小泉喜美子のレビュー一覧
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ひょんなきっかけで、ウェールズに関する本を読み漁っていた時に出会った本です。
シェイクスピアなどの古典で、名前は聞いたことあるし、ひどいことした人なんだなぁ、というくらいのイメージしかありませんでしたが。。
昔々の話ですし、この本に書いてあることが真実とも限りませんが、目から鱗のお話でした。
歴史書ではなく小説なので、主人公が徐々に徐々に、真相(歴史上ほんとうにそうだったかは定かでないし、今となっては知るすべもないものの)に近づいていくという構成が、読者を飽きさせず、さらっと読めてしまう本です!
この話が本当だったとしたならば、亡くなった後にまで丸裸にされて人目に晒されるなんて、なんて惨いんだと思うと同時に、日本の戦国時代しかり、平和な時代に生まれてよかったと考えさせられます。 -
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犯罪が絡むわけでもなく、日常の中に不可思議なことが起こったわけでもない。それでも時に人は無や常識から疑問を見いだし、謎を設定し、そして真実を見つけようとする。研究なんかもそうですが、こうやって謎や疑問を自ら定め、そして自分の興味を第一の理由にそれに挑むのが、ある意味最も純粋な謎解きではないか、と思います。
そんな謎解きに挑むのが、足を骨折し病院で暇を持て余すグラント警部。警部はふとしたきっかけから、歴史上では悪人と名高いリチャード三世に対し疑問を抱き、様々な文献をあたり、彼が本当に大悪人だったのか推理を始めます。
推理の過程が非常に面白い! 史実に対し頼りになるのは、文献や当時の記録のみなのですが、グラント警部はその文献の記録の妥当性や公正性すらも考慮に入れます。例えば、その文献の著者は、当時の関係者なのかだとか、立場であるとか、伝聞のみで文章を書いたのではないか、だとか。
こうやって考えてみると、グラント警部は探偵としても優秀なんですが、情報リテラシーの鏡でもあるよなあ。ネットはもちろん、マスコミや新聞だって100パーセント中立はあり得ないわけで、必ず編集する側の意思は入ります。それも考慮して、日々の情報を読み解くことが大事なのですが、グラント警部はぜひニュースの解説員にもなってほしい(笑)
当時の歴史上の人物の行動と、その行動を取った意味と妥当性、そして利益。グラント警部はイメージに彩られた歴史の通説を排し、純粋にそうした観点のみで、歴史に思いを馳せ推理、考察していきます。この観点は非情に単純なのに、それだけで歴史の意味が変わってくるのは面白い!
そして、この本で何より楽しいのは、グラント警部と、話の途中から警部に協力する研究生のブレントが新たな発見や、推理を純粋に楽しみ興奮しているのが、伝わってくることでもあります。
上記したように、巻き込まれた・持ち込まれた謎ではなく、自ら謎を設定し、具体的な被害も無く、興味だけで推理を進めていく物語だから、より純粋に”謎”それ自体を楽しんでいる感覚が、伝わってくるような気がします。なのでリチャード三世もイギリス史も全く詳しくない自分も、彼らと同じように純粋な謎解きを楽しめたのだと思います。
小説の中で様々な文献の名前が出てくるのだけど、これもそれぞれ面白そうで、これが架空の作品なのか、実際の作品なのかも気になるなあ。そして、そうした文献に対するグラント警部の辛辣な評価(レビュー)も、なかなか面白い。
ニュースの解説員はさっき書いたけど、書評家にもなってほしい。でも流行小説に対する評価は手厳しいので、出版社からは煙たがられるかも(笑)
本編とは関係ないのですが、ブレントを”むくむく仔羊ちゃん”とたとえてるのも印象的。どんな見た目だったんだろう。 -
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歴史ミステリーは、読んだ覚えがない。安部公房の『榎本武揚』は、世に知られた榎本を裏切者として見たものだったから、あれは歴史ミステリーなのかもしれない。でも他には覚えがない。ぼくには。
戦後の出版。生まれる前の本。ハヤカワ文庫の初版が出たのが、42年前か。ぼくはその頃はドストエフスキーか山岳書ばかり読んでいた頃。ミステリには何の関心も持っていなかった。ハードボイルドにも。冒険小説にも。
