あらすじ
英国史上最も悪名高い王、リチャード三世--彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか? 退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリ不朽の名作。
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Posted by ブクログ
斬新!安楽椅子探偵がまさか時代を遡って推理をするなんて。そして、回想や再現VTRではなくあくまで思考を書き連ねてるのに飽きさせない。正直歴史の知識不足も多々あるので、混乱することもあったけど、楽しめました
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さすがに歴史ミステリの名作といわれるだけあって、面白かった! ただ歴史ものなので、多少の前知識がないと分かりにくそうだった。予習としてシェイクスピアの「リチャード三世」を読んでいて良かった。
調べたところ、タイトルの「時の娘」はフランシス・ベーコンの言葉「真理は時の娘であり、権威の娘ではない」に由来するようだ。真実は隠されていても時の経過によって明らかになり、権威によって明かされるものではない、という意味らしい。まさにぴったりのタイトル!
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ロンドン塔の王子たちを殺害したのは本当にリチャード三世なのか?ベッド探偵が真実に迫る歴史ミステリの傑作。
シェイクスピアの戯曲では清々しいまでの極悪非道の人物として描かれていたリチャード三世。そのイメージが広く流布したまま時は流れ、本書が発表された20世紀半ばに至っても彼の悪名は依然として世間に轟いていた。退屈な入院生活中にふとその肖像画を目にすることになったグラント警部は、人間の顔分析についての職業上の経験と独自の見解から、「この人物は本当に悪人だったのか?」と疑問を抱く。退院までベッドで暇を持て余す警部は、歴史的人物の真相に迫るべく文献の調査と推理に乗り出していくのだった。
英国の歴史とか、薔薇戦争とかおぼろげな知識すらないレベルだったけれど、直前にシェイクスピアの『リチャード三世』を読んでいたおかげですんなり入り込めた。あの悪王のイメージと、表紙にある神経質そうな彼の肖像画とは、確かにイメージが合わない。加えてグラント警部の鋭すぎる「人間の顔」分析が面白く、警部がこの肖像画とその人物伝とのギャップに抱く疑問に読者としても俄然興味がわき、冒頭から引き込まれた。
焦点となるのはリチャード三世が殺害したとされるロンドン塔の二人の甥についての真相。文献と友人たちの調査から推理を重ね、次第に見えてくる、「歴史」とはまったく異なるリチャード三世の人物像に驚愕する。なぜ真実はゆがめられたのか?グラント警部は、とある人物の思惑につきあたる……。
もし、リチャード三世がボズワースの戦いに勝利していれば、歴史と彼の評価はまったく異なるものになっていただろうという「歴史のIF」について分析するところも面白い。本作の中で一つの結論にたどり着くが、この点について調べると、リチャード三世を擁護する説そのものは古くからあり、現在でも評価は分かれるようだ。ただ本書の面白さは知的好奇心を刺激する歴史の謎を題材としながらも、推理を重ねる「ミステリー」の部分が主体であり、どちらの説を取るかということよりも、その過程にこそ魅力があるのだと思う。最初から最後まで興味が尽きない、引力のある傑作だった。
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「薔薇王の葬列」を読んでいたら、無性に読みたくなって。十数年前に読んで手放した本でしたが、メルカリで再度購入。いや、堪能いたしました。フレーズもいっぱい登録しちゃいました。
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グラント警部は犯人を追跡中に足を骨折して入院することとなったが、ベッドから動けずに退屈を持て余していた。友人である女優のハラードは、歴史上のミステリーを探究すれば退屈がまぎれるのではないかと提案し、何枚もの歴史上の人物の肖像画を持参する。グラントは、その中の1枚に関心を持つ。グラントは人間の顔に現れる人物の性格を見抜く特技を持っていた。彼の眼には良心的で責任感のある人物として映ったその肖像画の主は、リチャード3世であった。
