小泉喜美子のレビュー一覧
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1970年代に発表された古い本。
あとがき解説によると、作者のPDジェイムズのミステリは「敬遠したくなるような特徴を持っているのである。陰鬱荘重な雰囲気、部厚さ、極端に改行の少ない文章」とある。
確かに、最初の方はとても読みづらく、訳者の訳し方が原因だろうと思っていた。
文が長く、訳が原文に忠実すぎて、一文を最後まで読まないと意味が分からなかったり、同じ文を何度も読みなおさないと理解できなかったり。
ただ、だんだん慣れてきたのと、途中からは長い文も少なくなり読みやすくなった。
ミステリの展開も面白く、最後はどうなるかとはらはらしながら読んだ。
ちょっと無理がある設定ではあったが。
解説によると、この本と同じ女探偵が主人公の本と、男探偵の本があるようだ。
何冊か推賞されていたので読んでみたい。 -
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ネタバレこの世には人を愛せないかもしくはものすごく薄くでしか愛せない人間がいるのだということが、メッセージとしてすごく心に残った。エヴリンの父親やカレンダー卿のような人物。
そしてコーデリアの父親も子どもを愛せなかったと仄めかしている。
その上で
208ページ
「でもだからってその父親の罪ではありません。人間は誰かを好きになりたいからと言って好きになれるものではありませんもの。」
それはコーデリアが自分を納得させてきた言葉なのだろう。
自分に言い聞かせるように、放ったように思える。
この本の中でコーデリアの両親の記述は少ない。
けれど彼女が乗り越えてきたのだなとわかる。
そこに励まされる。
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Posted by ブクログ
ネタバレ20代で探偵事務所を背負って立つことになったコーデリアの、心の機微や葛藤が丁寧に描かれる。
事件の謎よりそちらに重点が置かれているようにも思う。
大きな事件を経験し、今後も悪との闘いが予期される終わり方の中、自分が価値と信じる良識を胸に、堅実に日々の仕事を積み上げていこうとする姿勢がいじらしく、「頑張ったね!ずーっと応援してるからね!」と抱きしめたくなる。
作者は逝去しているようなので、こちらはコーデリア•グレイ2作目にして、最後の作品。
これから30.40.50代と年齢を重ねたコーデリアはどう変化していくのだろう。いつか引退し、茶目っ気を身につけて幸せに暮らすおばあちゃんになっているといいなと思う。 -
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ロンドン塔の王子たちを殺害したのは本当にリチャード三世なのか?ベッド探偵が真実に迫る歴史ミステリの傑作。
シェイクスピアの戯曲では清々しいまでの極悪非道の人物として描かれていたリチャード三世。そのイメージが広く流布したまま時は流れ、本書が発表された20世紀半ばに至っても彼の悪名は依然として世間に轟いていた。退屈な入院生活中にふとその肖像画を目にすることになったグラント警部は、人間の顔分析についての職業上の経験と独自の見解から、「この人物は本当に悪人だったのか?」と疑問を抱く。退院までベッドで暇を持て余す警部は、歴史的人物の真相に迫るべく文献の調査と推理に乗り出していくのだった。
英国の歴史とか、薔薇戦争とかおぼろげな知識すらないレベルだったけれど、直前にシェイクスピアの『リチャード三世』を読んでいたおかげですんなり入り込めた。あの悪王のイメージと、表紙にある神経質そうな彼の肖像画とは、確かにイメージが合わない。加えてグラント警部の鋭すぎる「人間の顔」分析が面白く、警部がこの肖像画とその人物伝とのギャップに抱く疑問に読者としても俄然興味がわき、冒頭から引き込まれた。
焦点となるのはリチャード三世が殺害したとされるロンドン塔の二人の甥についての真相。文献と友人たちの調査から推理を重ね、次第に見えてくる、「歴史」とはまったく異なるリチャード三世の人物像に驚愕する。なぜ真実はゆがめられたのか?グラント警部は、とある人物の思惑につきあたる……。
