乾信一郎のレビュー一覧
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【マープル】
クリスティーが最後に書いたマープル作品。
1971年81歳の時に出版した。
37歳の時に執筆した最終話『スリーピング・マーダー』よりも、この作品の方がマープルの集大成のように感じた。
最後に読んで良かった。
『カリブ海の秘密』の続編。
大富豪のラフィールがお膳立てした英国庭園バスツアーに参加したマープルが事件の謎を解いていく。
ミステリーとしては犯人もわかりやすいし、事件の全容も見えにくいのでキレは感じない。同じようなことを繰り返すシーンや説明が冗長に感じられることもあった。
でもこれは歳をとったクリスティーの味わいでもあるのかなと思った。
こんなにすごい長編を書けるくらい、亡くなる直前までずっとお元気だったことも嬉しかった。
「守護天使さま」に、クリスティーは本当に守られていたのかもしれない。◕‿◕。
★3.5
マープル長編作品12作品を全て読み終わったけど、マープルはハズレが一つもなかった。
全部それぞれ面白い。
驚くのが晩年でもすごく面白いということ。
クリスティーとマープルの年齢が同じになってからは、クリスティーがマープルに乗り移っているような感じさえした。
40歳代で描いたマープルよりも、70歳過ぎてからの方がマープルが生き生きしているように感じた。
晩年までのたくさんの素晴らしい作品を読むことができて幸せな読書時間でした!
自分のマープル作品ベスト3はブックリストに載せました(*˘︶˘*).。*♡
ポアロはまだ未読が12作品もある。
(攻略本で高評価の作品はほぼ読んでしまったけど)
クリスティー作品を結構読んできたように思ったけど、他のシリーズもあるので100作品中まだ47冊しか読んでなかった(^_^;)
まだまだ楽しみは残ってる♪
全部読み終わった頃には最初の方は完全に忘れているので、エンドレスクリスティーを楽しめるかもしれない笑 -
Posted by ブクログ
アントニイ・バージェスの長篇。映画もヒットした、世界的に有名な作品。
1962年発行。
十五歳の少年、アレックスは、社会に強い反抗心を持ち、夜な夜な仲間たちとともに街に繰り出しては、強盗・強姦をはたらき、その過程で凄惨な暴力を「善良な人々」に与えていた。
ある日、アレックスは仲間と喧嘩をし、裏切られたことで逮捕される。さらに、強盗に入った家で老婆をはずみで殺してしまう。
これにより長期間刑務所に服役することになり、アレックスは絶望する。
服役後、3年余りが経った頃、アレックスは急に刑務所長に呼び出される。そして、アレックスを更生させるための特別なプログラムを用意したことを告げられる。
そのプログラムとは、特別な映像・音楽を毎日浴びせることで、アレックスが暴言や暴行を働こうとすると、激しい吐き気と嫌悪感が襲ってくるようにする、というものだった。
アレックスは強制的にこの「治療」を受けさせられ、「更生」したものの、釈放後も自分の変化に苦しむようになり、、、
というのがあらすじ。
SFではあるものの、舞台説明がほとんどなく、それ故にテンポが良い。
アレックスは主人公かつストーリーテラーであり、彼の饒舌な喋りが特徴的。
また、彼と仲間は「ナッドサット」と呼ばれる、ロシア語混じりの不思議なスラングを多用する。読み始めはこのスラングに違和感があり、読みにくいと思ったが、後半になりこれに慣れると、このスラングが絶妙な「異世界感」を醸成していることに気づいた。
これが、本作を舞台や背景の説明が少ないながらも、立派なSF足らしめている。
本作のテーマは「人間の善悪」である。
アレックスは社会に対する反発心から、あらゆる犯罪を繰り返していた。これは他人を無闇に傷つける「悪」の行為である。
それ故に、アレックスは政府の「治療」を受けることになり、「悪」の行動を取ろうとすると耐えきれない嫌悪感によって自制されるようになった。結果的には、「悪」行動をまったく働かない、「善」良な青年に見える。
では、後者を真の「善」的人間と言えるだろうか?
