あらすじ
地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館〈アフロディーテ〉は、創立50周年を迎えようとしていた。新人自警団員の兵藤健は、同期で総合管轄部署〈アポロン〉配属の尚美・シャハム、情動学習型AIの〈ダイク〉らとともに、日々の警備任務にあたっていた。いよいよ50周年記念フェスティバルの夜、健は国際的な贋作組織の摘発に臨むのだが──。『永遠の森』『不見(みず)の月』に続く《博物館惑星》シリーズ第3作。第41回日本SF大賞受賞作
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Posted by ブクログ
好きな四字熟語は伏線回収。張り巡らされた伏線がするすると解かれて回収されていくのを読むときの快感は、なかなかほかにない。なによりも、それ伏線だったの?とこちらにも気づかないところにそっと仕掛けられたものがきれいに解かれたときの感覚は、なかなかほかでは得られない。
博物館惑星のシリーズ3作目にして、大団円、としか言えないほどのエンディング。
謎として残されていたものをきちんと解ききったうえで、1作目から出ていた人たちを漏らさず掬い上げて、登場させた。
それにふさわしい舞台は、どこから仕込まれていたんだろうか。
注意深く準備を整える詐欺師に騙されたくらいの気持ち。
こういう騙しは、いくらでも食らいたい。
2作目3作目で主役だった健のストーリーもひと段落を迎えて、これは次作はしばらく出ないのでは、これで終わりなのではという予感がしてしまうことだけが残念。
Posted by ブクログ
博物館惑星のシリーズは、一作目を学生時代に読んでからずっと続刊を楽しみにしています。前作は主人公が変わったことで、ちょっとした寂しさを感じましたが、健と尚美のコンビは見ていて微笑ましく、すぐに好きになれました。今作は主人公が継続ということで、安心して?読み始めることができました。
感想は、求めていたものをそのままお出しされた感じ。ビックリするような展開はあまりないものの、美術品を巡る事件を解決しながら、登場人物の心理を丁寧に掘り下げていく手法は、読んでいてとても心地よく、心がほっこりする読後感を得られました。
前前作、前作と比較すると、SF要素は若干控えめに感じましたが、特に第一話の内容は読んだタイミングも相まって、考えさせられるものでした。カタルヘナ法という言葉をフィクションとリアルでほぼ同時に見ることになるとは…作者様の慧眼恐れ入ります。リアルではどうやら拡散防止に失敗してしまったようですが、今後どうなるのか注視しておこうと思います。研究室生まれの(しかも光る!)メダカが自然界で生き抜くことはかなり難しいとは思いますが、そこは生き物。某恐竜映画で言っていた「生命は道を探す」という言葉の通り、適応して生き残る系統もいるかもしれません。生物学の素養がないので、倍数体や単為生殖の方法など、知らなかったことを調べるきっかけにもなりました。
総合して、若干のマンネリ、ご都合展開はありつつも、それは良い意味で王道ということで、私の好きなところとマッチして非常に楽しめました。尚美ちゃんの、健へのザ·ツンデレなところも一周回って新鮮ですね(笑)次があるとすれば、主人公交代なのかもですが、二人には次のシリーズにもぜひ登場して、その後どうなっているのか見せてほしいですね。