菅浩江のレビュー一覧
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ネタバレ好きな四字熟語は伏線回収。張り巡らされた伏線がするすると解かれて回収されていくのを読むときの快感は、なかなかほかにない。なによりも、それ伏線だったの?とこちらにも気づかないところにそっと仕掛けられたものがきれいに解かれたときの感覚は、なかなかほかでは得られない。
博物館惑星のシリーズ3作目にして、大団円、としか言えないほどのエンディング。
謎として残されていたものをきちんと解ききったうえで、1作目から出ていた人たちを漏らさず掬い上げて、登場させた。
それにふさわしい舞台は、どこから仕込まれていたんだろうか。
注意深く準備を整える詐欺師に騙されたくらいの気持ち。
こういう騙しは、いくらでも食らいたい。
2作目3作目で主役だった健のストーリーもひと段落を迎えて、これは次作はしばらく出ないのでは、これで終わりなのではという予感がしてしまうことだけが残念。 -
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ネタバレもう20年近く前になるけれども、メトロポリタン美術館に行く機会があり、現代アートのエリアに、黒く塗られた大きな四角い作品があった。それがいったいなんなのか、かなり近づいて見ていたら、警備の方に「近くだと直線なのに、離れてみるとサイドが歪んで見える作品なのだ」と教えてもらったのをふと思い出す。
これもひとつの美術作品なのだというのが、当時高校生だった自分にとってすごく面白かった。
同時に、それを「美しい」とは思わない人もいるだろうなとも思う。
「美とはなにか」という問いに正解はないとしても、AIに“理解”させるというのはひとつのゴールになるだろう。
その試行錯誤の過程が、この作品では丁寧に描かれていく。
それにしても先見の明というのか。
この作品が出たのが2021年。2022年にChatGPTが登場する少し前。
画像生成系のAIが流行っていたくらいのタイミングだろうか。
そのなかで、前作からの流れをしっかりと汲みつつ、今読んでも違和感がない物語を紡ぐなんて偉大過ぎるでしょう。
生成AIに感情を教えることはできるのか、なんて、今まさにテーマになる領域だし。
久しぶりに前作を読んで、続きが出ているのを知ってすぐに読んだけれども、
19年空いたとは思えないくらい、同じ雰囲気をまとっていて、
それでいてしっかりと作品内でも時間が経っていて、
あぁみんな変わらずにやっているなと、なんだかほっとしたりする。
私の好きなお仕事小説のひとつでもあるんだよな。
みんな自分の限界に悩んだり、同僚といろいろやったり、上司を頼ったり、ときにやらかしたりしながら、頑張ってるよね、と感じられるのも、この作品の好きなところ。 -
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ネタバレ最近の生成AIブームを横目に、そういえば脳内で直接AIみたいなものと会話できる設定の小説があったな、と思い出して再読。
接続するAIのバージョンで性能が少しずつ違って、初期バージョンの人が、会話中にじっとしなければならなくなる…という設定が妙にリアルで印象に残っていた。
前にこの本を読んだときは、まだAIなんてかけらも自分たちの手に届くところにはなかったのに、ほんの20年でここまで来るなんて思わなかった。
にもかかわらず、人がつながった先の女神たちは今読んでも違和感がない、どころか、ChatGPTの先には彼女たちがいるだろうと思えるほどで、作品のすごさを思い知る。
技術の進化は芸術分野から始まるんだと言ったのは、中学のときの先生だったけれど(変わった先生だった)、なんだかそれを改めて実感する。
惑星ごと博物館という舞台と、女神たちと脳でつながっているという設定を隅々まで活かした短編は、心地よく読めるのに、少しずつ引っ掛かりを残し、芸術とはなにか、人が人であることはなにかという大きな問いへの答えまできっちり回収していく構成は見事としか言えない。
全体に漂う“博物館っぽい”妙に静謐な雰囲気と、そこで働く面々のけだるさがなんだかうまくかみ合っていて、とても好きな作品。
なにより、自分と直結したムネーモシュネーが欲しくなる。ChatGPTをちゃんと使いこなせば、近づけるんだろうか。 -
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博物館惑星のシリーズは、一作目を学生時代に読んでからずっと続刊を楽しみにしています。前作は主人公が変わったことで、ちょっとした寂しさを感じましたが、健と尚美のコンビは見ていて微笑ましく、すぐに好きになれました。今作は主人公が継続ということで、安心して?読み始めることができました。
感想は、求めていたものをそのままお出しされた感じ。ビックリするような展開はあまりないものの、美術品を巡る事件を解決しながら、登場人物の心理を丁寧に掘り下げていく手法は、読んでいてとても心地よく、心がほっこりする読後感を得られました。