もし、リチャード三世がボズワースの戦いに勝利していれば、歴史と彼の評価はまったく異なるものになっていただろうという「歴史のIF」について分析するところも面白い。本作の中で一つの結論にたどり着くが、この点について調べると、リチャード三世を擁護する説そのものは古くからあり、現在でも評価は分かれるようだ。ただ本書の面白さは知的好奇心を刺激する歴史の謎を題材としながらも、推理を重ねる「ミステリー」の部分が主体であり、どちらの説を取るかということよりも、その過程にこそ魅力があるのだと思う。最初から最後まで興味が尽きない、引力のある傑作だった。 -
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ネタバレ初めてのP・D・ジェイムズ。とっつきづらいイメージに反してリーダビリティが高く、読みやすいじゃん!と思ったけれど、解説によればこの作品が例外的に読みやすいらしい。
共同経営者を自殺でなくしたばかりの女主人公コーデリアが、自殺とみなされた青年の死の原因をひたむきに探る物語。年若い女探偵ものらしくスリリングなピンチもあり、真相を探るべくひたむきに頑張るいじらしさに胸打たれ、そして後半に至る怒涛の展開、最終盤のある意味でのどんでん返しには驚いた。本当に面白かった。ダルグリッシュ警視ものを他にも読んでみたいけれど、なかなか難易度が高そうだなぁ -
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学生の頃に自分で作ったランキングの上位にあるが内容を覚えてない本が意外と多い。これもその一冊だがまったくの初読のように楽しめた。まだ女性私立探偵が女性らしく描かれなかった時代に書かれた男社会の中で抗う22歳の私立探偵コーデリア。自殺した息子の動機を調べてくれと依頼される。この話は二重構造になっていて、事件を解決するコーデリアの推理譚の一方で、自殺した元パートナーの元上司でラスト数ページで現れたダルグリッシュ警視が倒叙ミステリのようにコーデリアの秘密を追い詰めていく。だが決して敵対的ではない。ダルグリッシュはコーデリアに目を細める。若いコーデリアの成長と今後を期待させる、PDジェイムスらしからぬ面白さの傑作
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グラント警部は犯人を追跡中に足を骨折して入院することとなったが、ベッドから動けずに退屈を持て余していた。友人である女優のハラードは、歴史上のミステリーを探究すれば退屈がまぎれるのではないかと提案し、何枚もの歴史上の人物の肖像画を持参する。グラントは、その中の1枚に関心を持つ。グラントは人間の顔に現れる人物の性格を見抜く特技を持っていた。彼の眼には良心的で責任感のある人物として映ったその肖像画の主は、リチャード3世であった。
この小説は、「歴史がいかにして作られるのか」を探究し、確かな証拠がないにもかかわらず今や定説となってしまった歴史が、恰も真実のように語り継がれていることに疑問がある。グラントは、チューダー朝によって記された虚構が「歴史」として現在も流布しているのだという答えを導き出す。
著者テイは本書出版後間もなく没しており、本作が作者存命中に出版された遺作となった。
この作品が出版された際に、アントニー・バウチャー(推理小説の批評家)はこの作品を「推理小説分野において、永く古典とされる作品で(not only one of the most important mysteries of the year, but of all years of mystery)」と評しています。
お気づきかと思いますが、日本では〈安楽椅子探偵〉・江戸川乱歩先生が高く評価し、〈寝台探偵〉とも呼んでいます。探偵は一歩も動かない。登場するデータはすべて史実という制約が課せられている難しさはあります。
この作品が上梓され評判になり、高く評価しご自身の作品にも取り入れたのは、高木彬光の『成吉思汗の秘密』(1958年)等の神津恭介シリーズです。
「訳者あとがき」までお読みください。味わい深い作品だと思う。 -
