【感想・ネタバレ】永遠の森 博物館惑星のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2021年08月22日

データベースコンピューターの名前がかっこいい。どの話も紆余曲折あるけど、登場人物たちがみんなあまり不幸せにはならないように終わってるところがいい。登場する様々な学問分野の話が物語の説得力とか奥行とかを増させてて、著者の頭の良さがうかがえる。ベストSFなのも納得

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Posted by ブクログ 2020年10月11日

 2からSFマガジンで読んでいたが、1も1で面白い。こういう、進歩した世界における人の営みに重きをおいて書かれた作品はすごく好きだ。
 1つ1つで起承転結がありつつも、全体として大きな物語を描き出すような形だともっと好みだが、本作は1編の完成度が高く、様々な趣向が凝らされているのでそうでなくとも面白...続きを読むい。後ろの3つは結構しっかり繋がりもあって良かった。
 思わず唸るようなトリックがあるわけではないが、ミステリを書かれる作家ということもあって、推理小説風味の話の進行は興味深い。多岐に渡る題材からは、美術への深い造詣が伺える。専門用語が多く、想像力の及ばない箇所もままあるが、十分楽しめた。
 キャラクターは魅力に富んでいるし、丁寧な心情描写が胸に響いた。以下、各話の簡単な印象。

1話は若干の物足りなさを感じた。
2話は普通。
3話は言葉遊びに重点を置かれて面白い。
4話はこれまでとは毛色が違っており、ミステリ風味は控えめながら、好みな味わい。
5話はめっちゃいい。こういう細かな問題を扱う話は好き。攻殻の新劇場版を若干彷彿とさせる。
6話は題材が好き。
7話はテクニカルな感じ。
8話は図表があるともっと良かった。
9話は非常に良かった。とりわけキャラクターが魅力的。

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Posted by ブクログ 2019年08月21日

まず設定に引き込まれる。

一編毎に程よい読後感がありながら、後半まとめ上げる感じが良かった。

美とは何か。
感情とは何か。
人間とは…といつの間にか考えさせられる本。

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Posted by ブクログ 2017年08月26日

既知世界における「見物する」の目的語をジャンルをこえほぼすべて網羅する遠未来の博物館惑星を舞台に、学芸員・田代孝弘が出会う事件を描いた連作。

人に頼られたらむげにはできない優しく苦労性の主人公・孝弘のてんてこまいっぷりに笑ったり、「過渡期の技術」の一言で忘れ去られた往年の先輩に対し

「可哀想だっ...続きを読むて思うことと、哀れに思うことって、違うわよね」

と胸中を吐露するネネに切なくなったり、データベースと直接接続する学芸員の特権に酔い痴れて「反省?なんですかそれ?僕エリートだし」といわんばかりに幼稚なマシューに心底むかついたりと魅力的かつ個性的なキャラクターにはすんなり感情移入できる。

どこの職場にもある上司や同僚との軋轢や人の話を聞かない困ったちゃんの後輩など丁寧に描かれる人間関係の機微が固くなりがちな芸術論の緩衝材となり華々しくアカデミックな会話に絶妙のユーモアを添える。

中でも「ラブ・ソング」は秀逸。
ラストシーンの美しさは圧巻。

芸術を難解に語る言葉をもたない妻が漏らすたった一言の「綺麗ね」を軽んじていたと主人公が猛省する場面に思わず貰い泣き……

主人公の美は対象物以外を夾雑物として除く峻厳な美。
妻・美和子の美は対象物以外のものをも含み全体を成す豊穣な美。

だからこそ主人公は美術品の鑑賞中に隣にいる妻を忘れ
美しいものに接した妻は「愛する人とこれを見たい」と望む。

「貴方みたいに上手く説明できないけど、とても綺麗ね」

抱擁する手は包容する心。
美しいものを美しいと素直に感じる心があり、愛する人が隣にいれば、世界はきっと美しい。

愛することとは互いに見つめあうことではなく同じ方向を見ることだ。
ラストシーンの二人にその言葉を捧げたい。

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Posted by ブクログ 2014年10月10日

先進的なSFのギミックを効かせ芸術に関するモチーフがたっぷり入った連作短編集。絵画・音楽・彫刻・舞踊だけでなく多くの芸術群が登場するが、それらを扱う学芸員は、あるいは人は、どう向き合うのかといった芸術論が展開する。将来ムネモシュネーのようなデータベースやインターフェースが生み出されるのだろうか。それ...続きを読むを使える後世の人たちが羨ましい。
素晴らしい作品ばかりだが中でも「きらきら星」が一番好きだなぁ。

