川島博之のレビュー一覧
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・農業は成長産業ではない
-工業と比べるとGDP比で比べて生産額はとても小さい
-工業製品と比べて,つけられる付加価値には限界がある
-総消費量には人口に応じた限界がある→中国の人口は頭打ち
・日本は戦後の農地解放+自民党の農民優遇政策のおかげで一億層中流社会が実現できた
・中国では土地は共産党のもののため,格差がとてつもなく広がってきている
・中国の投資マネーの大半は上記共産党員のものである
・中国の統計を鵜呑みにしてはいけない
-中央に良い顔をするため地方の成績は水増しして報告される
・中国のバブルは必ず崩壊する
→クリエイティブな文化が育たない場合中国はものづくり大国となり,日本が同路線で戦うことは厳しい.新たなサービス産業を中心に戦うべきである. -
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日本人である私のベトナムのイメージは、過去に数回訪れた際にできたものだ。かれこれ数十年が過ぎてしまったが、訪れた地がハノイやホーチミン周辺だったこともあり、想像以上に都会だったと記憶する。走っているバイクの数が半端なく多いこと(信号待ちしてると大きな通りでは先頭に七、八台並んでいた)。青になった瞬間に一斉に走り出すバイク。きっと恐らく早朝の出勤時間だったと記憶する。夜になると熱帯特有のツルの垂れ下がった木々に巻きつけられたネオンが色とりどりに光り、蒸し暑さに汗を拭いながら、美味しいレストランを探して歩き回った思い出がある。昼間は街は思いの外静かで、特にホーチミンなどは(ドンコイ通り)おしゃれなカフェが至るところにあり、当時持ち歩いていた一眼レフで、写真を撮りまくった。どこを撮っても絵になる街、そんな記憶だ。
思ったよりも都会だと感じながらも町中ビルの工事が進行中で、経済の発展を肌で感じられた。一方、少し路地裏に入れば、とても綺麗とは言えないような廃墟じみた建物が並び、美しく硬質なビルの裏側に、まさかこんな危険な街並みがあるのだと、そのコントラストに驚いたりもした。そして市場。庶民のお腹を膨らます料理の食材、特に暑い気温の下でも冷蔵もされずに並びハエがたかる生魚を見た時は、食べてお腹を壊さないものかと心配になったりした。勿論焼いて加熱すれば何も問題ではないにしろ。市場は特にドリアンや魚醤の様な匂いが入り混じり、東南アジアの他の国も大半訪れた事があるのだが、それらと同じく、心地よいアジアの市場文化を心底味わえる、これぞアジアという風景がそこにはある。
ベトナム旅行記の様になってしまったが、最近では仕事でベトナムと絡む事が多くなった。私の住む街にも沢山のベトナム人がいて、ベトナム料理屋も沢山あるし、コンビニ店員さんもベトナムの方が多い。仕事は主にIT系。これまでは中国との取引が多かったが、地政学的リスクを考えると、ベトナムへ交代していくのは自然な流れだった。発注先選定にも何度か関わったが、価格にしても誠実さや熱心さでも、ベトナム人に対してかなりの好印象を持った。
そんな増えていくベトナム人とどう向き合っていくか。そしてかつて訪れたベトナムという国が、今どの様な状況にあるか。本書はベトナムの歴史や周辺国との国際関係からベトナム人の考え方や気質を紐解いていく内容となっている。また近々ベトナムを訪れる機会がありそうだが、彼らの歴史や思考を学ぶ事で、これまで以上に良い関係性を築いていきたいと考える。そういった似た様なビジネスパーソンも、旅行を企画している学生さんも、一度目を通しておくと、よりベトナムという国、国民への理解が深まる内容だと思う。筆者はベトナムに関する必読書を目指しているそうだが、入門編としてだけでなく、長くベトナムと関わってきた生の情報として、リアルな彼の国を知る良い機会になる一冊である。 -
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・習近平政権は、情報技術を駆使してデジタル文化大革命を進めている。それは、次のようなもの。
└政権に都合の悪い情報が拡散しないようネットを監視する。
└監視カメラを1.7億台以上設置し、その映像を解析する。
└すべての国民が持つ、個人データが入力された身分証明書を分析し、個々の行動を把握する。
・中国の景気が減速し、就職難の若者の不満が高まると、社会不安につながり、「アラブの春」のような反乱が起きかねない。ゆえに習近平は、ネットの管理に神経質になっている。
・中国のネット会社は、政府の庇護を受け、米国の模倣をすることで成長した。だが、模倣から新たな技術は生まれない。
