織田作之助のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ『わが町』
家族愛と男の浪漫がある良い話で終わっててほっこりの宿酔がのこる。なんでこれ書こうと思ったんだろってニコニコしちゃった。『夫婦善哉』の別視点もあるのもめちゃくちゃサービスじゃんって喜んだ。君枝の青春に対する謙虚さ頑なさみたいなところに『姉妹』の伊都子に通ずるものを感じた。
『青春の逆説』
『雨』が元になってるのがわくわくした。学生時代よりも社会に出てからのが周りの環境のせいもあってか生活への刺激が多くて、これが豹一の青春てことなのかな。作之助自身のことをなぞってるようで、実際にはなかった夢みたいなのを豹一に詰め込んでるようで、いいなと思った。どんなときでも母のことを思い出されるのが -
Posted by ブクログ
1945(昭和20)年から翌1946(昭和21)年にかけての作品が収められている。1947(昭和22)年にまだ33歳にして早逝した作家なので、若いが「晩年」に当たる。
『夫婦善哉』を中古の新潮文庫で遥か昔に読んだことがあるきりで、さして印象のない作家だったが、今回読んでみてとても良かった。読みやすい文章でしばしばユーモアをも交え、微妙で深みのある人間像を呈示する。特に「表彰」「六白金星」が非常に良かった。
この世代の作家の文章は、先行する世代の文章とは何か根本的に異なって、実に読みやすい。太平洋戦争中から作品を発表した作家なのだが、私の目には「戦時以前」と「戦後」とのあいだに、日本文学の「 -
Posted by ブクログ
○目次
夫婦善哉/続 夫婦善哉/雪の夜/放浪/湯の町/雨/俗臭/子守唄/黒い顔/聴雨/勝負師/姉妹/木の都/蛍
○感想
織田作之助の、自身が育った「大阪」の庶民を描いた「大阪」の小説と、読んでいて感じました。登場人物の多くは本当にどうしようもない人達が多いのですが、彼ら彼女らがその「大阪」人としての奥底の意地というか心性が、最後に気張った行動をとるのかなと感じました。
なお、本書中に、自分自身が関西に住んでいたころに通ったことのある自由軒カレー等実在のお店も登場したりと、関西に住んでいる、または住んだことのある人には実感できることが多いかもしれません。 -
Posted by ブクログ
この歳になって、純文学にガッツリ嵌りました。
ええ、某文豪ゲームのお蔭なのですが、こんなに読み倒して居るのは学生以来なんじゃないか…。
昨秋ガラケーからスマホに替えて以来、青空文庫でどこでもこうした文学を読めるなんて、何て素晴らしい時代なのだろうとか噛みしめていたのですが、この『夫婦善哉』の続編は青空文庫に無かったんですね、残念。
なので、コレクションも兼ねて久しぶりに紙の本を買いました。
織田作『夫婦善哉』初読は十代の頃だったと思うのですが、只管蝶子さんが可哀想でならず、何が良いのかさっぱりわからなかったなと記憶していますが、この歳になって改めて読むと、しみじみと、染み入る様にくるものがあり -
Posted by ブクログ
不器用ながら規律規範から逆行して生きようとした青年を描いた『青春の逆説』。ほのぼのとした下町の情景を巧みに描きつつ、そこに住まう人々の暖かい交流を描いた『わが町』。
短編小説を得意とするオダサクには珍しい、中編~長編の小説だ。
じっさい作者はこの2作品に心血を注いでいたようで、『青春の逆説』が当局から発禁処分をうけた後は道頓堀~心斎橋界隈を放浪していたとかw
オダサクの作風の一番好きなところは、浪華節を利かした愉快な関西弁。その情緒深い、ユーモアあふれる会話文に、いったいどのくらいの東京人が魅せられたことだろう?関西弁がとってもステキ。
あと、作者の故郷への愛にほのぼのする。道頓堀・二ツ井 -
Posted by ブクログ
『私は目下上京中で、銀座裏の宿舎でこの原稿を書きはじめる数時間前は、銀座のルパンという酒場で太宰治、坂口安吾の二人と酒を飲んでいた――というより、太宰治はビールを飲み、坂口安吾はウイスキーを飲み、私は今夜この原稿のために徹夜のカンヅメになるので、珈琲を飲んでいた。話がたまたま某というハイカラな小説家のことに及び、彼は小説は女を口説くための道具にしているが、あいつはばかだよと坂口安吾が言うと、太宰治はわれわれの小説は女を口説く道具にしたくっても出来ないじゃないか、われわれのような小説を書いていると、女が気味悪がって、口説いてもシュッパイするのは当り前だよ、と津軽言葉で言った。私はことごとく同感で
-
Posted by ブクログ
1938(昭和13)年から1946(昭和21)年、織田作之助前期の作品を収めた短編集。
やはり面白い。多くの作品ではちょっと知能遅れのような主人公たちを、ウェットでもドライでもなく描き出し、さながら夢の中のように宙ぶらりんの質感で辿ってゆく物語は、不思議と味わいがあって魅力的。
大阪弁を取り入れたという文章は、しばしば意外な表現も見られ面白いが、ときとして文法的に変な箇所もあると思った。
『夫婦善哉』は続編があるというのを知らなかったが、書いたまま未発表でしまってあったのを2007年に発見されたらしい。正編とともに面白かった。ギャンブル等でたちまち金をすってしまう夫に体罰を加える女房とい