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Posted by ブクログ 2016年01月17日

舞台は地球衛星軌道上、世界のあらゆる「美」を蒐集する博物館惑星<アフロディーテ>で勤務する学芸員の日常がささやかな謎とともに描かれる。サイバーパンクなガジェットもそれで知性体とやりあうわけでもなく。SF版日常の謎とでも言おうか、あくまでも人と人や「美」とは何か、といった言ってしまえば地味なテーマが多...続きを読むいが、それをもって余りある美しさ、完成度。音楽を奏でる絵画、雪の中響き渡る篠笛、水の音色、そして弾けるピアノの音。どの篇も良いけど、「ラブ・ソング」のクライマックスほど美しいシーンは滅多にないだろうと思う。

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Posted by ブクログ 2022年09月20日

連作集。ネット上にあふれるさかしらな言説を振りかざす方達も、もともとはその対象に純粋な気持ちで関心を持ったはず。学ぶことは大切だし、データベースを充実させていくことも大事だけれども、それらはなんのためのものなのかを忘れてはいけないと感じさせられました。

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Posted by ブクログ 2022年05月29日

終始きれいな穏やかな物語だった!

SFだと聞いて読み進め、あれ?ミステリ要素強め??とちょっと戸惑いました。
切羽詰まった感じはなく、日常系のような優しい物語が続きます。

美しい風景がほわ~んと頭に浮かんでくる素敵な小説です。

感嘆詞として形容詞を使っちゃう美和子さん、わたしも同じタイプなので...続きを読むよくわかります。美術館に行くのは好きだけど、作品たちから何を感じとればいいの!?少し焦る感覚もありました。そんな気を張らずにもっと心から作品に身を委ねるだけで良かったのか〜と感じました。
もう何年も美術館に行けてないけど、また落ち着いたら行きたいなあ〜

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Posted by ブクログ 2021年05月19日

地球の衛星軌道上に浮かぶ人工惑星。そこは地球のあらゆる芸術品を収容する巨大博物館<アフロディーテ>。主人公の田代孝弘はこの博物館で働くいち学芸員。脳外科手術により、芸術に関する膨大な知識を集積したデータベースに直接接続することができる学芸員は、そのテクノロジーを駆使して収容される芸術品の価値を確かめ...続きを読む、その意義を問う。ただし、田代孝弘が所属する総合管轄部署<アポロン>は、専門部署間の調整役が主な仕事であり、彼は常に厄介ごとに巻き込まれるのだが…

うーん、なんともロマンチックな連作短篇集。
それぞれ扱われる芸術作品に主眼を置きつつも、それを取り巻く人間模様がメイン。SF的バックグラウンドもしっかりしており、雄大な自然を有するアフロディーテの描写も相まって、本当にこんな博物館があればいいのにな、と切望してしまったり…

そもそも設定がおもしろいですね。芸術とSFを結び付けた作品はたぶん探せばいくつも出てくるのでしょうが、ひとつの惑星がまるまる博物館で、そこに収容される芸術品をめぐって学芸員がドタバタさせられるというのは、なんとも微笑ましい限り。というのも、よく読むSF小説は、異星人と接触したり、タイムトラベルしたり、地球に危機が訪れたりと、どれも穏やかではないからです。本書は日常系SFみたいな感じで、ゆったりと読み進めることができました。

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Posted by ブクログ 2021年01月20日

芸術を理解しようと探究・分析を進める毎に、美しさからは離れてしまう矛盾。舞台はSF、テーマは芸術、語り口はミステリーだけど、読み終わったら美と愛についての感動的なドラマだった。

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Posted by ブクログ 2020年11月03日

芸術を扱う惑星を舞台としたお話。SFとミステリーを合わせたような感じの作品。全体的にロマンチックな結末で物語として楽しめたし、植物の葉の着き方がフィボナッチ数列になってるとかいう話が出た時は知的好奇心刺激されて色々調べてしまった。

