリスティのそれがおそらくは重なるところを感じる。
発行の順番でいえば『スリーピングマーダー』がアガサ・クリスティの死後に刊行されているが、執筆時期を考慮すると本作が最後の作品にあたる。予定では、『カリブ海の秘密』とあわせて三部作になる予定で、三作目は構想だけで執筆されなかったらしい。とても残念だ。
もう少し、このちょっと性格の悪い、人当たりだけは良いおばあさんの物語を読みたかった。 -
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このところ私生活がバタバタしていて、なかなか腰を据えて本を読む時間が取れなかったのですが、そんな状況でも没頭できるのがクリスティー。
ミス・マープルシリーズも9冊目となり、ポアロさんと共に終わりが見えてきました……さみしい(´・ω・`)
さて今作は、「バートラム・ホテル」というなんとも素敵なホテルが舞台です。
”まるでほんもの”の給仕頭やメイドがいて、バターたっぷりのマフィンやドーナツを暖炉が据えられたラウンジで食べられる……なんて素敵!
ネタバレを踏むのが怖くて詳しく調べられてはないのですが、クリスティーがお気に入りだったホテルがモデルなんだとか。いいなぁいつか行ってみたいなぁ……と夢を膨らませていたら、おやおや?なんだかきな臭くなってきて……?
素敵なホテルにうっとりしていて気づかなかったのですが、物語も半分を過ぎるあたりまで事件らしい事件も起きず。ただ、裏で壮大な計画が進んでいるらしいことはたしか。
うーむこれはもしかして、今まで敬遠していた『ビッグ4』のような”大陸を股にかけた国際もの”なのでしょうか。いつもと違う雰囲気に戸惑いはしたものの、これはこれで楽しむことができました。
どちらかというと、犯人が少し小物っぽく見えてしまったことの方が残念かもしれません。狂気じみた犯人は大好物なのですが、ちょっと物足りないかなぁ。
ただ、結末に関して「見逃しちゃうの……?」とハラハラしていたので、その部分には安堵しました。悪を見逃してはならぬ、は揺るぎないテーマなんだろうな(だからこそオリエント急行が素晴らしいわけですね)。
解説にもありましたが、文中でビートルズに触れている部分もあり、クリスティーがどれだけ長く活躍していたかを改めて実感した今作。
マープル&ポアロシリーズを完走してしまうのはなんとも寂しい限りですが、一冊一冊じっくりと味わっていきたいと思います! -
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ネタバレなぜ私が、このアガサ・クリスティーをこよなく愛する私が、☆3評価にしたか。それは簡単な話である。
マープルさんがほとんど出てこないんだもの!!
マープルシリーズでなければ良いんですよ、気にならないし寧ろ面白いと思う。でもマープルさん出てきてるじゃん! マープルさんの活躍見たかったんだけど!!
というファン心理である。
とはいえ話自体はそれなりに面白かった。
犯人を考えながら読み進め、バートラム・ホテルの意外な素顔に「なるほど?」となり、まぁ途中で女流冒険家ベス・セジウィックとエルヴァイラが母娘であることはすぐにわかったのだけれども。
元軍人のドアマン、マイケル・ゴーマンとエルヴァイラの関係も結構最初の方で勘付いてたかな。ゴーマンはエルヴァイラのことを知ってたから最後、彼女を守ったんだと思ったんだけど、まさかの犯人そっち? ってなったのである。
これは予想外。
斜め読みしちゃったので私の理解が間違っている可能性もあるのだが、エルヴァイラ、耳を怪我したんじゃなかった? 怪我してたなら自分で撃つの無理ではないの、むしろレーサーのラジスロース・マリノスキーの方が、エルヴァイラをベスと見誤って撃った、つまりエルヴァイラとの結婚の障壁となりそうな人を消す(遺産金目当ての)ための犯行ってなもんで納得しやすいんだが、などと思ったんだが、最後の方を確認したら、弾はエルヴァイラが「掠った」と言っているだけで怪我の描写はなかった。さすがに警察も掠ったかどうか、分かると思うんだがな…。
ストーリーとしては面白い方ではあるが、クリスティ作品にしてはちょっとツッコミどころ、というか何となく釈然としない気持ちが残った作品ではあった。 -
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大好きなミス・マープルシリーズ。全13作の中の最後の作品。
カリブ海の秘密、からの続編となっている。
とはいえ、カリブ海の秘密を未読でも楽しめます。
前作、「カリブ海の秘密」で、旅行先で出会った老富豪ラフィール氏とミスマープルは協力して旅先で起こった殺人事件を解決した。
あれからさらに時が経ち、ミスマープルは新聞の死亡記事でラフィール氏が亡くなったことを知る。
ところが、死んだラフィール氏からミスマープルにある事件を調べてほしいという依頼があった。なんのヒントも手がかりもないまま、ラフィール氏の手配で、イギリス国内の邸宅と庭のツアーに参加することになったミスマープルに待ち受ける事件とは…
81歳のアガサクリスティーが描いた、ミスマープルの気迫に満ちた凛とした姿のかっこよさったら!
こんなおばあちゃんになりたい!
ピンクのふわふわの毛糸のショールをつけているのに!