本書は、犯人追跡中にマンホールに落ちて怪我をした警部が、入院中の退屈さを凌ぐために歴史資料をひっくり返して、子供二人を殺させた悪人として知られるリチャード三世の素顔を探る。肖像画を見ているとどうも殺人者という風に見えない。真犯人は別にいるのではないか? そんな直観が、彼を思わぬ歴史解釈へと引っ張り出す。警察捜査の手法で暴き出す歴史の真実、というところに本書の面白みがある。何せ30冊も増版を繰り返し、今なお、ミステリの傑作として名を遺しているのがこの作品なのだから。
さて入院と言えば、ぼくも今年の一月と二月に二度、半月ずつの入院を経験した。その時には、ミステリ小説を一日か二日で一冊ずつというペースで読み、退屈と闘わずに済ませていた。それぞれの本の中の事件が一晩か二晩で解決する。そのスピードで次から次へとミステリを読み漁っていた。
本書のグラント刑事は、何日も何日も同じリチャード三世の事件に関わり、一つの事件に対し何冊もの資料や歴史本を読み漁る。手伝いのアメリカ人学生や親しい舞台女優にも外部での調べ物を手伝ってもらいつつ事件を探る。歴史を探る。
ミステリ読者は次から次へと新たな事件を求めるのに、捜査を職業とするグラント警部は一つの歴史的逸話の向こうの真実を暴き出そうと執念を燃やす。まずこの違いが、本作なのであると思う。執念と的確な捜査力や推理力。何を見るべきか、誰を探すべきかを知っている捜査畑の眼で見た歴史的真実。そこが本書の魅力、と言っていいだろう。ぼくのようなただのミステリ好きではこの物語の主人公は務まらないのだ。
何よりも一般に知られている歴史的資料は胡散臭いものばかりで、不自然で理屈に合わないものばかり。再調査・再推理の妥当性を嗅ぎ取ったグラントと助手訳のキャラダイン青年の知的好奇心の行方にぼくらはおつきあいすることになる。勝者に綴られた歴史は真実を隠蔽する。本書冒頭にある「真実は時の娘」と言う言葉と本書のタイトルを結び付け、良質の歴史ミステリがかくして出来上がる。
本日、本業を終えたその足で駆けつけた札幌翻訳ミステリー読書会の課題書が、実は本作である。このような機会がなければ英国史に暗いぼくが本書と出会うことはなかったであろう。主催者の方々の、価値ある名作を掘削してくる選定眼には、ただただ敬服と感謝を表したい。懇親会の食事と呑み物と、そこで交わされた貴重な話題やご意見にも深い尊敬と感謝の気持ちを! -
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探偵稼業は女には向かない。自殺した共同経営者の跡を継ぎ、一人で探偵事務所を続ける灰原哀ちゃん大活躍。もとい、コーネリアグレイの成長譚。
健気とは言わない。探偵のノウハウを脳内再生し、心の声で「やれる。私ならやれる」
ひたすら突き進む彼女を気付けば応援している。強がりでタフな精神。魅力でいっぱいだ。
探偵として証明するため、そして師弟愛のため。未熟がゆえに解決へと繋がる。
重圧から解き放たれた時、繕ってきた探偵の姿が崩れる。少女らしさに胸を打ちます。
ひたむきで力強い可憐な女探偵。最高じゃないか。『皮膚の下の頭蓋骨』も読まねば。
オススメマラソンその⑱
桜さんから紹介してもらいました。 -
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コーデリア・グレイ・シリーズ第2作。
脅迫状におびえる有名女優の警護を依頼され、孤島を訪れた探偵のコーデリア。島には壮麗な城と劇場があり、そこで行われる古典劇のために演劇関係者や女優の親戚等が集っていた。やがて殺人事件が起きて……。
これまで読んだP. D. ジェイムズの本の題名は暗い印象のものが多い。今回は『皮膚の下の頭蓋骨』ときた。猟奇的な内容だと嫌だなと思いながら手に取ったが、恐れていたほどではなかった(殺害手口はむごい)。読み手を身構えさせ、恐怖感を増幅させるねらいで付けられたのであれば成功している。いわくありげな登場人物や孤島の陰惨な過去と、ひたむきで可憐なコーデリアとの対比が鮮やかで、最後まで緊張感が持続。 -
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女探偵コーデリア・グレイシリーズ2作目にして最後の作品。前作とはうってかわって、今度は孤島で起こる殺人事件の捜査にコーデリアが当たるという、古式ゆかしい黄金期のミステリのような本格ミステリ風作品になっている。