これが本作の投げ掛ける命題である。
作中、アレックスの入っていた刑務所の牧師が、「神は、善良であることを望んでおられるのか?それとも、善良であることの選択を望んでおられるのか?どうかして悪を選んだ人は、押し付けられた善を持っている人よりも、すぐれた人だろうか?」というセリフを投げる。
これは本質を突いていると個人的にも思う。
「善」とは、強制的に選択させられるものではなく、自分の中から湧いてくるものである。
むしろ、選択の放棄こそ大罪である。
自らの頭で考えることを停止し、根拠のない慣習や前例に無条件に従うことこそ、人間としての敗北であり、最も愚かな姿に他ならない。
にも関わらず、思考停止でロジックを横流しして悦に浸っている人間が多すぎる。自らは何にも挑まないくせに、人の足を引っ張ることだけに固執している人間が多すぎる。
この状況に、我々はもっと危機感を持たなければならない。
そんなことを考えさせられた小説だった。
テンポが良く、ストーリーが洗練されている名作。昔の小説ではあるので、古くさい部分はあるもの、それが良い味となっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ自宅で新聞を読んでいたマープルは、死亡欄にかつてカリブ海の島でともに事件を解決した「ラフィール」の名を見つける。
そこからマープルは、生前に残されたラフィールの指示に従い行動をしていくが、その目的は不明のまま。指示通りバス旅行に参加し、指示通りその道中にある三姉妹が住む邸宅に滞在することになる。どうやらラフィールの目的が、ラフィールの息子マイクルがかつて犯した殺人事件に関係しているということが分かってくる。
そのような中で、バス旅行の参加者の一人ミス・テンプルが落石事故により死亡する。
マイクルが殺したと思われていた少女を殺したのは誰なのか、ミス・テンプルは本当に事故死なのか。
悪を憎み、自らを「復讐者」と位置付けて詰めに詰めまくるマープルがいつになくアグレッシブでかっこいい。愛とは本当に恐ろしいもの。
登場人物がかなり多いのが難点。
クリスティ作品の中でも珍しい連作なので、『カリブ海の秘密』を先に読むことを推奨。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスタンリー・キューブリック監督による映画『時計じかけのオレンジ』の原作。
映画は観たことないが、映画のロゴTシャツやタイトルは聞き馴染みがあったり、アレックスが『雨に唄えば』を歌いながら暴行を加えるシーンは有名で知っていた。
とにかく読みづらい。
ナッドサットと呼ばれる英語にロシア語を混ぜ合わせた架空の言語が終始飛び出してくる。ふりがなはあるのが唯一の救い。
デボーチカ=おんな
ドルーグ=なかま
などなど。
個人的に似ているようで全く違うのだが『アルジャーノンに花束を』の裏側にある様な作品だと思った。
暴力に対して喜びを覚えるアレックスが捕まり、国家の手によって暴行などに対し不快感を抱くようになってしまうというストーリー。
アレックスという人間が盗み、破壊、暴行、殺人などを躊躇いもなく行う人物なので共感のしようがないと思ったが、彼を矯正させる方法は可哀想に思えてくる。しかも2週間でその苦しみが終わるのだが、運が悪いことにかつての仲間や暴力を加えた人達に会い逆に自分が暴行を受ける立場になってしまう。
ラストでは追い込まれ自殺、元の自分に回復、別の仲間と行動、ピートとの再会、結婚と息子を持つことの希望で終わる。
解説は気になることだらけ。
まずスタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』を作者が嫌っていたということ。スタンリー・キューブリックと言えば『シャイニング』の監督でもあり、こちらも作者のスティーブン・キングが納得がいかず嫌っていたと聞いたことがあった。ヒットしているにもかかわらず可哀想な監督である。
次に作者は脳腫瘍で一年以内に死亡すると余命宣告されるのだがまさかの誤診というオチ。結果的に今作か生まれるきっかけとなるのだが可哀想な話である。しかも全精力を傾けたわけでない今作が代表作となってしまいちょっと複雑かもしれないらしい。そんな…。
最後に映画の結末、小説の結末に関する部分だ。何故か小説では最終第7章が削除されて出版されたものがあるらしく映画版はそちらに合わせた終わり方だそうだ。作者にとってはこだわりのある最終章だそうだが個人的には映画と同じ部分で終わりにした方がスッキリするし、最終章は蛇足に思えてしまった。