この小説は、「歴史がいかにして作られるのか」を探究し、確かな証拠がないにもかかわらず今や定説となってしまった歴史が、恰も真実のように語り継がれていることに疑問がある。グラントは、チューダー朝によって記された虚構が「歴史」として現在も流布しているのだという答えを導き出す。
著者テイは本書出版後間もなく没しており、本作が作者存命中に出版された遺作となった。
この作品が出版された際に、アントニー・バウチャー(推理小説の批評家)はこの作品を「推理小説分野において、永く古典とされる作品で(not only one of the most important mysteries of the year, but of all years of mystery)」と評しています。
お気づきかと思いますが、日本では〈安楽椅子探偵〉・江戸川乱歩先生が高く評価し、〈寝台探偵〉とも呼んでいます。探偵は一歩も動かない。登場するデータはすべて史実という制約が課せられている難しさはあります。
この作品が上梓され評判になり、高く評価しご自身の作品にも取り入れたのは、高木彬光の『成吉思汗の秘密』(1958年)等の神津恭介シリーズです。
「訳者あとがき」までお読みください。味わい深い作品だと思う。
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肖像画から始まり歴史の定説に挑む面白さに溢れている
客観的には悲運の名君が冷酷非道な簒奪者とされてしまう情報操作の恐ろしさを感じる
陰謀論と情報操作に揺れる現代社会に生きる身としては考えること大
ジェームスやらエリザベスが繰返し現れるので家系図読んでも混乱する
『ロスト・キング 500年越しの運命』2022でも簒奪者リチャード3世定説との戦いが描かれるが、シェークスピアの偉大さが敵なのか
日本人は大河ドラマの視点がコロコロ変わる事に慣れているのに
遺体の発見で流れは変わったのか
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ミーハーなためニュースを観て再読。『薔薇王の葬列』をかじったため、昔より「うっすら分かる」状態になっていて、やっぱ絵と物語で覚えるのは強いなと思いはしたものの、知識に対して非ネイティブであるためのピンと来なさはまだかなりありました。シェイクスピアを学ぶ気運が来たろうか。
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アームチェアディテクティブならぬベッドディテクティブ。
警官の(推理作家の)視点で歴史ミステリを解明していくお話の古典とも言える作品。
これから読むとリチャード三世推しになり、シェイクスピアから入ると真逆になるという。
映画『ロスト・キング 500年越しの運命』も見てみたいなぁ。
映画のノベライズはなかったけど、『王家の遺伝子 DNAが解き明かした世界史の謎 (ブルーバックス) 』も関連としてメモ。
時の娘の作中作の『レイビィの薔薇』は架空の作品で残念。そうか、架空か…。
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ミステリーの古典的な作品。負傷療養中のヤードの敏腕警部がベッド上で、リチャード3世の悪行と言われた数々を覆して行く、と言うもの。看護師や彼に代わり調べ事を請け負う青年など、リアル登場人物との会話も生き生きしていて、歴史上のモノ言わぬ人との対比も良かった。ロンドン塔で謀殺されたとされる金髪の美形の兄弟の話が有名なのでホッとした。肖像画見ながら読むのも楽しかった。
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グラント刑事が入院中のベッドの中で悪名高いリチャード三世の素顔を歴史文献から推理していくベッド探偵小説。イギリス史を知らないので家系図とにらめっこしながらも面白いのだから、現地の人が読んだら本当に面白い小説なんだと思った。警察官の洞察力と事実に基づく考察やキャラダインの若くて勢いのあるところが心地よい作品で読んで良かった!
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史実は歴史書と違う場合がある
史実を如何に読み解くか。歴史は勝者の物と言われるくらい勝者の史実として作っていることだ。イギリスの王位継承権での争いも「裏切り・利権・名誉」等において、次期王が前王に全ての悪名を被せ裏工作を淡々と成し遂げた「汚い」歴史だ。だが、この小説では史実を掘り下げだけではなく時代に登場する人物に「得する人間vs損する人間」を警察官の様に検視する目を持つ事だと感じた。
