乾信一郎のレビュー一覧
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万華鏡の推理
ロンドン、ジュネーブ、国際列車のコンパートメント、魅惑的な中東の世界で繰り広げられる万華鏡のようなミステリー、
ひとつひとつ無理に謎解きをする必要はなく、のんびりと身をまかせて行く事をお薦めします。
鮮やかな推理が心地よい驚きをもたらしてくれました。
底に流れるのは「あたたかな心」と鋭い人間観察。日々の合間、合間に気分のよい句読点を打ってくれました。 -
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人の不幸は5つに分類できるという。
『あなたは幸せですか? そうでないならパーカーパインにご相談を』
パーカーパイン氏の元には実に様々な不幸を抱えた人々がやってきます。
彼はそれを統計という名の武器で見通し、曰く治療していく。
と言っても彼自身は何もしません。全ては、彼の細かな指令を受けたエージェント達の手によるものです。
短編集なのですが、どれもどれもオチが非常にいいです。
パーカーパイン氏は統計と言っていますが、それはまさにある種の霊能や千里眼にも思えるくらい的確で。解決策もお見事!
さすが、ミステリーの女王、アガサ・クリスティーです♪
惜しむらくは、途中から少し形式が変わってしまうことですかね。
オフィス型だったパーカーパイン氏が旅行に出てしまうことですかね。
最初のままで続けて欲しかったな、と思いました。 -
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【短編集】
1934年クリスティ44歳。
「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を。」
新聞にこんな広告が出ていたら、怪しいと思いつつ気になってしまう。
政府の統計局に35年間勤めていたという変わった経歴を持ち、今は人の「不幸」を統計学に基づいて解決する仕事をしているパーカー・パイン氏。
大きな体に形のよいはげ頭、度のきつい眼鏡。そして、人を安心させるような雰囲気。
なんとなく風貌はポアロと重なる。
でも、ポアロが犯罪の謎を解くのに対して、パインは人生の不満を解決するのが本業。
ポアロでお馴染みの人物が登場するのも嬉しい。
依頼人の悩みに合わせて、人員を動かしたり、芝居を仕掛けたり。
なんだかホワイトな喪黒福造みたい。
前半は、パーカー・パイン氏ならではのユーモラスな解決法と、この唯一無二のキャラクターを楽しんだ。
ただ、後半になると、よくある旅先で事件に巻き込まれる探偵小説のようになってしまって少し残念。
それならパーカー・パイン氏である必要がなくなってしまい、ポアロかマープルにお願いしたくなる。 -
Posted by ブクログ
『兄弟、彼らが何がいったい不良の"原因”かなんて考えこんでるのは、おれにいわせりゃ、まったくのお笑いだ。 "善良”の原因さえよくわかっていないくせに、その反対のことがわかるわけがないだろう?人々が善良だということが、その人々が善良を好むということだとすると、おれは絶対その楽しみを妨害しようなどとは思わないし、また同じことが反対側の場合にもいえる。そして、おれはその反対側を支持しているのだ。』 p62
映画で有名すぎる『時計じかけのオレンジ』。
わたしの中で、大好きな作品というわけではないけれど、強く印象に残り続けている映画には間違いない。
初めてあのエログロバイオレンスな映像を見た見た時の衝撃は忘れられない。
あの衝撃体験をもう一度。
なんて大袈裟に言ってみたけど、映像は無いんだしそこまでエログロバイオレンスさは感じないだろう。
と、思っていた自分をビンタしたい。
映画より、過激な描写のオンパレードであった。そしてお馴染みの独特な語り口調。その世界に入り込んだ時には、本当に頭がおかしくなりそうな麻薬みたいな読書体験だった。
映画ではあくまで第三者的に主人公アレックスを観るんだけど、小説ではアレックス視点で書かれていて、アレックスの善悪に対する考えとかどんな気持ちでこの行動をしてるのか、ということ等知ることができ、面白かった。
知ることが出来ただけで「理解は全く出来ね〜」って感じだった。
あとは「善」に対して本当に考えさせられる内容だったな。
『善は心の中からくるもの、善は選ばれるべきもの。選ぶことが出来なくなった時人は人ではなくなる』という主旨の言葉によって、「偽善」についてウーンウーンと考えた。
そして衝撃だったのが、ラストが映画と全然違うということ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ人は自由意志で変われるのか、変われないのか。
この問いに決着をつけるのは難しそうだが、本作と映画版での結末は異なっている。