アレックスは結局自殺未遂の後元に戻ってしまうが、本当にこうした催眠術のような方法ができるようになったらどうなるだろうかと。死刑や終身刑より苦しむものになるのかならないのか、再び法を犯すのか犯さないのかなど。逆にまだ動物でしか行ってない実験や手術を行ってみる方が未来には役立ちそうだが、人権問題になりそうだなぁ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレナッドサット(=ティーンエイジ)の主人公アレックスの語りという形で進むこの話には、多くのグロテスクで暴力的で不快な描写がたくさん出てくる。
しかし前半の気ままに暴力を楽しむ描写があるが、彼がルドヴィコ療法を受けてから経験する仕打ちについて読んだ後では、この前半部分に対する印象は変化して気持ち悪さや不快の感情のほかに羨ましさのようなものが芽生えた。
これは何かに対して純粋に楽しむことや、道徳や倫理といったものに縛られずに羽目を外すことへの憧れなのかもしれない。
読むのには色々な意味で少し疲れたが、アレックスのもつ良くも悪くも子どもらしい純粋さを感じられること(微かに「stand by me」のような雰囲気)と、自身の目的のためにアレックスを利用しようとする大人について風刺を効かせて描かれているのが面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ映画は見たが、ほとんど覚えていない。
冒頭のおじさんをいじめるシーンと、目を無理やり開かされる有名なシーンぐらい。
ナッドサット語という架空の若者スラングで書かれていて、ちょっと読みにくいけど面白い。
不良少年が仲間の裏切りにあって一人だけ刑務所に入れられたところ、暴力をふるえない人間を作るという国家の計画の実験台にされ、釈放された後でまた元通りの不良少年に戻るというのが今までの話で、映画と同じストーリー。
この後に映画にはなかった幻の最終章が追加され、なんと成長して精神的に大人になって自ら不良少年に別れを告げてしまう。
精神をいじって自由意志を失わせるのはよくないし、元に戻ったのはよかったんだけど(暴力はダメだが)、結局すべて成長の一過程のできごとだったというのがなんとも皮肉な感じ。 -
Posted by ブクログ
「アガサ・クリスティ」のミステリ連作短篇集『パーカー・パイン登場(原題:Parker Pyne Investigates, 米題:Mr. Parker Pyne, Detective)』を読みました。
『無実はさいなむ』、『蒼ざめた馬』、『ゼロ時間へ』に続き、「アガサ・クリスティ」作品です。
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「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を」こんな奇妙な新聞広告に誘われて、依頼人が次々とパイン氏の事務所を訪れる。
夫の浮気に悩む人妻、人生に退屈した退役軍人、平凡な生活を送るサラリーマン、大金を使いたがる大金持ちの婦人―人々の悩みに答える、「パイン氏」の奇想天外なサービスとは。
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1934年(昭和9年)に刊行された「アガサ・クリスティ」のミステリ短篇集… 「パーカー・パイン」シリーズの作品です、、、
本書には新聞広告を見て訪れる人々の悩みを聞き、不幸を取り除いて幸せにする「パーカー・パイン」シリーズの12作品が収録されています… 「パーカー・パイン」シリーズは、『黄色いアイリス』に収録されていた『レガッタ・デーの事件』、『ポリェンサ海岸の事件』以来ですね。
■中年夫人の事件(原題:The Case of the Middle-aged Wife)
■退屈している軍人の事件(原題:The Case of the Discontented Soldier)
■困りはてた婦人の事件(原題:The Case of the Distressed Lady)
■不満な夫の事件(原題:The Case of the Discontented Husband)
■サラリーマンの事件(原題:The Case of the City Clerk)
■大金持ちの婦人の事件(原題:The Case of the Rich Woman)
■あなたは欲しいものをすべて手に入れましたか?(原題:Have You Got Everything You Want?)