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薔薇戦争の頃のイギリス王室についてほとんど知らなかったため、勉強になった。リチャード3世は数々の物語の題材になる有名人なんだね。
当時の人たちの認識と全然違う歴史書が捏造されて、真実として扱われる「トニイパンティ」。
刑事の直感から始まり、だんだんリチャード3世の人柄を理解していくあたりは楽しめた。
でもタイトルの「時の娘」は一体誰のことだったのか?読み終わった今もよくわからない。
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薔薇戦争、ヘンリー6世、リチャード3世辺りを把握しているとイメージがひっくり返って面白い。(そこらへんの前提が無いと誰が誰だかわからなくて苦労する)
歴史は客観的に物事を見ることができる、という台詞は、対象となる歴史自体がここまで歪んでいるとするなら、とても皮肉。まぁ、本書出版から時が経っているし、教科書に書かれる内容も今では状況が違うのかもしれないけれど。
歴史は勝者によって作られるし、シェイクスピアは舞台だし、司馬遼太郎の小説が史実でもない。
シェイクスピアの表裏激しいリチャード3世は突き抜けてて単純に面白いと思うし、本書の家族愛に溢れた、甘い部分はあるものの誠実なリチャード3世も好きなので、それぞれ分けて楽しめばいい。
歴史はそういう物語性が好きだ。
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リチャード3世の汚名を晴らす歴史ミステリの名作。入院中のグラント警部は歴史書を読み漁り文献のみからリチャード3世の素顔を推理していく。安楽椅子探偵ものとしても有名だが英国史の本として面白い。歴史の常識を覆す面白さだ。もちろん文献から推理するのだから事実とは限らない。推測の上に推測を重ねている。その意味でお遊びだ。つまりパズルとしての面白さである。
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古典ミステリを読もう企画
安楽椅子探偵が紐解く歴史ミステリ。
歴史ミステリを全く読んだことなかったが、こういうのなの?!こんな書き方のジャンルがあるとは。
史実を再考察して、謎を解いていく。
イギリス史がよく分からず、名前も似すぎてて、誰が誰だかよくわからなくなる…が、それでもなんか面白いとページが進んだ。
キャラクターが良いのかも。
一方の説だけ考えるのは正しくないとは思うが、この小説を読むと歴史書より信憑性あるように感じちゃうよね〜
主人公が入院してる理由がマンホールに落ちた、は出オチ感あった。
Posted by ブクログ
イギリスでは世紀の大悪人のように語られるリチャード三世。自身の玉座のために、幼い甥たちを殺害したとされる。彼は本当に悪人だったのか?本当に幼い王子たちを無惨に殺したのか?怪我で暇を持て余した刑事は、暇潰しがてら始めた歴史の考証にどんどん夢中になり…という内容。
日本でいえば、長らく低い評価をされてきた明智光秀の復権話に近いでしょうか??
読み終わった感想としては、とにかく薔薇戦争、リチャード三世の周辺についてある程度興味も知識もあるなら、そこそこ面白い。無ければチンプンカンプンって感じです。イギリス王室って同じ名前の人がとてもたくさんいて、親子だったり、親戚だったり、対立したり、協力したりととてもややこしい。例えば『かのエリザベスが〜』とかの記述で、どのエリザベスになるのか、ある程度ヨーク家の家系図が入ってないとほんと分かんなくなります。
私はそもそも呼んだきっかけが漫画の「薔薇王の葬列」関連の話を読みたいという気持ちでした。漫画のおかげで、エドワード、ジョージ、リチャード、エリザベス等々ちゃんと顔が浮かんでくるのでとても区別しやすかったです。
漫画は架空の物語にせよ、モデルになったリチャード三世に少なからず好感を抱いてたので、個人的には満足するお話でした。
ただ、サラッと読みすぎたのか、読み終わった今でもタイトルの時の娘が何を指しているのかいまいち分からなかったです。
Posted by ブクログ
ひょんなきっかけで、ウェールズに関する本を読み漁っていた時に出会った本です。
シェイクスピアなどの古典で、名前は聞いたことあるし、ひどいことした人なんだなぁ、というくらいのイメージしかありませんでしたが。。
昔々の話ですし、この本に書いてあることが真実とも限りませんが、目から鱗のお話でした。
歴史書ではなく小説なので、主人公が徐々に徐々に、真相(歴史上ほんとうにそうだったかは定かでないし、今となっては知るすべもないものの)に近づいていくという構成が、読者を飽きさせず、さらっと読めてしまう本です!