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Posted by ブクログ 2020年10月26日

地球の衛星軌道上に浮かぶ、全世界の美術品と動植物が集められた博物館惑星「アフロディーテ」、データベースと脳を直結させた学芸員、そこで起こる様々な事件にまつわる、SFと芸術とミステリー要素が混淆した物語。という設定だけで堪らない。

様々な要素がある分どれもやや物足りなさはあるが、総合的な設定が秀逸な...続きを読むので余り気にせず楽しむことができた。SF的美術品の数々も面白い。そして何より、芸術を味わう/楽しむってどういうことだろう、というのを改めて考えさせられた。なぜ我々は、美しいものを見て美しいと感じるんだろう?

余談だけど。黄金率が鍵となる物語「きらきら星」を読んで、地球外生命体に向けて放たれた衛星ボイジャーのゴールデンレコードを思い出した。地球人のみならず、知的生命体はロマンチストなのかもしれない。

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購入済み

2019年11月20日

この作品の世界観がとても好きです。どこかノスタルジックな雰囲気で心惹かれます。爽やかな読後感でお気に入りです。

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Posted by ブクログ 2019年06月22日

大昔読んだ気がするが、内容は覚えてなかった
仕事帰りの電車の中で読んでて、最後の最後で泣きそうになった。結末は予想してたんだけど、なんかね、仕事で疲れてたせいもあるけど、いいなあって思った。
続編買いました。

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Posted by ブクログ 2019年01月12日

この作者は初めて読んだが
岡崎二郎作品(『国立博物館物語』は微妙に違うが)にとても似ている
同一人物が書いているといわれても違和感ない
そういうわけでマンガと比較してしまうからかもだが
読みやすいが全体にやや回りくどいかも
芸術は題材であって主題でないのも物足りない
これは無理もないか

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Posted by ブクログ 2017年11月24日

SFと芸術。
一見接点が遠いように思えるが、読んでみると違和感はない。

短話がいくつも連なっている形式だが、毎回別の芸術ジャンルと別の展開が待っていた。
加えて最終話への導線も各話に少しずつ盛り込まれている。

舞台が同じ作品が他にあるなら読んでみたいと思うが、無いなら無いでいい。
この一冊で十分...続きを読む満足した。

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Posted by ブクログ 2016年01月15日

設定はハードSFなのにリリカルな読後感。
わりと大騒ぎな事件もあるのに、全体的にしんと静謐な空気が感じられて、初めて読んだ作家さんだったが、かなり好み。特に最後の「ラブ・ソング」がロマンチックでよかった。

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Posted by ブクログ 2016年01月15日

とても"綺麗"で優しいSF。
芸術やら美術とテクノロジーを融合させた話は読んだことがなかったのですが、面白い。

イメージや「だいたいこんな感じ」で脳と直接接続したデータベースから検索できる技術も、そのうち実現するんだろうなという感想。
今の技術だと、キーワードによるGoogle...続きを読む画像検索で概念がなんとなく調べられるので、それの超発展系のような感じか。

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Posted by ブクログ 2015年08月31日

ゲージュツというのは、一般人ならこの絵が好きとかこの本が面白いとか適当に言ってれば良いけど、博物館とかの専門家にとってはそうもいかないんだろうかなぁ、と。でもフィギュアとか挙句の果てにはスキーのジャンプにまでゲージュツ点みたいなものが付き始めると、その結果に対するもやもや感が半端なく、そうなるとゲー...続きを読むジュツを客観的にとらえて点数付ける事が機械でできるようになるのも悪くないか。
というストーリーではなく、男はやっぱりロマンチストという話だった。

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Posted by ブクログ 2015年03月20日

博物館惑星アフロディーテで起こる美術品などについての問題を、コンピュータ(でいいのか?AIではないし…)と脳を直接接続した学芸員が解決していく話。コンピュータでぱぱっと解決するのではなく、結局は想像力やロマンで解決するのがいい。
しかしながら、マシューは最後まで好きになれず、ミワコの魅力もよくわから...続きを読むん。