・中国では、宋の時代に科挙(官僚採用試験)の制度が完成し、以降、科挙に合格した官僚が知識人として重んじられた。今日も、受験秀才が官僚になる。
彼らは国家建設には役立つが、娯楽や文化などを創り出すのは苦手である。こうして、宋以降の中国は良質な文化を生み出さなくなった。
・監視を強める中国は、次のような未来を迎えると予測される。
①監視の技術が進化し、反権力的な動きは早々につぶされる。
②創造的な文化や、中国発のイノベーションは生まれない。
③不動産バブルが終わり、過去30年続いた経済成長が止まる。
④経済の低迷により、若者の就職難が拡大する。
⑤習近平が自らの力を示すため、台湾に侵攻しようとする。
⑥経済低迷の責任を問われ、習近平政権が崩壊する。
⑦共産党の一党支配が終わり、中国は分裂状態に陥る。 -
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戸籍アパルトヘイト、というフレーズは過激のように思いますが、中国には戸籍という厳然とした区別制度があることは知っていました。
私が中国語の勉強を始めてから、何人かの中国の方を知り合いになりましたが、殆どの方が都市戸籍をお持ちの方のようです、デリケートな内容になるので話題にすることもありませんが。
私が思うに、中国はいままでこの制度を上手に利用して、国民に「やる気」を与え続けてきたとも言えます。会社の同僚含めて、皆さん勤勉ですし、起業精神にあふれる人が多いです。
どの制度にも良い点と悪い点があると思いますが、簡単には調査することができない話題について、詳細なレポートを読める、ある種の贅沢さを感じながら読んだ本でした。
以下は気になったポイントです。
・担当した地域を発展させること、最も分かりやすい指標がGDPである。それを知れば、集客が見込めない観光地に空港を造ること、冬で閑散としている時期でも照明で煌々と照らすことも納得できる(p19)
・住宅開発は基本的には民間業者が行うが、土地関連事業は地方政府の指導下で行われるので、その資金繰りには市政府が関与している(p26)
・都市戸籍と農民戸籍の制度は、中華人民共和国が成立したのち、共産党によって作られたもの、農民戸籍を有する人が9.3億人、都市戸籍は3.8億人、7割が農民戸籍、2010年に中国政府が行った調査で公式な数字、農民戸籍のうち、農村から移り住んだ3億人が都市に住んでいる(p28、30)
・駐豪政府の悉皆調査によれば、総人口13.4億人中、学歴が判明したのは11.9億人、都市人口が4.0、鎮:2.6、農村:6.5億人となっている、都市に住人の26%は、農民戸籍、鎮では62%、農村では96%が農民戸籍(p34)
・中国の職場の定年は日本より5年ほど早く、55歳前後に設定されている、人口ピラミッドでひときわ高いピークである1963年生まれは、2018年に55歳となる、これは日本の2007年の状況に似ている(p45)
・日本への爆買い旅行に来ている人の多くは、都市に住む最上位20%に所属する、彼らの人工は1億を超えていているが、全体の1割に過ぎない(p52)
・小麦だけ食べていると、体に不調をきたすので、たいてい同時に牛、羊を飼っている、小麦に不足している必須アミノ酸を補う(p59)
・改革開放政策が始まった後、最も工業が発展したのは、長江流域と、広東省を流れる珠江の下流地域だが、どちらもコメ作地帯(p63)
・中国とは、北部の小麦文明が南部のコメ文明を支配する国である、南部に首都を置いた政権は、短期間で滅んでいる、国民とは都市の城壁のなかに住む人だけ、これが農民を二流国民と考える意識を生んでいる(p67)
・中国人は約1000年間、科挙の試験のシステムで暮らしてきたので、心のどこかで勉強ができないから、あるいは商売をする才覚がないから、そうした人が農業をしているのだと考えるようになった(p72)
・中世欧州で国境があいまいだったのは、しゃべる言葉はあいまいでも、教会の公式用語であるラテン語が存在したから。中世のインテリはラテン語の読み書きができたので、どこに行っても困らなかった。しかし16世紀、マルチン・ルターが聖書をドイツ語に訳したころから、書物は各国の言葉で書かれるようになり、言葉の違いが国境となった(p75)
・中国は、漢字という表意文字を使っていたからこそ、巨大な人口が分裂することなく一つの国であり続けた、表音文字が使われていたら、欧州やインドのように小国が分立していただろう(p76)
・要人の警護に抜擢されて任期を全うすることができれば、特に条件の良い天下り先が用意される。北京勤務の武装警察において、要人警護は最高位のあこがれのポストである。(p88)