この話が本当だったとしたならば、亡くなった後にまで丸裸にされて人目に晒されるなんて、なんて惨いんだと思うと同時に、日本の戦国時代しかり、平和な時代に生まれてよかったと考えさせられます。
Posted by ブクログ
犯罪が絡むわけでもなく、日常の中に不可思議なことが起こったわけでもない。それでも時に人は無や常識から疑問を見いだし、謎を設定し、そして真実を見つけようとする。研究なんかもそうですが、こうやって謎や疑問を自ら定め、そして自分の興味を第一の理由にそれに挑むのが、ある意味最も純粋な謎解きではないか、と思います。
そんな謎解きに挑むのが、足を骨折し病院で暇を持て余すグラント警部。警部はふとしたきっかけから、歴史上では悪人と名高いリチャード三世に対し疑問を抱き、様々な文献をあたり、彼が本当に大悪人だったのか推理を始めます。
推理の過程が非常に面白い! 史実に対し頼りになるのは、文献や当時の記録のみなのですが、グラント警部はその文献の記録の妥当性や公正性すらも考慮に入れます。例えば、その文献の著者は、当時の関係者なのかだとか、立場であるとか、伝聞のみで文章を書いたのではないか、だとか。
こうやって考えてみると、グラント警部は探偵としても優秀なんですが、情報リテラシーの鏡でもあるよなあ。ネットはもちろん、マスコミや新聞だって100パーセント中立はあり得ないわけで、必ず編集する側の意思は入ります。それも考慮して、日々の情報を読み解くことが大事なのですが、グラント警部はぜひニュースの解説員にもなってほしい(笑)
当時の歴史上の人物の行動と、その行動を取った意味と妥当性、そして利益。グラント警部はイメージに彩られた歴史の通説を排し、純粋にそうした観点のみで、歴史に思いを馳せ推理、考察していきます。この観点は非情に単純なのに、それだけで歴史の意味が変わってくるのは面白い!
そして、この本で何より楽しいのは、グラント警部と、話の途中から警部に協力する研究生のブレントが新たな発見や、推理を純粋に楽しみ興奮しているのが、伝わってくることでもあります。
上記したように、巻き込まれた・持ち込まれた謎ではなく、自ら謎を設定し、具体的な被害も無く、興味だけで推理を進めていく物語だから、より純粋に”謎”それ自体を楽しんでいる感覚が、伝わってくるような気がします。なのでリチャード三世もイギリス史も全く詳しくない自分も、彼らと同じように純粋な謎解きを楽しめたのだと思います。
小説の中で様々な文献の名前が出てくるのだけど、これもそれぞれ面白そうで、これが架空の作品なのか、実際の作品なのかも気になるなあ。そして、そうした文献に対するグラント警部の辛辣な評価(レビュー)も、なかなか面白い。
ニュースの解説員はさっき書いたけど、書評家にもなってほしい。でも流行小説に対する評価は手厳しいので、出版社からは煙たがられるかも(笑)
本編とは関係ないのですが、ブレントを”むくむく仔羊ちゃん”とたとえてるのも印象的。どんな見た目だったんだろう。
Posted by ブクログ
歴史ミステリーは、読んだ覚えがない。安部公房の『榎本武揚』は、世に知られた榎本を裏切者として見たものだったから、あれは歴史ミステリーなのかもしれない。でも他には覚えがない。ぼくには。
戦後の出版。生まれる前の本。ハヤカワ文庫の初版が出たのが、42年前か。ぼくはその頃はドストエフスキーか山岳書ばかり読んでいた頃。ミステリには何の関心も持っていなかった。ハードボイルドにも。冒険小説にも。
本書は、犯人追跡中にマンホールに落ちて怪我をした警部が、入院中の退屈さを凌ぐために歴史資料をひっくり返して、子供二人を殺させた悪人として知られるリチャード三世の素顔を探る。肖像画を見ているとどうも殺人者という風に見えない。真犯人は別にいるのではないか? そんな直観が、彼を思わぬ歴史解釈へと引っ張り出す。警察捜査の手法で暴き出す歴史の真実、というところに本書の面白みがある。何せ30冊も増版を繰り返し、今なお、ミステリの傑作として名を遺しているのがこの作品なのだから。
さて入院と言えば、ぼくも今年の一月と二月に二度、半月ずつの入院を経験した。その時には、ミステリ小説を一日か二日で一冊ずつというペースで読み、退屈と闘わずに済ませていた。それぞれの本の中の事件が一晩か二晩で解決する。そのスピードで次から次へとミステリを読み漁っていた。
本書のグラント刑事は、何日も何日も同じリチャード三世の事件に関わり、一つの事件に対し何冊もの資料や歴史本を読み漁る。手伝いのアメリカ人学生や親しい舞台女優にも外部での調べ物を手伝ってもらいつつ事件を探る。歴史を探る。
ミステリ読者は次から次へと新たな事件を求めるのに、捜査を職業とするグラント警部は一つの歴史的逸話の向こうの真実を暴き出そうと執念を燃やす。まずこの違いが、本作なのであると思う。執念と的確な捜査力や推理力。何を見るべきか、誰を探すべきかを知っている捜査畑の眼で見た歴史的真実。そこが本書の魅力、と言っていいだろう。ぼくのようなただのミステリ好きではこの物語の主人公は務まらないのだ。
何よりも一般に知られている歴史的資料は胡散臭いものばかりで、不自然で理屈に合わないものばかり。再調査・再推理の妥当性を嗅ぎ取ったグラントと助手訳のキャラダイン青年の知的好奇心の行方にぼくらはおつきあいすることになる。勝者に綴られた歴史は真実を隠蔽する。本書冒頭にある「真実は時の娘」と言う言葉と本書のタイトルを結び付け、良質の歴史ミステリがかくして出来上がる。
本日、本業を終えたその足で駆けつけた札幌翻訳ミステリー読書会の課題書が、実は本作である。このような機会がなければ英国史に暗いぼくが本書と出会うことはなかったであろう。主催者の方々の、価値ある名作を掘削してくる選定眼には、ただただ敬服と感謝を表したい。懇親会の食事と呑み物と、そこで交わされた貴重な話題やご意見にも深い尊敬と感謝の気持ちを!