■バグダッドの門(原題:The Gate of Baghdad)
■シーラーズにある家(原題:The House at Shiraz)
■高価な真珠(原題:The Pearl of Price)
■ナイル河の殺人(原題:Death on the Nile)
■デルファイの神託(原題:The Oracle at Delphi)
■解説 小熊文彦
最初の6篇は、なんらかの理由で自分が不幸だと思っている依頼人を幸福にするという「パーカー・パイン」の本業であるカウンセラーとしての仕事が描かれています、、、
「パーカー・パイン」がよりどころとするのは医学でも心理学でも宗教でもなく統計… 官僚として35年働いてきた経験を元に、不幸を分類し、依頼人がどのタイプの不幸なのかを識別、その上でどうすべきかを伝え、悩みを解決していきます。
『中年夫人の事件』は、夫の浮気に悩む中年女性「パキントン夫人」の相談を解決する物語、、、
「パキントン夫人」を見たとたんに「パーカー・パイン」は「ご主人とご主人の事務所にいる若い婦人」の問題が、「パキントン夫人」の悩みだろうと言い当て、びっくりする「パキントン夫人」に「パーカー・パイン」は悩み解決の手数料として、前払いで200ギニーを要求… やがて「パキントン夫人」は3通の手紙を受け取り、「パキントン夫人」は美容院に行き、新しいドレスを作り、「パーカー・パイン」の事務所に向かう。
事務所で夫人は「クロード・ラトレル」という若い男を紹介され2人で昼食に… 「ラトレル」はすぐに夫人の楽しくさせてくれ、その夜2人はナイトクラブでダンスをするまでに、、、
それ以来「パキントン夫人」は、毎日毎晩のように「ラトレル」と会った… この行動がきっかけとなり、冷え切っていた「パキントン夫妻」の関係が回復してハッピーエンド… 夫婦間の愛情って、複雑ですよね。
『退屈している軍人の事件』は、海外の任地から帰国した退役軍人「ウィルブラム少佐」の相談を解決する物語、、、
任地の東アフリカから帰国して、田舎の小さな村に引っ込んだ「ウィルブラム少佐」は、退屈でやり切れない日々を過ごしており、「パーカー・パイン」の広告に目を引かれて、その事務所を訪れた… 「ウィルブラム少佐」の話を聞いた「パーカー・パイン」は50ポンドを請求し、明朝、さらに詳しい指示をすると言って「ウィルブラム少佐」を送り出した。
翌朝、「ウィルブラム少佐」は「次の月曜、朝11時にハムステッドのフライヤーズ通りへ行き、ジョーンズ氏を訪ねろ」という短い指示を受けた… 指示された場所に向かう途中、一軒の家から女の悲鳴が聞こえた… 「ウィルブラム少佐」が駆けつけると、明らかに空家と思われる家の中で若い女「フリーダ」が2人の黒人に襲われていた、、、
これは「パーカー・パイン」がミステリ作家の「オリヴァ婦人」の協力を得て考案した計画で、「ウィルブラム少佐」は危険な冒険に巻き込まれることで刺激的な日々を過ごすことができ、そして、「フリーダ」と結ばれるというハッピーエンド… でも、二人が向かった東アフリカで宝物はみつからないんですよね… まっ、刺激的なハネムーンになったからよかったんでしょうね。
『困りはてた婦人の事件』は、お金に困って知人のダイヤの指輪を盗んでしまった婦人「ダフネ・セント・ジョン」の相談を解決する物語、、、
「パーカー・パイン」のもとを訪れた「ダフネ・セント・ジョン」が見せたダイヤの指輪は最低でも2千ポンドはする見事な指輪だった… その指輪は「ドートハイマー夫人」のもので台座の緩みを直してもらうために預られたが、「ダフネ」は多くの借金を抱えていたので、ダイヤの模造品を作り、本物のダイヤを質入れして借金を返したのだ。