前前作、前作と比較すると、SF要素は若干控えめに感じましたが、特に第一話の内容は読んだタイミングも相まって、考えさせられるものでした。カタルヘナ法という言葉をフィクションとリアルでほぼ同時に見ることになるとは…作者様の慧眼恐れ入ります。リアルではどうやら拡散防止に失敗してしまったようですが、今後どうなるのか注視しておこうと思います。研究室生まれの(しかも光る!)メダカが自然界で生き抜くことはかなり難しいとは思いますが、そこは生き物。某恐竜映画で言っていた「生命は道を探す」という言葉の通り、適応して生き残る系統もいるかもしれません。生物学の素養がないので、倍数体や単為生殖の方法など、知らなかったことを調べるきっかけにもなりました。
総合して、若干のマンネリ、ご都合展開はありつつも、それは良い意味で王道ということで、私の好きなところとマッチして非常に楽しめました。尚美ちゃんの、健へのザ·ツンデレなところも一周回って新鮮ですね(笑)次があるとすれば、主人公交代なのかもですが、二人には次のシリーズにもぜひ登場して、その後どうなっているのか見せてほしいですね。 -
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終始きれいな穏やかな物語だった!
SFだと聞いて読み進め、あれ?ミステリ要素強め??とちょっと戸惑いました。
切羽詰まった感じはなく、日常系のような優しい物語が続きます。
美しい風景がほわ~んと頭に浮かんでくる素敵な小説です。
感嘆詞として形容詞を使っちゃう美和子さん、わたしも同じタイプなのでよくわかります。美術館に行くのは好きだけど、作品たちから何を感じとればいいの!?少し焦る感覚もありました。そんな気を張らずにもっと心から作品に身を委ねるだけで良かったのか〜と感じました。
もう何年も美術館に行けてないけど、また落ち着いたら行きたいなあ〜 -
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好きな世界でした。時代がかった豪奢だけど、闇の暗さもあって…1作だけしかないっぽいのが寂しいです。
花守り側の時実や十郎・五郎に日照間様も、女性を花にする側の永世・常世姉妹もキャラ立ちしてて素敵でした。姉妹、毎度毎度衣装も屋敷も調度品も素敵。おかっぱは禿。
女性の闇を捕らえて誘惑する姉妹も、最終話のフサさんの召し物褒めにはタジタジになってて婆様強かったです。人の苦しみを眺めるだけで知った気でいるものより、苦しみを実際に経験してきた人の方が強い。婆様格好良い。
朝顔のお話も好きでした。時が流れているなら、闇は続かない。そうだといいです。
表紙捲ったとこにある作品紹介、百花の王は百合じゃなくて牡丹では?となりました。3話と4話が混ざっている。。
独り咲きにも気概が必要。 -
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地球の衛星軌道上に浮かぶ人工惑星。そこは地球のあらゆる芸術品を収容する巨大博物館<アフロディーテ>。主人公の田代孝弘はこの博物館で働くいち学芸員。脳外科手術により、芸術に関する膨大な知識を集積したデータベースに直接接続することができる学芸員は、そのテクノロジーを駆使して収容される芸術品の価値を確かめ、その意義を問う。ただし、田代孝弘が所属する総合管轄部署<アポロン>は、専門部署間の調整役が主な仕事であり、彼は常に厄介ごとに巻き込まれるのだが…
うーん、なんともロマンチックな連作短篇集。
それぞれ扱われる芸術作品に主眼を置きつつも、それを取り巻く人間模様がメイン。SF的バックグラウンドもしっかりしており、雄大な自然を有するアフロディーテの描写も相まって、本当にこんな博物館があればいいのにな、と切望してしまったり…
そもそも設定がおもしろいですね。芸術とSFを結び付けた作品はたぶん探せばいくつも出てくるのでしょうが、ひとつの惑星がまるまる博物館で、そこに収容される芸術品をめぐって学芸員がドタバタさせられるというのは、なんとも微笑ましい限り。というのも、よく読むSF小説は、異星人と接触したり、タイムトラベルしたり、地球に危機が訪れたりと、どれも穏やかではないからです。本書は日常系SFみたいな感じで、ゆったりと読み進めることができました。 -
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地球の衛星軌道上に浮かぶ、全世界の美術品と動植物が集められた博物館惑星「アフロディーテ」、データベースと脳を直結させた学芸員、そこで起こる様々な事件にまつわる、SFと芸術とミステリー要素が混淆した物語。という設定だけで堪らない。
様々な要素がある分どれもやや物足りなさはあるが、総合的な設定が秀逸なので余り気にせず楽しむことができた。SF的美術品の数々も面白い。そして何より、芸術を味わう/楽しむってどういうことだろう、というのを改めて考えさせられた。なぜ我々は、美しいものを見て美しいと感じるんだろう?