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Posted by ブクログ 2014年05月15日

久しぶりにSFを読んだので、その世界観に馴染むまで戸惑いましたが、綺麗な読みやすい文章なので読み進められました。
案山子と呼ばれる所長や、困ったちゃんの後輩、気の合う同僚と人間関係も愉しいし、展示物も想像力をかきたてられる。
最後の杮落し公演の場面は、映像を想像しながら読んだ。

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Posted by ブクログ 2014年03月05日

 データベースコンピュータに接続した学芸員たちが日々あらゆる芸術品の鑑定を続けるアフロディーテ。様々な芸術品の裏に隠された人の想いに迫る連作短編SF。

 芸術品と聞くと、自分は絵画や彫刻などを思い浮かべるのですが、この作品で出てくるのはそうしたものに加えて、音楽やダンスといった、実体のない芸術品ま...続きを読むで取り扱います。そのすべてに共通しているのは”美”です。なぜ素晴らしい芸術品を見たとき美しいと感じるのか? を調べることも学芸員たちの仕事の一つなのですが、絵画やダンスをひとくくりの芸術品として扱う発想は、著者の菅さんがさまざまな芸術に触れ感動を得る感性があったからこそ思いついた設定なのだろうな、と思います。

 ミステリとしての評価が高いのも納得でした。ところどころ記述が不足してるな、と思うところがあったのですが、それが見事に最後につながります。それは切なくもあるのですが、ラストのページでその切なさを包み込んでくれる優しさを感じさせてくれました。

 主人公とその妻の芸術に対する姿勢の違いが何よりも印象的でした。学芸員として仕事で芸術に関わる主人公は、理性で芸術と対峙しなければいけないわけですが、その妻は素直な感性で芸術に触れています。

 読んだ本に星をつけたり、レビューを書くということもこの本の学芸員の仕事に似ている気がします。レビューを書くということはその本の面白さを分析しているわけで、でも最近自分はレビューを書くことに一生懸命になりすぎてその本を読み終えて純粋に、理屈抜きに感じた”おもしろさ”に思いを馳せる時間をなくしているようにも思ってしまいました。

 もちろんレビューを書く以上面白さを分析をする冷静な視点は必要ですが、上に書いたような無邪気な”おもしろさ”も忘れないように本を読み、本に対し評価やレビューをつけていきたいと、読み終えて思います。

第54回日本推理作家協会賞
第32回星雲賞

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Posted by ブクログ 2021年05月02日

面白くないわけではないものの、今ひとつ入り込めず、途切れ途切れに読んで、かなり時間がかかったかど、最後の3作は一気に読んだ。

入り込めなかったのは、あまりに設定が人工的、技巧的というか、細部まで作り込まれていて、この世界のルール、常識が判らない身には、書かれていない部分をを想像できない、受け身でし...続きを読むか読めない感が強かったからと思う。

後半はもう少し人の内面に踏み込んだ話になってきたので、読みやすかったのかな。

まあ、綺麗なSFではある。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年10月31日

国産SF読みたいなーーーと言ってたら教えてもらった作品。
舞台はSFやけど、雰囲気はミステリーって感じかな。でもテーマは一貫してラブだったよラブ。頭に機械埋め込んで、ものいわぬ物品を扱いながら、心と愛情を見つめなおすお話であった。

Ⅴ抱擁はSFだなあと思ったし面白かった。最先端て、すぐ古くなるから...続きを読むね。最先端て古いんだよ。

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Posted by ブクログ 2019年09月18日

2001年のベストSF、星雲賞、日本推理作家協会賞。宇宙に浮かぶ惑星の博物館、音楽・舞台・文芸、絵画・工芸、動植物各部門をもち、人類の芸術品を収集・分析・研究・育成している。新婚の学芸員が遭遇する謎とその解決、9連作短編集。

さすがの受賞作。アートの謎には、感性、情熱、祈り、憧れ、そして愛がある。...続きを読む部門間のいつもの対立に悩む調停役..という連作お定まりの定型句も、最終話のラブストーリーにつながるとは。

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Posted by ブクログ 2015年07月18日

10数年ぶりに再読。
初めて読んだ頃の私は、まだあまりパソコンに馴染みがなくて、”バージョン”とか”接続”とかいうことの意味が本当にはわかっていなかったなあ。
このお話が最初に書かれたのは1993年。SF作家の想像力ってすごいもんだ。

