あらすじ
帝の住まう内裏のとなりに鬱蒼と広がる松の林。そこは「えんの松原」とよばれる怨霊たちのすみかでした。少年でありながら女童として宮中に仕える音羽は、東宮・憲平に祟る怨霊の正体を探るべく、深い闇のなかへと分け入っていきます。そこで彼が見たものは?……真実を求める2人の少年の絆と勇気、そして魂の再生の物語です。
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Posted by ブクログ
「鬼の橋」に続いてこちらも平安時代を舞台にした作品。
両親を怨霊に殺されずっと憎んでいた音羽丸が、怨霊のいない世の中というのは、ほんとうにいい世の中なんだろうか、と思うようになる。
「うまくやるやつがいて、そのあおりを食う者がいる。そのしくみが変わらない限り、この世から怨霊がいなくなるとは思えない。それなのに、怨霊がいなくなったとしたら…、それはいないのではなくて、だれにも見えなくなっただけじゃないか、という気がするんだ。だれも怨霊のことなんか思い出しもしないし、いるとさえ思わない…。忘れてしまうんだ、悲しい思いをしたまま死んでしまった人間のことなんか。それはもしかすると、今よりもずっと恐ろしい世の中かもしれないぞ」
悲しい過去も、私たちは忘れてはいけない、それを今一度考えさせてもらった気がします。
Posted by ブクログ
平安時代の空気を、怨霊がウヨウヨいた時代を感じてもらいたいです。
中川なをみさんの 龍の腹。 水底の棺。
も読んで欲しいです。
教科書で歴史を知る前に、是非。
Posted by ブクログ
児童文学!というお話しの形がそこにありました。
だけども時代は平安、ほんとにおもろしろい。
太田大八さんのめくるめく素晴らしい挿絵が、福音館のハードカバーとなんともしっくりくるんです。
しかしこの堅気な児童文学を今の子どもが、いやどんな子どもが手にするというのか。。
おはなしは、
怨霊に取り憑かれた東宮 憲平と、怨霊によって両親を亡くし、叔母の主から追い出され、内裏に女の童としてはたらく少年 音羽との友情物語。
東宮のなんだかジェンダーレスな雰囲気と、男の子ということを隠して女としてはたらくしかない音羽、という対比にワクワク。病気がちでおとなしい少年とやんちゃ坊主、彼らを見守り手を差し伸べる良き大人と、ほんとに児童文学のど真ん中を行くスタイルですが平安の世というところが面白くさせる。
いろんな意味で裏切られたお話でした。
怨霊がなぜこの世にはびこるのかを音羽を預かる内侍様が語るところが良いので引用しますと
_だれかが栄華を極めれば、その陰にたくさんの嘆きが生まれるものだ。
その嘆きをわすれた結果だろう。いや、忘れてはならぬといういましめのために、怨霊は現れるのかもしれない。秋になれば木にはたくさんの実がなるが、みなで取りあうとなれば多い数ではないそれをすべて己が腹へおさめ、吐き出す種らも自分の領地の内というのでは、恨みも買おうと言うものさ。烏ですら、まだ熟れぬ実くらいは残すだろうに、人は一度にぎったものをなかなか手放せぬものらしい_
まったく、人間というものは…
怨霊だなんて物騒なお話かと思えど、児童文学ゆえに怖くはなく、私にも読めました笑笑。