コーデリアの事務所を訪れた元軍人。彼の妻は女優であり、彼女宛てに数日来から脅迫状が頻繁に届いているのだという。彼の依頼はその妻が今度古城を頂く孤島の持ち主より公演の依頼を受けた、ついてはコーデリアに滞在中の身辺保護を頼みたいというものだった。
ヴィクトリア王朝様式の古城に招かれた人々は一見裕福そうに見えるが、それぞれに問題を抱えている、とミステリの王道を行くシチュエーション。
後にジェイムズ作品を読み進めていくうちに判ってきたのだが、この誰もが何か問題を抱えた人間が一堂に会しているというのはこの作家の作品の最たる特徴である。まだ本書では古城の内部を彩る豪華な調度品や島の風景の描写も精緻を極めており、これもジェイムズ作品の特徴の1つであることが後々解ってくる。つまり本書はジェイムズが本来の創作作法に則って書いた作品であり、『女には向かない職業』の方が、ジェイムズ作品としては異色だったということになる。
前作にも増して2倍以上はあろうかというボリュームと、見開きページぎっしり書かれた文章とで、1時間に40ページくらいしか進まなかった記憶がある。そんな小説は読み疲れして、早く終われ、早く終われと呪文のように頭の中で繰り返し、苦痛を感じながら読むのが私の常だった。本作でもそうだった。特に前半はほとんど登場人物らの相関や事情、古城ならびに島の描写に筆は費やされており、事件が起こるのは半ばぐらいだったように思う。その事件も密室殺人などといった本格ミステリならではといった派手さもなかった。しかし、コーデリアが犯人の動機を探り当てる段になって、この重厚さによって私の目の前にかかっていた靄が一気に雲散霧消した思いを抱いた覚えがある。今読んでみて、この動機がそれほどのカタルシスをもたらすかどうかは判らないが、当時は「おおっ!」と声を上げたものだ。ネタバレになるので詳細は書かないが、この動機を期待しすぎるとガッカリする方もおられるだろう。しかし私はこういうのが好きなのである。まさしくこれは好みの問題と云えるだろう。
そんなわけで私の評価は1作目よりこっちの方が上。従って1作目を気に入った方は同趣向の作風を求めると、肩透かしを食らって、さほど楽しめないかもしれない。
しかしなぜ早川書房はこのシリーズを先に文庫化したのだろう。それがために私はダルグリッシュ警部シリーズを読むことなく、このシリーズを読むことになってしまった。元々早川書房は原書の刊行順に関係なく、売れ筋の本から訳出、刊行する傾向があったので、恐らくジェイムズ作品も比較的とっつきやすいコーデリア・グレイシリーズを文庫化したに違いない。ま、そんなことをぐだぐだ考えても意味のないことなんだが・・・。 -
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「高慢と偏見、そして殺人」がすごくおもしろかったので、続けて読んでみたのだけれども、ううーん、ええと、すみません、こんな超名作ミステリについてとても言いにくいんですが途中で退屈しましたすみません。
長い……。
最初の、コーデリアが島に行くまでのあれこれや、島に行くメンバーそれぞれの話、殺人事件が起きるまでのいろいろあたり、死についての言及なんかはおもしろかったんですが、警察のひとりずつの尋問あたりで……コーデリアはどっかいっちゃったのかとか思いましたすみません。
最後の対決や、ほかに類を見ないようなラストにはスリルを感じたんだけれども。
謎解きがなきゃもっとおもしろいかもとか思っていたバカなわたし。ミステリは読まないほうがいいのかも。
ほんとすみません。 -
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『女には向かない職業』のコーデリア・グレイが孤島で起きた女優殺害事件に挑むミステリー。
丁寧を通り越して執拗と言ってもいいかもしれない描写や、一段落が非常に長いなど、決して読みやすい文章とは言えないと思うのですが、それでもこの重厚かつ端正な文体が自分には大好物らしくあまり苦も無く読んでいけました。
孤島での事件とはいえ警察は事件の早い段階で介入してくるので、思っていたようなクローズドサークルものではなかったのですが、人間関係をつぶさに描いた作品に仕上がっていると思います。伝説が語り継がれる孤島や、脅迫状、大理石の手などさまざまな要素がふんだんに盛り込まれているあたりもミステリー好きとしてはうれしいところ。
そしてラストの犯人とコーデリアの対決は迫力十分!