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Posted by ブクログ 2014年12月08日

未来の宇宙に浮かぶ小惑星に設立された博物館の物語。
学芸員タカヒロがいつも通り館長から無理難題を言いつけられる。
音楽が聞こえる絵に美術的価値があるか?
SFっぽい舞台でおこる珍事が面白い。
ほのぼのと読めそうな短編集。

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Posted by ブクログ 2014年11月03日

SFで学芸員が主人公の話って、基本的に私好みではあるのですが、軽いノリのこじゃれたおはなしに仕上がっております。未来の学芸員は脳が直接コンピュータと繋がっており、データベースを自在に操るのである。
それでいて主人公は絵画、音楽、自然という分野の調整役で現代のサラリーマン同様、各セクションの好き勝手な...続きを読む要望のとりまとめに日々頭を悩ませているのである。この設定は面白いのだが、舞台が地球と月のラグランジュ・ポイントに設定された美術館星という設定が話を軽くしているのである。
できればルーブル美術館のあとに建った美術館というような地に足がついた設定にしていただけるともう少し重厚感もでた話になったのではないかと思うのである。

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Posted by ブクログ 2014年05月06日

地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館<アフロディーテ>。
そこには全世界のありとあらゆる芸術品が収められ、データベース・コンピュータに直接接続した学芸員たちが、分析鑑定を通して美の追究に勤しんでいた。とワクワクするようなSF連作短編。最初は難しい言葉だらけで大丈夫かぁ!?とも思ったけど、読み進めていく...続きを読むうちに、ただのSFではない事に気付き、最後の「ラブ・ソング」では、これって・・・テーマは「愛」じゃない?とも思いました。純粋に感じる気持ちって大切ですね。

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Posted by ブクログ 2013年06月25日

菅浩江による、人の死なないSFミステリ。データベースに神経接続した学芸員が働く博物館惑星を舞台に、学芸員のタシロが展示物にまつわる謎や事件を解きながら、その裏にある人の思いに触れていくという物語。

描かれる情景は綺麗だし、物語も多少の陰を含みながらポジティブなエンディングを迎える。悪くはない。ただ...続きを読む、綺麗なんだけど、綺麗なだけで終わってしまう。とにかく厚化粧して、何かを偽っているようにしか見えない。それはそれで技術なのかもしれないけれど、それはまるで御伽の国を模したテーマパークのようで、気分が悪い。「切ないでしょ、綺麗でしょ」と押し付けてくる感じで、ドン引き。作中に「美術品に主観をつけて展示すべきではない」みたいな言葉があったけれど、そっくりそのまま返してやりたい。逆にそういうテーマパークを楽しめる人なら、ほぼ間違いなく気に入るだろう。

また、サラリーマンのような学芸員の仕事風景が、美しい世界観に馴染まない。主人公を各部署の調整役にすることで、色々な部署の物語ができるというのが裏にあるのだろうけれど、逆に展示物に対して向き合う場面が少なくなって、せっかくの博物館という設定を活かしきれていないように感じた。それはデータベースとの神経接続というSF設定を無理やり取り込んでしまったせいでもあるだろう。

それに物語の構成も、短編ミステリを並べて少し一貫性をもたせただけで終わってしまった感がある。伏線はあるけれど、大した驚きもないし、意味もない。だったらミステリにこだわらず、「火星年代記」みたいに舞台だけを共通の設定にしてしまった方が作品として面白いような気がする。本作品の「Ⅳ 享ける形の手」は唯一それに近いもので、語り手が移り変わって異なる主観を提供してくれる。個人的にはここがクライマックスだった。

と、あまりにも悪口を書きすぎた気がするので少しフォローすると、データベースとの神経接続による客観的な美と、学芸員の眼による主観的な美という対立は面白かった。果たして美という感覚を情報にできるのか。機械で再現できるのか。そういう問いを投げかけてくれる。ただその問いが展開していかないというのが残念なのだけど、まあそれはいいや。

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Posted by ブクログ 2013年05月23日

久しぶりのSF。
ああ、想像力をフル回転させてイメージを、膨らませる感覚やたら懐かしい。
どの物語も美しく、人と美の繋がりを人類最先端の学芸員の目を通して、
優しくユーモラスに紡いでいます。
もっと早い時期に読みたかったな~。

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