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ネタバレコーデリア・グレイは駆け出しの私立探偵。共同経営者がある朝オフィスで自殺し、持ち込まれた事件を自分一人で対処することになる。はじめての依頼は高名な微生物学者からのもので、息子の自殺の動機を調べること。亡きパートナーの教えを頼りに調査を始めたが、不審な事実が次第に明らかになり…。登場人物表の2番目に書かれている人(おそらく重要人物)が、いきなり1ページ目から亡きものとなってるところに思わずうなった。うーん、つかみが巧い。ケンブリッジを舞台とした事細かな描写…キングズ・カレッジ・チャペル、書店、ポークパイ、ケム河でのパンティング、自転車向きの田舎道…なども個人的にツボ♪主人公コーデリアは若さあふれる真面目さと冷静さを持つ、度胸の据わった22歳の女性。話し方がすっきりしていて好感が持てる(訳がいいのかも)。初めての事件は手探り状態ながらも、自分の判断と教えを信じて、着々と調査を進める姿がすがすがしい。でも、さすがに自殺した青年の住んでいたコテージ(首吊りの遺体があった部屋)に住み始めたときには、おいおいやめときな!っと突っ込みを入れたくなってしまった。すごい度胸。こんなところも「女には向かない職業」って絶妙なタイトル。暗闇に首つり枕を仕掛けられて何者かに警告を受けたり、井戸に放り込まれて傷だらけになりながらレンガを這い上ったり、車で追いかけたりというハードな探偵っぷりを発揮する側面ももちろん楽しい。だが、コーデリアがかつて進学をあきらめたケンブリッジに奇妙な巡り合わせでとうとうやってきた!という束の間の感激を現す場面や、事件後パートナーの上司だった警視に対して冷静沈着さの糸が切れ、感情のまま抗議をぶちまけた場面にこそ、心を動かされる面白さがある。(ちなみにこの警視は別シリーズの名探偵役)。いい読書時間を過ごせる傑作だ。
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ネタバレ探偵も殺人も女には向いていない、本当に?
この作品を読むのは二度目。『名探偵コナン』の登場人物の名前が古今東西のミステリー作家や探偵から取られていると知り、灰原哀の由来となったコーデリア・グレイが気になって、中学生の頃に一度読んだ。V.I.ウォーショースキーより先に手に取ったのは、「黒の組織との再会」で灰原哀が発した「まるで井戸から這い上がったコーデリア・グレイね」というセリフが気になったのと、この作品のタイトルがカッコいいからである。そしてこの作品は何度読んでもカッコいい。
コーデリア・グレイは探偵事務所の共同経営者バーニイ・プライドが自殺した後、その探偵事務所を続けると決める。そこに飛び込んできた依頼は、自殺した青年の父親からの息子が死んだ理由を調べてほしいというものだった。バーニイから教わった捜査法を活用し、コーデリアが明らかにした真実は——。
主人公が探偵役だからと言って事実をすべて日の元に晒すとは限らない。時には「最善の」解決へと導くために、犯人を見逃したり犯罪を隠したりすることもある。そこにはその探偵の信念や流儀がある。コーデリアはバーニイから学んだことをしっかりと実践してみせた。タフに、クールに。物語が終盤に入って、コーデリアが捜査の舞台となったケンブリッジを去るあたりで、ふと気付く。終わりのはずなのにまだページが結構ある、と。そこで登場するのが、バーニイの元上司であるダルグリッシュ警視で、寡聞にして知らなかったが、著者の他作品の探偵役だとのこと。彼こそすべての真実を見抜く名探偵である。でも主人公はコーデリア。バーニイのその後を気にしなかった警視に感情を爆発させたコーデリアと、そのことを詫び、バーニイを認める言葉を告げる警視。警視は落ち着くところに収まるように事件を「解決」させ、コーデリアは新たな依頼人と出会い、この物語は幕を閉じる。主人公の上を行く人物がいても、主人公を貶める展開になるなら、この作品は長く読み継がれなかっただろうし、むしろコーデリアのタフさを示す警視との対決は、最後にもう一段上がる嬉しい展開。
コナンがきっかけでこの作品に出会った人は自分だけではないだろう。ぜひ多くの人に読んでもらって、コーデリアのカッコよさを知ってもらいたい。