荒山徹のレビュー一覧
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歴代から消された北朝初代天皇であり、南北朝の動乱を生き抜いた光厳天皇の激動の生涯を描いた歴史小説。
500ページを超える大作でしたが、すっかりその歴史の中に没入して読み終えてしまいました。
いわゆる太平記の時代が舞台であり、自分はあまりなじみのない時代でしたが、まさに動乱の時代であったことを再認識しました。
当時の複雑な皇室の在り方、武士としての生き様や貪欲さ、そしてそれぞれの駆け引きなども描かれ、歴史小説としての醍醐味を十分に堪能することができました。
そして、光厳天皇については、私の歴史の知識の中には今までなかっただけに、この動乱に翻弄されながらも、天皇としての生き方を全うしようとした存在だったということに、とても感銘を受けました。
また、この作品のタイトルのもとになっている「風雅和歌集」という勅撰和歌集を光厳天皇が中心となって編んだことを初めて知り、その和歌集に懸ける光厳天皇の熱い思いも伝わってきました。
光厳天皇が筋トレにはまっていたり、あの「逃げ上手の若君」が時々物語に絡んできたり、著者らしいスパイスがいい感じで味付けされていました。
今、まさに皇位継承について、国会で議論されていますが、日本の未来を見据えて慎重に考えていかなければならないとこの作品を読んで、改めて思いました。
そして、読み終えた今、間違いなく、私の歴史小説トップテンに入る傑作だと感じたところです。 -
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舞台は7世紀の東アジア。主人公の百済の王子余豊璋は、政変に巻き込まれ、監獄に収容される事に。絶体絶命のその時、彼を救い出したのは、倭国から使者として訪れていた蘇我入鹿。入鹿の手引きで倭国へと亡命した豊璋は、飛鳥の地で入鹿や中大兄皇子といった若き権力者たちと交流し、東アジアの覇権を巡る巨大な渦の中に身を投じる。やがて百済が唐・新羅の連合軍によって滅亡すると、豊璋は故国復興の夢を背負い、倭国の大軍を率いて、運命の「白村江の戦い」へと突き進んでいく。しかし、再興軍の内部抗争、唐の圧倒的な武力、そして冷徹な国際政治の思惑が彼を待ち受けていた。。。特徴は、一人称多視点特に、半島側からの視点を中心に描かれている点。 多くの日本文学が「日本から見た白村江」を描くのに対し、本作は百済、高句麗、新羅の視点を中心に据えることで、当時の半島情勢の複雑さを浮き彫りにしている。そして、「なぜ倭国はあのような無謀な大軍を送り込んだのか」という歴史の謎に対し、入鹿や中大兄皇子の個人的な野心や時代背景を絡めた、大胆で説得力のある仮説にただただ感嘆~。生涯読んだ作品の中でもトップクラス、圧巻の5つ星作品ですよ~
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『更級忍法帖』です
荒山徹さん初読
そして『忍法帖』と言えば山田風太郎御大であるのは言わずもがな
たぶん何作か読んだことあると思うのだが、もしかしたら漫画化されたやーつだったかもしれない
なにしろ山田風太郎御大と言えばエロである
漫画化して頂いたほうがありがたい
青少年には恐悦至極である
荒山徹さんに話を戻す
お話は仇討ち、妖術、ちょいエロと山田風太郎風をきちんと踏襲しており『忍法帖』の名に恥じないつくり
そしてかなりお馬鹿である
超真剣にお馬鹿をやる
これぞ『忍法帖』である
ちゃんとと言ったら当たり前に失礼だが、荒山徹テイストももちろんのことふんだんにある
朝鮮妖術とかな
そして『更級忍法帖』と銘打ってあるだけあって古典『更級日記』が物語の核となっている
『更級日記』もばっちこいの万能型のわいにはむしろもってこい
そしてわいかなりお好きである
基本的に伝奇小説好きなのよ
『甲賀忍法帖』とか読み直したくなってきた -
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歴史全般、そんなに詳しいわけではないのですが、特に古代史はあまり自信がない。だけどとても気になるから、ということで不安な気持ちを抱えつつ読みはじめたのが本作だったのですが、気付けばのめり込むように読んでいました。
