あらすじ
塩の霧に閉ざされて立ち枯れする森と、凶暴化した異形の動植物に囲まれた地キヌーヌ。化け物に姿を変えられ、図らずも殺人に手を染めた青年・金目(キンメ)は、彼を騎士と呼び慕う不思議な少女・シエラとの出会いによって自我を取り戻す。彼女の周囲からは霧は遠ざけられ、草原は穏やかな風と陽光に満ち溢れるのだった。金目は己を化け物に変えた主人パナードへの復讐を誓うが、理想郷を目指すパナードの執念の前に苦戦を強いられる。そして急速に成長するシエラの身体は、世界の原理そのものと繋がり始める。清新な抒情と稀有の想像力に彩られた、著者の初長編にしてSFファンタジーの傑作。
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Posted by ブクログ
はかなげな少女と異形の騎士
……という組み合わせがすでにツボでした。
思ったよりもちょっとグロテスクというかバイオというかでしたが、おもしろかったです。
弱々しそうなヒロインの二面性とか。
映像化してもおもしろそう。
最後の方にある、金目は幸せだった。というような一文がとても印象深い。
個人的にはすこし切なかったけど、金目自身が幸せだったのならよかったと思う。
Posted by ブクログ
食らった相手の知識や能力やその種の歴史そのものを取り込んでしまうというのは、確かにファンタジーでありSFであり。今ならあれを思い出すのかも。
みっちりと濃密に詰め込まれた世界観に身を浸す悦び。
出会ってしまったふたりの約束と運命。美しく悲しい物語。
Posted by ブクログ
SF。ファンタジー。
解説によると、SFとファンタジーの間で揺らいでいる作品らしい。
個人的には、ハッキリとバイオSF。
ストーリーはライトノベルチックで、バトル要素もあり。
読んでいるとき、多くのSF作品を連想したが、梶尾真治さんのエマノンシリーズが一番近い感じがした。
登場人物のビジュアル、バトルシーン、SF的なアイディアと、どれも読者の想像力が必要になりそうな作品でした。
Posted by ブクログ
キヌーヌの異形の動植物相の描写は、ブライアン・オールディスの『地球の長い午後』や、
山田正紀の『宝石泥棒』シリーズを彷彿とさせる。
ヒロインであるシエラはかわいいのだが、物語の後半の描写では正直、
腰の引ける部分があって焦った。
物語の後半はテンポが速く、疾走感が素晴らしい半面、
書き急がれた感が無きにしも非ず。
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SFなようでファンタジーな物語。異形の騎士と少女が出会い、世界を支配しようとする大人物に対抗していこうとする。世界しくみ、人間の営みについても考えさせられる、深い話です。
Posted by ブクログ
ファンタジーかと思ったけどけっこうSF寄りだった。その名の通り、「ゆらぎ」のある作品。
『博物館惑星』がとてもよかったのでいつか読もうと思っていた本だったが、描写がピンと来ないことが多く、読みにくかった。
キャラクターもうまく配置されているのに、全体的には薄味に感じてしまった。
シエラも狂気に堕ちてからは面白くなりそうだったのに、そこからがめちゃくちゃあっけなかったなあ。
いっそバッドエンドも悪くなかったように思う。
解説の山田正紀が、ある女性作家の発言として「日本SFは高度経済成長期の男の小説だった」という趣旨の一文を書いていた。この本(文庫)が出たのは実に18年も前なのだが、SFはいまだに男のジャンルっぽいところあるよなあと思う。
Posted by ブクログ
SF要素は他の生物を取り込んで成長する仕組みが多少描かれているだけで、基本的にはファンタジーと思う。自己犠牲的かつ不滅的で、勧善懲悪ではないところが特徴かなぁ。結局、この一連の動乱を、永遠に繰り返すような気がするよ。
Posted by ブクログ
この物語が初めて世に出た同年に私がこの世に生を受けたことに何か縁を感じる。
もっと最近の本だとばかり思っていた。内容としては、今時のようなのに、風変わりなというか、よくあるようでないようなSF。
ただ、おもしろいと思ったのは、「食べたものの知識を得る」ということ。
これは今までになく新鮮で、なのにとても身近に感じられる考えだった。一瞬、魚の目の周りを食べる自分を想像してしまった。
実際生き物は己の血肉とするためにものを食べているが、食べたことによって血肉以外の何かも取り込んでいるのではないかと思うと、すごくわくわくする。
Posted by ブクログ
SFファンタジー。
もとは人間だったにもかかわらず、ある人物から化け物につくり変えられ、その手先として利用されていた男。理性を取り戻し、己を血に飢えた化け物へと変えた相手への復讐を誓った彼は、その旅の途中、森の奥でひとりの少女と出会う。
森にひっそりと住む、変わり者の少女。げてものを食べ、おかしな奇行に走るせいで、村の人々から頭が足りないのだと思われていた彼女は、男に出会ったことをきっかけに、急激な成長をはじめる。男とゆく旅路の中で、少女はやがて己に課せられた運命を知り……
失礼ながら、ものすごーーく「もったいない!」というのがいちばんの感想でした。SFファンタジーの大作になりそうな、面白い話の、あらすじを読んだような印象が。
ものすご美味しい設定が、あちこちにたくさん溢れているのに、展開が急すぎて、どうも演出不足の感がありました。キャラクターの心情を想像して味わうだけの暇がなかったです。
この三倍くらいのエピソードをいれて、じっくり丁寧に描いてあれば、きっと乙女のハートをがっつりつかむ名作になったのではないかという気がします。
もしかして、もっと、書かれていない間を、自分の妄想で補完しながらじっくり読めばよかったのかな、とも思います。子どものころって、そういう読み方が得意だったような気がするんだけどなと、自分にもちょっとがっかり。
それにしても、菅さんの小説って、もっとがつんと重たくて読み応えのあるような印象があったのだけれど、本作ではずいぶんとギャップが。もしかしてこれは、若書きというやつなのかな?
などと失礼なことをいいつつも、でもこの方の本はそのうちまた読みます。
Posted by ブクログ
作者は菅広江だと解っているのに、途中何度も久美沙織の作品かと錯覚してしまった。
安定感のあるファンタジーだが、70億の針を少し連想させるバイオSF要素も。