あらすじ
塩の霧に閉ざされて立ち枯れする森と、凶暴化した異形の動植物に囲まれた地キヌーヌ。化け物に姿を変えられ、図らずも殺人に手を染めた青年・金目(キンメ)は、彼を騎士と呼び慕う不思議な少女・シエラとの出会いによって自我を取り戻す。彼女の周囲からは霧は遠ざけられ、草原は穏やかな風と陽光に満ち溢れるのだった。金目は己を化け物に変えた主人パナードへの復讐を誓うが、理想郷を目指すパナードの執念の前に苦戦を強いられる。そして急速に成長するシエラの身体は、世界の原理そのものと繋がり始める。清新な抒情と稀有の想像力に彩られた、著者の初長編にしてSFファンタジーの傑作。
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Posted by ブクログ
はかなげな少女と異形の騎士
……という組み合わせがすでにツボでした。
思ったよりもちょっとグロテスクというかバイオというかでしたが、おもしろかったです。
弱々しそうなヒロインの二面性とか。
映像化してもおもしろそう。
最後の方にある、金目は幸せだった。というような一文がとても印象深い。
個人的にはすこし切なかったけど、金目自身が幸せだったのならよかったと思う。
Posted by ブクログ
ファンタジーかと思ったけどけっこうSF寄りだった。その名の通り、「ゆらぎ」のある作品。
『博物館惑星』がとてもよかったのでいつか読もうと思っていた本だったが、描写がピンと来ないことが多く、読みにくかった。
キャラクターもうまく配置されているのに、全体的には薄味に感じてしまった。
シエラも狂気に堕ちてからは面白くなりそうだったのに、そこからがめちゃくちゃあっけなかったなあ。
いっそバッドエンドも悪くなかったように思う。
解説の山田正紀が、ある女性作家の発言として「日本SFは高度経済成長期の男の小説だった」という趣旨の一文を書いていた。この本(文庫)が出たのは実に18年も前なのだが、SFはいまだに男のジャンルっぽいところあるよなあと思う。