異能の力を持った天才少年が、大切な仲間を殺され、国を追われ、失意の中、未知の世界を大冒険する大長編ファンタジーなので、ストーリー自体はとても馴染みやすい作品で、脇を固めるキャラも魅力的。特に虎杖と柚蔓の関係が大変素晴らしい。この作品は自分をどこまで連れて行ってくれるのだろう、とどう転がっていくのかまったく予想のできない物語が好きなひとには特におすすめです。特に二巻の後半あたりからの、そういう形で変貌を遂げるのか、という展開には思わず唖然としてしまいました。
異能バトルあり、ゾンビものや怪獣もの(というか巨大ロボなのか)を思わせる要素あり、かなり官能的でもあり……とサービス精神が旺盛なのも魅力的でした。全三巻。1500ページ近く。気軽に読める作品ではありませんが、誇張抜きで、これは現代エンタメの最高峰のひとつなのではないか、と思うような読書体験でした。だからこそもっと古代史や仏教について知っていれば理解を深められたのではないか、もっと理解を深めたいなぁ、などと考えてしまいました。 -
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ネタバレ唐、高句麗、新羅、百済、倭の七世紀における角逐の焦点を白村江の戦いにおいて、それに至る経緯を21年前から書き切る。
白村江の戦いが天智天皇(葛城皇子)と新羅の金春秋(と息子の金法敏)の秘密同盟による合作という新しい見方に仰天。余豊璋、金春秋、泉蓋蘇文、葛城皇子、中臣鎌足、蘇我入鹿、田来津などの各国の登場人物もビビッドに描かれており飽きなかった。
歴史的な通説としては、仏教伝来など伝統的な友好国であった百済の滅亡に際して、同国遺臣の要請に応じて軍勢も出すも軍事大国の唐水軍に会えなくて倭水軍は敗れ、百済再興も潰えたが、九州に水城を築きつつ唐との関係は何とか維持して遣唐使の派遣まで漕ぎつけ、一方亡命百済人を受け入れたことで律令制、仏法、技術の発展に寄与した。この後、日本からの半島進出は倭寇を除き、秀吉まで無かったという理解だった。
本書では、葛城皇子と金春秋が政策調整を進めていく様が面白く、葛城皇子の構想は最後に語られる、主人公である余豊璋を裏切る形でだが。
・文化的には北方からの外来蛮族の扶余族の国である高句麗や百済ではなく、日本とも縁のある(日本から渡った?)韓族の国である新羅と結ぶ
・半島分裂ではなく友好的な新羅による統一によって北方脅威からの防壁にしたい。
・このため、それらしく見せつつ(亡命皇子の余豊璋を盛り立てて)百済を救援しつつ、わざと失敗する策を取る。これにより、誰の助けも無ければ百済人が団結して窮鼠猫を噛むところ、倭の支援を期待して仲間内の結束は脆くなるとともに、倭が敗北した時の絶望感が半端なくなり、国は解体される。これは倭が見捨てるよりも新羅による統一に好都合。白村江での実際の損害は限定するが、負けはある種喧伝して百済人の絶望感を強化する。
・この結果、亡国の百済人は新羅に降るか、倭に亡命することになる。倭としては、行き詰まっていた大化の改新の実施のための官人を亡命百済人が自発的に倭に来てくれることにより成し遂げられる。
・なお、戦う構えのために新羅領の2港を攻め、新羅は慌てふためいて撤退して外見を整えつつ、これらの港を百済人の倭への亡命拠点として活用する。
・唐との関係では、偶発的衝突として謝罪して新羅にも口添えしてもらう。
あの時代に実際にここまで見越して外交を葛城皇子が練っていたとすれば傑物というほかない。
なお、体良く騙され、妻にも先立たれてしまった余豊璋はいいとこ無しだが、高句麗に逃げ、30年号に妻の名をもじって大祚栄として渤海を建国した(かも)という余韻を残していることも心憎い。実際には、高句麗滅亡時に唐に捕えられ、流刑に処されたことになっている。
どこまで事実に即しているかはわからないし、そもそも小説。とても面白かった。特に、葛城皇子に擬して練った外交構想はとても良かった。 -
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歴史の教科書では「倭国・百済連合軍と唐・新羅連合軍が白村江で戦い、倭国軍が大敗。これをきっかけに百済が滅びる。」