原作を読んで驚いたのは、アレックスの暴力の質だった。そこにやむを得なさはほとんどなく、ただ快楽のために行われているように見える。映画を観たときには、スタンリー・キューブリックの映像や演出の印象が強く、無理矢理矯正される彼をどこか可哀想に感じていたが、その見方が揺らいだ。
小説では、最終的にアレックスは自らの意思で変化の兆しを見せる。だが、被害者にはそもそも選択肢がなかったのではないかと思うと、そのめでたし、的な結末にどこか納得しきれない。
無理やり矯正された善よりも、自ら善を選べる方が望ましいのは間違いない。だが現実には、取り返しのつかない被害が繰り返される。そう考えると、「人間らしい」生活を守るために、どうしようもなく危険な存在を矯正しようとする発想にも、一定の説得力があるように思えてしまう。
しかし、その基準は誰が定めるのか。それを決める側は本当に“善”なのか。
映画は、アレックスが元に戻ったところで終わる。人の本質はそう簡単には変わらないという、皮肉な結末だ。誰も救われず、後味は決して良くないが、その分リアルに感じた。
「善良であること」と「善を選ぶこと」。
そして、その“善”を誰が定義するのか。
そのねじれがより強く浮かび上がるようで、私は映画版の方が好みだった。
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Posted by ブクログ
あなたにお勧め、次の本にどうぞと薦められた一冊なんだけれども、けれども……続編やないかーいっっ
この話は『カリブ海の秘密』の続編で、この話でミス・マープルが出会った人物が亡くなったことから始まる。お話の時々にその前作に登場していた人物の人となりやらなんやらが出てくるので、『うっわーっ読みにくい』という気持ちになってしまった。とはいえ話の進行の妨げになるようなものではない。そのあたりはきちっとフォローされていて、その人となりがちゃんと描写されているので、前作が未読だったからといってなんの障碍もない。充分に面白い。
トリック的なものはすごくシンプルで、そこまで複雑ではない。途中から、なんとなく読める感じがある。しかし、主題というかテーマはそこにないのだろうと思う。ミス・マープルの信念と、作者であるアガサ・クリスティのそれがおそらくは重なるところを感じる。
発行の順番でいえば『スリーピングマーダー』がアガサ・クリスティの死後に刊行されているが、執筆時期を考慮すると本作が最後の作品にあたる。予定では、『カリブ海の秘密』とあわせて三部作になる予定で、三作目は構想だけで執筆されなかったらしい。とても残念だ。
もう少し、このちょっと性格の悪い、人当たりだけは良いおばあさんの物語を読みたかった。 -
Posted by ブクログ
大好きなミス・マープルシリーズ。全13作の中の最後の作品。
カリブ海の秘密、からの続編となっている。
とはいえ、カリブ海の秘密を未読でも楽しめます。
前作、「カリブ海の秘密」で、旅行先で出会った老富豪ラフィール氏とミスマープルは協力して旅先で起こった殺人事件を解決した。
あれからさらに時が経ち、ミスマープルは新聞の死亡記事でラフィール氏が亡くなったことを知る。
ところが、死んだラフィール氏からミスマープルにある事件を調べてほしいという依頼があった。なんのヒントも手がかりもないまま、ラフィール氏の手配で、イギリス国内の邸宅と庭のツアーに参加することになったミスマープルに待ち受ける事件とは…
81歳のアガサクリスティーが描いた、ミスマープルの気迫に満ちた凛とした姿のかっこよさったら!
こんなおばあちゃんになりたい!
ピンクのふわふわの毛糸のショールをつけているのに!
そもそもの事件自体が何かわからない。
いつものようにミスマープルが出会った殺人事件を調べるのではなく、ラフィール氏が何をミスマープルに調べてほしいのかを推理するのがこの小説の新しいところ。
怪しいと思う人物が何人か出てくるんですが、どれもダミーなんですよね笑。
まだ未読の作品もあるので、コンプリートしたいと思います^_^
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Posted by ブクログ
『黄色いアイリス』ではじめましてだったパーカー・パインについてもっと知りたくて、短編集を手に取りました。
前半は"パーカー・パイン劇団"が奮闘するお話、そして中盤からはパイン氏が旅先で出会う"不幸な人たち"の悩みを解決する構成に。
単発ドラマとして発展できそうな形だけに、パイン氏の登場がこれ限りなのがなんとも残念。月曜20時のドラマでやってそうなのに……。
個人的に好きだったのは「退屈している軍人の事件」。『ハロウィーン・パーティー』に登場したリンゴ好きのオリヴァ夫人の筋書きに、思わずニヤリ。こういう誰も傷つかない結末にはほっこりしてしまいますね。
多くの活躍はありませんでしたが、パーカー・パイン氏(とその仲間たち)と「あなたは幸せ?」の新聞広告には、一度読んだら忘れられない印象を植え付けられたのでした。