小泉喜美子のレビュー一覧

  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    この世には人を愛せないかもしくはものすごく薄くでしか愛せない人間がいるのだということが、メッセージとしてすごく心に残った。エヴリンの父親やカレンダー卿のような人物。
    そしてコーデリアの父親も子どもを愛せなかったと仄めかしている。
    その上で
    208ページ
    「でもだからってその父親の罪ではありません。人間は誰かを好きになりたいからと言って好きになれるものではありませんもの。」
    それはコーデリアが自分を納得させてきた言葉なのだろう。
    自分に言い聞かせるように、放ったように思える。
    この本の中でコーデリアの両親の記述は少ない。
    けれど彼女が乗り越えてきたのだなとわかる。
    そこに励まされる。

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    2025年11月28日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    ネタバレ

    20代で探偵事務所を背負って立つことになったコーデリアの、心の機微や葛藤が丁寧に描かれる。
    事件の謎よりそちらに重点が置かれているようにも思う。
    大きな事件を経験し、今後も悪との闘いが予期される終わり方の中、自分が価値と信じる良識を胸に、堅実に日々の仕事を積み上げていこうとする姿勢がいじらしく、「頑張ったね!ずーっと応援してるからね!」と抱きしめたくなる。

    作者は逝去しているようなので、こちらはコーデリア•グレイ2作目にして、最後の作品。
    これから30.40.50代と年齢を重ねたコーデリアはどう変化していくのだろう。いつか引退し、茶目っ気を身につけて幸せに暮らすおばあちゃんになっているといい

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    2024年10月07日
  • 時の娘

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    斬新!安楽椅子探偵がまさか時代を遡って推理をするなんて。そして、回想や再現VTRではなくあくまで思考を書き連ねてるのに飽きさせない。正直歴史の知識不足も多々あるので、混乱することもあったけど、楽しめました

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    2024年04月14日
  • 時の娘

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    さすがに歴史ミステリの名作といわれるだけあって、面白かった! ただ歴史ものなので、多少の前知識がないと分かりにくそうだった。予習としてシェイクスピアの「リチャード三世」を読んでいて良かった。
    調べたところ、タイトルの「時の娘」はフランシス・ベーコンの言葉「真理は時の娘であり、権威の娘ではない」に由来するようだ。真実は隠されていても時の経過によって明らかになり、権威によって明かされるものではない、という意味らしい。まさにぴったりのタイトル!

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    2024年03月11日
  • 弁護側の証人

    ネタバレ 購入済み

    面白い

    60年前の作品とは思えない面白さでした。すっかり騙されました。
    最後に序章を読み直し、スッキリしました。

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    2024年02月21日
  • 時の娘

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    ロンドン塔の王子たちを殺害したのは本当にリチャード三世なのか?ベッド探偵が真実に迫る歴史ミステリの傑作。

    シェイクスピアの戯曲では清々しいまでの極悪非道の人物として描かれていたリチャード三世。そのイメージが広く流布したまま時は流れ、本書が発表された20世紀半ばに至っても彼の悪名は依然として世間に轟いていた。退屈な入院生活中にふとその肖像画を目にすることになったグラント警部は、人間の顔分析についての職業上の経験と独自の見解から、「この人物は本当に悪人だったのか?」と疑問を抱く。退院までベッドで暇を持て余す警部は、歴史的人物の真相に迫るべく文献の調査と推理に乗り出していくのだった。

    英国の歴史

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    2023年09月11日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    ネタバレ

     最後の解説で全てがしっくり来た。解説ってのは何かこう解釈の強要な気がしてよくないもののように感じがちだ。自分の感受性が解説を読んだ時点でどこかに行ってしまうような。でも僕は最後の解説って結構好き。コーデリア・グレイのシリーズの作風ってもんをきっちり形作ってくれる。これでこそ僕は「ここが好きだからこのシリーズが好き」も胸を張って言えるというもの。多分自分で考えてるだけだと「それってただの良いとこみっけだろ?」って水を差してくる嫌な自分がいるからだろう。解説はそんな嫌な僕に「そんなことないよ。胸を張って『ここが好き!』って言って良いんだよ!」って背中を押してくれるものなんだろうなぁ。
     殺人と顔

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    2023年06月13日
  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    初めてのP・D・ジェイムズ。とっつきづらいイメージに反してリーダビリティが高く、読みやすいじゃん!と思ったけれど、解説によればこの作品が例外的に読みやすいらしい。
    共同経営者を自殺でなくしたばかりの女主人公コーデリアが、自殺とみなされた青年の死の原因をひたむきに探る物語。年若い女探偵ものらしくスリリングなピンチもあり、真相を探るべくひたむきに頑張るいじらしさに胸打たれ、そして後半に至る怒涛の展開、最終盤のある意味でのどんでん返しには驚いた。本当に面白かった。ダルグリッシュ警視ものを他にも読んでみたいけれど、なかなか難易度が高そうだなぁ

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    2023年02月08日
  • 時の娘

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    ネタバレ

    「薔薇王の葬列」を読んでいたら、無性に読みたくなって。十数年前に読んで手放した本でしたが、メルカリで再度購入。いや、堪能いたしました。フレーズもいっぱい登録しちゃいました。

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    2022年07月05日
  • 女には向かない職業

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    学生の頃に自分で作ったランキングの上位にあるが内容を覚えてない本が意外と多い。これもその一冊だがまったくの初読のように楽しめた。まだ女性私立探偵が女性らしく描かれなかった時代に書かれた男社会の中で抗う22歳の私立探偵コーデリア。自殺した息子の動機を調べてくれと依頼される。この話は二重構造になっていて、事件を解決するコーデリアの推理譚の一方で、自殺した元パートナーの元上司でラスト数ページで現れたダルグリッシュ警視が倒叙ミステリのようにコーデリアの秘密を追い詰めていく。だが決して敵対的ではない。ダルグリッシュはコーデリアに目を細める。若いコーデリアの成長と今後を期待させる、PDジェイムスらしからぬ