という無機質な文章で片付けられていた出来事をこれでもかと深掘りした歴史長編。
百済の皇子が倭国に亡命するところから物語は始まり、朝鮮半島の動向、倭国内での政治分断から外交、決戦までの流れを人情も交えつつ描いている。
教科書では悪者にされている蘇我入鹿が善良、中臣鎌足と中大兄皇子(天智天皇)が悪者として登場するところが個人的には好みである。
戦いの後明かされる天智天皇の作戦には思わず唸った。
小説なので細部に多少の脚色はあるだろうが、白村江の戦いについても学べる一冊。 -
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南北朝時代
歴史の授業でさらりと通り抜けた時代
こんなにも時代に翻弄され
裏切りや屈辱、不遇であった天皇がいたとは
恥ずかしながら知りませんでした。
物語なので、想像で描かれてるところも
あると思うけど、
事実が丁寧にかかれ、
最初のあたりは、知識が追いつかず
登場人物の多さと複雑さに
心折れそうでしたが
光厳天皇の語り手ですすむので
よみやすく、感情移入していき
最後に行くにつれ、読むのをやめられなくなりました。
この複雑な時代をまとめ上げ
語るのは大変なことだったと思います。
読んでよかった
面白かったです。
結末を知らずに読んだので
最後は、はぁとため息と、充足感。
政を背負って立っている人に
いいたいです。
政治家のための民ではなく、民のための政治家
でなくてはいけないと。
あやまちの歴史は繰り返す
ことがないように
また、私からしたら
天皇という存在が実感しにくい
けれど、幾つもの時代を経ても
絶えることのなかった天皇について
もっと知りたいと思いました。
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永遠のヒーロー、柳生十兵衛。
著者の作品は、ほぼ必ず「かの国」が絡んでくるため食わず嫌いと云うか、素直に読めない気持ちが先行して、ヒット作を量産していた頃でも中々手を出せなかった。
そんな自分が「柳生十兵衛なら多少我慢すれば読めるかな…?」ぐらいの気持ちで手に取ったのが本作だった。
正直、「かの国」の呪術や何やかやは読んでいて愉快なものでは無かったが、著者が(私の大好きな)山田風太郎先生を敬慕しており、あの十兵衛像を傷付けない作風を考えて書かれているのが読んでいてもスゴく良く伝わり、とても楽しめた。
この作品を読んで、著者の柳生物についてはほぼ全て読破したのは云うまでも無い。
山田風太郎好きな方なら、心配無く楽しめるので、まだ未読の方々には是非お奨めしたい。 -
Posted by ブクログ
歴史の用語として聞いたことは在っても、然程詳しく知るでもない「白村江の戦い」を背景とした作品だ。
「白村江の戦い」というものは、日本での対外政策の変遷、朝鮮半島の国々の相互関係、中国大陸の帝国の動向と様々な要素が絡み合い、関係した人々の様々な思惑が交錯した中で惹起したということになるのであろうか。そういうことに関して、倭国(日本)の要人や、結果的に倭国へ亡命していた百済の王子、百済の人々、新羅の要人というような幾人かの視点人物を設定して大胆な大河ドラマを展開している。
所謂<大化の改新>で誅殺される蘇我入鹿が序盤では大きな存在感を見せるが、途中からは葛城皇子(中大兄皇子)が大きな存在感を見せ、その軍師という感じの中臣鎌子が暗躍している。朝鮮半島の動きとしては、新羅の金春秋が大きな存在感を見せる。
朝鮮半島は百済、新羅、高句麗が鼎立していたが、百済は唐と結んだ新羅に滅ぼされてしまう。その百済の復興を目指したというのが「白村江の戦い」ということになる。作中世界は“古代”ということになるが…何か“現代”であっても在り得るかもしれないような、謀略が渦巻く世界である。
そうした“謀略”の世界に巻き込まれて行くこととなってしまう百済の王子が、王室の内紛で命を落としてしまいそうになった所から倭国へ逃れる形になり、蘇我入鹿が「将来の親衛隊」を育てようとしていた寄宿学校的な場所で育って行く様子というのが作中に在るのだが、そういう辺りも面白い。
こういうような「東アジア世界に在った古代の日本」というようなことを強く意識したような作中世界が展開する小説…個人的には、類例に余り思い当たらないが、一寸興味深かった…