Posted by ブクログ
悪名高いリチャード3世が甥の兄弟を殺したのか?歴史ミステリーの名作。
登場する歴史上の人物が多くて、しかも同じ名前もあって、何度系図のページを開いたことか。読みづらいところもあるが、イギリスの歴史ミステリーを読むのは初めてで、新鮮な面白さがあった。
Posted by ブクログ
歴史上の謎とされている事柄をミステリの体裁で取り上げる形式の古典
1951年の作品であることと
当時イギリス文化においてリチャード三世がどういう扱いをされていたかわからないので
題材や登場人物の動きについてはなんともいえないが
ミステリとして古典たりうるそつない話の運びはさすが
Posted by 読むコレ
何十年かぶりに再読した。このての歴史推理ものは、一つ間違えると馬鹿ミスかトンデモ本みたくなってしまうことが往々にしてある。事件中の怪我によりあの名刑事が安楽椅子探偵を演じる処といい、推理する事件の容疑者はあのリチャードⅢ世である処といいマニアゴコロを揺さぶります。ただ、設定がヒッチコックの「裏窓」なところがご愛嬌かも。
Posted by ブクログ
映画ロストキングを観た流れでこの本を手にしました。シェイクスピアのリチャード3世も併読。
ストーリーとしては大きな盛り上がりはないが歴史好きには魅力あるお話です。日本でいうなら明智光秀や吉良上野介の汚名挽回的な感じ?
日本の皇室もそうですがイギリスの王家も昔は権力闘争に明け暮れ身内同士の殺し合いなど日常茶飯事だったのでしょう。薔薇戦争や100年戦争など、イギリスやフランスの歴史をもっと勉強したくなりました。
Posted by ブクログ
同じ名前の登場人物が多すぎてなかなか読み進められなかったけれど、「むくむく仔羊ちゃん」が登場してくれて助かった。
刑事さんが刑事目線で歴史の事件を読み解く。という点が面白かった。
Posted by ブクログ
2018にも読んだが、映画ロスト・キングを見たので、またリチャード三世の話を読みたくなり再読した2025.5。
リチャード三世の遺骨発見は本当にすごいニュースだよね〜。
改めて、時の娘。面白い。
そして、こういう物語(安楽椅子探偵の歴史ミステリ)が、高い評価を受けていることが嬉しいです。
顔。このリチャードの顔から始まる。
そう、たしかにインパクトがあるよね。
悲しそう。でも貴族らしい誇りも見られる。
ここに惹かれる、というか、忘れられない顔だよね。
歴史にはこういう歪められた人物がたくさん居るんだろうなと思わされた。
ヘンリー7世は出どころの怪しい海千山千の人らしいし。
それにしてもさ〜、王室関係みんな名前被りが多すぎて泣きそう。
男子はヘンリーかエドワードかリチャードかジョンだし、子女はエリザベスかアンかメアリーかマーガレットだよね。
うん、やめて?