よって、現在「ドートハイマー夫人」のもとにあるのは、精巧な模造品ということになる… 「ダフネ」は後悔しており、「ドートハイマー夫人」の指輪を模造品から本物に取り替えてほしい依頼したのだった、、、
でも、実は「パーカー・パイン」を利用して「ダフネ」は、ダイヤの指輪を自らのモノにしようと悪だくみをしていたんですよね… それを見抜いた「パーカー・パイン」は、本物を「ドートハイマー夫人」のもとに返し、「ダフネ」には模造品を返すことにより、事件を解決します。
ちょっと複雑ですが、面白い展開でしたね… 経費のみ受け取り、報酬を受け取らない「パーカー・パイン」の態度も良かったですね。
『不満な夫の事件』は、趣味の合わない妻にないがしろにされ、妻から離婚を要求された夫「レジノルド・ウォード」の相談を解決する物語、、、
「パーカー・パイン」はスタッフの一人「マドレーヌ・ド・サラ」を使って、「レジノルド」が浮気をしたという芝居をすることに… 妻の心を夫に向かわせることができて、作戦は成功たかに思えたが、「レジノルド」は、あろうことか芝居ではなく本気で「サラ」に執心してしまった という「パーカー・パイン」にしては珍しい判断誤り(失敗談?)でした。
『サラリーマンの事件』は、不幸せではないが、なぜだか満足できないサラリーマン「ロバーツ」の相談を解決する物語、、、
有名会社に勤め、結婚をて見苦しくない世間体を保ち、子供たちにはきちんとした教育を受けさせ、その子供たちも健康で力強く、何がしかの貯蓄もある、大変に幸せな「ロバーツ」が「パーカー・パイン」の事務所を訪れた… 何か華々しい体験をしたいというのだ。
「パーカー・パイン」は、そんな「ロバーツ」に、ジュネーブまで列車でロシアの戴冠用宝石の秘密の隠匿場所を記した暗号文を運ぶように指示… しかも過激派組織が「ロバーツ」を阻止しようとしていると言って、、、
「ロバーツ」は刺激的な冒険により輝かしい経験ができて、「パーカー・パイン」は「ボニントン」に頼まれた設計図をジュネーブに送り届けることができてWin-Win… 一石二鳥でしたね。
『大金持ちの婦人の事件』は、「お金を使い方を教えて欲しい」という(贅沢な)悩みで「パーカー・パイン」のところにやって来た「アブナー・ライマー夫人」の相談を解決する物語、、、
5年前の夫を亡くした「アブナー・ライマー夫人は、夫が事業に成功したために金に困ったことはなかったが、それが逆に悩みであった… 娘のころは農家でせっせと働いていた夫人」は、金持になれば楽しい生活を送れると考えていたが、それは最初のうちだけだった。
今では楽しいどころか、お金があっても何もできない、持ってないもので金で買えるようなものが思いつかない、つまり生活が面白くなく何の楽しみもないのだった… そんな「ライマー夫人」の話を聞いた「パーカー・パイン」は1千ポンドを要求し、「ライマー夫人」に「コンスタンチン博士」を紹介する、、、
「コンスタンチン博士」は東洋人で、夫人に向って「あなたの魂は疲れている」と謎めいたことをいい、香り良く淹れられたコーヒーを飲ませた… いつしか「ライマー夫人」は深い眠りにつき、目覚めた時はどこかの農場のベッドの上にいた。
幸せ って、何なのかなぁ… ということを考えさせられる作品でしたね、、、
一緒に過ごすパートナーや環境によっては、お金がない方が幸せな場合もあるんですよね… 価値観というのは、一人ひとり異なるものだと改めて感じました。
後半の6篇はトラベルミステリ… 休暇を取った「パーカー・パイン」が旅行に出かけたものの、なぜか行く先々で次々と事件に出くわしてしまい、さっぱり休めない、という展開、、、
人を幸せにする… という行動原理こそ変わらないものの、「パーカー・パイン」らしい独特なスタイルは失われ、一般的なミステリに近い作品に仕上がっています。
