あらすじ
織田作之助(1913-47)の代表作「夫婦善哉」に、2007年に新たに発見された「続 夫婦善哉」をあわせて「正続」とし、そのほか、芥川賞候補作「俗臭」や自伝的作品「雨」、あるいは伝説の棋士坂田三吉を主人公にした「聴雨」「勝負師」など、おもに戦前・戦中期の代表的短篇14篇を収録。オダサク生誕百年記念の贈り物。(解説=佐藤秀明)
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佐藤氏の解説の「その文章に嘲笑はあったか。嫌悪はあるか。蔑みはあるのか。______ない。「市民」としての......」と続く云々の箇所でその通りだと思った。シリアスな話なのに思わずくすっと笑えたり、逆に笑いたくなるほど哀れでも真に迫ってるから一概に愚か者として扱えない登場人物に心寄せたくなったりする。
作之助の作品は、「郷愁」と「青春」がぐるぐる廻って綿あめみたいに膨らんでいって作られていると思っている。
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○目次
夫婦善哉/続 夫婦善哉/雪の夜/放浪/湯の町/雨/俗臭/子守唄/黒い顔/聴雨/勝負師/姉妹/木の都/蛍
○感想
織田作之助の、自身が育った「大阪」の庶民を描いた「大阪」の小説と、読んでいて感じました。登場人物の多くは本当にどうしようもない人達が多いのですが、彼ら彼女らがその「大阪」人としての奥底の意地というか心性が、最後に気張った行動をとるのかなと感じました。
なお、本書中に、自分自身が関西に住んでいたころに通ったことのある自由軒カレー等実在のお店も登場したりと、関西に住んでいる、または住んだことのある人には実感できることが多いかもしれません。
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この歳になって、純文学にガッツリ嵌りました。
ええ、某文豪ゲームのお蔭なのですが、こんなに読み倒して居るのは学生以来なんじゃないか…。
昨秋ガラケーからスマホに替えて以来、青空文庫でどこでもこうした文学を読めるなんて、何て素晴らしい時代なのだろうとか噛みしめていたのですが、この『夫婦善哉』の続編は青空文庫に無かったんですね、残念。
なので、コレクションも兼ねて久しぶりに紙の本を買いました。
織田作『夫婦善哉』初読は十代の頃だったと思うのですが、只管蝶子さんが可哀想でならず、何が良いのかさっぱりわからなかったなと記憶していますが、この歳になって改めて読むと、しみじみと、染み入る様にくるものがありまして。織田作の作品には、多く「困った人たち」が登場してくるのですが、誰もかれもなぜか愛おしくなります。『天衣無縫』しかり。『六白金星』しかり。織田作自身と、その経験が下敷きになっているのだろうと思うだけでも、ファンとして作品に触れる事で幸せな気持ちになれます。
ありがとう青空文庫(笑)
この短編集には他に『蛍』も入っていて更に嬉しいです。寺田屋事件の話だと気付くのにだいぶかかりました。
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1938(昭和13)年から1946(昭和21)年、織田作之助前期の作品を収めた短編集。
やはり面白い。多くの作品ではちょっと知能遅れのような主人公たちを、ウェットでもドライでもなく描き出し、さながら夢の中のように宙ぶらりんの質感で辿ってゆく物語は、不思議と味わいがあって魅力的。
大阪弁を取り入れたという文章は、しばしば意外な表現も見られ面白いが、ときとして文法的に変な箇所もあると思った。
『夫婦善哉』は続編があるというのを知らなかったが、書いたまま未発表でしまってあったのを2007年に発見されたらしい。正編とともに面白かった。ギャンブル等でたちまち金をすってしまう夫に体罰を加える女房という、しかし殺伐としていない凸凹コンビを描いてユーモアがある。
良い作品集と思う。
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表題作を含め十四の短編集
一つひとつの作品の中で登場人物が生き生きと動いてると感じました。
時に前向きに、時に反発し、時に流されながらも生気に溢れ懸命に生きてる人達が羨ましくも思いました。
落ちにしんみりし、ほっこりさせてもらいました。こんな感覚はなかなか味わえません。
