渡部潤一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読みやすいのに非常に中身が濃くて,なんで今まで読んでなかったのかとかなり後悔。天文少年だったころ,胸をときめかせた思い出なども魅力的だし,無味乾燥なデータの羅列などは一切ないし,非常に読ませる本になっている。
本書は,冥王星が惑星から外された翌年の2007年に書かれている。執筆の目的の一つは,過熱報道の残した誤解を払拭すること,ということなのだけど,太陽系の天体をどれもバランスよく扱っている。もちろん,冥王星の「降格」についても,関係者の一人として丁寧に解説。渡部先生が,IAU惑星定義委員会の委員をやってたのは初めて知りました。
もともと惑星の定義はなかったこと,冥王星がその発見以降,詳しく観察されるたびにどんどん「小さくなっていった」こと,さらに観測が進み,冥王星の周辺にたくさんの外縁天体が見つかって,冥王星より大きい小惑星も見つかってきたこと。これらが冥王星が惑星でなくなった背景にあって,IAUの抜き打ち的な惑星定義プロジェクトの進め方も功を奏して,妥当な結論が得られたということ。学問の中身にも,歴史的経緯や手続の巧拙が影響するんだなあというのがよくわかる。
とにかくおすすめの本。第一章は,技術革新で太陽系はどんどん広がってきた,と言うとても魅力的な話。望遠鏡で天王星が発見され,星図と天体力学で海王星,写真技術で冥王星,CCDでエッジワース・カイパーベルト天体…。
以下,各天体について本書で得た知識を少し御紹介。
・水星では,一日がちょうど二年。自転周期:公転周期がちょうど2:3で,自転と公転の向きが同じだからこうなっている。2:3ていう綺麗な整数比になるのは,一種の共鳴現象で,水星でも月の公転みたいに自転周期と公転周期が等しくなってもおかしくなかった。その場合は,昼の地点は常に昼,夜の地点は常に夜ということになるので,水星では「一日」という概念が存在しなくなっていた。
水星の一日は,地球の176日と長い。太陽に近いし,一度昼が来ると長いことじりじり焼かれる。水星の一年(=公転周期)はこの半分の88地球日。もっとも,水星の自転軸は傾いてないので,季節はない。水星の自転周期は1/3日で56地球日。
・金星の一日は,116.8地球日。地球と金星が近づく周期(会合周期)はちょうど5金星日。このため,金星は地球と会合するとき常に同じ面を地球に向ける。これも太陽系における共鳴現象のひとつ。金星の自転は普通とは逆向きなので,金星では太陽は西から昇って東に沈む。もし自転の向きが正常で,なおかつ公転より遅ければ,太陽と星は空を正反対に進んでいくはずだけど,太陽系にそんな惑星はない。
・地球に衝突する可能性がよく取り沙汰される小惑星。その将来の軌道を高精度で求めるのは難しい。主な擾乱はヤーコフスキー効果で,太陽の熱で暖められた小惑星が放射する赤外線の反作用。ごくごく小さい力だが,はやぶさのイオンエンジンのように長期間では軌道を大きく変更しうる。
・木星は,極と赤道の温度差がほとんどない。惑星としては珍しく,内部からかなりのエネルギーを放射しているからで,おそらく重力エネルギーを解放していると考えられている。つまり,木星は今でもゆっくり縮んでる。
・土星の環が消えるのは,環のある平面(土星の赤道面)にちょうど地球が来て,細すぎて見えなくなるときと,太陽がその面に来て環に日があたらなくなるときの二種類がある。土星の公転周期の半分である15年おきに起こる現象。前回は2009年だった。
・天王星の環は1977年の掩蔽で偶然見つかった。これを機に,土星以外の大型惑星に次々と環が見つかる。
・海王星から見た太陽の大きさは,地球から見た最大の金星よりほんの少し大きい程度。その明るさは地球から見る満月の百倍以上だが,この太陽エネルギーから計算される海王星表面の放射平衡温度は40K程度。実際の海王星は表面温度は50Kくらいで,より太陽に近い天王星と同じ程度(放射平衡温度は太陽からの距離だけじゃなくてアルベドにもよるけど)。重力あるいは放射性物質による内部発熱がある模様。 -
Posted by ブクログ
面白いっすねえ、太陽系。自分たちが暮らす地球が属する太陽系は、宇宙からみれば小さな存在ですが、それでも知っていることはホンのわずか。まだまだ夢がいっぱいです。地球の仲間たち=惑星について、最新の知見を踏まえて、すごくわかりやすく解説してあります。カラーの口絵も、太陽系惑星への興味を大いにそそるもので、すぐにでも天体望遠鏡を買って夜空を眺めてみよう!という気になります。
著者は、冥王星が惑星から準惑星へとカテゴリーを替える際に、アジアから唯一参加した識者です。その経緯や反響が細かく書かれていて、「冥王星、惑星から降格」という新聞の一面記事が実は適切ではない、ということもわかりました。新書で入門という名のとおり、入門書としては最高の一冊ではないでしょうか。
-
Posted by ブクログ
宇宙への興味を掻き立てられながら、わくわくしながら読む、という意味で面白い本でした!
