■全体として何に関する本か
本書は、日本国憲法について、幼児でも分かるような言葉で書かれた一冊である。日本社会が混沌とし、震災の影響で【25条:生存権】についても改めて考えさせられる今、日本国憲法の基本的な考え方に触れるのには適している。話の内容は決して深くはないが、学生時代に学校で教わったことを思い出す切っ掛けとなる。学生の頃とは違って、日本社会のことを少しは考えられるようになった今、再度、日本国憲法の考えに触れることには意義がある。
■何がどのように詳しく述べられているか
「憲法が何のためにあるのか」「憲法は何を保障しているのか」「国民になぜ義務があるのか」など、日本国憲法の根本的な意味や目的について解説がされている。
日本国憲法が最も大切にしていることは「個人の尊厳」である(【13条:すべて国民は、個人として尊重される】)。日本という国家は、一人一人が最大限に尊重される社会であるべきだと憲法に記載されている。これが日本国家の基本原則になるのであろう。
しかし、13条には続きがあり【13条続き:…公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする】ともある。こういった制約があるのは当然であるが、国政も経済活動も慈善活動もあらゆる活動に関わる者は、全ての国民を個人として尊重することを第一に行動を選択するべきだ。この条項に、一人の例外も許されないのだ。
では、どうすれば国民の尊厳を尊重できるのか。つまり、基本的人権の尊重とはどういうことなのか。
日本国憲法では、人権を次の3つの自由を保障することとしている。
「精神活動の自由【19条,20条,21条,23条】」「経済活動の自由【22条,29条】」「身体の自由【18条,31条,33条~39条】」の3つである。
思想や表現の自由、経済活動や居住場所の自由など、今となれば当たり前の自由ではあるが、これらは日本国憲法が制定するまでは決して当たり前ではなかったことを忘れてはならない。改めて憲法に触れることで、これらの自由を与えられている現代を有難いと思えるようになる。
■その本は全体として真実か、どんな意義があるのか
本書の最後で、国民の義務「教育の義務【26条】」「勤労の義務【27条】」「納税の義務【30条】」についても少しだけ触れている。これらの国民の三大義務の内、私は「勤労の義務」だけは少し違和感を感じた。
なぜなら、現在の日本で、この義務を果たしていない若者が社会問題になっているからだ。彼らの中には就職意欲が低い者もいれば、就職時期の状況が悪く希望の職に就けなかった者も存在し、勤労していない(勤労できない)理由は様々である。
しかし、世間一般に、「社会で働いていない人は義務を果たしていない」と考える人は少ないように感じる。私の感覚では、「働きたくないなら働かなくても良い。それがその人の自由であり責任でもある。」といった感じであった。しかし、勤労は国民の義務であることを忘れてはならない。
勤労の義務の意図は「働けるのに働きもせずに、生活保障を国に求めることは認められない。まずは働く努力をしなくてはならない。」ということである。これには確かに納得できる。(それ以上に、国家繁栄ために働くということは、義務というよりも今を生きる我々の使命であると思うが)。やりたい仕事がない、働かなくても生きていける、そういった人たちがいたとしても、日本国民である以上、働かなくてはならない。働くことは全ての国民の義務なのだと改めて考えるようになった。
■一番面白かったのはどこか、なぜ自分は面白かったのか
本書には全体として深い話は一切書かれていない。しかし、日本国憲法のエッセンスを非常に分かりやすく書いてある。日本国憲法は、日本で生きる我々の基本原則である。日本国憲法には、日本がどういった国であるべきか、それがはっきりと書かれている。13条に書かれているように、全ての国民が個人として最大限尊重される国家を我々日本人は目指すべきだ。そこには例外は認められない。我々は、時に社会的弱者を見て見ぬ振りをすることがあるが、それは日本で生きる者としての役目を果たしていないことである。