荒山徹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
秦の始皇帝、項羽と劉邦、漢の武帝の時代にわたり、巨大な権力に一人立ち向かい続ける不死身の男シャクチの活躍を描いた大河伝奇小説。
700ページを超える大作でしたが、読み始めたらその長さが気にならなくなるほど、この物語の世界観にどっぷり浸かっている自分がいました。
中国の歴史についてはそれほど詳しくないのですが、司馬遼太郎著「項羽と劉邦」を読んでいたので、その時代の人物が出てくる所は特に読み応えがありました。
時間も空間もスケールが大きく、歴史上の人物だけでなく、作者お得意の妖獣、怪獣が登場する中で、一人の男が巨大な権力に闘いを挑む姿が描かれ、ヒロイックファンタジーとしても、これほど想像力を壮大に働かせた作品は、あまりないのではと思うほどでした。
また、エンターテイメントの側面とともに、日本・韓国・中国という大きな視野で歴史を描いている展開は、まさに21世紀の今の時代を考える上でとても重要な要素ではないかと改めて考えさせられました。
その他、文明と野蛮との対立も重要な要素になっており、未来への警鐘としてとらえることもでき、この作品からさまざまなことを受け取ることができました。
小説の醍醐味を思いきり味わえたことで、自分にとって忘れられない作品の一つになりました。 -
Posted by ブクログ
荒山徹 著「竹島御免状」を読みました。
徳川の治世が盤石になった頃、竹島の領有をめぐり、朝鮮妖術師が日本に侵入。迎え撃つのは柳生の血を引き、陰陽道にも通じた柳生友信。共に立ち上がった老齢の柳生十兵衛は、因縁の敵と最後の戦いに挑むのだった。
自分の好きな「柳生陰陽剣」の柳生友景の子孫である友信が活躍する小説というだけで、読み進めていくのがとても楽しみでした。
しかも、その友信に力を貸すのが、我らが柳生十兵衛とくれば、もう言うことはないほどです。
今回も奇想天外な妖術合戦の展開に、子供の頃のわくわくする思いがよみがえってくるようでした。
助さん、格さんを従え諸国漫遊している水戸黄門をはじめ、「天地明察」の渋川春海や、なんとガメラや大魔神まで登場してくるところなどまさに時代劇エンターテイメントの極みではないでしょうか。
そんな奇想天外な展開だけではなく、現代も今なお問題となっている竹島についての争奪戦が描かれており、歴史的に見ても、この島が単純な問題ではないことがよくわかりました。
結末で、この物語が現在の領土問題のもとになっているという形で終わる辺りもとても考えさせられました。 -
Posted by ブクログ
荒山徹 著「徳川家康トクチョンカガン」を読みました。
朝鮮の義勇軍に参戦していた元信は、豊臣秀吉率いる日本軍に捕らえられ、徳川家康の影武者に仕立て上げられる。豊臣に恨みを抱く元信は、怪しげな朝鮮忍者を駆使して豊臣滅亡をもくろむ。関ヶ原の戦いや大阪の陣の裏で一体何が起きたのか。そして、徳川秀忠と柳生宗矩は阻止することができるのか。
関ヶ原、大阪の陣というあまりにも有名な歴史の裏でこのような戦いがあったと誰が想像できるのか、それはまさに山田風太郎亡き後、この荒山徹をおいて他にいないという意気込みが伝わってきそうな読み応えたっぷりの歴史エンターテイメントでした。
家康の影武者が朝鮮人だったという設定にも驚かされますが、そういう展開で歴史をなぞらえていくと、思わず納得してしまいそうに感じざるを得ない所もさすがだと感じました。
また、表の戦いでの登場人物はみな歴史上の人物を配しつつ、裏の戦いでは得体の知れないすさまじい忍者を描くところも楽しめました。
特に、自分の好きな霧隠才蔵が最後まで物語に関わってくる所などもうれしいかぎりでした。
結末も荒山徹らしい終わり方でやられました。
これからも歴史の裏から歴史のおもしろさを描いていってほしいと思いました。
-
Posted by ブクログ
扇谷上杉、北条氏を描いた富樫倫太郎「早雲の軍配者」の後に読んだ作品として最高だった。非常に混沌としていながら、戦国期の甲信越・関東の土台となった"古河公方"に纏わる連作短編アンソロジー。