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織田作之助の作品に出てくる男たちは、誰もが所謂ダメンズで、片や女性はとてもしっかりしている。ただ、男のダメなところも愛嬌があって、自分もあんなふうに脱力感満載で生きられたら楽かもな、とふと思うこともある。そんな男たちを甲斐甲斐しく世話する女性たちは、器量良しではないようだが、心根が美しく、素敵な女性たちだ。
怠惰な男性と甲斐甲斐しい女性の対比で男女の機微のようなものを浮かび上がらせている。男女間によくあるドロドロしたところがあまりない、読後は爽やかな感じもする短編集。ダメンズ好きな女性は是非。
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昨年は織田作之助生誕100年の節目の年。「夫婦善哉」は多くの出版社から出ているけど、続編「続 夫婦善哉」が収録されているのは文庫ではこの岩波版だけだと思う。この続編、2007年に未発表の遺稿から発見されたもの。正編が出てから67年、織田作之助の没後60年を経て、柳吉と蝶子の物語を再び読むことができるわけ。
相変わらず柳吉はダメぼんぼんで、そのたびに蝶子は振り回されるのもお決まりなのだけど、それでもやはり年を重ねて少しづつ変化しふたりの歯車はうまく回り出す。舞台を別府に移しているものの、正編と同じく情緒溢れる描写が読んで心地いい。
昨年製作された森山未來と尾野真千子のドラマ版はこの続編も取り込んだもので、今後「夫婦善哉」という時には正・続あわせて扱われるんだろう。だから、「夫婦善哉」読んだことのない人も、かつて読んだ人も、どちらも楽しめる文庫になっている。
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有名な表題作は、いかにも大阪的な小説で、軽快なテンポが小気味よい。柳吉はどうしようもない人物であるし、内容じたいも、起伏があるとはいえ、そこまでたいしたことが書かれているわけでもないであろう。しかし憎めないキャラクターであり、なんとも愛すべき空間が展開されている。とくに人物造形は秀逸で、むしろ、その生きかたに憧れすら抱いてしまう。ほかの収録作も同様で、いずれも大阪臭がぷんぷんするのだが、それがたまらなくよい。「俗臭」とか「木の都」とかはとくによかった。オダサクは有名なわりには太宰があまりにも凄すぎるせいでその陰に隠れてしまいがちであるが、本作を読めばなかなかどうして、埋もれさせておくにはあまりにも惜しい存在だ。昨年は生誕100年ということで、ドラマ化されるなど再評価の動きもあった。『夫婦善哉』の軽快なリズムはまさしく「夫婦漫才」そのもの。漫才がたびたびブームが起きてリヴァイヴァルするように、本作もいつまでも語り継がれる存在であってほしい。
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NHKのドラマを観たかったのに、ずるずると見逃してしまったので
それなら原作を読んでみようと思い、手に取った。
「夫婦善哉」も「続 夫婦善哉」も終わり方がすごく良かった。
仕事がうまくいかなかったり、病気になったり、喧嘩したり、
人生は順風満帆な時よりも圧倒的に大変な事の方が多いわけで...。
夫婦の話ではあるけれども、生きる逞しさを蝶子と柳吉から
教えられたような気がした。
どれも似たような空気感の話だったけど
「放浪」「黒い顔」「聴雨」も好き。
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大阪の市井に着目した作品が多く納められた短篇集。
特に『夫婦善哉』と『湯の街』『黒い顔』が面白かった。
庶民の生き生きした姿と熱気が読み手にも伝わってきた。『夫婦善哉』では職を変えて、多岐に渡る商売を行っていて呆気にとられた。
お互い似た者同士だからこそ、色々あっても長続きするのだろうなと思った。
『黒い顔』では昔の大阪の活気溢れる商いの街を知ることができた。活動小屋などの娯楽施設が多くあり、何年住んでも飽きない街だろうなと思った。
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時間あったら読もうと思っていたけど、意外と読めず「夫婦善哉」と「続……」のみ。自由軒が出てきてちょっと笑った。いわゆるダメ男で、そもそも妻がいるのに駆け落ちていうどこまでもダメな男なのに、その男が結局ほっとけなくてしょうがない。少し病的なところもあったりするのかも。「続……」は最近見つかったものらしく、続きではあるけれど場所が移った番外編的なものにも見える。この後、どうなったのかも少し気になるけど、蝶子がやはり苦労するんだろうなあ。