余談だけど。黄金率が鍵となる物語「きらきら星」を読んで、地球外生命体に向けて放たれた衛星ボイジャーのゴールデンレコードを思い出した。地球人のみならず、知的生命体はロマンチストなのかもしれない。 -
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SF・ファンタジーの作品を8編収録した短編集
表紙のデザイン、各短編につけられているイラストはどこか可愛らしさを感じさせるのですが、内容は全体的にシリアスなものが多いです。
表題作「そばかすのフィギュア」は、自分たちがデザインしたキャラクターが入賞し、その副賞として、デザインしたキャラクターたちのフィギュアが送られてきた学生たちが主人公。そして、このフィギュアのみそは、主人公たちが考えた設定に準じて、自立的に思考や行動をおこなうところです。
このフィギュアたちの設定は、すでに相思相愛の王子と姫そして王子に叶わない片思いを抱く女の子です。そして、このキャラクター達をデザインした靖子は、王子に片思いを抱く女の子のアーダに、自分の今の境遇と重ね合わせます。
アーダは王子と姫が結ばれることが王子のためと考えその恋心を隠し、王子のために行動し、また靖子も先輩のため、自分の気になる男性と先輩との仲を取り持ちました。
そのため靖子は、アーダがなんとか王子と結ばれるようフィギュアのアーダの仕上げを丁寧にしたり、そばかすを消して、より顔をきれいに見せようとしたりと、なんとか二人を結び付けようとします。
叶わない恋心とフィギュアのアーダの純真さが、可愛らしくも切ない短編でした。また靖子がアーダに自分の姿を投影する描写も、なんだかうなずけてしまえます。
そしてアーダと靖子の二人の関係の結末も切なく、とても完成度の高い短編だったと思います。
虚弱体質のため、ずっと無菌室で過ごしてきた女性と、彼女を世話するアンドロイドの姿を描いた「雨の檻」
どんでん返しの驚きと、ラストの切なさが印象的です。
美術学校に入学したものの、そこで居場所を見つけられない少年と、ロボットの交流を描いた「カーマイン・レッド」
ピイの好きな色はこの、カーマイン・レッドなのですが、なぜ彼はその色を選んだのか?
二人の交流を通して、人間と機械の壁がところどころで見られるのですが、それに対しピイは何を考え、カーマイン・レッドを選んだのか。それが分かる場面は、どこか胸が締め付けられます。
クローン人間とオリジナルの会談を描いた「セピアの迷彩」
オリジナルの夢見ていた一生を、なぞることを宿命とされたクローンとオリジナルの対面は、倫理的な問題や、それぞれの人生の問題が絡み合う、重厚で、そして残酷な短編です。
短編集の中で最もファンタジー色の強い「月かげの古謡」
強い領主を父に持ち、幼いころから力や強さが正義だと教えられてきた主人公が、父に認めてもらうため、財宝を探しにいきその先で不思議な女性と出会う短編。
幻想的で静謐な描写も、主人公が徐々に領主としての責任や、この不思議な女性に好意を持っていく描写も素晴らしいのですが、単にハッピーエンドで終わらせず、静謐な描写と相まった、静かな寂しさの残る幕切れも、読者の心に残ると思います。
初出から25年近く経った作品ばかりなのですが、それぞれの作品にある残酷さ、あるいは切なさは決して古臭いものではなく、今も、そしてこれから先も読者の心をとらえるものだったと思います。
第24回星雲賞〈国内短編部門〉