1.嘉吉の狐:古河公方初代成氏-唯一の生き残りの前半生。足利義政への恨みと関東公方としての覚悟、それとかの有名な嘉吉の変のリンクが自然で良い。
2.清き流れの源へ:大人しい茶々丸というのが新鮮だったが、途中の豹変の過程が不明瞭で違和感。
3.天の定め:北条に抗い続けた晴氏。子への非情さと情の狭間で揺れ動く心情がよく描かれている。
4.宿縁:他と一線を画す荒山氏らしい独特な作品。源義家から描き、さくら一族の特殊能力というSF要素を加え、北条の乗っ取りを描く。
5.螺族の龍:こちらも独特な作品。荒唐無稽さではダントツ。天海和尚や曲直瀬道三を出す発想には感服するがさすがに突飛がすぎる。
6.大禍時:信長抹殺にさくら一族が関わっていたというストーリー自体は突飛だか、義氏の心情によくスポットライトが当たっており良作。気弱・優しい義氏の人間らしさが同情を誘う。
7.凪の世:江戸期・喜連川藩に足利の血脈が繋がっていく締めとなる物語。主役が高坂長内で、ラストがこれで良いのかとうショックが残る。 -
Posted by ブクログ
日本が百済を救援するために唐・新羅連合軍と戦った白村江の戦い。
この戦いの結末、目的が語られる最終章に唸らされました。ミステリーの最後を読んでいたかのような驚き。
政治判断という言葉で切って捨てられる国の運命、人間の命。
有益無益しかない思考には、賞賛はないのですが、共感は多少なりともある。
なんというか、自分の悪癖というか成長できていない部分なんですが、冷静冷徹な大を助けるために小を捨てる、といったものに憧れてしまうという厨二の幼さがあります。
その部分に刺さったのが「白村江」で明かされた葛城皇子の陰謀。
もちろん、その陰謀の駒としていいように扱われても、己の生き様を全うした豊璋たちの素晴らしさがあってこそです。
予想以上に楽しかった「白村江」。いい小説に出会えました。歴史小説って面白いよね。 -
Posted by ブクログ
鎌倉時代末期、南北朝に分裂した皇統を統一すべく奔走した光厳天皇の物語。足利軍により京都を追われ、鎌倉幕府軍とともに鎌倉を目指すも囚われの身となる。その後、後醍醐と敵対した足利尊氏に擁立されることで、一度は“治天の君”の座につくも、尊氏の裏切りにより、再び囚われの身に。吉野での幽閉の日々の中、「天皇とは何か」を考え続ける。武士の裏切りが相次ぎ、その時の権力=武力に翻弄され、皮肉なことに自身の孫の代で再び皇統分裂の危機を招く。南北朝時代を描いた小説はあまり多くないと思うが、これはその中でも武士ではなく天皇家に着目した作品。中立的な立場の天皇の目で見ていることから、この時代がよくわかる。
-
Posted by ブクログ
戦国史を足利一族の視点から描くアンソロジー。
古河公方発足から、喜連川藩誕生までの200年余りが物語の舞台となっています。
室町から戦国にかけて関東一円の戦乱の原因は、鎌倉公方・管領の足利一族のいざこざのせいだと思っています。なんというか、関東だけに限らず、足利は血族の争いが多い気がする。尊氏と直義から始まってることですし。それでも、240年近く幕府として続いたことは珍しいことでしょうね。
時代を下りながらのアンソロジー7話。一つの流れとして、関東公方家に仕えた忍びの「さくら一族」の存在があります。「足利の血脈」というタイトルですが、「さくら一族」伝でもあります。
『嘉吉の狐』『螺旋の龍』『大禍時』の3話では、足利義教、義輝、織田信長の暗殺に関わったと配役。特に『螺旋の龍』は伝奇色が強くて好きです。
足利一族。特に関東の公方と管領の関わりは、いま一つ把握ができていません。
公方も管領も多いのですよ。そして、それぞれの陣営が頼りにする長尾も北条も関東豪族も、多い!しかも、長い間争うから、代替わりしていて家系図の把握が大変!なまじ、権威はあるだけに、誰がどこの養子になったり、実質管領職は誰々で、とかごっちゃになるんですよ。
それを把握しながら、読む進めるのは楽しいのだけど大変。大変だけど楽しい。
このアンソロジーの「さくら一族」のように、物語に一つの幹があると理解がしやすくていいです。
歴史小説楽しむには、まだまだ精進が必要です。