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    2021年09月10日
  • 女には向かない職業

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    どんなに頑張っても報われないことがある。「負ける」ことはインナーチャイルドを癒していくためにすごく大事なこと。コテンパンに負ける小説を読んで、負けを認める疑似体験を。

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    2020年02月23日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    私立探偵として自立する女性・コーデリア。自分と重ねて読んだ。

    「女には向かない職業」も大好きだけどこっちも大好き。コーデリアの潔癖、清純、無垢なイメージは、決して弱々しいものではなくて、凛として背筋を伸ばしながら悪に立ち向かう美しさを感じる。

    犬猫探しみたいな小さな仕事ばかりで、お金もそんなになくても、世間の評価に左右されず自分で下した決断を信じる美しさ。

    とても良かった。

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    2020年01月03日
  • 時の娘

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     グラント警部は犯人を追跡中に足を骨折して入院することとなったが、ベッドから動けずに退屈を持て余していた。友人である女優のハラードは、歴史上のミステリーを探究すれば退屈がまぎれるのではないかと提案し、何枚もの歴史上の人物の肖像画を持参する。グラントは、その中の1枚に関心を持つ。グラントは人間の顔に現れる人物の性格を見抜く特技を持っていた。彼の眼には良心的で責任感のある人物として映ったその肖像画の主は、リチャード3世であった。
     この小説は、「歴史がいかにして作られるのか」を探究し、確かな証拠がないにもかかわらず今や定説となってしまった歴史が、恰も真実のように語り継がれていることに疑問がある。グ

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    2019年09月18日
  • 女には向かない職業

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    題名からしてずるい。「女には向かない職業」はなにを想起させるだろう。二項対立で考えるなら、少なくともP.D.ジェイムズには「女に向く職業」が思い浮かぶということだ。ビジネスパートナーの突発的な死によって、コーデリア・グレイは22才の若さで私立探偵として自立を決意する。その直後、名士の息子が自殺した理由を調査するよう依頼される。コーデリアは地べたを這うように調査を進めるのだが、その様子を「可憐」と口走らせることがP.D.ジェイムズの狙いだろう。「こういう女の子が好きなんでしょ?」とほくそ笑むのが透けて見える。青春小説でもある。コーデリアは特殊な青年期を過ごす設定になっている。父親はヒッピーのごと

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    2012年07月04日
  • 皮膚の下の頭蓋骨

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    P・D・ジェイムズに決定的にハマったきっかけがこれ。前作「女には向かない職業」もいい作品だけど、これはさらに読み応えがあって読後の満足感もアップ。それにしてもすごいラストだよなぁ……。

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    2009年10月04日
  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    コーデリア・グレイは駆け出しの私立探偵。共同経営者がある朝オフィスで自殺し、持ち込まれた事件を自分一人で対処することになる。はじめての依頼は高名な微生物学者からのもので、息子の自殺の動機を調べること。亡きパートナーの教えを頼りに調査を始めたが、不審な事実が次第に明らかになり…。登場人物表の2番目に書かれている人(おそらく重要人物)が、いきなり1ページ目から亡きものとなってるところに思わずうなった。うーん、つかみが巧い。ケンブリッジを舞台とした事細かな描写…キングズ・カレッジ・チャペル、書店、ポークパイ、ケム河でのパンティング、自転車向きの田舎道…なども個人的にツボ♪主人公コーデリアは若さあふれ

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    2022年08月12日
  • 女には向かない職業

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    古典ミステリーを読むシリーズ。女探偵コーデリア・グレイが主人公。最後にグレイのピュアさ故に不合理な行動をしてしまうのが、彼女の魅力になってるのかなとは思いました。謎がどうというより、グレイの心の動きを楽しんで読みました。

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    2025年12月06日
  • 時の娘

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    肖像画から始まり歴史の定説に挑む面白さに溢れている
    客観的には悲運の名君が冷酷非道な簒奪者とされてしまう情報操作の恐ろしさを感じる
    陰謀論と情報操作に揺れる現代社会に生きる身としては考えること大
    ジェームスやらエリザベスが繰返し現れるので家系図読んでも混乱する
    『ロスト・キング 500年越しの運命』2022でも簒奪者リチャード3世定説との戦いが描かれるが、シェークスピアの偉大さが敵なのか
    日本人は大河ドラマの視点がコロコロ変わる事に慣れているのに
    遺体の発見で流れは変わったのか

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    2025年11月02日
  • 女には向かない職業

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    ネタバレ

    某名探偵漫画の主要キャラクターの由来と知り、ミーハー心で読み始めました。
    キャラクター造形にコーデリアの容貌、性格もかなり参考にされていると感じます。
    古典イギリスミステリーが好きなので、訳も特段古く感じず、時代背景含めてとても楽しめました。

    一度も生きて登場しない仕事上のパートナーから受け継いだもの(物質的•精神的に)が最後まで物語の基軸となっており、この事件を通じてコーデリアがひとつのステップを登ることができたと感じました。読み終えて、主人公の精神面での回復•成長を見守ったような感慨があります。
    続編も読んでみます。

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    2024年07月31日
  • 時の娘

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    ミーハーなためニュースを観て再読。『薔薇王の葬列』をかじったため、昔より「うっすら分かる」状態になっていて、やっぱ絵と物語で覚えるのは強いなと思いはしたものの、知識に対して非ネイティブであるためのピンと来なさはまだかなりありました。シェイクスピアを学ぶ気運が来たろうか。

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    2024年06月24日