太田大八のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
10年以上ぶりに今回読んだところ、以前と印象が変わったところと変わらなかったところがあり面白かったです。含まれた全短中編に共通して再確認したことはやはり詩人の文章だということです。物事を形容する漢語や擬音語の選び方が独特で美しく、そしてユーモラスでした。漢語については、たとえば鉱物に関わるような漢語など、与える印象に透明感や輝きがある語が選ばれていて、これは漢字が読めないと子供にはわからないのかもしれないなと思いながら読み聞かせしました。擬音語は「ぐらあがあ」とか「ぎっばっふぅ」など子供の印象にも強く残ったようで読み終わったあとも口ずさんでいました。一方で今回新たに発見したことは、決して荒削りという意味での素朴ではないということです。これも詩人らしく言葉の選択に推敲に推敲を重ねた結果なのでしょうが、文章に一作ごとに違うスタイルを使っていたり、西洋風だったり中国風だったり、意図的に泥臭い生活感を表現していたり捨象していたり、伏線を張りめぐらせたりと、非常に技巧的だと感じました。特に「銀河鉄道の夜」については、銀河鉄道がどんな性質のものなのか、カムパネルラがなぜ乗っているのか、といったことについて序盤から何度も伏線が提示されており、子供もそれに気づいて不思議に思いながら話を読み進め、そして読後にはまた戻って振り返るということで、ミステリーのような楽しみ方ができました。
-
Posted by ブクログ
童話館ブッククラブの配本、上下巻。
森田思軒が『十五少年漂流記』として紹介したジュール・ヴェルヌの冒険小説の完訳。原題『二年間の休暇』はちょっと皮肉っぽくて、現代映画のタイトルみたいな響き。
『漂流教室』を愛読している私としては、高い自律性と社会性、健康的な精神をもつ15少年が眩し過ぎて、多少の違和感もあったりして、まあ児童が読むものとしてはこれぐらい明白、簡潔であるべきなのでしょう。食糧も武器もサバイバル生活に必要なツール類も船に積載したうえでの難破であるため、死を予感させる要素は薄い。気分的にはMinecraftのサバイバルモードのようなワクワク感だけがある。
余談だが終盤、無人島の位置が完全に解明され、Google mapを起動して眺め「おお、この大陸のこの緯度付近には(作中に登場する無数の)こういう野鳥が生息してるのか……」となったりする感慨があり、そういう構成もなかなか上手い。
機会があればこの作品と表裏をなすとされるゴールディング『蝿の王』も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
ヴェルヌが唯一少年向けに書いたという冒険小説、確かにとても楽しいものでした。
イギリスの植民地、ニュージーランドはオークランド市にある、裕福な家庭の子どもたちが通う、チェアマン寄宿学校の8歳から14歳の少年たち(イギリス人、フランス人、アメリカ人)。
夏休みにニュージーランドの海岸を1周する航海を予定していたのだけれど、
子どもたちだけが船内にいる間に、不幸にも漂流し、嵐の最中へ…
漂着した島での、2年間の生活ぶり。
よく訓練された機転の利く少年たちの、とってもワイルドで危険がいっぱいだけども、読者にとっては痛快なエピソードの連続!
少年時代に読んだなら、どんなにこの少年たちに憧れたか…(ドリトル先生が好きだったんだから読めたよなぁ)
たった1人見習い水夫のモコ(開拓者の家に仕える黒人の家族の子)が、船のことをよく知っているのだけど、彼を信頼し好感を持っているフランス人のブリアンと、黒人に好感を持つなど恥だと思っているイギリス人の少年たちとの違いなど、興味深い描写があちこちに…
ただ、ラストの教訓張り付けには辟易とさせられましたが、この時代の児童文学奈良ではなのかもしらません。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小野篁という人物に興味が沸いた一冊だった。
今昔物語等でも篁についての逸話は、たくさん残っているらしく、本書もそれらの資料をもとに伊藤さんが物語に仕立てた作品だ。
自分に自信のない、弱い、軟弱な男子「小野篁」が、義理の妹を自分の不注意で亡くしてしまう。
その時よりあの世の入り口へ、何かと繋がるようになってしまった篁が、征夷大将軍であった坂上田村麻呂や半分鬼である非天丸、父を探して上京してきた阿子那らと関わり、彼らの生き方や考え方に触れる事で成長していく物語である。
篁の成長が、焦ったくも丁寧に書かれていて、父と共に陸奥へ行こうとする場面を素直に受け入れることができた。
六道の辻は、京都へ修学旅行へ行くたびに目にする地名。ここから鬼がくるとは、旅行生も思ってはいないだろう。
中学生でも十分に楽しめる物語。
むしろ、歴史や短歌などを学習している分、物語の世界観を理解する事が容易ではないかと思う。