『あなたは欲しいものをすべて手に入れましたか?』は、スタンブール行きのシンプロン急行で夫が誰かに何かを依頼した痕跡があって困惑しているという「エルシー・ジェフリーズ」という若い人妻の相談を解決する物語、、、
「エルシー」は旅立つ前に妙な物をみていた… 吸い取り紙に残された文字で、それは夫が手紙に書いたもので、「妻、シンプロン急行、ベニスの少し手前が最適だ」と読み取れた。
やがて列車がベニスの手前の海を渡る橋にさしかかると、空き室のコンパートメントから煙が出て大騒ぎになった… 発煙筒がたかれただけと分かったが、その騒ぎの間に「エルシー」の宝石箱が荒らされ、中身が無くなっていた、、、
「エルシー」の客室にいたスラブ系の女を「パーカー・パイン」が捕まえたが、その女は宝石を一切身に着けていなかった… 「エルシー」の夫「エドワード」が過去の出来事で恐喝されており、その解決のために一芝居打っていたとは、ちょっと読めない展開でしたね。
『バグダッドの門』は、ダマスカスからバグダッドへ向かうバス旅の途中、砂漠のただ中で起こった殺人事件を解決する物語、、、
ダマスカスからバグダッドへ砂漠を横断して進む六輪自動車の中で男性客の一人「スミザースト」が車内でグッタリしているのが見つかった… 男はすでにこと切れており、同乗していた空軍軍医「ロフタス」の検死により死因は頭を鈍器のようなもので殴られたらしいことが判明する。
かつて悪路を走る車の中で、頭を天井にぶつけて死んだ人間もいるとのことで、今回も事故かもしれないとの意見もあったが… ちょっと雑な検死だなぁ と思いましたが、、、
やはり「ロフタス」は、ただの空軍軍医ではありませんでしたね… 「スミザースト」がイートン校出身ということから、別な事件との絡みに気付くところがポイントでしたね。
『シーラーズにある家』は、イラン(ペルシャ)の首都テヘランと古都シーラーズを舞台にシーラーズの一角でひっそりと暮らす英国人女性「レディ・エスター・カー」にまつわる秘密を解き明かす物語、、、
バグダッドに着いた「パーカー・パイン」は、その後ペルシャに向ったが、その途中、飛行機のパイロットから乗客だった2人の英国人女性の話を聞いた… その話によると二人の女性はシーラーズに向い、そこで一人が建物から転落死し、もう一人が気が狂ってしまい、現在もシーラーズで世捨て人のような暮らしをしているらしい。
「パーカー・パイン」は、その話を聞いてさっそくシーラーズに向かい、気狂いと言われている「レディ・エスター・カー」に合い、話を聞くうちに彼女の秘密に気付く… 誰も知らない異国で過ごしているってことは、知られたくない過去があるんですよねぇ、、、
狂気の中での偶発的な事故死… 二人のことを、誰も知らない土地で入れ替わり、二度と母国には帰れないと思いつつも、徐々に故郷のことが恋しくなるが、真実を告白したら事故死ではなく殺人の容疑をかけられてしまうのではないか… そんな不安を抱えた彼女に、「パーカー・パイン」は温かい手を差し伸べたんですね。
『高価な真珠』は、ヨルダンのペトラ遺跡を舞台に真珠のイヤリングの盗難事件を解決する物語、、、
赤岩の都市ペトラに着いた「パーカー・パイン」はじめ旅行者の一行… その一行の中にアメリカの粗野な金持ち親子「ケイブル・ブランデル」と娘の「キャロル」が含まれており、「キャロル」が身に着けている真珠のイヤリングが8万ドルの価値があることや、失くしても直ぐにもう一組買ってもらえるとか、そうしたからといって破産するわけでもない、という嫌味な会話を聞かされていた。
翌日、一行が絶壁を登って広い台地に出た際、「キャロル」のイヤリングが外れていることに気付く… 確か少し前にはイヤリングは「キャロル」の耳についていたはずだった、、、