Posted by ブクログ
ネットで見かけて。
リチャード三世の謎を解くミステリーとあった。
リチャード三世については、
行方不明だった遺体が最近駐車場で見つかったということは知っていた。
そのニュースで悪名高い王様だった、と報じられたいたような…。
兄の遺児を殺害し王位を簒奪した、ということらしい。
マンホールに落ち(骨折か?)入院しているグラント警部が、
リチャード三世の肖像画を見て、被告人ではなく裁判官の顔だと思ったことから、
暇に飽かせて謎を解いていくと言うお話。
トーマス・モアの書いたリチャード三世は伝聞で根拠がないとか、
殺されたはずの王子たち以外にも邪魔な王位継承者は他にもいたのにとか、
リチャード三世の悪行をあげつらった時に甥殺しが入っていなかったのはなぜかとか、
興味深い指摘が続く。
とはいえ、薔薇戦争当時のイギリスは、
ヘンリーとかリチャードとかエリザベスとか、親子や親せきで同じ名前が多すぎる。
全然わからない。
みな同じ藤原なのでわかりにくいと文句を言っていた平安時代どころの騒ぎではない。
しかも、
ベッドの上での謎解きとして書かれているのが、
余計にわかりにくく、面白みもなかった気がする。
グラント警部と彼の助手を務めたアメリカ人、キャラダインが何度も口にしていた「Tonypandy」が面白かった。
ウェールズ南部で起こった暴動のことだが、
世間で広く知られている歴史的事件が実際には全く異なっている例えに使われていた。
キャラダインにとっての「Tonypandy」は「ボストン大虐殺 Boston Massacre」だと語っていた。
その通り。
植民地時代のボストンで市民の投石にイギリス軍が発砲し「虐殺」された事件。
後の独立戦争の一端となったということだったが、
死亡したのが5人だったと知った時には、自分も驚いた。
それと、タイトルの「時の娘」がなんのことかわからなかったが、
「真理は時の娘」というイギリスの古い諺からきているらしい。
Posted by ブクログ
書物や文献を紐解き、歴史上の人物・リチャード三世の素顔を暴くミステリー。
“回想の殺人”みたいなものと思っていたけれど、また違った良さがあった。
彼の意外な一面や故意に捏造された箇所など、学校では教えてもらえなかった新事実が発覚する。
これまで悪名高いといわれていた人物の印象が、この一冊でガラリと変わってしまうのが面白い。
Posted by ブクログ
悪名高いリチャード三世にまつわる謎を現代の警部が推理する歴史ミステリー
現代の、といっても1951年発表なので日本語訳もやや古めかしくてそれもまた趣深い
日本で言えば新説・蘇我入鹿みたいな感じかなぁ
マンガ「天智と天武」でもあってたね
それでも「怖い絵」でお馴染み中野京子先生によれば「やはりリチャードが第一容疑者」とのことだけど
Posted by ブクログ
この表紙は、かの悪名高リチャード三世の肖像画だとか。大分印象が異なるな、というのが正直なところ。歴史上の評価が時間を経て変化するのはよくあること。これもまたそのひとつかも。
Posted by ブクログ
骨折で入院した刑事グラントは、友人の女優マータが暇つぶしにとお見舞いに持ってきてくれた〈ミステリーを隠した肖像画〉カードのなかに、一際印象深い一人の男の顔を見つける。それは幼い甥たちを殺した残虐な王として知られるリチャード三世だった。肖像画がどうしても人殺しに見えないという刑事の勘から、ベッドの上で歴史の独自調査をはじめたグラント。やがてマータの紹介で知り合った大英博物館に入り浸りの青年キャラダインも加わり、歴史の裏に隠されたミステリーにのめり込んでいく。
リチャード三世の悪逆非道なイメージは、トマス・モアとそれを鵜呑みにしたシェイクスピアが作り上げた!とする歴史ミステリー。今ではわりとよく見る感じだが、一九五一年当時はこれが嚆矢だったのかな。訳者あとがきを読んで納得したのは、「歴史ミステリの生命は、“歴史をみつめる学者の眼をもってしてではなく、あくまで推理作家の眼をもって眺める”ところにあります」という点。たしかに推理小説の方法論が歴史学の方法と対比させることでくっきりとわかりやすくなっている。これはロンドン塔の二皇子殺害事件をホワイダニットで問い詰めていくと、リチャードではない真犯人が浮かび上がるはず、という小説なのだ。
前半はグラントの人となりが気に食わなくて(笑)入り込むのに時間がかかったけど、内気なアメリカ青年キャラダインが調査員として加わってから、グラントの印象もよくなった。二人が「トニイパンディ」という符号を共有し、バディとしての関係を深めていくあたりの会話は微笑ましい。
最終的に薔薇戦争の要点が掴めたのでありがたい。終盤にグラントが書くリチャード三世とヘンリー七世の比較メモすごいタメになる(笑)。これでわかった気になるのもトニイパンディだろうけど。歴史は勝者が語るものなんだなぁ。