結末も当時のミステリーから考えるとちょっと変わった趣向になっているようです。(解説の受け売りなのですが、そこを読んできちんと納得できました)
そう考えると確かにミステリー作品の悪との対決という概念に新しい一石を投じた作品かもしれません。
コーデリアシリーズはこれ以降、続編が出ていないらしくとても残念です。 -
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ネタバレやっと読めた!!面白かった〜!頑張ったよ、コーデリア―――!!(いや、頑張ったのはコーデリアであって自分ではない)大好きになった『女には向かない職業』の探偵コーデリア・グレイの続編(といっても今のところこの2冊だけだけど)。ずっと読みたいと思いつつかなりの分厚さに若干躊躇ぎみだったけれど、読み始めたら一気読みでした。迷い猫の捜索ばかりしていたコーデリアの探偵事務所に、大物女優の身辺警護依頼が持ち込まれる。不快な脅迫状が届いているので、彼女が主役を務める劇が行われる孤島へアシスタントとして付いていくことに…。本当に不吉な脅迫状のような命の危険があるのか?物語の中盤まではそんな半信半疑のまま、孤島の宿泊客の奇妙なキャラに翻弄され、進んでいく。そして起こる殺人事件。探偵とはいってもコーデリアの場合、場を仕切るタイプではなく、ひとりの重要参考人として警察に協力(?)し、不安感もそれなりにもっている。それでも地道に疑問をひとつひとつ解き明かしていき、『女には〜』以上の危険な目に遭うハードな場面もあり(ハラハラ)、真犯人との対峙に戸惑う。この後半の読み応えはたまらない。結果的にタフに見えるけど、こうした彼女の無垢さ、素直さが、いわゆる探偵小説ではない魅力を成している。時間を置いて何度でも読みなおしたい。THE SKULL BENEATH THE SKIN/P.D.James/1982
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ハヤカワの『海外ミステリ・ハンドブック』より。お初の作者です。
探偵事務所の共同経営者・バーニイが突然自殺したことにより、探偵業を引き継ぐことになった若きコーデリアの物語。普段なら、「可憐な女探偵のひたむきな活躍」にはあまり惹かれないのですが、表紙のイラストがすてきで手に取りました。
ひとりで取り組む初めての事件として、”息子の死の真相を知りたい”という著名な科学者からの依頼を受けたコーデリア。
なにより印象的だったのは、初仕事とは思えないコーデリアの実際的な様子、その冷静さでした。
探偵としての作法はバーニイから教わったものの、ほぼ味方のいない中で調査を進める彼女。かなり危険な目にも遭うのですが、パニックに陥ることなく、また困難な状況で諦めようとした自分すら客観視して自らを鼓舞する姿には感心しました。
また、普段読むような”名探偵もの”は実績も名声もある百戦錬磨の探偵たちがよく出てきますが、今作はコーデリアが直面する謎や戸惑いがストレートに書かれているのも新鮮でした。名探偵はなかなか考えていることを教えてくれませんからねぇ……。
ところどころ、バーニイを飛び越して「かつての上司である警部」とやらが出てきて???だったのですが、あとから納得。作者のP.D.ジェイムズが作り上げたもう一人の名探偵、アダムス・ダルグリッシュのことなんだそうな。つまりこちらはスピンオフだったのですね〜。
後半のあの場面は、ダルグリッシュシリーズを追っている方ならさぞテンションが上がったのではないでしょうか?
冷静で行動力のあるコーデリアのおかげでストーリー自体はなんなく追えたものの、解説にもありましたが、おそらく作者の特徴でもある描写の細かさにはちょっと苦戦……(^^;
「彼or彼女」が誰を指しているのかわからなくなったり、一文の長さに主語と述語が迷子になったり。というか、感想を書いていて思いましたがなぜ事件を依頼したのでしょうか……?
コーデリアのその後も気になりますが、本編ともいえるダルグリッシュシリーズも読んでみたくなりました。 -
Posted by ブクログ
2018にも読んだが、映画ロスト・キングを見たので、またリチャード三世の話を読みたくなり再読した2025.5。
リチャード三世の遺骨発見は本当にすごいニュースだよね〜。
改めて、時の娘。面白い。
そして、こういう物語(安楽椅子探偵の歴史ミステリ)が、高い評価を受けていることが嬉しいです。
顔。このリチャードの顔から始まる。
そう、たしかにインパクトがあるよね。
悲しそう。でも貴族らしい誇りも見られる。
ここに惹かれる、というか、忘れられない顔だよね。
歴史にはこういう歪められた人物がたくさん居るんだろうなと思わされた。
ヘンリー7世は出どころの怪しい海千山千の人らしいし。
それにしてもさ〜、王室関係みんな名前被りが多すぎて泣きそう。
男子はヘンリーかエドワードかリチャードかジョンだし、子女はエリザベスかアンかメアリーかマーガレットだよね。
うん、やめて?