台地を探したが落ちておらず、誰かが隙を見て盗んだ可能性が高くなったが、身体検査等によってもイアリングは発見できなかった… 「パーカー・パイン」の推理は見事でしたが、盗んだ犯人はともかく、盗まれたイアリングには5ポンド程度の価値しかないことまで見破った手腕は見事でしたね。
『ナイル河の殺人』は、ナイル河を航行する観光船の中を舞台に船内で発生した殺人事件を解決する物語、、、
ナイル川を行く観光船は、金持ちの「レディー・グレイル」の貸切になるはずだった… 乗船していたのは「レディー・グレイル」と夫の「ジョージ卿」、姪の「パメラ」、付き添い看護婦「エルシー・マクノートン」、「ジョージ卿」の秘書「バージル・ウェスト」だけのはずだった。
だがそこに出港間際に「パーカー・パイン」が紛れ込む… そこではわがままな「レディー・グレイル」が気持ちをイラつかせていた、、、
その「レディ・グレイル」から「パーカー・パイン」に会ってほしい手紙が届く… 彼女はは夫が自分を毒殺しようとしていると打ち明けるが、「パーカー・パイン」は一笑に付し、「レディー・グレイル」は怒って、その場を去る。
しかし、その夜、「レディ・グレイル」はストリキニーネで毒殺される… 「レディ・グレイル」の生前の証言や「エルシー・マクノートン」の証言から「ジョージ卿」に疑いが向けられるが、、、
「パーカー・パイン」は灰皿に残っていた燃えかけの紙片から読み取れた僅かなメッセージ等から、真犯人を突き止めます… たまたま「パーカー・パイン」が乗り合わせなかったら、真相は闇の中だったでしょうね。
『デルファイの神託』は、ギリシャのデルファイを舞台に18歳の少年の誘拐事件を解決する物語、、、
ギリシャのデルファイのホテルに滞在する「ウィラード・ピーターズ夫人」のもとに脅迫状が舞い込んだ… 差出人は「ディミトリアス」と名乗り、彼女が溺愛する息子の「ウィラード」を誘拐したといい、身代金として1万ポンドを要求した。
「ピーターズ夫人」は同じホテルに滞在する「パーカー・パイン」に相談することに… 翌日2通目の脅迫状が届き、身代金の代わりに「ピーターズ夫人」が所有するダイヤのネックレスでも取引に応じると言ってきた、、、
「ピーターズ夫人」が再び手紙をもって「パーカー・パイン」を訪ねると、「パーカー・パイン」はダイヤを模造品に取り替えることを提案する… その後、同じホテルに滞在する怪しげな男「トムスン」が「ピーターズ夫人」の部屋を訪ねてきて、事件は意外な展開をみせる。
いやぁ… 叙述トリックにまんまと騙されましたね、、、
「パーカー・パイン」に成りすました悪人が、「ピーターズ夫人」を騙してダイヤを巻き上げようとしていたとは… まさか、「トムスン」が本物の「パーカー・パイン」とはねぇ。
気軽に読める作品ばかりなので、気分転換には良かったですね… 後半6篇のトラベルミステリは、イラクやイラン、ヨルダン、ナイル等が舞台となっており、後の「アガサ・クリスティ」作品を予感させるような作品でしたね、、、
イチバン印象に残ったのは、エンディングが鮮やかで意外性のある『デルファイの神託』かな… ダイヤを盗もうとした犯人の片棒を担がされそうになっていたことを見破った『困りはてた婦人の事件』も面白かったですね… 心にぐっとくる結末は『大金持ちの婦人の事件』かな、本当の幸せ って、人それぞれなことを改めて感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクリスティ作品の登場人物で格別に印象深いラフィール氏、死後もなお大勢の人を振り回すのが彼らしく、懐かしくさえ感じる。前作の颯爽とした別れの挨拶の場面で既に計画が浮かんでいたのかな。終盤の守護天使は痛快だったが、ミス・テンプルも守ってあげて欲しかった…
何が謎なのか探ることから始まる冒頭から、庭園ツアー参加者のアイデンティティ偽装も昔の作品よりひねりがあって面白い(怪しく見えて実は皆味方)。