・科挙合格者は実際の業務を行うことはなかった、実務は科挙に合格しなかった下級官僚が行った。日本では、明治システムがこのシステムを導入し、第二次世界大戦が終わるまで、官選の知事を置いた時代があったが、例外中の例外である(p92)
・本気で万里の長城を突破しようとすれば簡単にできる、一部に集中して1か所を破壊すればよいので、防衛線として有効であったのは、相手が小部隊であったから(p105)
・農業生産が順調に増加すると、農民は貧しくなる。戦後の日本で生じたことが現在の中国でも進行している、その結果、農民は戸籍アパルトヘイトで身分を固定されて、どんどん貧しくなる(p130)
・人類は長い間、飢餓との闘いであったが、20世紀になって空気中の窒素を工業的に固定して化学肥料を作る技術が開発されると、収穫量が急増して食料不足は解消した(p132)
・中国の現状は日本の何年くらいに似ているのか、4億人の都市部と見た時には、バブル(1990)や、一人当たりGDP(1970)という議論があるが、都市と農村の人口比でみると、1950年頃に似ている(p133)
・農民は反乱を起こしても武装警官で鎮圧できるが、都市の中産階級は情報発信能力があるので、共産党は都市の中産階級が不満を持つことを恐れている。だからコメの価格を上げない、農民工の最低賃金も上昇を抑えている。都市部のサービス価格が上昇するので(p140)
・中国では土地は売れないが、使用権は販売できる、使用権は宅地は70年、工業用地は50年と決められている(p150)
・土地開発公社をコントロールしている会社は地方政府、中国企業は簡単に資金を集められるのは、土地を媒介に作られている。この土地収用システムは、日本企業が中国企業に負けた原因の一つになっている(p151)
・中国が共産党独裁をやめて民主主義を導入したらどうなるか、その答えは既に、タイにある。農村部を基盤とした、タクシン政権が作られたが、クーデターが起きて、選挙をしても勝てないので、都市のエリートは力によって政権を奪取、現在も未だ軍政下にある(p164)
・習近平は、和諧社会(格差の是正に取り組む)を取り下げて、中国の夢、を国家目標にした。国内問題解決よりも、対外膨張政策や国威発揚に舵を切った(p184)
・20世紀になって実力がないにもかかわらず国威発揚を図り、覇権国に挑戦して敗れた国が3つある、ドイツ・日本・ソ連である(p191)
・次の30年程はインド経済は順調に発展する、現在の一人当たり2000ドルから、10,000ドルあたりまで。中国は中進国の罠にはまり、10,000ドル当たりで低迷するだろう。すると将来的にインドの人口は中国を上回るので、GDPもインドが抜く可能性があるだろう(p219)
2018年1月14日作成 -
Posted by ブクログ
農学出身ではない筆者(出身は工学/システム系)が究極的にマクロ視点に立ち、食料自給率の無意味さ?に切り込んだ本書。
講演会に行くことになったので予習のため前日に一気に読破。その気になったら本ってけっこうなスピードで読めるもんですね(笑)
食料自給率が何かというのをまず認識し、世界の中で日本の農業をどう見るか、ということを行い、最後に筆者なりの処方箋が書かれています。
日本の農業/食料問題を入門的に俯瞰するのに適した一冊じゃないかなと思いました。
この手の本は農業経済の息がかかった人が書くことが多いんですが、この方はそうでないからかけっこう新鮮な目線が多い。twitter/mixiで気になったフレーズは抜き出してつぶやいたのですが、まあそういう事です。
石油ショックは日本社会の大きなトラウマになっている。(中略)多くの国民は、これと似たような事態が食料に関しても起こるのではないかと心配している。p44
我々は、主に贅沢をするために食料を輸入している。p69
貧富の格差が激しく、極端なポピュリズムにより政権を獲得した政府には、そのような合理的な判断(註:アルゼンチンが穀物禁輸措置をしないという選択をすること)ができなかったようだ。p80
食料自給率を食料安保に結びつける議論は、どこかその杞の国の人の心配に似ている。p91
食料危機の歴史を振り返ると、その真の原因は政策の失敗にある。食料危機は天災ではなく、人災である。p92
門外漢だから言える過激なことも、専門家に言わせれば多分、「現実を見てないよね」ということになるんだろうけど、この方はそれをはねのけられる言葉の巧さと強さを持ち合わせてると思いました。
最近この手の言説がぼちぼち出てきて、自給率の非万能性というのが広まってきたみたいです。今後も活発な論説を期待したいです。