そもそもの事件自体が何かわからない。
いつものようにミスマープルが出会った殺人事件を調べるのではなく、ラフィール氏が何をミスマープルに調べてほしいのかを推理するのがこの小説の新しいところ。
怪しいと思う人物が何人か出てくるんですが、どれもダミーなんですよね笑。
まだ未読の作品もあるので、コンプリートしたいと思います^_^
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Posted by ブクログ
イギリスの作家アガサ・クリスティの長篇ミステリ作品『バートラム・ホテルにて(原題:At Bertram's Hotel)』を読みました。
『愛の探偵たち』、『フランクフルトへの乗客』に続き、アガサ・クリスティの作品です。
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姪のジョーンが、気分転換に旅行をすすめてくれたとき、ミス・マープルはロンドンのバートラム・ホテルを選んだ。
14のとき、叔父と叔母が一度連れていってくれたことがある。
落着いた雰囲気のうちに、目立たぬぜいたくがあるホテルだった。
が、なにしろはるか昔のことである。
どんなに変ってしまったか、心配でもあった。
ところが、バートラム・ホテルはかわっていなかった。
そっくり昔のままだった。
奇蹟的に、もはや消滅したはずの古き良き英国が、そこには生き残っていた。
エドワード王朝時代の家具・調度・風習、それに地方在住の、爵位をもった未亡人や聖職者、退役軍人といった、時代から忘れられた宿泊人。
懐しい過去がいまも暖かなマユに包まれて、保護されているのだ。
もっとも、ときたま現代が吹きつけてくることもある。
ここ数年、ロンドン警視庁管内で続出している大胆振りない強奪事件 ――銀行強盗、給料強奪、郵便託送中の宝石類の盗難の噂が話されたり、大西洋横断飛行から原子力潜水艦の便乗までやってのけ、大衆のアイドルになったべス・セジウィック夫人といった風変りな人間がとまりに来たりする。
ともあれ、楽しいホテルだわと、ミス・マーブルは満足していた。
そして、犯罪などとはまったく無縁な場所に思われたのだが……。
詮索好きな老嬢ジェーン・マーブル、久々の登場!
(解説 佳多山大地 「ライバルは『ラバー・ソウル』」)
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1966年(昭和41年)に刊行された、ミス・マープルシリーズの長篇10作目となる作品です。
ロンドンのバートラム・ホテルに行きたいわ……姪から気分転換の旅行を勧められたミス・マープルは、こう答えた、、、
そこは、古き良きエドワード王朝の面影を今なお残す、格調高いホテル……ここ数年ロンドンを荒し回っていた強盗団の脅威とも無縁であるかのごとく、優雅な雰囲気を醸し出していた。
マープルにとっては、まさに恰好の休養の場のはずであった……だが、徐々に露見する、ホテル内の錯綜した人間関係、、、
そして、客の一人の突然の失踪……果たして彼女を待ち受けていた驚愕すべき犯罪とは? 流麗なタッチで描く香り高い本格篇!
大都会ロンドンの一画にエドワード王朝時代そのままのたたずまいを保つバートラム・ホテルは、ここ数年ロンドンを荒し回っていた強盗団の脅威とも無縁であるかのごとく、優雅な雰囲気を醸し出していた……休養のためバートラム・ホテルに滞在したミス・マープルは、徐々に露見するホテル内の錯綜した人間関係に気付き、宿泊客であったのペニファザー牧師の突然の失踪、その後、濃霧の夜に発生した宿泊客エルヴァイラ・ブレイクの射殺未遂事件、結果的にホテルのドアマン・マイケル(ミッキー)・ゴーマンが銃殺された事件の捜査に協力することに、、、
あくまでも捜査の中心はフレッド・デイビー主任警部を中心としたロンドン警視庁なのですが……ミス・マープルの推理や助言により、真相が判明するという展開でした。
ミス・マープルの出番は少ないものの、二転三転するエルヴァイラ・ブレイクの射殺未遂事件(マイケル・ゴーマン射殺事件)の意外な真相と、狙撃犯のあまりにも独善的な動機が印象的な作品でした……アガサ・クリスティの作品としては、まずまずだったかな、、、
相続……お金……そして恋って、人を狂わせてしまいますねー 怖いな!
以下、主な登場人物です。
ジェーン・マープル
探偵好きな独身の老婦人
エルヴァイラ・ブレイク
ホテルに滞在中の若い娘
デレク・ラスコム
大佐。エルヴァイラの後見人
ペニファザー牧師
クロース大聖堂評議員
ベス・セジウィック
女流冒険家
ラジスロース・マリノスキー
レーサー
ハンフリーズ
ホテルの支配人
ゴーリンジ女史
ホテルの受付
マイケル(ミッキー)・ゴーマン
ホテルのドアマン
ヘンリー
ホテルの給仕頭
ローズ・シェルドン
ホテルのメイド
リチャード・エジャトン
エジャトン・フォーブズ&ウィルバロー事務所弁護士
フレッド・デイビー
ロンドン警視庁主任警部
キャンブル
ロンドン警視庁警部
ロナルド・グレイブズ卿
警視庁副総監
アリス
バートラム・ホテル従業員
ブリジット
エルヴァイラ・ブレイク友人
セリナ・ヘイジー
ミス・マープル知人。レスターシャ在住
キャボット夫人
エルマーの妻 -
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ネタバレミステリの女王が誕生するまで。
アガサ・クリスティーが、自身の幼少期から結婚して最初のいくつかの小説を出すまでがここに書かれている。その間には第一次世界大戦がある。大戦前と大戦後の時代の変化が感じられる。それはもちろんクリスティー自身が幼少期、学生時代、大人になって、結婚・出産して、と人生の大きな変化を経ていることもあるが、それ以上に時代の変化が大きく感じられる。でも変わらないものもある。
空想の友だちと遊んで時間が経つ少女時代。父や母の病気に抱く不安。結婚する予感と、結局しない相手と、運命的な出会い。看護師や薬剤師として出会う患者や医師、そして職場。老いていく祖母の姿。クリスティーの観察眼と、そこから得た「人」の姿が作品に存分に活かされていることがわかる。だから、クリスティーの作品は時代が違っても、身近にいそうな登場人物がいて、今でも共感できる感情からの事件が起こるのだ。