ただ核心となる事件が不自然で残念。自分勝手な偏執を愛と言ってしまう少女漫画的混同はいただけないし、女性犯人の動機として無理がある(女性ならライバルを襲っても当人に危害を加える事は無いのでは)。「書斎の死体」、火曜クラブの「舗道の血痕」「毒草」のモチーフが再登場で、その点毒草の犯人は自然。ポリゴナムの描写とノラの失踪で何が起きたかはピンときた。
Nemesis は、かなわない、手強い人=ミス・マープルであって彼女の正義の嗅覚が主題だけどタイトルには「復讐の女神」が劇的で収まりが良いかな。
冤罪が晴れる話についてはアガサは感慨薄めにするのが好きみたい?2万ポンドを当座口座に入れてパッと使うと言う思い切りよさがまさにミス・マープル。このさっぱりしたラストがシリーズの幕引きにふさわしい。その意味でも、アガサ・クリスティ解説本の巻末で、三部作説は海外文献に見当たらず、3冊目のタイトルとされているWoman’s Realmが、本作が掲載された雑誌名と一致しているらしい(どこかで混乱が生じた?)という話がミステリ的。 -
Posted by ブクログ
ネタバレもう随分と言っている通り、私はクライトンのファンだ。日本語化されている多くの本を読んでいるが、この大列車強盗は未読だった。
クライトンの有名作品の多くはSFの印象だが、時代物とか現代物も結構ある。
Wikiペディアには、、、、
1855年にクリミア戦争の戦費としてイギリスがフランスへ支払うため列車で輸送していた金塊12,000ポンドを、エドワード・ピアースが列車内から強奪したという現実の事件を基に執筆された。この小説では1854年5月末頃にエドワード・ピアースが錠前破りのロバート・エイガーに共犯を持ちかけるところから始まり、1855年5月22日に金塊強奪を実行、1856年11月19日のピアース逮捕、1857年8月2日のピアースによる法廷での証言とその直後の脱走までを描き、主要登場人物のその後を簡単に報告する形で小説はまとめられている。
とあり、どこまでが史実でどこからがノンフィクションなのかよく判らない、クライトンにありがちな展開。でもビクトリア女王時代の英国の雰囲気が良く判る風俗や人々の描写がなかなか興味深くおもしろい。結局最後は手に汗握る展開で強奪に成功するのだが、その後逮捕されたかと思ったら、判決後あっさりと脱獄に成功してしまうとか、あまりごたごた書かずに終わっている。
なんとなく「白鯨」的なストーリーの進め方だなと思った。いずれにしても最初から映画化を考えての原作だったのではないかと思う。
1979年の「The First Great Train Robbery」という映画も見てみたいが、どこかにあるのだろうか? -
Posted by ブクログ
「カリブ海の秘密」の続編ともいうべき作品。
西インド諸島で共に事件を解決した大富豪の死を新聞で知ったミス・マープルは、しばし感慨にふけったいた。しかし、その大富豪から届いた手紙によって、詳細を知らされぬまま、とあるバス旅行へと誘われる。正義をなしてほしい、という願いを叶えるために。
登場人物表の半分近くをバスの乗客が占めているが、覚えなくても全然問題ないというところに苦笑い。バスツアーのくだりは、退屈なので正直脱落しそうになったが、三人姉妹と出会ってから「何をすべきなのか」がぼんやりと判明しだしてからは、ビックリするぐらい面白くなった。
実際使われたトリックそのものは、途中で気づいたけれど「誰が、なんのために」という部分で、ミスリードにまんまと引っかかってしまった。
最終章で卿や大臣といった名だたる男性陣に「今までに会った最高のこわい女」「たいへんやさしくて、たいへんに冷酷」と評されるミス・マープル。作者の価値観が見え隠れしてこれも面白い。