勿論専門的に掘り下げた内容ではないので、基本的には宇宙に関する面白いトピックを掻い摘んでライトに読む感じにはなります。
そう言った観点では、ライトに読むには難しい理論的な話も出てきます。
逆にディープに読みたい方には理論の話が上辺だけの説明過ぎて物足りないかも。
その辺のライト&ディープのバランスは絶妙とは言い難いですが、この本を呼んで興味が沸いたトピックについてはその専門書を読んだり自分なりに詳しく調べてみるのがいいかなと思います。
最後の宇宙人の話はちょっとゾクッとして面白い締めだったと思います! -
Posted by ブクログ
✨【賢治と星を見る(生誕130年の夜に)】✨
8月27日は「石っ子賢さん」こと宮沢賢治の誕生日。
先日見たペルセウス座流星群のひとすじの流れ星に導かれ本書を手に取りました。
『銀河鉄道の夜』を道標に、星めぐりの夜に汽車に乗って宮沢賢治に想いを馳せる旅に出ようと思います。
本書は北十字から南十字までの星座を巡る旅。『銀河鉄道の夜』だけでなく『よだかの星』や『双子の星』も登場し、窓から見る賢治の宇宙と名場面の追体験は賢治ファンにはたまらない星巡りの旅です。✨
西洋と東洋の神話を散りばめた天文学者ならではの考察は、新しい発見もあり、まるでジョバンニやカムパネルラと一緒に汽車に乗っているよう。
そして何より、賢治の天文知識が当時の最先端を走り、いち早く掴んで物語に組み込んでいたのには、ただただ驚くばかりでした。✨
欲を言えば、もう少し宇宙の写真やイラストがあればもっと分かりやすかったかも。
賢治の足跡を超えて、さらに広い宇宙や星座を巡る旅も覗いてみたくなりました。
きっと、好奇心旺盛な賢治なら同じように興味を持ったはずです。✨
少し解説本の色のほうが強く感じた部分もありますが、今夜は本を片手に、実際の夜空を見上げて本物の星たちを眺めたくなりました。✨✨
本書は、るなさんの本棚から選書させていただきました。
良い本をありがとうございます。ლ(^o^ლ)
-
Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
米で人気のTV番組《コスモス》の司会を務める米天体物理学者による入門書。一冊でわかる宇宙講座の決定版! 解説/渡部潤一
*****
著者のニール・ドグラース・タイソンは「ブラック・ホールで死んでみる」を書いた人。この「ブラック・ホールで死んでみる」は適度なユーモアがあって読み物としても面白かった。ただ宇宙についてしっかりと理解できたかは疑問が残った。
同じような感想がこの「人生が変わる宇宙講座」にも当てはまると思う。面白くてスラスラと読めてしまうのだけれど、宇宙についての知識や理解が高まったかというと、ちょっと疑問。もちろん、僕自身の理解力の問題もあるのだけれど。
それにしても「人生が変わる」という大げさなタイトルはどういう意図なのだろう。原題は「Astrophysics for People in a Hurry」でおおまかに翻訳すると「忙しい人のための宇宙物理学」といった意味になる。こちらのタイトルの方が本の内容をきちんと紹介しているように思える。少なくとも僕はこの本を読んでも人生は変わらなかった。もっとも、若い頃に読んでいたら「そうだ宇宙物理学者になろう!」と一大決心して人生は変わったかもしれないけれど。 -
Posted by ブクログ
大好きだったNHKの宇宙番組『コズミックフロント』のホームページ連載をまとめた一冊
宮沢賢治の人生を振り返りながら、その不器用で献身的な人間性に科学がどう関わっていたのかを紐解き、彼が生み出した作品群に現れる星々や自然現象について分かりやすく解説してくれる
星そのものについて掘り下げるというよりは、なぜその星を賢治が選んだのか、賢治が書きたかった想いはなんなのか、といった文学方面での掘り下げに重きを置いている
宮沢賢治の概要として、とても分かりやすくまとまっていると思う
天文学知識を求めてというよりは、宮沢賢治は一通り読んだけれど、もう少し詳しく知りたい!という層におすすめ
先行研究についてもきちんと引用元が明記されているので、この一冊を手始めにして、更に別の研究書へ繋げていくこともできるのが有難い -
Posted by ブクログ
むかしから星や宇宙の話は好きで、小学生のころ町にできたプラネタリウムによく通っていた。今でも、プラネタリウムの解説員になれるならなりたいと思っているほど。同じころ、鉄道も大好きで、ふたつの要素が並んだ「銀河鉄道の夜」を初めて読んだのは確か小学6年生だった。宮沢賢治がどんな風に夜空を眺めていたのか知れるなら、と思って購読。
著者の渡部先生は国立天文台の所属。きっと、研究よりも発表や観察会によく出られる方なのだろう。とても取付きやすい語り口で、賢治の考え方の推論や彼が生きていた当時の天文界、科学界のトレンドを解説していて、読み飽きなかった。楽しみにしていた銀河鉄道の夜についての解説は後半からだが、それ以外の天体に関わる童話は詩歌についての解説もおもしろく、それぞれもう一度原典を読み返したいと思えるものだった。内容を思い返しながら、夏の星座を眺めるのも楽しみだ。
銀河鉄道の夜からは、通りすがりに親しくなった人たちや、一番大切な友人を亡くして一人ぼっちになっていく寂しさを一番に感じていた。ところが改めて紹介された推敲中の原稿を読むと、むしろ自分の運命を再確認し、家族と前に進むストーリーなのではないかと思うようになった。
「なにがしあはせかわからないです。ほんたうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんたうの幸福に近づく一あしづつですから。」